便秘を改善するにはどうしたら良いのか。内視鏡診療の専門家である医師の石岡充彬さんは「便秘の人にこそ必要なのが良質な油であり、腸を動かす生理的な仕組みを引き出すうえで欠かせない存在である」という――。

※本稿は、石岡充彬『便秘専門医が教える 腸の再教育』(日刊現代)の一部を再編集したものです。
■便秘の人にとって強い味方となる「油」
「ダイエット中だから油は控えています」という方も多いですが、便秘の人にとって「良質な油」は強力な味方です。特におすすめなのが「エキストラバージン・オリーブオイル」。これには2つの大きなメカニズムがあります。
①カチカチ便をスルッと滑らせる、腸内の「潤滑油」

オリーブオイルの主成分である「オレイン酸」は小腸で吸収されにくく、大腸まで届きます。これが文字通り「潤滑油」となり、カチカチの乾いた便をスルッと滑りやすくしてくれます。
②自分の体内に眠る「天然の下剤」。胆汁酸スイッチを押す

私たちが食事で油を摂ると、消化のために肝臓から「胆汁(たんじゅう)」が一気に放出されます。実はこの胆汁に含まれる「胆汁酸」こそが、大腸を強く刺激して蠕動(ぜんどう)運動(※)を促す、体内の「天然の下剤」として働きます。

※蠕動運動:食道や胃、腸などの消化管が波のように縮めたり緩めたりして、食べた物を先(肛門)へと送り出す動きのこと

■薬に頼らないで腸を動かす
油抜きダイエットで便秘になるのは、滑りが悪くなるだけでなく、この「胆汁スイッチ」が入らなくなってしまうからです。
実は、この胆汁酸の「大腸を動かし、便に水分を含ませる」というパワーは、医学的にも非常に強力です。近年では、まさにこのメカニズムを利用して胆汁酸の力を大腸で発揮させる「グーフィス®(一般名:エロビキシバット)」という画期的な便秘薬(処方薬)が開発され、現在の医療現場で大活躍しているほどです。


つまり、良質な油を摂ることは、最新の処方薬と同じ「腸を動かす強力なスイッチ」を、自らの体の機能を使って自然に押すことと同じなのです。
オレイン酸の排便促進効果は、近年の研究でも明確に裏付けられています。2025年に発表された臨床試験では、慢性便秘症の患者さんにエキストラバージン・オリーブオイルを4週間摂取させた結果、便の硬さや排便回数が明確に改善したことが報告されています。
この効果を最大限に引き出すための「ベストなタイミングと方法」をお伝えします。
■「出ない」悩みを解決する油の正しい摂り方
●摂るタイミング:「朝、起床直後の空腹時」と「就寝前」の1日2回

●飲み方:1回につきスプーン1杯(約14g)をできれば「食べ物に混ぜず、そのまま飲む」
空っぽの胃に直接油分が入ることで、「胃・結腸反射」という腸を動かすスイッチが最も強力に引き起こされます。論文でも実証されている「そのまま飲む」という方法を、ぜひ試してみてください。
「油をそのまま飲むなんて、ギトギトして気持ち悪い……」と思うかもしれません。しかし、本当に質の高いエキストラバージン・オリーブオイルは、嫌な油っぽさが全くなく、まるでフレッシュなフルーツジュースのように青々とした爽やかな香りがします。
オイル選びに迷ったら、日本オリーブオイルソムリエ協会が主催する「OLIVEJAPAN®国際オリーブコンテスト」の受賞オイルを試してみてください。厳しいテイスティング審査をクリアした本当に美味しくて品質の高いオイルなら、毎日の習慣として美味しく飲み続けられます。
■朝食抜きが腸をサボらせる原因に
「ギリギリまで寝ていたいから朝食は抜き」

「朝はコーヒーだけ」

「食べたらすぐ家を出る」
便秘外来でよく聞くこれらの習慣が、実はあなたの腸に「サボりグセ」をつけている原因になってしまっている可能性があります。私たちの体には、空っぽの胃に食べ物が入ると、その刺激で大腸が反射的に動き出す「胃・結腸反射」という強力な仕組みが備わっています。

腸には1日に数回だけ、便を一気に肛門まで運ぶ「大蠕動(だいぜんどう)」という特大の波が起こります。このビッグウェーブを捉える最大のチャンスが、この反射が起きる「朝食後、30分~1時間の間」なのです。
これは全員に重要な習慣ですが、特に腸が自力で動かなくなっている「大腸通過遅延型(タイプB)」の人にとっては、薬に頼らず自然な排便習慣を取り戻し、自力で動ける「腸を育てる」ための必須条件となります。特大のウェーブ(大蠕動)に乗る感覚を体に思い出させるために、以下の3ステップを明日の朝からぜひ実践してみてください。
■少しだけ早起きすることが快便につながる
1:朝一番にオリーブオイルと白湯を飲む
寝起きに油と水分を直接胃に入れ、強力な反射の準備を整えます。前述の通り「スプーン1杯のオリーブオイルをそのまま飲む」のが理想ですが、どうしてもそのまま飲むのがツラいという方は、朝食のヨーグルト等にかけて食べても構いません。無理なく毎日続けることが最優先です。
2:必ず「固形物」を食べる
和食なら「もち麦ご飯+納豆」、洋食なら「オートミール+バナナ」など、胃を物理的に広げるボリュームが必要です。液体だけでは、反射のスイッチを十分に押し込むことができません。
3:食後に5分間「トイレタイム」を確保する
胃・結腸反射の波がやってくる「朝食から30分~1時間後」を目安にトイレに行きましょう。便意がハッキリしなくても、このタイミングで5分間だけ便座に座る習慣をつけることが、サボりグセのついた腸を再教育する第一歩になります。ただし、5分経って出なければ潔く切り上げます。
家を出る直前にバタバタ食べると、体は活動モード(緊張状態)になり腸の動きが強制終了してしまいます。
「出すために少しだけ早起きする」ことこそが、最強の腸活です。

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石岡 充彬(いしおか・みつあき)

日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック院長

1986年生まれ、秋田育ち。幼少期より内視鏡医である父の背中を見て育つ。地元・秋田大学で消化器内科全般を広く経験し、各種専門医資格および医学博士号を取得。2018年より国内随一の内視鏡治療件数を誇るがん研有明病院の内視鏡診療部にて、内視鏡診療に特化した知識と経験を積む。2019年には人工知能(AI)を活用した胃がんのリアルタイム診断システムを世界で初めて報告し、その後も最先端の内視鏡医療について全国的な講演活動を行う。2021年よりがん研有明病院健診センター・下部消化管内科の兼任副医長として予防医学の普及にも積極的に取り組む。2022年より都内最大手内視鏡クリニック院長職。自身が理想とする「初診から内視鏡検査・結果説明・治療に至るまでの一貫した診療」を行うため、2024年7月に日本橋人形町消化器・内視鏡クリニックを開院。

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(日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック院長 石岡 充彬)
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