■JAは本当に不要な組織なのか
一昨年、米不足や米価高騰が取り沙汰されて以来、さまざまなメディアや一部の専門家が「JAという巨大組織が暴利を貪ることで生産者を苦しめ、ひいては米不足もたらし、さらには米価を高騰させて国民に不利益をもたらしている」などと、JAを強く批判し続けています。
最近では、ついに「JA不要論」が唱えられるまでになってきました。ただし、その内容をよく読むと、「JAを解体すればいい」というざっくりした主張ばかり。JAが担っている多数の不可欠な役割に関して、どういう点が問題だとか、どう代替するかといった具体的な意見は極めて少ないといえます。
どうして、JAはこんなに長く激しい批判にさらされ続けているのでしょうか。それらの内容は妥当で、本当にJAは不要なのでしょうか。現時点でJAが担っているさまざまな役割を踏まえたうえで、きちんと検討する必要があります。
■農家が支え合うための協同組合
そもそも、JA(農協)の正式名称は「農業協同組合」です。よく誤解されていますが、JAは公的機関でも民間企業でもありません。農家が力を合わせて支え合って農業を行うための協同組合なのです。だからこそ、組合長は原則として農家が務めています。
■ 農産物の流通・販売
農家が生産した米や野菜、果物などを集荷し、品質や安全性をしっかりチェックした上で、卸売市場や量販店などへ販売。個々の農家では難しい大口取引や販路開拓を行い、生産者と消費者を結びつけています。
■ 生産資材の供給
肥料や農薬、飼料、農業機械などを共同購入し、農家へと供給。共同購入によってコストを抑えながら、安定した調達を支えています。
■ 営農指導
栽培技術や病害虫対策、経営改善などについて専門職員が助言を行います。農家が安定して生産を続けられるよう支援する重要な役割です。
■ 金融・保険サービス
JAバンクによる貯金や融資、JA共済による保険事業を運営。農業資金だけでなく、住宅ローンや生活資金、万一に備える保障などで暮らしを支えています。
さらにJAは、スーパーや直売所、ガソリンスタンドなどの運営、健康相談、食育活動、高齢者支援、防災協力などを通じて地域社会を支えています。特に人口減少が進む地方では、暮らしを支えるインフラとしての役割も担っているのです。
■批判の根本は「利権アレルギー」
こうした重要な役割を果たしているJAなのに、なぜ批判ばかりを浴びるようになってしまったのでしょうか。
確かにJAグループは、農産物の流通・販売、資材の供給だけでなく、銀行業務(JAバンク)、保険業務(JA共済)などを担う日本有数の巨大組織です。さらに全国の組合員や准組合員を合わせると1000万人を超える規模で、その社会的影響力が非常に大きいことは間違いありません。こうした規模の大きさから「農家のための組織」というより「農業政策を左右する存在」と受け止められることがあるのです。
近年では、米価高騰や農林中央金庫の巨額損失報道などをきっかけに「農業の問題はJAが原因ではないか」という見方が広がりました。
実際のところ、米価高騰などの農業問題にはさまざまな要因が関わっています。しかし、私たちは複雑な現象に直面すると、何か一つのわかりやすい原因を求めがちです。明らかな悪者がいる物語はわかりやすく広まりやすいため、多くのメディアがそうした取り上げ方をします。その結果、本来は政府政策、気候変動、市場環境、人口減少、高齢化など複数の要因によって生じている米価高騰も「JAが悪い」と断罪されてしまうのです。
■「農政トライアングル」への批判
また、以前から日本の農業を衰退させたのは、JA、農林水産省、農林族議員が強く結び付いた「農政トライアングル」だという批判が存在します。この三者による利権構造において、「JAが農政を牛耳っているから日本農業は衰退している」「農水省は農林族議員を通じてJAに間接支配されてきた」などといわれているのです。
確かに、この三者が農政に大きな影響を与えてきたことは事実でしょう。
■今の農業の問題は誰のせいか
戦後まもなくの日本は、深刻な食料不足に直面していました。一方、アメリカは小麦やトウモロコシなどの農産物を大量生産し、余剰処理に悩んでいました。そこでアメリカは安全保障と農産物輸出を組み合わせた外交戦略を展開。余剰農産物を同盟国へ供給し、その国の市場を育てることで、将来の輸出先を確保しようとしたのです。
こうした流れの中で、日本はアメリカ産小麦や飼料穀物を大量に受け入れました。学校給食へのパンの導入や畜産物の振興もその延長線上にあり、結果として日本人の食生活は米中心からパンや肉類を多く消費する方向へと変化したのです。さらに戦後の国際環境の中で、日本が工業化を優先し、土地利用型作物を輸入に依存する道を選択したということもあります。
つまり、日本の食料自給率の低下、麦・大豆生産の衰退などは、JAが引き起こしたものではありません。さらにいえば、1970年代の減反政策、1991年の牛肉とオレンジの輸入自由化など、日本農業を大きく左右した出来事の多くは国家レベルの政策判断でした。
むしろ、今日の農業・農村の姿を理解するためには、JAと自民党農林族と農林水産省の「農政トライアングル」よりも、アメリカと財界と政府主流といった、より大きな「権力トライアングル」の構造を見なければならないでしょう。
■JAにも問題がないとはいえない
もちろん、JAにも問題がないとはいえません。組織の硬直化や改革の遅れ、時代に合わなくなった部分への批判には耳を傾ける必要があります。
例えば、JAが金融事業(JAバンク)や保険事業(JA共済)に依存し、本業である営農・経済事業の収支改善が遅れており、「個々のJA独自の取り組み」はあっても「統一的・全体的な取り組みがなされていない面がある」ことが指摘されています。また、部門ごとの改善は進んでも、組織横断の改革が進まないことも問題視されているのです。
金融や保険の機能も、地方地域のインフラ的側面を持つJAにはなくてはならないものです。ただし、その収益に依存し、営農部門や経済部門を惰性で行っているJAもあり、それは改善されるべきでしょう。
しかし、日本農業の衰退や農村の疲弊をすべてJAの責任にするのは、あまりにも筋違いな見方です。大きな問題の原因を、JAという一つの組織に押し込めてしまえば、本当に検証すべき戦後農政の歴史、農業政策の問題点が見えなくなります。そうした誤った理解の上で、これからの食料安全保障や農業政策について正しい議論をすることは不可能でしょう。
■もしもJAがなくなればどうなるか
最後に、もしもJAがなくなったらどうなるのかについて考えてみたいと思います。
当然、真っ先に困るのは農家です。
もちろん、最近では民間企業へ直接出荷したり、インターネット販売や契約栽培を行ったりする農家も増えています。各農家が販路を自由に選べることは望ましいことです。しかし、それはJAという選択肢があるから成り立っている面があります。
■消費者も無関係ではいられない
一方、消費者も無関係ではありません。農産物を市場やスーパーへ安定的に供給する役割を担っているJAがなくなれば、自宅近くのスーパーで食品を確保することが難しくなるでしょう。また、JAは品質保持や残留農薬検査など見えにくい部分でも重要な役割を果たしているため、農産物の品質や安全性が守られなくなるかもしれません。さらにいえば、価格が安くなるどころか、物流コストや調達コストの増加によって、かえって高くなる品目も出てくるでしょう。
また、先に述べたように、地方の農村においては、唯一の金融機関やガソリンスタンド、スーパーや直売所、農業倉庫、農機の整備拠点などのインフラをJAが担っていることが少なくありません。これらは利益だけを見ると成立しませんが、JAは総合事業として相互に支え合いながら維持しています。
持続可能な農業環境があってこそ、私たちは毎日安定して食料を手にすることができます。JAはその仕組みを支える大きな基盤であるという事実が少しでも広く知られることを強く願っています。
----------
SITO.(シト)
農家、農業ライター
1993年、愛知県生まれ。キャベツとタマネギを栽培する露地野菜農家で、農業ライター。就農前から日本農業の諸課題に関心を持ち、生産現場の知見と幅広い農業情報を融合しながら「農業とそれに携わる人たちの持続可能な社会」を模索し続けている。また、農業分野にまつわる誤情報やデマと戦う姿勢を貫き、学術的な知見と実践的な経験の両面から、正確な情報発信に努めている。
----------
(農家、農業ライター SITO.)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
