関係人口創出事業を手掛けるFLNが語る「“地域推し”が地方を...の画像はこちら >>


市場で注目を浴びているトレンドを深掘りする連載「マネ部的トレンドワード」。今回取り上げるテーマは、「1億総推し活」。



かつての推し活は「アイドルやアニメのキャラクターを応援すること」というイメージが強かったが、近年は食べ物や乗り物など、さまざまなものが推す対象となっている。そのひとつが「地域」だ。ふるさと納税や復興支援をきっかけに、住んでいる土地でも故郷でもない地域とのつながりが生まれたという人もいるのではないだろうか。

地域を推すことは、継続的にその地域と関わる「関係人口」になることと等しい。そんな関係人口創出を推進しているフューチャーリンクネットワーク(FLN)関係人口創出部の佐宗勇志さん、小林光啓さんに、地域を推すことによる効果や影響について聞いた。

FLNが進める4つの関係人口創出サービス

関係人口創出事業を手掛けるFLNが語る「“地域推し”が地方を盛り上げ、日本を変える」
FLN関係人口創出部の小林光啓さん

FLNは、創業した2000年から地域情報プラットフォーム「まいぷれ」を運営。「まいぷれ」には地域に根差した情報が掲載されており、基本的にその地域で生活する人が活用しているケースが多い。

しかし、FLNのビジョンである“継続的かつ発展的な地域社会モデルの構築”を真に達成するためには、地域内で完結するのではなく、地域外を巻き込み地域のポテンシャルを最大化させることが不可欠。そのような戦略的視点から、複数の新規事業を立ち上げ、2025年9月から関係人口創出部というひとつの部署にまとめたそう。

「2025年6月、政府が『地方創生2.0』という構想を打ち出しました。その内容は、地方への移住促進はこれ以上伸ばせないと結論付け、その代わりに地域に関わる人を増やすという方針に転換することを示したものでした。まさに我々が関係人口創出の事業を本格化し始めた時期だったので、世の中のトレンドにも合致した事業と考えています」(佐宗さん)

関係人口創出事業を手掛けるFLNが語る「“地域推し”が地方を盛り上げ、日本を変える」
FLN関係人口創出部の佐宗勇志さん

既に何度か出てきている関係人口とは、移住した定住人口ではなく、観光に来た交流人口でもない、「地域や地域の人々と多様に関わる人々」のことを指す。その地域に実家があり定期的に帰省する人やその地域に住む友人に会うために度々訪れる人、その地域に副業先がある人など、関わり方はさまざまだ。



政府は、関わり続けたい自治体を登録することでその地域の情報や特典を受けられる制度「ふるさと住民登録制度」を創設し、2026年度中の本格導入を目指そうと動いている。関係人口を生み出す取り組みのひとつだ。

関係人口を増やすため、FLNでも4つのサービスを展開している。

「1つ目は、地方創生や移住・定住に関心がある人向けのプラットフォーム『Nativ.media』。地方自治体やその地域の企業の取り組みを紹介する記事を掲載しており、読者の過半数が大都市圏に住んでいる方です。地域との最初の接点となるメディアで、セミナーなども開催しています。2つ目の『まいぷれのご当地ギフト』は、特産品や地域に根差した企業・店舗が製造しているものを掲載したカタログギフト。知り合いへのお礼や企業の福利厚生として採用していただいています」(佐宗さん)

3つ目の事業は、人気VTuberとともに地域の関係人口の輪を広げる「まちスパチャプロジェクト」。各地域の関係人口となったVTuberと一緒に動画や漫画などのコンテンツを制作・発信していくことで、ファンに地域の情報が広がり、新たな関係人口につながっていくというプロジェクトだ。

「4つの事業のなかでも、特に『推し活』につながる取り組みが『まちスパチャプロジェクト』だといえます。地域とVTuberさんがコラボしたイベントを開催するだけでなく、特定の地域に関心や愛着を抱いてくれたVTuberさんが、日々の生配信や投稿動画のなかでその地域の話題を出してくれることもあります。それを見たファンの方が『そこに行ってみようかな』『この商品を買ってみようかな』と思ってくださり、実際にその地域に出かけていくというアクションにつながっています」(佐宗さん)

関係人口創出事業を手掛けるFLNが語る「“地域推し”が地方を盛り上げ、日本を変える」


4つ目は「産官学連携事業」。

自治体や地方の企業と連携して、「Nativ.media」のコンテンツであるオンラインイベント「地域の仕事“ホンネ”サロン」を入り口に、地域の人々の働き方や企業の魅力などを発信したり、角川ドワンゴ学園とタッグを組んで高校生や大学生と地方の企業をつなぎ、学生と一緒に課題解決の取り組みを行ったりしている。

「移住・定住だけでなく地方で働くことにも関心を持ってもらい、地域で活躍できる人材を増やすとともに、実力ある地方企業を成長させていきたいという思いを込めています。この事業も『推し活』に近い側面を感じます。というのも、参加された高校生や大学生から『今後どこに就職するにしても、この企業の社長さんのような考えの方と出会いたい』『この地域の企業に就職したい』といった声をいただくからです。消費活動だけでなく、その地域や人の思いを背負って働くという形での『推し活』でもあるのではないかと思います」(小林さん)

「地域×推し活」が日々の安心や安全につながる

関係人口創出事業を手掛けるFLNが語る「“地域推し”が地方を盛り上げ、日本を変える」


さまざまな方向から“地域を推し、関係人口となる”きっかけを提供しているFLNだが、そもそも関係人口が増えることで、地域にはどのようなメリットがあるのだろうか。

「さまざまな影響が考えられます。ひとつは、多様性が担保されること。多様性があるもののほうが継続性が高まるという構造は普遍的で、地域にも当てはまると考えています。もうひとつは、安全保障上のメリットです。人が住まない空き家がどんどん荒れていくように、人が住まない地域も荒れ、人の目が届かなくなります。そこで犯罪の予兆があったとしても気付けません。そのリスクを軽減する意味でも、地域を活性化していくことは大切だと感じています」(佐宗さん)

「佐宗が話した多様化の面は大きいと感じています。いま、インバウンドの方々が注目しているのが、日本の多種多様な地域の文化や産品、自然などです。

日本が誇る産業は地域にある、と気付き始めている人も多いのではないかと思います。東京都は個人の収入や生産性は高いのですが、ブランド総合研究所が2025年に実施した『幸福度調査2026』では都道府県別の幸福度ランキング39位というデータもあります。生活しやすい場所、働きやすい場所は別にあるのかもしれないと視野を広げ、その地域を応援することで、将来の日本の在り方が変わってくるのではないかと思っています」(小林さん)

関係人口創出事業を手掛けるFLNが語る「“地域推し”が地方を盛り上げ、日本を変える」


日本全体の治安を維持しながら、活性化にもつながる可能性がある関係人口創出の取り組み。政府が「地方創生2.0(現・地域未来戦略)」を打ち出したことがきっかけのひとつではあるが、コロナ禍以降、家でも職場でもない「第3の場所(サードプレイス)」を求める流れが強まっているそう。

「リモートワークが一般化したことで働く場所に住まなきゃいけないという縛りがなくなり、地方もサードプレイスの候補に入ってくるようになったのだと思います。いま住んでいる場所、自身や配偶者の実家がある場所以外にも拠りどころとなる場所を増やすことで、ライフスタイルの幅が広がりますよね。また、近年の『所有からシェア』の流れも影響していると考えられます。さまざまな地域と広く関わりを持つことで、選択肢が広がっていきます」(佐宗さん)

防災の観点からも、関係人口として地域を推すことは有意義だという。仮に住んでいる場所で災害が起こった場合、馴染みのある場所に避難することができるかもしれないからだ。

「先述した『ふるさと住民登録制度』で登録している人が被災した際に、優先的に受け入れるという政策が地方自治体で検討される可能性はあると思います。災害対策の意味でも、関わりを持つ場所を増やすことはプラスに働くのではないでしょうか」(佐宗さん)

観光地ではない場所も「推す」対象に

関係人口創出事業を手掛けるFLNが語る「“地域推し”が地方を盛り上げ、日本を変える」


「地域を推す」と聞くと、観光名所がある土地に限られた話と思われがちだが、実際は観光資源がない場所も推す対象になり得るという。

「僕らは、関係人口が生まれるために必要な要素を『人』『体験』『拠点』の3つと定義しています。

有名観光地の場合、『拠点』はあったとしても『人とのつながり』や『体験』が生まれにくいケースもあります。一方で、観光地ではない地域でも3つの要素を生み出すことはできます。例えば、『まちスパチャプロジェクト』で連携している茨城県鉾田市は観光地ではありませんが、野菜の農業産出額全国1位(2014~2023年)という特徴があります。そこで農家さんと一緒に農作業を行う企画を実施したら『人』や『体験』につながり、都市部に住む人にとっては貴重な経験になります」(佐宗さん)

その土地に住む人にとっては日常の風景であっても、別の地域に住む人が見ると“特別”に映ることがある。あらゆるものがコンテンツとなり、地域の関係人口を生み出すきっかけになるのだ。

「地域で生産されたものを食べる、農家のおじさんと触れ合う、市長と会話する、このようなことがその土地ならではの魅力になりますし、観光地では得にくい経験だといえます。地域の課題が魅力に変換されるケースもあるので、そのお手伝いをしていけたらと思っています」(佐宗さん)

旅行で赴いた地域やふるさと納税した街など、気に入った土地と関わりを持ってみることも「推し活」のひとつ。そのつながりが、地域や日本全体を盛り上げるきっかけになるかもしれない。

関係人口創出事業を手掛けるFLNが語る「“地域推し”が地方を盛り上げ、日本を変える」


(取材・文/有竹亮介 撮影/森カズシゲ)

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