仕事や勉強で目標を立てても、つい先延ばしにしたり、途中で諦めたりしてしまう。どうすれば行動を続けられるのか。
アメリカの人気ポッドキャスター、パット・フリンさんの著書から、目標を達成するための方法を紹介する――。
※本稿は、パット・フリン (原著)、鈴木ファストアーベント理恵 (翻訳)『リーン・ラーニング 「ものにする」人が自然とやっている 最小のインプットで最大の成果を得る学習法』(翔泳社)の一部を再編集したものです。
■困難な状況に身を置くと、速く学べる
私たちは誰しも、けっして望んだわけではないのにそうするよりほかなく、大急ぎで学ぶことを迫られるような、大きなプレッシャーのかかる状況に直面したことがあるのではないだろうか。重要な試験に向けて寸暇を惜しんで勉強しなければならない、仕事上の厳しい締め切りと闘わなければならない、もしくは解雇されて人生の立て直しを図らねばならない、等々。私たちは皆、コンフォートゾーンから抜け出し、短期間のうちにものごとを解決しなければならない状況を経験したことがある。
これまでの人生でのこういった場面を振り返ってみると、大体において問題が起きてから対応していたことがわかる。重圧のかかる状況をあえて選んだというよりも、むしろ新たに取り組んだことや、やむを得ず取り組んでいたことに付随するようにして、そのような状況が向こうからやってくるのだ。これらの困難な状況のおかげで、確かに私は自らを鍛え、成長することができた。だが同時に、次のような疑問が湧いてきた。
「もしかしたら、意図的にプレッシャーの高い状況に身を置くことで、新しいことをより迅速に学ぶことができるのでは?」
私はこれを「自発的強制機能」と呼び、実践を続けている。あえて自分を困難な状況、言い換えればステップアップを迫られるような状況に追いやることで、自分との約束を果たし、目標を達成する可能性を高めることができる。環境を選択することで、学習と成長のスピードを加速させるのだ。

■×つらさに耐える、○逃げ道をなくす
ただし、成長と学習を目的としてプレッシャーの高い状況にあえて自分を置くことと、バーンアウト(燃え尽き)や精神が崩壊する寸前まで自分を追いやることのあいだには、微妙なバランスが存在するので、ここは細心の注意が必要だ。
起業家として、またアドバイザーとして複数のスタートアップに関わる中で、自ら進んで困難な課題に挑戦した結果、心身の健康を損ねてしまった人たちを実際にこの目で見てきた。
理解してほしいのは、自発的強制機能は、仕事こそが自分の人生だと考え遮二無二働くことでも、成功のための通過儀礼だとばかりに幸福や安心を犠牲にして痛みに耐え抜くことでもない。そうではなく、このアプローチは、一定の時間をかけて、意識して自分のコンフォートゾーンを少しずつ広げていくことで、個人の成長と仕事上の成長を遂げていくためのものなのだ。
自発的強制機能は、行動を促すために意図的に強制力を働かせるよう設計される。条件を整えて、望ましい行動をほぼ不可避なものにする。環境やルーティンに構造的な変化をもたらし、継続的な成功を促進する役割を果たすので、長期的な習慣形成や、気がめいるタスクの先延ばしを克服するうえでとくに効果を発揮する。
■苦手なルアーに6時間向き合ったら“釣れた”
私は3歳で釣りを始め、これまで海釣り・川釣りを問わず、さまざまな方法で魚を釣ってきたが、唯一どうしても理解できない釣り餌があった。ジグである。疑似餌(ルアー)の一種で、おもりとフックからなり、通常、動きを与えるために先端にプラスチック製の細い紐の束がつけられている。魚が食いつくと、餌を模した刺激的な動きが伝わり、口にしっかりと針が引っかかるようになっている。ジグに引き寄せられるのは、たいてい大きめの魚だ。

つねづねジグを使った釣りを学びたいと思っていたのだが、まったく自信をもてなかった。何度か挑戦したものの、そのたびにクランクベイトやプラスチックワームといった、自信のあるルアーに逃げてしまうのだ。だがある日、釣りに行く準備をしていたときに、ふと自発的強制機能の実践を思い立ち、ジグ以外の疑似餌をすべて自宅に置いていくことにした。
その日、水上での6時間、ジグの使い方を学ぶほか私に選択肢はなかった。慣れ親しんだルアーに戻りたくても、ほかのことを試したくても、ないものはない。ジグの使い方を学ぶことを強いられたのだ。1日の終わりも近くなる頃、とうとう魚を釣りあげることができた。それだけでもう満足だった。これ以降、私はジグに自信をもてるようになり、「こんなことしていたって魚なんか釣れるものか」と独りごち、ネガティブループに陥ることもなくなった。
その後、ジグを使って、私の釣り人生でもっとも大きなラージマウスバス(オオクチバス)をいくつか釣りあげた。その中には、私の釣り歴最大のバスも含まれている。これこそが自発的強制機能の力なのである。

■目標を宣言すると、脳が“達成”を錯覚する
皆さんに1つ質問だ。目標は他人と共有する方が良いと思うか? それとも共有しない方が良いか? この後すぐに科学に基づいた答えを紹介するが、きっと驚くはずだ。
たとえばソーシャルメディアなどで自分の目標や計画を表明すると、説明責任を果たさなくてはならなくなるので、これも自発的強制機能として作用するのではないかと多くの人は単純に考える。ところが研究によると、このアプローチは逆の効果を招く可能性もあるのだ。
ニューヨーク大学の心理学者、ピーター・ゴルヴィツァー教授が中心となって行った2009年の調査において、他者と目標を共有した実験参加者は、「自分が目標の達成に近づいたように感じる」と報告したことが明らかになった。実際にはなんの進捗もないのにだ。目標を共有する行為そのものが早計な達成感をもたらし、その結果、実際に目標を達成するために必要な努力を続けるモチベーションを低下させたのである。
ゴルヴィツァー教授と彼の研究チームは、誰かに目標をシェアすると、認識してもらえたこと自体が報酬となり、努力を怠る原因になり得ると結論づけている。言い方を変えると、他人に「この人、目標を達成しそう」と見られることの満足感のおかげで、脳が「すでに達成した」と錯覚する可能性がある。これにより、目標達成へのプレッシャーが軽減され(なぜなら、あなたの頭の中ではすでに達成したことになっているから)、結果として歩みが止まってしまうというわけだ。
■上司や先輩と共有するといい
したがって、目標を共有する場合はうまく行う必要がある。より最近の、オハイオ州立大学での2019年の研究で、適切な目標共有の方法が示唆されている。
一連の実験を通して、人々は「より高いステータスにある」と認識している相手や、尊敬している相手と目標を共有すると、目標達成へのコミットメントが高まる傾向にあることを同大の研究者たちが発見したのだ。
実験の例を1つ挙げると、目指す目標を博士課程の院生と共有した学部生は、その目標を達成する可能性がより高かったのに対して、2年制のコミュニティ・カレッジ(注:短期大学にあたる)の学生だと思われる相手と目標を共有した学生は成績が振るわなかった。同様に、自分よりも高いステータスにある人物に自身の野心的な成績目標を共有した学生は、学期末になっても目標とする成績に向けてより努力している傾向が確認された。
論文の筆頭著者であるハワード・クラインによると、成功の鍵は、上司や先輩など自分より「上」の人と目標を共有することだという。説明責任を果たさなければならないから、という理由だけではない。自分がどのように見られるか、その人からの評価が気になるからこそモチベーションがより高まるのだ。社会的承認を自分の利益になるように活用していると言え、これもまた自発的強制機能の1つの形である。
■大事なのは「どのようにやるか」「誰とやるか」
まとめると、ソーシャルメディアで目標を共有することはもっとも効果的な戦略ではない可能性が高い一方で、自分が高く評価しているあるいは尊敬している人物を選んだうえで目標を開示することは、適切な動機づけと責任感につながり、目標達成へ向けた努力を継続するうえで役立つと考えられる。これはまさにメンターにうってつけの役割だ。あなたが所属するコミュニティのサポーターにも適任者がいるかもしれない。
目標を適切な人と共有すると、望ましい結果を得られる可能性が高まる。人生の多くのことと同様、大事なのは「やるかやらないか」ではなく「どのようにやるか」、そして「誰とやるか」なのだ。


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パット・フリン
起業家、著述家

サンディエゴ在住。多様な事業ポートフォリオに加え、受賞歴のあるポッドキャスト、ニュースレター、YouTubeチャンネル、活発なオンラインコミュニティを通して、毎月数百万人のオーディエンスにリーチし、インスピレーションを与えている。デジタル・アントレプレナー向けのオンラインコミュニティ「SPI」の創設者であり、YouTuberなどに人気のミニ三脚兼自撮り棒「スイッチポッド(SwitchPod)」の共同発明者。ポケモンカードのコレクターコミュニティ向けの大型ライブイベント「カード・パーティ(Card Party)」の創設者でもあり、YouTubeチャンネル「ディープ・ポケットモンスター(Deep Pocket Monster)」ではホスト役を務める。

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(起業家、著述家 パット・フリン)
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