オンライン上の民意には、どのような傾向があるか。『フィードの中の民主主義 SNS時代の世論と情報の届き方』(朝日新書)を出した立命館大学准教授の谷原つかささんは「政治系コンテンツの人気動画が“台風の目”になって、政治コミュニケーションの活性化がオンライン上に見られる」という――。

■「ネットは怖いところ」なのか
本稿では、人々のオンライン空間に対する認識を見ていきましょう。これもネット一般で質問設計をしても精度が低いので、X、YouTube、TikTokと分けて質問をしました。
結果は図表1をご覧ください。それぞれの項目について、「どちらかといえばそう思う」「ややそう思う」「そう思う」を回答した人の割合です。
「有意義な情報・事実が発信されていると思う」「有意義な議論・論評がなされていると思う」に同意した人の割合は全体的に低く、「攻撃的な意見や偏った意見が多い」「真偽が不確かな情報が多い」に同意した人の割合は高くなっています。
国際大学の山口真一氏が2014年に調査した際には、約70%の人が「インターネットは怖いところだ」に同意を示しました(*1)。図表1を見る限り、2025年現在でも約半数の人がSNSは攻撃的な意見が多いと思っているようです。
*1 山口真一(2015)「ネット炎上の実態と政策的対応の考察:実証分析から見る社会的影響と名誉毀損罪・制限的本人確認制度・インターネットリテラシー教育の在り方」『情報通信政策レビュー』,6,52-74.
■ネット“ヘビーユーザ”であれど妄信せず
もう少し細かく見ていきましょう。図表2~4は、SNSまたはネットメディアのいずれかの利用時間が上位25%の人とそれ以外の人で、それぞれのプラットフォームに対する認識に差があるかを比較したものです。X軸はその項目に対する同意スコア、「*」が付いていれば統計的に有意な差があることを示します。
プラットフォームによって多少差はありますが、やはり平均的にヘビーユーザのほうが「有意義な情報が得られる」「有意義な議論がなされている」への同意スコアが高いことが見て取れます(ただし差はわずかです)。
注目すべきは、「攻撃的な意見が多い」「真偽不明情報が多い」についても、ヘビーユーザもライトユーザと同じかそれ以上に認識しているということです。

こうしたデータからは、ネットを妄信しているヘビーユーザというよりは、玉石混淆であるということを認識しているといったほうが正確でしょう。
■XやYouTube「コメント投稿者」の頻度
本書『フィードの中の民主主義 SNS時代の世論と情報の届き方』で前述の通り、動画プラットフォームにおいては、コメント欄も大きな力を持ちます。
そこで本節では、XやYouTubeにコメントしている人の特徴を少し紹介します。
過去6カ月程度を鑑(かんが)みて、政治的・社会的な出来事についてオンライン上に投稿(Xへの投稿やYouTube動画へのコメント等)をした回数について最も近い選択肢を1つお選びください。

この質問に対して、9段階で回答してもらいました。この結果を図表5に示します。
ほとんどの人が「全くしていない」を選択しており、コメントをしたことがある人も、ほとんどの人が「月に1回以下」「月に2~3回程度」です。
回答のうち「月に2~3回程度」以上を回答した人を「定期的にコメントしている人」と定義し、それがどういった人たちか分析してみましょう。
本節の焦点は政治系動画の視聴ですので、政治系動画の視聴との関係を調べてみましょう。本書で紹介した日本で人気の政治経済・ビジネス系のチャンネルとの視聴の関係です。
■若年層4人に1人が見たことがあるチャンネル
まずはそもそもこれらを視聴している人はどれくらいいるのでしょうか。
以下に、各チャンネルを「少しでも見たことがある」以上を選択した人の割合を可視化します(図表6)。

ひろゆき氏の動画は、若年層の約4人に1人が見たことがあるようです。他のチャンネルも概ね10%を超えており、若年層の約10人に1人が見たことがあると回答しています。また、少なくともいずれかのチャンネルを少しでも見たことがある人の割合は約35%にのぼります。
もはやこれらのメディアは、マスにリーチしていると言っても過言ではありません。逆に考えると、最近のテレビ番組で、4人に1人が見たことがある番組などあるでしょうか。確実にメディアシフトが起こっています。
■政治系コンテンツが“台風の目”
コメント投稿との関係では、いずれかのチャンネルを見たことがある人のグループでは、約19.9%の人が「定期的にコメントしている人」に該当しました。これは、「定期的にコメントしている人」の約70%に該当します。
なお見たことがない人のグループでは、「定期的にコメントしている人」の割合は4.6%にとどまります(図表7)。
つまりこういうことが言えそうです。
近年急速に台頭している政治経済・ビジネス系有名チャンネルは、若年層ネットユーザの4人に1人以上が少なくとも見たことはある。そのうち5人に1人は定期的に政治的・社会的なコメントをオンライン上でしている。

これは、「定期的にコメントしている人」全体の約7割に該当する。政治系コンテンツが台風の目になって、オンライン上の政治コミュニケーションが活性化していることがうかがえます。
■2025年参院選挙での動向
続いて、2025年参院選挙期間中の動向についても数字の確認を行って、上記の知見が頑健かどうか確認を行いたいと思います。
参院選の選挙期間中、「2週間に1回程度」以上コメントした人の割合はサンプル1500名中約9.3%でした。そのうち約61.2%以上の人が、有名チャンネルのうちいずれかを選挙期間中に少しでも見たと回答しました。
逆側から見ると、有名チャンネルのうちいずれかを選挙期間中に少しでも見たと回答した人のうち、オンライン上にコメントした人は約24.9%で、見ていない人のグループではコメント経験がある人の割合は約4.7%でした。
やはり政治系コンテンツをめぐって政治コミュニケーションが活性化しているようです。

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谷原 つかさ(たにはら・つかさ)

立命館大学産業社会学部准教授

1986年生まれ。立命館大学産業社会学部准教授。国際大学GLOCOM客員研究員。大学卒業後中央官庁勤務を経て、2022年慶應義塾大学大学院より博士号(社会学)を取得。計算社会科学会大会優秀賞、社会情報学会論文奨励賞など、学会賞の受賞多数。
メディア等にも多数寄稿・出演。著書に『「ネット世論」の社会学 データ分析が解き明かす「偏り」の正体』(NHK出版新書)など。

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(立命館大学産業社会学部准教授 谷原 つかさ)
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