※本稿は、西岡壱誠『子どもの地頭が育つ後悔しない子育て』(総合法令)の一部を再編集したものです。
■複数の集中できる場を用意する親の役割
子どもの学力を伸ばすために必要なものは、なんだと思いますか?
こう聞かれると、「教材」「やる気」「時間」など、さまざまな要素を思い浮かべるかもしれません。しかし、意外と見落とされやすいのが“環境”です。
とりわけ、家のなかでどこに座り、どのように学習するかといった環境設計が、子どもの集中力や学習習慣に大きな影響を与えます。
子どものために準備してあげたいのは、座った瞬間に勉強を意識するしっかりとした勉強机です。簡易的な机ではなく、中学生や高校生になっても長く使えるサイズと機能を備えた机を選んでください。
子どもにとって、「この机に座ると勉強モードにきり替わる場所」があると、集中力のスイッチが入りやすくなります。逆に、リビングの端などで毎回場所を変えながら勉強をしていると、集中力を発揮するまでの助走にエネルギーを使ってしまいます。
■「家=勉強の場所」と決めつけない
とはいえ、家で勉強するのが苦手なタイプの子も一定数います。
これは性格や集中のリズムの違いであり、怠けているわけではありません。最近はスマートフォンやタブレット、ゲーム機などの誘惑が多くあり、リビングでも自室でも、こうした誘惑に気を取られて、すぐに集中がきれてしまう子も珍しくありません。
そんな場合は、「無理に家でやらせよう」とせず、“家以外”で勉強できる環境を一緒に探すことです。
大切なのは、「家=勉強の場所」と決めつけないこと。
場所にかかわらず深く集中できる子になってほしいと願うなら、いろいろな場所で集中する練習をさせてあげましょう。朝は自宅の机で短時間、放課後は図書館、土曜の午後はカフェで集中タイムなどといったように“学習拠点を複数もつ”ことで、場所と目的をきり替える習慣が身についていきます。学ぶ場所の多様性が、どんな環境でも集中できる力を育てるのです。
■“学びの感度”を上げるキッチン
親子で過ごす何気ない日常のなかには、最高の学びのチャンスが隠れています。
なかでもおすすめしたいのが、キッチンで一緒に料理をすることです。料理と聞くと、「家事の手伝い」「家庭科の範囲」だと思いやすいですが、実は科学、算数、国語、地理、経済など、あらゆる教科が詰まっている学びの宝庫といえます。
料理には、「計る・混ぜる・加熱する・変化を見る」といった動作が含まれています。これらは、理科(特に化学)の基礎そのものです。砂糖と塩の溶け方の違い、小麦粉とベーキングパウダーの反応、油と水が分離する理由、火を通すことで固体や液体が姿を変える現象などを実際に体験することで、子どもは「なぜ?」という感覚を育てていきます。
計量や分量を扱う過程では、算数の基礎も身につきます。グラムやミリリットルの換算、割合や比の計算など、レシピ通りに量る“数字を意識する力”が育ちます。
■レシピを読むことで国語の読解力向上
また、レシピを読む行為は、国語の読解力を鍛える練習になります。材料の順番を守らなければ失敗する、手順を飛ばせば仕上がりが変わる、分量や単位を正確に読み取らなければ思うように完成しないといった料理の過程で「読む・理解する・行動する」という“読解力を結果に直結させる”ことを学べます。
ほかにも料理に使う食材には、社会科の知識がたっぷり詰まっています。「これは北海道産なんだ」「このチョコはガーナのカカオ豆から」「小麦粉はアメリカからの輸入なんだね」と親が少しだけ雑学を添えるだけで、子どもは「料理と世界はつながっている」のだと感じられます。食材の背景や原産地を知るだけで、地理や経済、歴史への興味が広がり、日常のなかで“学びのアンテナ”が立つようになります。
さらに学びを広げるなら、食材の買い出しも一緒に行ってみてください。
スーパーでの値札を見比べながら、「どっちのほうが100gあたり安い?」と話したり、原材料表記を読んで「これはどこの国から来たんだろう?」と質問をしたりすることで、算数や国語、地理、社会の仕組みを考える入口になります。買い物自体を“クイズ化”することで、子どもの好奇心が育っていきます。
■顔を見て伝えると親子の“信頼を生む”
子どもに対する愛情と期待から、多くの親はもっと上を目指してほしいと考えます。
進路について話すときは、目指すべき理由ではなく、“目指せる理由を伝える”ことです。「あなたは地頭がいいから、これもできると思う」「人の話を丁寧に聞ける力があるから、こういう学部にも向いているかも」といった具体的な可能性の言葉は、子どもに「自分は自分で感じているよりも、自分に期待してもいいのかもしれない」と将来を前向きに考えるきっかけになります。
■LINEで「ごはんできたよ」はダメ
一方で絶対に避けたい伝え方は、「私の子なんだから行けるでしょう」といったDNA型の期待です。親の実績や固定観念で子どもを判断する言葉は、努力よりも義務を押しつけられている感覚になってしまいます。
さらに、直接子どもの顔を見て伝えることを意識してください。
現代はLINEやチャットなどの便利なツールでコミュニケーションが簡単に済んでしまう時代です。たとえば、「ごはんできたよ」とメッセージを送るだけで済ませたり、進路や学校での相談もチャットで済ませてしまったりする。大事な話もすれ違いで顔を合わせずに済ませることが増えている家庭が多いのです。こうした習慣が続くと子どもは、必要な情報だけをやりとりする存在だと感じてしまうかもしれません。
このような時代だからこそ、顔を見合わせて話すことに価値があります。
特に思春期の子どもは、言葉にできないモヤモヤを抱えていることも多く、食卓での「元気ないけど大丈夫?」「今日、学校どうだった?」といった何気ないひとことが、想像以上に心を動かします。
忙しい共働き家庭では、朝ごはんや夜ごはんの時間を意識的に確保し、必ず顔を合わせて会話する習慣をもつこと。全部の食事を一緒に取るのが難しくても、「おはよう」「いってらっしゃい」「おかえり」「今日どうだった?」と顔を見て話す時間を意識してもつようにしましょう。
■さりげなく「時間を管理している」
東大生の家庭に共通している習慣の一つに、「時間が管理されている」という特徴があります。時間が管理されているとはいっても、分刻みのスケジュールで行動が縛られているわけではありません。
むしろ、「やるべきこと」や「決めるべきこと」をきちんと設定しているため、自由時間とのメリハリが生まれます。
特に顕著なのが、食事の時間とお風呂の時間が一定であることです。
たとえば、夕食は19時、入浴は21時と日常生活の時間が決まっていれば、子どもは「その合間で、なにをするか」「決められた時間内で、なにができるか」を考えるようになります。つまり、このような家庭では子ども自身が“自分の一日の使い方”を意識する思考習慣が身についていきます。
一方、夕食の時間が毎日バラバラ、入浴時間も気まぐれな家庭では、子どもが「今日は何時から勉強するのか」と毎日考え直さなければならず、それだけでエネルギーを消耗してしまいます。
■親の時間感覚を子供はマネる
この時間の意識は、子どもだけの問題ではありません。
親自身がどう時間を使っているかが、子どもの時間感覚を育てます。親が、「気づいたらスマホを30分見ていた」「なんとなくテレビを流していた」といった日常を送っていると、子どもも無意識にそのリズムをマネします。親が時間を意識していないのに、子どもだけに「時間を守りなさい」と言っても説得力がありません。
多くの東大生の家庭では、「夕食を準備する時間」や「テレビを見るのは一日何分まで」など、親側にも時間の枠が設定されているケースが多く見られます。親が時間を意識している姿勢を見せることで、子どもも同じように時間を意識できるのです。
東大式時間術でおすすめしたいのが、子どもに時間制限を設けて考えさせること。
「10分だけ自由に発想して、それから話そうか?」
「7時30分から8時までの30分間で、わかるところまで進めようか?」
こうした“時間内で考える習慣”があると、子どもは「どうすれば早く、自分なりの正解にたどり着けるか」といった思考回路を発達させていきます。これは入試や社会人生活に直結するタイムマネジメント力の基礎になります。
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西岡 壱誠(にしおか・いっせい)
カルペ・ディエム代表
1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すものの、2年連続で不合格に。二浪中に開発した独自の勉強術を駆使して東大合格を果たす。
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(カルペ・ディエム代表 西岡 壱誠)

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