だらしなく見える“一発アウト”のクールビズの服装は何か。エグゼクティブスタイリストの長友妙子さんは「クールビズは通常のファッションよりルールがゆるくなっている。
だからこそ本来のルールを知り、『ルーズ』ではなく『エフォートレス(快適で気取らない)』な服装を心がけたい」という――。
■半袖ワイシャツはそもそも「ルール違反」
猛暑の夏が続いていることを背景に、クールビズのルールが年々変化しています。最近では、東京都が職員にハーフパンツ着用を許可したことが話題になりました。しかし選択肢が増えて自由度が高まったからこそ、「何を着れば正解なのか」と頭を悩ませる男性も多いのではないでしょうか。
大前提として知っていただきたいのが、クールビズ自体がファッションの基本的なルールから外れているということです。
例えば、夏のクールビズでたびたび見かける白い半袖のワイシャツ。ごく一般的な装いだと思われるかもしれませんが、この服は伝統的にはファッションとしてルール違反です。シャツはヨーロッパ発祥のアパレルで「長袖」が基本になります。よって、本来なら半袖のシャツはビジネスシーンでは存在しません。
とはいえ、この暑い夏に「半袖ワイシャツを着てはいけない」というのも難しい話ですから、豆知識として知っておいていただけたらよいと思います。可能であれば、長袖のシャツをかっこよくロールアップして着こなすほうがスマートです。
■半袖白シャツの「袖」にご注意
半袖ワイシャツの選び方にはコツがあります。
それは「袖」に注目することです。
市販されている半袖ワイシャツは、風通しを良くするために袖口や身幅が広めに作られているものが多く、二の腕のあたりが「モサッ」としています。
シャツは本来、体に沿ったタイトなシルエットで着るからこそ、スマートでかっこいいわけです。また、シャツの歴史を紐解くと、元来ジャケットの中に着る「インナー」の役割を担っていました。そのため「レストランでジャケットを脱いではいけない」というマナーがあるのです。
「長袖が基本」というルールから外れ、本来は「インナー」だったワイシャツを1枚で着る。しかも袖にゆとりがありすぎると、決してスタイリッシュとは言えません。
半袖ワイシャツを着る際は、スッキリとした袖口の商品を選んでみてください。
■「ビジネススーツにノーネクタイ」はいいのか
「クールビズ=ノーネクタイ」というイメージを持っている方は多いと思います。では、普段のビジネススーツ、ワイシャツにネクタイを外しただけという服装は問題ないのでしょうか。
正解は「NG」です。ノーネクタイがダメなのではなく、「ビジネススーツとワイシャツが普段通り」という点が改善したいポイントになります。

ファッションに気を遣う人は、「アンコンジャケット」という、肩パッドや裏地、芯地を極力省いて仕立てられた、カーディガンのように軽いジャケットを選んでいます。
ほかに、メッシュ生地(きじ)で透け感がある涼し気な素材や、ポリエステルなどの機能性生地、ストレッチ素材がミックスされたシアサッカー生地(凹凸のある独特な生地)もおすすめです。シワになりにくく通気性も抜群なので、暑い夏でも快適に過ごせます。
ジャケットやスーツのカラーは、暑さを感じるブラックや、汗ジミが浮かびやすいグレーよりも、ネイビーがおすすめです。夏用ジャケットに機能性の高いパンツを合わせれば、素敵なクールビズスタイルが完成します。
■ワイシャツの要注意ポイントは「首元」
通常の「ネクタイを締める前提で作られたワイシャツ」は、第一ボタンを外すと襟元がルーズになり、だらしない印象になりがちです。
そこで、夏にノーネクタイで着用するワイシャツは、襟が真横に水平近くまで開いている「ホリゾンタル」という形のものを選びましょう。この形は、第一ボタンを外したときに襟元がきれいに外側に開いて自立します。これにより襟が潰れず、首元のVゾーンがすっきりと美しく見えるのです。
なお、夏場の白いシャツは、汗染みがつきやすいので特に注意が必要です。シャツの襟裏が黄ばんでいたり、汚れていたりすると、本人は気づかなくても、横に座っている同僚や取引先からはその汚れがしっかりと見えています。クリーニングで染み抜きをするか、「白いシャツの寿命はワンシーズン」と割り切って、シーズン毎に買い替えるくらいの客観的な意識を持つとよいでしょう。

ワイシャツのカラーは、夏らしく爽やかな薄いブルーや、引き締まって見えるネイビーがおすすめです。
■おしゃれだと勘違いしているNGな服装
ワイシャツの選び方についてもう一点、注意したいことがあります。
ジャケットの出番が少ない夏、「白いシャツだとアクセントがなくて寂しいから」と、えり裏や袖口の裏にチェック柄や花柄が入っているシャツや、ボタンホールに赤や青のステッチが入っているシャツを着ている方がいらっしゃらないでしょうか。
おしゃれだと思って選んでいるのかもしれませんが、ファッションのプロから見ると、残念ながら非常に安っぽいです。エグゼクティブがそのようなシャツを着ていたら、信頼が損なわれてしまいます。ビジネスマンのシャツは、余計な装飾のない無地が鉄則です。
加えて、白いシャツやポロシャツの第一ボタンを開けたとき、インナーが首元からが見えているスタイルも「一発アウト」です。残念ながら相手に不快感を与えてしまいます。
こうした事態を避けるにコツは、インナーそのものの選び方にあります。クルーネック(丸首)のインナーは、襟元から覗きやすいため、VネックやUネックでも深めの物を選びましょう。
首元が大きく開いている分、ボタンを開けても見えにくく、すっきりとした印象になります。
クールビズにおいて重要なのは「清潔感」と「さわやかさ」です。
これは「他人に違和感や不快感を与えない服装」とも言い換えられます。
ビジネスシーンにおいて服装の違和感は、その人の仕事ぶりや人格を伝える邪魔になります。せっかく仕事ができる人なのに、見た目のせいで信頼感を損なってはもったいないことです。
仕事ができるエグゼクティブは、自分の外見が「ブランド」であることをよく知っています。自分の仕事に誇りを持っているからこそ、身なりをルーズにしないのです。
暑さに負けてルーズな服装に走るのではなく、工夫して涼しさを手に入れるようにするマインドを持つと、それがスマートな着こなしや信頼感として表れるでしょう。
■涼しくて洗練されたスタイルを作るアイテム
暑さを凌ぎつつ、洗練されたビジネスパーソンに見える服装は何でしょうか。おすすめのスタイルやアイテムをご紹介します。
高機能生地を使った日本ブランド
最近はクールビズを意識した、機能性の高いウエアを販売しているブランドが増えています。例えば「鎌倉シャツ(メーカーズシャツ鎌倉)」は、シャツ専門店だけあって、クールビズ対応シャツのラインナップが豊富です。
「レノクロス」というメッシュ素材のワイシャツは、綿100%でありながら通気性に優れ、家で簡単に洗えるイージーケア仕様になっています。また、ビジネスシーン専用のニットポロシャツも豊富に揃っています。

また、熊本のシャツメーカー「HITOYOSHI(人吉シャツ)」は、「クールマックス」という吸水速乾性や抗菌性に優れた高機能素材を使いつつ、日本の職人ならではの美しい立体的なパターン(型紙)で仕立てられており、機能性とデザイン性を両立しています。
確かな技術を持つブランドのアイテムを1点でも取り入れるだけで、全体の印象が引き締まります。
■おしゃれの合い言葉は「エフォートレス」
ファッションやビジネス、ライフスタイルにおいて「エフォートレス(Effortless)」という言葉がよく使われます。
「快適で肩の力を抜いた気取らないスタイル」という意味で、クールビズにもぴったりフィットする概念です。しかし時に、エフォートレスではなく「ルーズ」になっている方をお見受けします。
エフォートレスは、ファッションのルールを踏まえ、そこから引き算をして作るスタイルです。「暑いから楽な格好をしよう」とダボッとしたジャケットやワイシャツを着るのは、残念ながらただのルーズです。
今年の夏は、ぜひ「ルーズにならない快適さ」を意識してみてください。

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長友 妙子(ながとも・たえこ)

ファッションコンサルタント/エグゼクティブスタイリスト

1983年、スタイリストデビュー。「流行通信」でディレクション&スタイリングを担当。竹内まりや本人からCDジャケットのスタイリングをオファーされたことを機に、芸能界からの依頼が殺到。その後、『CLASSY.』(光文社)、『Precious』(小学館)、『家庭画報』(世界文化社)などの有名女性ファッション誌で表紙や巻頭特集を担当。
テレビ・CM・広告・イベントでも第一線のスタイリストとして活躍。2021年に共著『繊細な人の仕事がうまくいくファッションのルール』(光文社)出版。2022年より「長友スタイル~ビジネスが成功する着こなし~」講座をスタート。

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(ファッションコンサルタント/エグゼクティブスタイリスト 長友 妙子)
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