2026年6月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト3をお送りします。国際政治部門の第1位は――。

▼第1位 日本を「新型軍国主義」と叩くはずが、小泉進次郎大臣の返り討ちに…習近平が放った「格下の代表団」の大誤算

▼第2位 習近平はもはや「台湾統一」どころではない…中国共産党を自滅させる「日米包囲網」という"最強の切り札"

▼第3位 中国を真っ当に批判しただけで「犯罪者」に…習近平が7月1日から日本人を標的にする「危険な新法」の名前

小泉進次郎防衛大臣は5月末にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で、日本を「新型軍国主義」と繰り返し批判する中国を念頭に反論した。海外メディアは日本に同調する参加国の声を取り上げ、中国に誤算があったと報じている――。
■「日本は新型軍国主義」と批判した中国
中国外務省は5月12日、アジア太平洋諸国に向け、日本の「新型軍国主義の無謀な行動」に共同で対抗せよ、と呼びかけた。ロイター通信、米CNBCなどが報じた。
日本が戦前に突き進んだ「軍国主義」へ逆戻りしているのではないか、という疑いを込めた強い非難だ。
軍国主義という言葉を耳にすれば、アジア太平洋諸国の多くの政治関係者が、第二次世界大戦期の日本、すなわち軍部が国家の方針を握ったあの時代を想起する。
そこへ「新型」という接頭辞が付いたなら、現代の日本が進める防衛政策までもが、あたかも戦前の暗い系譜を引き継いでいるかのように映るだろう。今日の日本の防衛政策を過去の歴史に重ね合わせ、その正当性を貶めようとする試みとも取れる。
では、そのレッテルは事実に裏打ちされているのか。中国外務省の発言からおよそ2週間後、5月29日~31日にシンガポールで開催された、第23回アジア安全保障会議(通称シャングリラ会合)の場。各国関係者を前に、日本の小泉進次郎防衛相は、新型軍国主義との主張の誤りを明確に否定した。
各国の参加者からは、日本の姿勢に寄り添う発言が相次いでいる。

■指摘を受け流さなかった小泉進次郎防衛相
一連の応酬のきっかけを作ったのは、中国から送られた人民解放軍国防大学の孟祥青少将だった。シャングリラ会合の場で、日本へ鋭く矛先を向けた。
ロイター通信によれば、孟氏は「軍国主義の負の遺産を徹底的に払拭していない国が、国際的な場で防衛協力について多くを語る資格があるのか、そして国際社会の、とりわけかつて自国が侵略したアジア諸国の信頼を勝ち得ることができるのか、私は深く疑う」と述べた。
名指しこそ避けながら、その矛先が日本へ向いていることは、誰の目にも明らかだった。呼びかけの主が不在のまま、こうして批判の矢面に立たされた日本は、どう応じたのか。
受け流す、という選択肢を日本は取らなかった。批判の構図を、逆に問い直してみせたのである。小泉氏が会合の壇上に立ったのは、5月31日。彼は日本に「新たな軍国主義」があるとの非難を真正面から退け、むしろ懸念があるのは中国の側だと切り返した。
小泉氏が突きつけたのは、素朴な一つの問いだった。「考えてみてほしい。核兵器と戦略爆撃機を大量に抱える国がある。
日本はそのどちらの兵器も持っていない。それなのに日本が『新たな軍国主義』とレッテルを貼られるのか。おかしくないか」。
中国が日本に貼りたいレッテルは事実とまるでかけ離れていると、そう言い切った形だ。この反駁は、英国際安全保障シンクタンクであり会合の主催組織である国際戦略研究所が公開した講演の記録にもしっかりと記録されている。
■透明性を欠く中国の軍拡路線
小泉氏は「中国の対外的な姿勢と軍事活動は、日本にとっても国際社会にとっても、同時に深刻な懸念事項だ」と指摘。どちらが懸念されるべき存在なのかと、小泉氏は国際社会が注目する会合の場で、その照準を静かに、そして鮮やかに向け替えてみせた。
国防費を高水準で増やし続ける中国は、その使途をめぐる透明性をほぼ欠いたまま、軍備拡張路線を歩んでいる。米国防総省の分析によると、中国が公表している国防予算は、習近平氏が中国共産党総書記に就任した翌年の2013年と比べ、ほぼ倍に膨らんでいる。
そして、その膨れ上がった予算は、軍事技術の開発加速にも充てられているという。軍事用AI、バイオテクノロジー、そして極超音速ミサイル。こうした先端分野の研究開発に、中国はいよいよ拍車をかけている。

米国防総省の分析によると、中国が2024年に投じた国防支出の総額は、およそ3040億~3770億ドル(約48兆6000億~60兆3000億円。6月3日現在のレート、1ドル159.88円で換算、以下同)に上るとみられる。公表された予算は2310億ドル(約36兆9000億円)にすぎなかったが、実際の支出額は、公表値を32~63%も上回る計算になる。
■予算に算入されない「隠れ軍事費」の数々
この開きが生じるのは、公表予算に算入されない費目があるからだ。
人民武装警察、地方の治安維持、退役軍人の関連費、動員活動関連費、さらには国防がらみの研究開発や設備投資。こうした費目が表向きの予算のほかにひそかに支出されていると、米国防総省は指摘する。
では、日本はどうか。防衛費こそ近年伸びてはいるものの、その規模も中身も、中国とはまるで傾向が異なる。
スウェーデンのシンクタンクのストックホルム国際平和研究所は、2025年の日本の軍事支出は約622億ドル(約9兆9400億円)であったと分析。中国の実支出の最大値と比較すると、約16.5%にとどまる。1958年以来の最高値にある現在でさえ、日本のGDPに占める割合は1.4%にすぎない。
もっとも前年から9.7%、2016年と比べれば実に61%の増加ではある。
2022年に着手した防衛力増強計画を着実に進めるためのものだと、同研究所はみる。こうした増強の背景にあるのは、言うまでもなく中国と北朝鮮をめぐる安全保障上の懸念である。中国側は日本の軍国主義化に警鐘を鳴らすが、因果関係が無視されているようにも思われる。
■「格下の代表団」は見向きもされず…
最も皮肉なのは、アジア太平洋諸国に対し日本で結束を呼びかけた中国自身の閣僚級人物らが、シャングリラ会合を揃って欠席した点であろう。
中国が「新型軍国主義」という主張を真正面からぶつけたいのであれば、まさにうってつけの国際会議の席であった。孟氏よりも理路整然とした、日本にある程度のダメージのある発言すら可能だったかもしれない。
しかし、中国国防相の董軍氏は昨年から2年連続で、シャングリラ会合を欠席している。代わりに中国が送り込んだのが、孟氏を団長とする、軍人・学者からなる代表団だった。CNBCは、「格下の代表団(lower-level delegation)」であると表現している。
シャングリラ会合は、アジア太平洋地域の国防相や安全保障の責任者が一堂に会する、域内最大級の安全保障対話の舞台である。それだけに、どの国が閣僚級の代表を送り込むかは、その国が対話をどれだけ重んじているかを如実に表す。
中国としては主要人物を送り込み、日本批判のトーンを会合で示す機会でもあったが、自ら棒に振った形だ。

■独比から名指しで批判された中国
閣僚級人物が参加しなかったことで、中国は日本批判の場を逸したばかりか、諸外国から批判の的となる二重の失態を演じた。不在をめぐり、シャングリラ会合の場では、欧州とアジアの双方から中国を名指しで批判する声が相次いだ。
口火を切ったのは、ドイツ連邦軍総監のカルステン・ブロイアー陸軍大将だった。閣僚級の代表団を送らなかったことについて、対話の機会をみすみす手放していると、米ビジネスニュース専門局のCNBCの取材で批判した。
世界の分断が深まるいまだからこそ、各国は膝を突き合わせて意見を交わすべきだとブロイアー氏は強調し、「兵士として過ごした42年間で、今ほど危険な時代を経験したことはない」と吐露。ブロイアー氏が日本の姿勢を槍玉に挙げることは全くなく、むしろ中国が対話の機会を失っていることこそが危ないと警告した。
フィリピンのギルベルト・テオドロ国防相に至っては、さらに容赦がない。同じ会合の場で、中国の存在価値は「最小限に抑えられている」と一蹴してみせた。中国側は、建設的に議論を交わすためではなく、党の方針を宣伝するためだけに代表団を送り込んでいるにすぎない、というのである。
そのうえでテオドロ氏は、「自分にとっては大きな損失ではない」と言い添えた。中国が対話の場から退いたところで惜しくはない、という突き放した本音がにじむ。
■なぜ閣僚級を派遣しなかったのか
なぜ中国は、閣僚級人物らを会合に送り込まなかったのか。
最大の理由として考えられるのが、習近平氏が進める粛清の余波だ。
董軍氏の前任の国防相2人、魏鳳和氏と李尚福氏は汚職撲滅キャンペーンで相次いで失脚し、今年5月には両名揃って執行猶予2年付きの死刑判決を受けていた。粛清の対象は、習近平国家主席が自ら抜擢あるいは昇進させた将官や、長年尽くした側近にまで及んでいる。
NBCニュースは、戦略国際問題研究所がまとめた年次報告書『The Military Balance 2026』を引き、2022年以降、大将・中将クラスの将官101人が失脚した、あるいはその可能性があると報道。人民解放軍(PLA)の最高指導部ポストの、実に52%に相当する規模である。
報告書は、一連の粛清の結果、中国軍はいまや「指揮系統に深刻な欠陥を抱えたまま運用されている」状態に陥ったと独自に分析している。
ロイターは、複数の外国の駐在武官の話として、「今年の中国代表団は、軍幹部の汚職の追及が軍の戦闘準備態勢に与えている影響について、フォーラムで厳しい質問にさらされる可能性が高い」と伝えている。
孟氏らだけを派遣し、日本の防衛費増額や武器輸出拡大を批判することで攻撃的なメッセージを打ち出した中国の手法。閣僚をリスクにさらすことなく、非公式格の代表に攻撃役を担わせる形を選んだ、と読み解くことができる。
■護衛艦供与で深まる日本とフィリピンの絆
シャングリラ会合では、日本に明確に寄り添う姿勢を見せた国がもう一つある。フィリピンだ。
日本とフィリピンは、地域の安全保障を念頭に、包括的戦略的パートナーシップを結んでいる。中国はこれを「平和への脅威」に当たると批判した。
ところが、同じフィリピンの近海でその言葉にまさに当てはまるような軍事演習を重ねているのは、ほかならぬ中国の側である。ここでも因果関係の無視が見られる。
首都マニラのデ・ラ・サール大学国際関係学部教授で、比米関係を専門とするレナト・クルス・デ・カストロ氏は、シャングリラ会合の質疑応答セッションで、「主権を持つ2つの独立国が、地域の安全保障のために結んだ合意である」と言及。
日比間の合意に関し、第三国がただちに「無効」を突きつけてきたと強い不満を表明した。デ・カストロ氏は「もちろん、私が言っているのは中国のことだ」と名指ししている。
主権国家どうしの安全保障協力を、否定的なレッテルで塗り込めようとする中国に、マニラと東京はどう向き合うべきか。デ・カストロ氏は、そう問いを投げかけた。
応じたのは、日本の小泉氏だった。小泉氏は、フィリピンのテオドロ国防相と緊密に協力できることに謝意を示し、つい2週間前にもフィリピンへ飛んで中古フリゲートの供与を話し合ったと明かした。登壇の直前にも両氏は顔を合わせ、あぶくま型護衛艦を正式に供与することで大筋の合意に達したという。
しかも小泉氏は、こうした協力をあくまで透明性をもって進めると強調している。
■司法判断を拒み続ける中国
テオドロ氏の対中不信は止まらない。今年のシャングリラ会合の別の対談では、2016年の裁定を頑として認めようとしない中国を批判した。
これは、いわゆる「南シナ海仲裁判断」をめぐる中国の反応を指したものだ。中国が南シナ海のほぼ全域に引く「九段線」を根拠とした「歴史的権利」の主張は、国連海洋法条約(UNCLOS)上の法的根拠がないなどと、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が判断した。フィリピンのほぼ全面勝利に終わったが、中国はこの裁定を今なお拒み続けている。
フィリピン調査報道メディアのラップラーによると、テオドロ氏は、フィリピンなどで行われているとされるスパイ活動や影響力工作にも警戒の色をにじませている。「平和への脅威」と日比間の協力に冷や水を浴びせた当の中国こそ、他国の脅威になっている。
対照的に日本に関しては、各国の当局者や、地域に暮らす人々から厚い信頼が寄せられている。発言録によると、シャングリラ会合のQ&Aセッションでは、東南アジアにおける安全保障協力をめぐり、日本が一貫して大国の期待を上回る動きをみせているとの声が出た。
■ASEANで高まる日本への信頼感
民間レベルの声としては、ISEAS・ユソフ・イシャク研究所が今年1月から2月、ASEAN全加盟国の学者、市民、政府関係者など2008人を対象に、オンラインで各国への「信頼度」を尋ねている。世界全体の利益のために「正しいことをする(do the right thing)」かを質問し、「信頼できる」「非常に信頼できる」を集計したものだ。
結果をまとめた「The State of Southeast Asia: 2026 Survey Report」によると、日本の信頼度は65.6%で首位となり、2位欧州(55.9%)、3位アメリカ(44.0%)、4位中国(39.8%)を引き離した。
中国が敵に回してきた相手は、フィリピンにとどまらない。欧州からは、オランダ海軍の艦艇が口撃の標的となった。
中国人民解放軍国防大学教授の劉万霞上級大佐が、オランダの国防相に問いをぶつける形で発言。5月27日にオランダ海軍の艦載ヘリコプターが中国の西沙諸島(パラセル諸島)付近の領空に不法侵入したと主張し、いわゆる「航行の自由」を口実に中国の主権・権益と海上・空域の安全を著しく侵害していると論じた。
オランダのディラン・イェスィルギョズ=ゼヘリウス副首相兼国防相は、これに静かに反論。「我々は対立を求めて来ているのではない。フリゲート艦による協力を求めて来ているのだ」と諫めた。
■的外れな発言を繰り返す「格下の代表団」
さらには事実関係として、2年前にも中国との良好な協力関係のもとで、ほぼ同じ航路をたどっていると説明。次に同海域を訪れる際には、再びより良い形で迎えられることを願う、と締めくくった。
問題のフリゲート艦「デ・ロイテル」はいまインド太平洋で活動しており、域内の友好国との連携を進めている。コチ、スラバヤ、マニラへの寄港を経て、発言の時点ではベトナムに滞在中である。同艦は事前に計画された通りの航路を国際法に従って進んでおり、活動の場はあくまで航行の自由が適用される海域にとどまる。もっとも、艦載ヘリの領空侵犯に関しては、オランダは争点とすることを避け、明確に否定しなかった。
ただし、ここで疑問視されるのは、日本、フィリピン、オランダと、各国を標的に据え次々と舌鋒鋭く批判する中国側の姿勢だ。
シャングリラ会合は2002年の創設当初から、各国の国防担当が一堂に会して対話し、信頼を醸成し、安全保障面での現実的な協力体制を育むことを目的としている。鋭い質問自体はめずらしくないものの、建設的な意見交換が本筋である。
その場に招かれた中国は、批判を恐れて閣僚級を送り込まず、格下の代表団が壇上から各国を次々と被告扱いする姿勢を取った。こうした方針は、国際協力の場になじまないと言わざるを得ない。日本では小泉氏との応酬が大きく報じられているが、中国は日本にとどまらず複数の国々を一方的に敵対視する姿勢が目立つ。
■小泉氏が突いた中国の矛盾
こうした中国に対し小泉氏は、軍備を急拡大させているのはむしろ中国側であるとの事実を突いた。
反論では、「核兵器と戦略爆撃機を大量に保有する国」との表現で中国に矛先を向けた。実際、米国防専門デジタル誌のブレーキング・ディフェンスがストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の集計をもとに伝えたところによれば、中国の核弾頭保有数は2025年までのわずか1年で、推定500発から600発超へと急増した。
いまや、イギリスとフランスの保有分を合わせた総数すら上回る。2023年以降、年におよそ100発というペースで新たな弾頭を加え続けており、伸び率はどの核保有国をも凌ぐ。
戦闘機の最新鋭化も進む。SIPRIによれば、2025年には第6世代戦闘機とされるJ-36とJ-50の試作機が試験段階に入った。
なかでも小泉氏の指摘に直結するのが、戦略爆撃機の動きだ。同じ年、新型のH-20が初期作戦能力(IOC)に到達した。実戦投入に必要な最低限の運用態勢が整ったということであり、研究開発の域を出て、現実の戦力として初期段階に到達したことを意味する。
■これで「軍拡していない」わけがない
国防予算の規模でも、ストックホルム国際平和研究所によると、2025年のアメリカの軍事支出の約3分の1を占め、世界第2位につける。両国の格差は、前年の3.2倍からはいくらか縮まっている。
中国が世界全体の軍事支出に占める割合は、12%。その存在感は今後さらに大きくなる可能性がある。「新型軍国主義」と煽った中国は、まるで自国が軍拡路線を歩んでいないと主張したいかのようだが、こうしたデータとの乖離が著しい。
人民解放軍はこうした増強策を推進することで、「2035年までに全軍事領域で近代化を完了する」という長期目標へと、一歩ずつ歩を進めている。
中国はミサイルをめぐり、日本やアジア諸国との緊張を深めた過去がある。
2024年9月、中国が非武装の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を太平洋へ向けて発射したと、米国防総省は指摘する。太平洋への発射は、1980年以来じつに44年ぶりのことだった。
機種は人民解放軍ロケット軍のDF-31B。海南島の北部から打ち上げられ、約1万1000キロを飛んで仏領ポリネシア近海に着弾した。
中国は事前に、アメリカやフランスを含む一部の国には発射を通告していた。ところが、同じ太平洋に面する隣国でありながら、日本とフィリピンには、ひと言の断りもなかった。
■慎重な立場を取ったマレーシアの戒め
2024年12月には、中国海警局の船舶がフィリピンの船1隻に放水砲を浴びせている。現場でフィリピン人の漁民を支援していた別の複数の船には、横腹をこすりつけるなどの攻撃的な操船を仕掛けた。一歩間違えば惨事を招きかねない、危うい操船だった。
日本の軍国主義化をめぐりアジアに警鐘を鳴らす中国だが、発言国自身のこうした経歴を振り返れば、アジア諸国にどれほどの説得力をもって受け止められるか疑問だ。
このように中国がかき乱したシャングリラ会合にあって、付け加えるならば、反中国・親中国の二極化を避けようとする国もあった。
マレーシアのモハメド・カリド・ノルディン国防相は、中国にも西側にも与しない慎重な立場を保った。カリド氏は対談で、東南アジアはいま、地政学的な対立や経済圏の分断、技術をめぐる競争、そして「戦略的な強制」の圧力にさらされ、各国はどちらの側につくかを迫られていると言及。名指しを避けたが、中国とアメリカを念頭に置いた発言と取れる。
だが、ASEANは強制や政治的取引を武器に渡り合う場ではない。対話と合意、互いの尊重、そして地域の安定への共同責任こそがその礎なのだと、同氏はASEAN地域の原則をあらためて示した。
カリド氏が繰り返し訴えたのは、国際法は国の大小や富、軍事力や地政学的影響力の差にかかわらず、すべての国へ等しく適用されねばならない、という1点だった。
■どちらが「軍国主義」なのかは明白
条約や人道上の原則、そして国際的な約束が、地政学的な事情に合わせて都合の良いように無視されるなら、信頼はもはや広く成立しなくなり、条件付きかつ選択的・取引的なものへと変質してしまう。そう警鐘を鳴らす同氏の発言は、中国への批判が相次いだ議場にあって、あえていずれの陣営の論理とも距離を置こうとする声として響いた。
国家間に利害関係がある以上、認識の相違や摩擦が生じるのは避けられない。
問われるのは、その際にどう振る舞うかだ。相手のいない場で根拠のない主張を繰り返すのではなく、直接顔を合わせての率直な対話こそが求められる――。小泉氏はシャングリラ会合の本会議でそう述べ、日本の対話の扉は常に開かれていると寛容な姿勢を示した。
さらに小泉氏は、結びとなる一言でこう訴えた。自由で開かれたインド太平洋は、誰かから与えられるものではない。自分たち自身の手で築き、守り、次の世代へ引き継いでいくべきものだ、と。
建設的な議論の場を踏みにじり、諸外国を次々と煽ったのは、どちらだったのか。事実とデータを前にすれば、「日本は新型軍国主義」とのレッテルが実態から遠く離れたものであることは、多くのアジア諸国の目にも明らかだったことだろう。
(初公開日:2026年6月5日)

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青葉 やまと(あおば・やまと)

フリーライター・翻訳者

1982年生まれ。関西学院大学を卒業後、都内IT企業でエンジニアとして活動。6年間の業界経験ののち、2010年から文筆業に転身。技術知識を生かした技術翻訳ほか、IT・国際情勢などニュース記事の執筆を手がける。ウェブサイト『ニューズウィーク日本版』などで執筆中。

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(フリーライター・翻訳者 青葉 やまと)
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