新入社員の早期流出に歯止めがかからない。ジャーナリストの溝上憲文さんは「すっかり定着したインターンシップは職業体験となる学生と、優秀な人材を発見できる企業の双方がウインウインの関係を築ける仕組みだが、かえってこれが逆効果になっている事例が増えている」という――。

■早期離職の最大理由
新入社員が入社して2カ月以上が経過した。入社後研修を経て配属先の業務に就いて1~2カ月目になる時期であるが、例年問題になるのが早期離職だ。
スタッフサービス・ホールディングスの「新卒3年未満で正社員を退職した若年層の意識調査」結果(2025年7月22日)によると、新卒で就職した会社で初めて「辞めようかな」となんとなく思った時期については、入社初日までが10.2%、1カ月未満では32.9%、3カ月未満では51.0%と半数を超えている。
早期離職の理由はさまざまであるが、大きな要因の1つはリアリティショック(予想と現実のギャップによるモチベーションの低下)だろう。
就活中の会社説明会などを通じて業務や仕事の内容は知っていても、いざ入社すると“こんなはずではなかった”と思う事態に遭遇し、離職の引き金につながるケースも多い。そうでなくても今の就活生は売り手市場の中で三顧の礼をもって迎え入れられる存在だ。
複数の内定を得る学生も多く、内定式ではクルーザーでの懇親会や高級レストランでの食事会で学生を惹きつけようという企業もあれば、入社までの内定者フォローでも社員旅行への特別招待、専任のメンター制度を設けて定期的に高級ランチを食べながら学生の相談に乗る企業もある。大手のフリマアプリ会社では、世界各国の最新サービスアプリを体験するための海外出張費用の全額負担や語学留学費の補助まで行っている。
■配属先では最年少の一兵卒
さらに今年の入社式では、経営トップから「変革の担い手になってほしい」とエールを送られ、式典後の懇親会で経営トップや役員と酒を汲み交わす場面も見られた。
さぞかし気分も高揚しただろう。しかし、これだけの下へも置かぬ厚遇を受けても配属先では最年少の一兵卒だ。上司や先輩にこき使われ「こんなはずではなかった」と思ったとしても不思議ではない。

「自分がこの会社にいる意味がない、自分の成長スピードが完全に止まってしまう」

「結局、使い捨て、都合のいい猫の手」
といった声も聞かれる。
ただし、それだけの理由で離職するとは思えない。なぜならリアリティショックを引き起こさないために多くの学生がインターンシップ(就業体験)を経験しているからだ。
インターンシップは学生にとって自分のやりたい仕事なのかを見つけること、またこの会社や職場の雰囲気になじめるかを確認する機会となる。企業にとってもこの学生は活躍してくれそうか、自社の文化にマッチし、職場の一員として定着してくれそうかを確認できる機会でもある。
つまり学生と企業の双方がウインウインの関係を築けるかを確認する試金石が本来のインターンシップであるはずだ。
■ネックはインターンシップにあり?
インターンシップは2016年卒の学生から本格的にスタートし、今では大学3年のサマーインターンに始まり、秋、冬にも実施され、就活生にとっては必須の行事になっている。
2022年には文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省がインターンシップに関する就活ルールを改定。2025年卒からインターンシップに参加した学生の情報を採用選考に使用することが可能にするなど政府がお墨付きを与えた。
その結果、インターンシップを受けた学生を優先的に採用する「インターン枠」を設けている企業も多い。にもかかわらずミスマッチによる離職が後を絶たない。
エン・ジャパンの「早期離職実態調査2025」(2025年5月9日)によると、早期離職があった企業にその要因を聞いている。

最も多かったのは「仕事内容のミスマッチ」の57%、続いて「人間関係の問題」(35%)、「職場の文化や価値観が合わない」(30%)の順となっている。
本来であればこうした問題はインターンシップで相当程度解消されるはずであるが、文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の平野恵子所長は「今の日本で行われているインターンシップでは効果は限定的」と指摘する。その理由についてこう語る。
「インターンシップ自体が採用プロセスに巻き込まれてしまっている。つまり企業にとっては選考に結びつけるために外面を良く見せるだけのインターンシップになりがちであり、仕事との連続性が低く、研修のようなインターンシップだといくらやってもマッチングできない。学生もインターンシップ中は採用目線で見られると思っており、外向的に振る舞おうとなりがち。積極的に質問したほうがいいよと言われれば、がんばって質問しようとするだろうし、企業に好印象を与えようとすることになる」
■インターンをしない企業の言い分
インターンシップといっても、5日間のうち実際に職場の一員として体験するのは1~2日間、残りの2~3日間は学生同士による集合研修を行うところもある。
平野氏は「とくに文系の学生はいいなと思う会社のインターンシップを1~2社参加しても、自分が思い描くキャリアにフィットするキャリアが見つけられるわけではない。自ずと多くの会社のインターンシップに参加してどこがいいのかを決めることになるが、長期間参加することは学業との両立において無理であり、マッチングする会社に巡り会うのは難しい」と語る。
一方、企業側にとっても職場の一員として就業体験させることの難しさもある。新入社員をはじめ社員研修を手がけるALL DIFFERENT事業開発推進本部シニアマネジャー・開発室室長CLM(最高育成責任者)の根本博之氏はこう語る。
「当社はインターシップを実施していない。
やりたいと思ったことはあるが、どうしても出せる情報と顧客の情報など出せない情報が出てきてしまう。本来、インターンシップを通じて入社後の早期の活躍を期待するのであれば多くの社内情報を出すべきであるが、それが出せないとなると、研修的な感じのインターンシップになってしまう。インターンシップで本質的な仕事に振れられるかといえば、実態としては研修的なインターンシップになっている会社が多いのではないか」
そうなると企業と学生のマッチング度を高めるインターンシップは難しくならざるをえない。もちろん就業体験を重視している企業もある。
根本氏も「企業の中にはインターンシップがうまくいき、新卒採用が非常に前に進んだ、あるいは入社する新卒社員の質が変わったという声も聞いている」と語る。
■「本選考を受けてくれなくなった」
その一方で「インターンシップの目的が新卒採用の母集団形成のために行っている企業が多いなかで、なかなか採用につながっていない企業も多い」と語る。
「学生さんにどういう会社のインターンシップを受けるのかを聞くと、入りたい会社と答える一方で『経験が積める会社です。別に入りたい会社というわけではありません』と言う人も多い。企業からすると、学生にビジネス経験を積ませても、結局、他の会社に行ってしまったというケースもあり、実際に採用した人の中でインターンシップの経験者はごくわずかだったという企業も少なくない」(根本氏)という。
優秀な学生を囲い込むためにインターンシップを実施しても選考に結びつかないという矛盾も生まれている。最近ではインターンシップを廃止する動きも出でいる。
三菱地所は2027年卒の学生を対象に大学3年時のインターンシップを廃止した。
その理由について同社は「インターン選考が実質的な選考という印象を持たれ、インターンで落選した学生が本選考を受けてくれなくなった」とし、「学業や課外活動に尽力した就活生よりも、早期に準備できた人が優遇されやすい」ことを懸念した、と報じられている(「日本経済新聞」2026年6月2日朝刊)。
現在のインターンシップは、学生と企業のマッチング度を高める効果が薄く、早期離職の防止につながっていないばかりか、採用にも結びつかないという弊害すらもたらしている。

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溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)

人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。

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(人事ジャーナリスト 溝上 憲文)
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