【M&A成長戦略を聞く⑥】縮小する建材市場を勝ち抜く山大の「一気通貫」構想とBLC買収のシナジー

住宅着工件数が減少する中、建材市場を取り巻く環境は大きく変化している。株式会社山大<7426>(宮城県)は、木材の伐採から製材、プレカット、施工までの一気通貫体制を強みに、新たな成長戦略を描いている。

2024年11月には、建具・家具の製造販売を手がけるビィ・エル・シー株式会社(BLC)をM&Aにより完全子会社化した。東北から首都圏への販路拡大と物流網の構築を目指す同社の戦略と、敗者を生み出さないM&Aの哲学について、山大取締役でありBLC代表取締役社長を務める阿部竜也氏に聞いた。※山大は13日、住宅資材販売を手掛けるナイス<8089>によるTOB(株式公開買い付け)が成立し、同社による完全子会社化が決まった。

    【M&A成長戦略を聞く⑥】縮小する建材市場を勝ち抜く山大の「一気通貫」構想とBLC買収のシナジー
    山大取締役でありBLC代表取締役社長を務める阿部竜也氏
    山大取締役でありBLC代表取締役社長を務める阿部竜也氏

    縮小する住宅市場と建材業界における生き残り戦略

    ──現在の建材市場の環境と、御社の戦略の大きな方向性についてお聞かせください。

    私が大学を卒業して入社した1990年、平成2年の頃は、年間170万戸という住宅着工がありまして、作れば売れる時代でした。インターネット草創期以前、紙や木材といったアナログな素材が社会の主役だった時代は、市場全体が伸びており、身を任せているだけでも事業が成長していく面白さがありました。しかし昨今は、新築住宅着工戸数は75万戸を割り込む水準まで急激に減ってきています。さらに、中東情勢などを背景とした原油高による資材の高騰も重なり、住宅が長持ちする頑丈な造りになったこともあって、市場は縮小傾向にあります。

    こうした環境の中で、山大としては木に携わり、植林から伐採、製材、加工、販売、そして建築まで、バリューチェーンを一貫して行う事業を展開しています。今後の住宅産業としては、日本の特徴である「狂いにくく、曲がりにくく、反りにくい」といった高品質な資材の調達から加工、そして頑丈な建築への資材供給を継続していくことが基本です。それに付随して、単なる物売りだけでなく、取り付ける「工事」の部分にも事業を拡大し、付加価値をつけていくことが重要だと考えています。

    製材から施工までの一気通貫体制と国産材の活用

    ──御社はプレカット事業など、加工の多角化に強みを持たれています。今後の展開はいかがでしょうか。

    プレカット事業の原点は、丸い木を四角く削り出す「ものづくり」にあると考えています。

    現在は戸建て向けが約8割を占めていますが、今後はCLT(直交集成板)などを利用した中高層住宅や、道の駅、体育館といった大型木造建築への対応も進めていきたいと考えています。

    また、国産材の活用も非常に重要なテーマです。国産材は安定的に供給でき、価格の変動も比較的少ないため、これからも需要が見込めます。現在、日本の山林では手入れをする人が減り、樹齢50年を超える大径木が増加しています。これらを適切に伐採し、住宅の躯体に利用して、また新たに植林をするという循環型のサイクルを取り戻さなければなりません。国も国産材の利用を推進しており、私たちはこの循環を支える役割を担っていきたいと強く思っています。

    【M&A成長戦略を聞く⑥】縮小する建材市場を勝ち抜く山大の「一気通貫」構想とBLC買収のシナジー
    阿部竜也氏
    阿部竜也氏(中央)

    BLC買収による物流網の獲得とクロスセル効果

    ──2024年にBLCをM&Aされましたが、その狙いと現在のシナジー効果について教えてください。

    BLCは建具や造作家具の販売で50年の歴史があり、ツーバイフォー工法の販路を持っています。一方、山大は宮城県を中心に在来工法の販路を持っています。この両者の販路を掛け合わせるクロスセルが大きな狙いでした。

    そして何より着目したのは、BLCが埼玉県三郷市に保有する物流倉庫です。山大が東北から関東へ進出する「南下政策」を進める上で、石巻から三陸道、常磐道を通って三郷に至るルートは、まさに物流の要衝となります。この拠点を活用し、山大のプレカット資材や製材をBLCの販路に乗せて販売する取り組みを1年かけて進めてきました。

    さらに、私が過去に培ってきた商社時代のネットワークも活かし、他社メーカーの住宅設備なども仕入れて配送する体制を構築し、徐々に成果が表れ始めています。

    敗者を生み出さない「共存共栄」のM&A戦略と未来

    ──M&Aのプロセスで苦労された点や、今後のM&A戦略についてお聞かせください。

    最も苦労したのは、社内の説得と管理部門の融合です。M&Aには多額の資金がかかりますから、その投資がいつ回収できるのか、事業計画はどうなるのか、役員を説得するためにあらゆるシミュレーションを数字で示しました。また、異なる会計基準や経理の仕組みをどうすり合わせるか、そして何より、地方から首都圏へ進出することに対する社員の不安を払拭し、マインドセットを変えていくことには非常に神経を使いました。

    今後のM&A戦略としては、地域密着で機能性を持つ企業、特に配送や工事といった付加価値を提供できる企業との提携を視野に入れています。

    私が考える現代のM&Aは、かつてのような敵対的買収ではありません。資本主義の社会では勝った負けたの世界になりがちですが、M&Aは敗者を生まず、お互いの良い部分を持ち寄り、共に成長して次のステージへ行くための手段です。資本の論理だけで支配するのではなく、両社が持つノウハウや資産を融合させ、新たな価値を創造していく。それこそが、私たちが目指すM&Aのあり方だと確信しています。

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