お盆や連休中、新幹線は帰省客や旅行客で大混雑する。車内トラブルを回避するためには、乗客全員がルールを理解しているかどうかがカギとなる。
鉄道ジャーナリストの東香名子さんがJR東海の広報担当者に「正しいルール」を取材した――。
■電車内の「迷惑行為」ワースト3は…
今年も新幹線が熱を帯びる「お盆」の季節がやってきた。JR東海が公表した7月23日時点のデータによると、東海道新幹線の8月7日から16日までの指定席予約数は前年と同水準の158万席。今年も多くの乗客で賑わう夏が予想される。
お盆などの大型連休のたびに、SNSやネットニュースでの火種となるのが、「乗車マナー」問題である。筆者が所長を務める調査サイト「鉄道トレンド総研」の調査によれば、電車内で「迷惑だな」と思うことのワースト3は、「大声での会話」「座席の座り方(詰めない・足を伸ばすなど)」「配慮のない咳やくしゃみ」となった。
しかしSNSで散見される新幹線トラブルは、これにとどまらない。「混雑する自由席で、隣の席に荷物を置いてブロックする人がいる」「子どもに席を譲れと圧力をかけられた」「指定席を取れなかった人が自由席車両からあふれ、通路やデッキにすし詰めになっている」などの声もあがっている。
このような殺伐とした投稿を目にするたび、「実際のルールはどうなっているのか」と疑問を抱く人も多いはずだ。一体何が正しいのか。
■「1人で2席確保」はルール違反
混雑した自由席車両で最も乗客のストレスを煽るのが「荷物ブロック」、つまり、空いている隣の席に荷物を置く行為だ。なかには「誰も座らせない」という異様な雰囲気を醸し出す人も、いるとか、いないとか。
JRの見解はどうか。
「まず前提として、自由席特急券は座席の利用を条件とせずに発売しているもので、特定の座席に着席できる権利を、必ずしも有しているわけではありません。その上で、お客様同士でお互いに配慮しながらご利用いただきたいです。1人でも多くの人が座れるように、空いている座席に荷物を置かず、膝の上や荷棚、足元に置いていただくよう呼びかけています」
やはり「荷物ブロック」は、混雑した今の時期には罪深い行為である。では、自由席券を2枚買えば、自分用と荷物用で2席使ってもいいのか。これについて同社は「ダメです」という旨、極めてシンプルな回答をしてくれた。
「1人が2枚の特急券を買うことはルール違反となります。できる限り多くのお客様に等しく利用機会を提供するため、1人に対して特急券は1枚のみの使用とするルールが、JR各社共通の『運送約款』に定められています。自由席券に限らず、指定席券でも同様にNGです」
つまり、「お金を払って切符を2枚買うから2席使わせろ」という主張は、ルール違反となるようだ。
■自由席「譲る・譲らない論争」は一部だけ?
一方で、最近SNSで議論を呼んだのが「自由席で『子どもや年配者に席を譲れ』と圧力をかけられる」という内容だ。自由席は、早くからホームに並んだ順(先着順)で着席するのが原則だ。確実に座りたいなら、最初から指定席を取れば安心ではないかと筆者は思うのだが。

こうした「譲る・譲らない」をめぐるトラブルは新幹線で頻発しているのか。JRからは意外な反応が返ってきた。
「サービス相談室に対して『席を譲れと言われて困った』ないし『自由席を譲ってくれなかった』というような声は、目立って多いわけではありません」
SNSのタイムライン上では殺伐としたエピソードが拡散されがちだが、一部の極端な事例がSNS上で増殖し、乗客同士に不必要な猜疑心を生み出している側面がうかがえるのではないか。
■「全席指定席のぞみ」は自由席券で乗れる
お盆や年末年始、3連休といった繁忙期には、東海道新幹線「のぞみ」が全席指定席、つまり自由席なしで運行される期間がある。これは駅ホームや車内の危険な混雑を減らし、乗客がスムーズに乗れるようにする狙いがある。
ここで気になるのが、「間違えて自由席券で乗ってしまった場合、どうなるのか」という疑問である。結論から言うと、「自由席券で乗ってもOK」らしい。
「のぞみが全席指定席の列車であっても、自由席特急券をお持ちのお客様が普通車のデッキや客室内通路に立ってご利用いただくことは、ルール上全く問題ありません。むしろ『混雑防止のため、デッキに固まらず客室内の通路へお進みください』とアナウンスしているほどです」という。
つまり座席には座れないものの、自由席券があれば乗っても問題ないということである。デッキにとどまる必要もなく、むしろ混雑時には客室に入って立つことが案内されている。
■「立ち乗り」を避けるならグリーン車へ
このルールは、指定席を利用する人にも周知されるべきだろう。
「指定席車両なのに、自由席券のやつが来やがった」と無駄なイラつきを抑えることができる。仮に、自分の席の横に人が立っていても、文句を言うことはできないのだ。
ただし、グリーン車に関しては、デッキも含めて立ち入り不可だ。自分の横で立ち乗りしてほしくないなら、グリーン車の座席を買うべきとも言える。
かつて繁忙期の自由席といえば、1~3号車付近のデッキだけが乗車率200%超のすし詰め状態という、地獄絵図のイメージもあった。しかし「全席指定席」が浸透したことで、自由席券の乗客が「どの号車に乗っても条件は同じだ」と気づき、全16車両(グリーン車を除く)へと上手に分散するようになったという。
全席指定とすることで、特定の車両だけがパンクすることは減少し、車内全体の安全性が向上しているのだ。
■土曜日の午前中より早朝か夜遅め
混雑がピークに達すると、車内トラブルはどうしても起きやすくなる。こうした混雑にも、都度JR東海は対策を練っている。東海道新幹線では、ピーク時に1時間あたり最大13本の「のぞみ」を走らせる運用を確立。「列車本数を増やすことで、1人でも多くのお客様に座席を提供できるよう努力しています」と語る。
一方で、私たち乗客が上手に混雑を回避する方法はあるか。
同社に聞けば、最も効果的な方法は、「乗るタイミングをずらすこと」だという。
「土曜日の午前中など人気の時間帯は混雑しますが、早朝や夜遅めの時間帯、あるいは日程を少しずらしていただければ、ゆとりを持って座席を確保できるケースは多々あります」とのこと。
JR東海は、日ごと・時間帯ごとの指定席予約状況を「○・△・×」で把握できる一覧表(図表2)を公開している。
お盆や連休などの混雑期こそ、こうした事前の「空席チェック」と「早めの予約」で、スマートに混雑を回避するのが賢明な選択と言えそうだ。

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東 香名子(あずま・かなこ)

コラムニスト

鉄道コラムニスト。鉄道トレンド総研所長。メディアコンサルタント。外資系企業、編集プロダクション、女性サイト編集長を経て現在フリー。メディア出演多数。著書に『超タイトル大全 文章のポイントを短く、わかりやすく伝える「要約力」が身につく』ほか。

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(コラムニスト 東 香名子)
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