■使い慣れたTOTOから東芝へ
温水洗浄便座が突然故障した。約20年間働き続けてくれたので仕方ないのだが、筆者は痔持ちである。温水洗浄便座は、快適さを求めるぜいたく品ではなく、ないと本当に困る生活家電のひとつだ。
これまでTOTO製品のシンプルなエントリーモデルを愛用しており、特に不満もなかったので、そのまま後継モデルへ買い替えることも考えたが、今回はあえて別のメーカーに目を向けてみることにした。
一日でも早く新しい便座が欲しいものの、買い替えるなら妥協はしたくない。色々比較検討した結果、東芝ライフスタイル(以下、東芝)の温水洗浄便座「SCS-SRA7020」にした。一番の決め手は、「ウルトラファインバブル」である。価格は4万1000円。
■注目の新技術でノズルや便器内も洗浄
ウルトラファインバブルの機能は、サイエンスのシャワーヘッド「ミラブル」や2025年大阪・関西万博では「ミライ人間洗濯機」にも採用されて話題を集めた技術である。直径1μm未満という肉眼では見えないほど微細な気泡を含む水で、洗浄性の向上が期待されることから、近年では洗濯機や農業、水産業などさまざまな分野で活用が広がっている。
SCS-SRA7020では、このウルトラファインバブルをおしり洗浄だけでなく、ノズル洗浄や独自の機能「プレケアミスト」で採用している。
ノズルも使用前後にウルトラファインバブル水で自動洗浄されるという。トイレ掃除があまり得意ではない筆者にとって、日頃の手入れの負担軽減が期待できる点は大きな魅力だった。
■初の温水洗浄便座交換、うまくいく?
温水洗浄便座には大きく分けて「瞬間式」と「貯湯式」の2種類がある。SCS-SRA7020は「瞬間式」だ。「貯湯式」は、本体内のタンクにあらかじめ温水をためておく方式で、構造が比較的シンプルなため、本体価格を抑えやすい。一方、家族が続けて長時間使用すると、タンク内のお湯が少なくなり、温水の温度が下がることがある。
「瞬間式」は、使用する瞬間に水を加熱する方式である。タンクを持たないため、お湯切れしにくく、待機中にお湯を保温し続ける必要もない。一般的には省エネ性に優れ、多くの上位モデルで採用されている。
正直なところ、購入前のきっかけはウルトラファインバブルだったが、ランニングコストを抑えやすいことも魅かれた理由だ。
DIY初心者で不安だったが、便座交換に挑戦した。温水洗浄便座の交換は、今まで一度もやったことはない。先に、我が家のトイレ環境が対応していることを確認することから始めた。
「SCS-SRA7020」は、一般的な止水栓(マイナスみぞ、ハンドル)、内ねじタイプなら付属品の分岐金具が対応できる。寒冷地用給水管やフラッシュバブル式は、専門的な工事が必要となるので、専門業者に依頼する必要がある。
■自分で用意した工具は2つだけ
自分で用意しなければならないのは、モンキーレンチとマイナスドライバー、水漏れ対策として広口容器とぞうきんだ。モンキーレンチは持っていなかったので近くのホームセンターで購入。今回購入した便座で必要なナットのサイズは、水道の蛇口やシャワー、配管部品などに使われる規格サイズ「G1/2」となる。口開き部分は、汎用性が高い可動式のものを選んだ。
最初に水道の元栓を閉めてから、元の便座を取り外す。長年使っていたため、固定ナットやボルトは固着しており、なかなか緩まない。
結果から言えば、交換は約2時間で完了した。この2時間のほとんどは、新しい便座の取り付けではなく、止水栓まわりに費やされた時間だ。TOTOの旧便座はエントリーモデルであるものの、取り外しはボタンを押すだけで水抜きも自動で行われ、簡単にはずれる。さすがTOTO、よくできていて感動した。
■狭いトイレ内で役に立ったのは…
新しい便座の取り付け自体は、説明書どおりに進めれば難しくない。固定プレートを取り付け、給水ホースを接続し、本体を固定プレートにハメるという流れで、DIY初心者でも十分対応できる内容だった。
ただ、今回は筆者宅のトイレが狭かったこともあり、便器の横や後ろに体を入れて作業するのに苦労した。そこで役立ったのが、小型のモンキーレンチである。便器の後ろは思っている以上にスペースが狭い。短いモンキーレンチを用意しておくと、かなり作業しやすくなる。
■プロに任せると1万円前後かかる
新しい便座の取り付け自体は、取扱説明書どおりに進めれば難しくない。ただ、20年間使い続けたナットが固着していたことに加え、わが家のトイレはスペースが狭く、アース線や給水ホースも接続しにくかった。そのため、便座の取り付け・取り外しよりも、配線・配管の作業に時間がかかってしまったが、広いトイレであればここまで時間はかからなかっただろう。
費用はモンキーレンチが約900円、マイナスドライバーは約500円で、合計で約1400円。家にあるなら購入不要だ。便座の工事費は一般的に8000円~1万5000円なので、自分で交換すればその分が浮く。
細かな点ではあるが、以前使用していたTOTO製品は漏電保護プラグを採用していたため、電源プラグが一般的なタイプだったことは少し気になった。漏電時に電気を遮断する安全装置がないのではないかと不安に感じたが、調べてみると、本製品は漏電検知機能を本体内部に搭載しており、安全性には配慮されていた。
なお、便座は我が家が住んでいる市では「粗大ごみ」扱いとなる。廃棄方法については、各自治体によって異なるので必ず確認してほしい。
■目に見えないミストが定期的に噴射
「プレケアミスト」も効果を実感できた。
プレケアミストが作動すると、「サーッ」という控えめな噴射音が聞こえ、便器内へミストが噴霧される。ウルトラファインバブルは直径1μm未満と非常に小さいため、気泡そのものは目で確認できない。しかし、便器内の水面にはさざ波のような揺らぎが広がり、ミストが噴射されていることが分かる。
ノズルの洗浄にもウルトラファインバブルを利用しており、使用前後には自動でノズルを洗浄する。メーカーによれば、おしり洗浄でも微細な気泡を含んだ水によって洗浄性の向上が期待できるという。
■自動でニオイを消す機能が優秀だった
実際に2週間使ってみると、以前より便器の黒ずみや汚れが気にならない。また、汚れても軽くブラシをかけるだけでキレイになる。もちろん便座などは掃除する必要はあるし、便器も掃除が不要になるわけではないが、掃除の回数は減らせそうだ。
ウルトラファインバブルは、効果がすぐにわかる機能ではないが、トイレを清潔に保ちやすくし、毎日の掃除の負担を少し減らしてくれることを実感できた。
本機はオート脱臭機能を搭載しており、便座に座ると同時に「ウィーン」という控えめな動作音とともに脱臭が始まる。
この脱臭性能がとても優秀で驚いた。もちろん完全に無臭になるわけではないが、使用前と比べるとニオイは明らかに和らいでいる。
脱臭ユニットは便座裏側に配置されており、内部には交換式の脱臭フィルターを搭載している。フィルターの交換目安は約5年で、便座裏から引き出すだけで簡単に交換できる。
交換用フィルターは東芝製品を取り扱う家電量販店などで購入でき、メーカー希望小売価格は2860円。これだけ快適なトイレ環境を維持できるのであれば、ランニングコストとしても納得できる価格だ。
■もうないと困る「ふた自動開閉機能」
ふたの自動開閉は、今回最も満足度が高かった機能の一つだ。トイレに近づくと便ふたが自動で開き、使用後に立ち上がって離れると自動で閉まる。便ふたに触れずに済むため衛生的でもある。さらに、便座もリモコンのボタン一つで開閉できるので、手を汚すことなく操作できる。
購入前は「なくても困らないかも」と思っていたが、一度使い始めると、その便利さは想像以上だった。今では手動に戻りたくないと思うほど、毎日の快適さを実感している。
もう一つ、思いのほか使いやすかったのが壁掛けリモコンである。リモコンは付属のネジや両面テープで壁に取り付けられ、電源は単4形乾電池2本。電池交換も簡単だ。
以前使っていた便座は、本体横に操作パネルが付いていたため、その部分が張り出し、床や便座まわりを掃除するときに手を入れにくかった。壁掛けリモコンになったことで操作部が本体からなくなり、便座の側面までトイレシートをスムーズに入れられるようになった。
特にトイレが狭い住宅では、この違いは想像以上に大きい。見た目がすっきりするだけでなく、便器まわりの掃除のしやすさも大きく向上した。トイレが狭いのであれば、リモコン付きをおすすめしたい。
また、リモコンでフタだけでなく便座も開閉できるので、直接ふたや便座をさわることがなくなったこともうれしい。
■実際に使って便利だった「メモリー機能」
実際に使って便利だと感じたのが、メモリー機能である。水勢やノズル位置、温水温度など、自分好みの設定を登録しておけば、ボタン一つで呼び出せる。毎回設定を調整する必要がなく、いつでも好みの状態で使えるのは想像以上に快適だった。地味な機能ではあるが、毎日使うものだからこそ、こうした小さなストレスを減らしてくれる工夫はありがたい。
一方で、登録できるメモリーは2件までである。我が家は4人家族なので、できれば家族全員分を登録できれば、さらに便利だったと感じた。家族構成によっては、登録数がもう少し欲しいというご家庭もあるだろう。
気になった点は、リモコンの操作性である。ボタン自体がやや小さく、文字色も淡いため、少し見づらく感じた。機能が充実しているだけに、文字をもう少し大きくするか、コントラストを高めるなど、視認性が向上してほしいところ。筆者は老眼であるが、向かって右側の小さなボタンは、メガネを外すと読めなくなるのだ。
■お尻の洗い心地は「比較的やさしい」
おしり洗浄は、最大に設定しても以前使っていたTOTOの温水洗浄便座より比較的やさしい洗い心地だった。水勢が物足りないと感じる人向けには、「集中洗浄」モードも用意されている。「おしり/集中」ボタンを2回押すだけで、洗浄範囲を狭めて勢いを集中させる機能だ。
実際に試してみると、ごく狭い範囲にピンポイントで当たる感覚で、通常モードより刺激はかなり強い。しっかりした洗浄感を求める人はこちらのほうが好みに合うだろう。
同製品は、ウルトラファインバブルによって洗浄性が高められ、さらにノズルを前後に動かしながら広い範囲を洗浄する「ムーブ洗浄」も備えているため、強くしなくても汚れはよく落ちる。メーカーによると、微細な気泡を含んだ水によって洗浄性の向上が期待できるということだが、これも実感できた。
率直な話になるが、以前使っていた便座では、軟便のときにおしり洗浄をした後でも、トイレットペーパーに汚れが残ることがあった。しかし、本機に替えてからは、そのような場面は一度もなかった。もちろん、これは筆者個人の使用環境での感想ではあるものの、痔持ちの身としては、ありがたい……。やさしい水流でよく落ち、おしりをこすらずに済む場面が増えたことは大きなメリットだった。
■「もっと早く交換しておけばよかった」
賃貸住宅でも温水洗浄便座を使ってみたいという人はいるだろう。今回のような温水洗浄便座は、止水栓や給水設備などの条件が適合すれば、既存の便座を取り外して交換するだけで設置できるため、大掛かりな工事は不要だ。DIYに慣れていれば、2~3時間で交換できるので、賃貸住宅でも使えそうだ。
ただ、賃貸住宅では設備の交換に関するルールが契約書や管理規約で定められている場合が多い。退去時に元の便座へ戻すことを条件に設置が認められるケースも少なくないが、無断で交換するとトラブルになる可能性もある。DIYを始める前に、管理会社や大家さんへ確認してほしい。
正直、「もっと早く交換しておけばよかった」と感じた今回のSCS-SRA7020。この製品を選んだ最大の理由はウルトラファインバブルだった。実際に使ってから、劇的に掃除の頻度が減って大満足。便ふたの自動開閉で触れる機会が減ったこと、リモコン式になって便座まわりの掃除がしやすくなったこと、メモリー機能のおかげで家族が使った後もワンタッチで好みの設定に戻せること。こうした一つひとつは決して派手な機能ではないが、毎日使う家電だからこそ、その快適さを実感する場面は多かった。
約20年ぶりの買い替えということもあり、自分で交換できるのか、最初は不安もあった。しかし、実際に挑戦してみると、思っていたほど難しくない。温水洗浄便座は毎日使う家電だからこそ、最新モデルへ買い替える価値は想像以上に大きいと実感している。我が家にはもう一台トイレがあるので、そちらも交換したくなった。
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石井 和美(いしい・かずみ)
家電プロレビュアー
1972年生まれ。出版社の編集者を経てフリーランスに。日用品や家電のレビューを行うライターとして活動を始め、家電レビュー歴は15年以上。一戸建ての「家電ラボ」を開設し大型白物家電をはじめ生活家電の性能や使いやすさをテストしている。
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(家電プロレビュアー 石井 和美)

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