※本稿は、松橋良紀『誰とでもうまく「話せる人」と「話せない人」の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■“ちいさな成功の光”を拾い上げる
誰だって一度は、いや何度も、精一杯やった日の夜にこうつぶやいたことがあるはずです。
「こんなんじゃダメだ」「もっとできたはずなのに」「もっと、もっと、もっと――」
その「もっと」の重さに押しつぶされそうになりながら、生きている人が本当に多いのです。
しかし誰とでも話せる人は、自分の失敗を見るのではなく逆の方向を見ています。話せる人は「小さな成功」を見逃しません。心理学でいう「スモール・ウィン」という考え方を身につけています。
「昨日より一回多く、相づちを打てた」
「今日は勇気を出して、自分から話しかけてみた」
「苦手な相手にも、ちゃんと挨拶できた」
そんな一つひとつの“ちいさな成功の光”を、ちゃんと拾い上げて、心の中にそっと並べていくのです。
心理学者アルバート・バンデューラは、「自分にはできる」という自信は、実際に何かを“やり遂げた経験”から生まれると述べています。小さな成功を積み重ねていくうちに、自己効力感が高まります。つまり、「自分はできる」という感覚が高まっていきます。
つまり、逆に「できなかった」「だめだった」を積み重ねている人は、自分の自信をどんどん削っているようなものです。
■同期よりできない焦りから救った上司の言葉
私は、営業会社に転職して3カ月たったものの、同期が売れているのに、自分はまったく成果が出なくて、落ち込んでいたときのことです。上司が声をかけてくれました。
「同期があんなに売れているのに、自分は売れなくて、どうしたらいいのか……」
「大事なのは他の人と比べることではありません。比較すべきは、昨日の自分だけです。昨日に比べてなにか発見や気づきはありましたか? そしたら昨日より成長したわけですよ」
「といっても『なんで自分はこんなにできないんだ!』って自分に怒りしか湧かないんです」
「じゃあ考えてみよう、入社した3カ月前からみたら、だいぶ成長しているでしょう?」
「まあそりゃ、入社時にいろいろわかってきたことがあります」
「そうして昨日の自分より成長しつづけたらどうなりますか?」
その言葉を聞いた瞬間、「それはいつか売れるようになります」と返事をするとともに、涙がこみあげてきました。そして、「同期と比べて売れないことのあせり」という重い荷物を、肩から下ろせた感じがしました。
■「よくやったな」と自分に声をかける
それから私は「できなかったこと」ではなく、「昨日よりできたことや新たな気づき」を見るようになりました。そうして続けているうちに、半年後にいきなりいい成績が出始めました。
「昨日よりちょっと勇気を出した」「ほんの少しだけ工夫ができた」
そんな小さな成功が、やがて大きな自信の土台になっていきます。どんなに話が上手な人も、いきなり今の姿になったわけではありません。誰も見ていない場所で、何度も失敗し、何度も落ち込みながら、それでも小さな「できた」を捨てずに積み重ねてきたのです。
だから、どうか今日一日の中にある“小さな光”を探してみてください。
その小さな習慣こそが、いちばん確実で、いちばん優しいスタートラインです。
自分に優しくしてあげよう。積み重ねたものは必ず形になって返ってくる!
■タモリ「友達100人できるかなって歌が嫌い」
「友達100人できるかなって歌があるよね、あれ嫌いなんだよね」
タモリさんがテレビの中でそう語ったとき、私は胸の奥がスッと軽くなるのを感じました。
この歌を苦しく感じる人は多いようです。友達は多いほうが幸せ。孤独は悪いもの。外向的であるべきだ。そんな価値観を表した歌だからでしょう。タモリさんは、そんな「友達は多いほど正しい」という概念を正面から否定したのです。
それは長い間、「孤独な自分はダメな人間」と信じて苦しんできた人たちにとって、救いになりました。
孤独を嫌う人は、外側で自分を満たそうとします。
「本当はどうしたい?」
この問いに答えられるのは、孤独のときだけです。内省による静かな時間は、自己理解を深めるための重要な土台となります。孤独は、あなたを“自分に戻す時間”なのです。
孤独の中で、自分の弱さを直視し、逃げずに向き合った人だけが“本物”になります。自主性は孤独なしには育ちません。だからどうか、孤独を怖れないでください。それはあなたが本当の自分と優しくつながるための、大切な“心のインフラ”なのです。
■孤独を愛せる人には“余裕”がある
「孤独は人間関係を悪くする」と思うかもしれません。しかし実際は、その逆です。孤独を愛せる人は、人に依存せず、期待しすぎず、束縛しません。
孤独を恐れる人は、どうしても「つながり」や「好かれること」に執着して、人間関係がぎこちなくなります。孤独を愛する人は、人にしがみつかないからこそ、自然体でいられます。その自然体が、最も魅力的なのです。
しかし、孤独に対して不安を感じたり、耐えられないと感じる人は次のことを試してみてください。
1つ目は、感情を言語化することです。紙とペンを用意して感情の赴くままに書き出してみましょう。思考や感情を紙に書き出す行為は、情動を整理して、客観的な視点を取り戻す大きな助けとなります。
2つ目は、意識的に身体を動かすことです。散歩をしたり、掃除をするなど、小さな動きでもかまいません。身体を動かすことで、滞っていた心理的エネルギーが少しずつ循環し始め、頭の中にこびりついていた不安や雑念がやわらいでいき、「いま、ここ」に自分を引き戻すことができます。
3つ目は、限定的に他者とつながることです。私には頼りにしているコンサルタントがいます。月に数回のコンサル時間は、私にとって重要な時間です。
私が自分では気づけない視点を提供してもらえることのメリットもありますが、時には1時間にわたって、ただただ私がしゃべりまくることも多いです。壁になって聞いてもらっているだけで深刻さは消えて、新たな活路が見いだせることも多いです。
相談できる人がいるという意味では純粋に孤独とは言えないかもしれません。ですが、周りの人たちに理解をされなくて、仲間はずれにされたような孤独を感じたとしても、たった1人でも何でも話せる人がいるだけで、人生の支えになります。
孤独は人を弱くするときもありますが、同時に成熟への入り口でもあります。その静けさこそが、あなたを次のステージへ押し出してくれるのです。
孤独はあなたを磨く砥石!
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松橋 良紀(まつはし・よしのり)
一般社団法人日本聴き方協会代表理事
著書31冊52万部超え。30年以上にわたり、話し方や聴き方のスキルを研究し続けてきた心理学の専門家。『聞き方の一流、二流、三流』 『すごい雑談力』 『話さなくても相手がどんどんしゃべりだす 「聞くだけ」会話術――気まずい沈黙も味方につける6つのレッスン』 など、書籍を多数執筆。
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(一般社団法人日本聴き方協会代表理事 松橋 良紀)

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