【M&Aリブート】オリンパス、祖業を切り離し、内視鏡中心の医療分野に経営資源を集中

オリンパス<7733>が内視鏡中心の医療分野に経営資源を集中させている。

顕微鏡の国産化を目的に創業した同社は、顕微鏡で培った光学技術をカメラなどに広げ、成長してきた。

だが、2021年にカメラを含む映像事業を、2023年には顕微鏡を含む科学事業を相次いで売却した。

この祖業の切り離しで、医療機器専業企業への転身が一気に進んだ。その過程には、M&Aが少なからずかかわってきた。

カメラと顕微鏡を相次ぎ売却

オリンパスは1919年、顕微鏡の国産化とその他光学機械の製作を目的に、高千穂製作所として創業し、1920年には同社初の顕微鏡を発売した。

その後、顕微鏡の開発で培った光学技術や精密加工技術を強みに、写真レンズやカメラ、さらに医療用の内視鏡へと展開し、光学機器メーカーとして事業領域を拡大してきた。

中でも1936年に参入したカメラ事業は長年、オリンパスの知名度を支える看板事業の一つとなった。

しかし、デジタルカメラ市場の縮小などを背景に、同社は事業ポートフォリオの見直しを進め、2021年にはカメラを含む映像事業を切り離した。

同事業を投資ファンドの日本産業パートナーズに譲渡し、医療機器事業に経営資源を振り向けた。

さらに2023年には、祖業である顕微鏡を含む科学事業も米投資ファンドのベインキャピタルに売却した。

顕微鏡はオリンパスの出発点だったが、同社は創業以来の事業を手放すことで、内視鏡を中心とする医療機器専業企業への転換を鮮明にした。

胃カメラを起点にM&Aで領域拡大

オリンパスは1950年、東京大学第一内科の医師と同社の技術開発陣との共同開発により、世界で初めて胃カメラの実用化に成功し、現在の消化器内視鏡事業の源流を築いた。

その後は医療機器事業の拡大に向けて、新製品の投入と並行してM&Aも活用してきた。

医療機器分野での初期のM&Aの一つが、1979年のWinter & Ibe GmbHの買収だ。

内視鏡が外科治療にも使われることを想定し、ドイツの硬性鏡メーカーである同社を傘下に収め、外科内視鏡分野に本格的に進出した。

2008年には英国の外科医療機器メーカーGyrus Group PLCを買収し、医療事業の外科領域を強化した。

2020年には米国の呼吸器科関連医療機器メーカーVeran Medical Technologies Inc.を買収し、呼吸器製品のポートフォリオを広げた。

2021年にはオランダの医療用蛍光イメージング(視覚)システム会社Quest Photonic Devices B.V.と、イスラエルの医療機器メーカーMedi-Tate Ltd.を相次いで買収し、外科領域の蛍光イメージング技術を強化するとともに、泌尿器科領域を拡充した。

2023年には英国の内視鏡検査向けクラウドAI(人工知能)開発会社Odin Medical Ltd.を買収し、医療分野でデジタル技術の活用を強化した。

直近では、2026年6月にイスラエルの医療機器メーカーBioProtect Ltd.を買収した。

BioProtect Ltd.が主力とするのは、体内で一時的に組織を分離し、治療後に自然分解するスペーサーと呼ばれる器具で、前立腺がんの放射線治療中に直腸を安定的・確実に保護する働きをする。

同社を傘下に収め、泌尿器科領域を強化する計画だ。

【M&Aリブート】オリンパス、祖業を切り離し、内視鏡中心の医療分野に経営資源を集中
オリンパスの医療分野の主なM&A

消化器内視鏡で世界シェア70%超

オリンパスは、2025年10月に公開した統合レポート2025の中で「消化器内視鏡の分野において、パイオニアとして確固たる地位を築いており、業界をリードし続けている」と自社の立ち位置を示した。

この中で同社は、消化器内視鏡の市場規模を3000億~4000億円とし、大腸内視鏡、上部消化管内視鏡、十二指腸内視鏡、超音波内視鏡で70%超の市場シェアを持つとしている。

また、同社の2025年3月期の売上高9973億円のうち、消化器内視鏡ソリューション事業は6740億円で、構成比は約67.6%となった。

このうち、消化器内視鏡が同事業売上高の約55%を占めており、全社売上高の約37%に相当する。

さらに、今後のM&Aについては、消化器科、泌尿器科、呼吸器科の注力領域で、既存事業に製品や技術を加えるタックインM&A(既存事業を補完、強化するためのM&A)を活用し、製品構成を強化する。

M&A、提携、投資を通じて事業成長を進めるとともに、自社の研究開発を補う技術や製品を取り込む考えだ。


一方、2025年11月に公開した経営戦略では、組織を簡素化して意思決定を速め、次世代の医療技術への投資を拡大することで、内視鏡医療の新たな標準づくりを進める考えを示した。

同戦略では、内視鏡技術を活用した医療の未来に向けたビジョンも示した。

このビジョンでは、AIやロボティクスを活用し、これらをデジタル技術でつなぐことで、患者の負担が少ない高度な内視鏡検査の実現を目指すとした。

また、2029年3月期まで、売上高を毎年5%伸ばし、利益率を毎年約1ポイント改善する目標を掲げる。

創出した資金は、イノベーションへの再投資、配当、自社株買いのほか、M&Aにも振り向けるという。

2事業で売上高のほぼ全て

オリンパスは2026年3月期に、事業運営の効率化と患者、顧客を重視した体制づくりに向け、事業部門を再編し、セグメントを従来の「内視鏡事業」「治療機器事業」から「消化器内視鏡ソリューション事業」「サージカルインターベンション事業」に変更した。

消化器内視鏡ソリューション事業は、消化器内視鏡システム、内視鏡検査や治療に使う処置具、機器の修理やサービス契約などの医療サービスを手がける。

サージカルインターベンション事業は、泌尿器科、呼吸器科、外科内視鏡、その他の治療領域で、診断や治療に使う医療機器を展開する。

2026年3月期の売上高は1兆106億7600万円で、このうち消化器内視鏡ソリューション事業が6973億5900万円(売上高構成比約69%)、サージカルインターベンション事業が3131億900万円(同約31%)を占めた。

このほか、その他で2億800万円を計上したが、売上高のほぼ全てを医療関連事業が占めており、医療機器専業企業への転身が事業構成にも表れている。

【M&Aリブート】オリンパス、祖業を切り離し、内視鏡中心の医療分野に経営資源を集中
オリンパスの売上高構成比

2027年3月期は、売上高1兆550億~1兆760億円(前年度比4.4%~6.5%増)、営業利益1365億~1555億円(同40.5%~60.1%増)を見込む。

主要地域で消化器内視鏡ソリューション事業を持続的に伸ばし、全社の成長につなげる。

オリンパスはグローバル・メドテックカンパニー(世界で医療機器や医療技術を展開する企業)としての地位を強化し、今後も成長が見込まれる国や地域、医療分野で事業を拡大する戦略を掲げている。

祖業や看板事業を売却する一方、M&Aで内視鏡や治療機器の製品、AI関連技術を取り込み、医療機器専業企業への転換を進めてきたオリンパスにとって、注力領域でのタックインM&Aをどこまで実行できるかが、今後の成長を左右しそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一

【M&Aリブート】オリンパス、祖業を切り離し、内視鏡中心の医療分野に経営資源を集中
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