※本稿は、清水忍『一流を支えるトレーナーの 最強の教え方』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
■「話の進め方」で相手の理解度は変わる
相手に理解してもらうためには、実際にどうやって話すかが重要になってきます。それが、「話の進め方」あるいは「話し方」という部分です。
これ次第で、相手の理解にはとても大きな差が生じてきます。話の進め方と話し方を考える上で注意すべき点は、次の5つの項目です。
①相手の予備知識を確認する
②相手の状況や理解度に応じた話をする
③副詞と形容詞を多用しない
④自分の声の大きさ、テンポ、速さ、聞き取りやすさに気をつける
⑤自分の言い間違いの確認と言い換え
では、それぞれの項目をくわしく見てみましょう。
【①相手の予備知識を確認する】
話す側にとって「当然わかるだろう」と思って省いた情報ほど、聞く側にとっては重要なことかもしれません。たとえば、私がいきなり「先日、授業中に居眠りしている人がいて……」と切り出せば、知人であれば私が「講師」として講義をしている場面だと想像するでしょう。
■遠慮して質問できない可能性を疑う
しかし、もし私が講義を受ける「学生」の立場として、隣の席で居眠りしている人の話をしていたのだとしたら、聞いている途中で「あれ、おかしいな」と混乱が生じます。このとき、「私は学生として学校に通っているのですが」と最初に一言添えるだけで、この間違いは防げるのです。重要な情報をどれだけ事前に提供しておくかは、相手の混乱を避けるために必要なのです。
相手がどれくらいの知識を持っているかで話の内容や進め方を変える必要がありますが、特に注意が必要なのが専門用語です。聞く側は、知らない言葉を言われても話を遮ってまで「それはどういう意味ですか?」とはなかなか言えないものです。ある新人プロ野球の投手が、専門家から投球分析の結果を聞いていたときのことです。
「あなたの球は縦変化の成分よりも横変化の成分が大きいです。どうしてもこの腕の角度で投げるとマグヌス効果が縦方向に得にくいので、変化球の主体は横スライダー系で……」
選手の顔をチラチラ見ると、明らかに理解できていません。そこで私は専門家の説明を遮り、選手に聞きました。
■専門用語は言い換え・補足をすると親切
「ちょっとすみません、ねえ、マグヌス効果って何だかわかる?」すると「……わかりません」という回答。
もしこのまま話を聞き続けていたら、専門家の言っていることの半分も理解できないまま、お互いに「伝えたつもり・聞いたつもり」の悲しい時間を過ごすことになったでしょう。指導者は発言する際にはこの部分の注意が必要です。
相手の理解度を確認しながら、できるだけ相手の理解できる言葉を使い、専門用語が出てしまったと気づいたなら、即座に一般的な言葉に言い換えるか、あるいはその意味を説明すべきです。
【②相手の状況や理解度に応じた話をする】
質問に答える際も、相手の知識不足をこちらが補う必要があります。以前、電話でこんなやり取りがありました。
■相手自身も問題点を把握していないと…
質問:「足っていうのは足首のことですか?」
回答:「いいえ、膝です」
質問:「痛いのは膝のどの辺ですか?」
回答:「膝小僧の内側です」
質問:「膝小僧の内側とは、どのあたりのことを言っていますか?」
回答:「膝の皿の奥の方です」
質問:「表面ではなく関節の中ということですか?」
回答:「はい、そうです」
質問:「足を伸ばしたっていうのは、実際には何をしたのでしょうか?」
回答:「ダンスでハイキックをしました」
質問:「ハイキックをしたときに膝の奥の方からピキッという音がしたということですか?」
回答:「はい、そうです」
質問:「今、この瞬間も痛いですか?」
回答:「普通にしていれば痛くないですが、ダンスすると痛いです」
質問:「対応として何かやっていますか?」
回答:「膝を伸ばしてます」
質問:「膝を伸ばすというのは、どんな動作ですか?」
回答:「前屈をやってます」
みなさんもお気づきになりましたでしょうか、本人が最初にした質問からは「足首をひねったので何か良いストレッチを教えてください」という内容にも受け取れますが、実際はかなり違いました。
ここまで質問をして整理して初めて、「勢いよく膝を伸ばしたことで痛みが発生したが、現在は間違った対処をしている」という実態が判明し、ようやく適切なアドバイスができました。相手は「知識不足のために質問が不十分であること」すらわかっていないのです。
■「あんまり」「たくさん」って何回?
質問を受ける側は、相手が知識不足であるということを考慮に入れた上で質問を整理し、誘導してあげる必要があるということです。また、相手が求めている回答の「レベル」を汲くみ取ることも大切です。
小学生がプロ選手に「どうしたらそんなにすごくなれるのですか?」と聞いたとき、選手が「周りの人に感謝することが大切です」と答えても、子どもの期待とはズレている回答かもしれません。「ご飯をいっぱい食べて、一生懸命練習することだよ」と、相手の理解を超えない範囲で答えるのが有効なケースも多いのです。
ちなみに、菊池雄星投手がアナウンサーから「どうやったらそんなに速い球を投げられるのですか?」と問われ、一言「スクワットで鍛えることです」と回答したのは、その場の雰囲気を捉えた痛快な回答でした。
【③副詞と形容詞を多用しない】
ある日、指導者とスポーツ選手の間に、こんな会話がありました。
選手:「すみません、白米は週に何回くらい食べてもいいですか?」
指導者:「うーん、あんまり食べない方がいいですね」
選手:「週に1回くらいならいいですか?」
指導者:「うーん、あんまり食べないでね」
この「あんまり」の基準は、両者で食い違っている可能性があります。
■曖昧な副詞・形容詞は解釈が変わる
指導者の言う「たくさん」の基準値が違っただけなのです。こういった食い違いの理由はただ一つです。解釈を相手に委ねる言葉を使ってしまっているからです。「たくさん」とか「もっと」などの副詞や、「柔らかい」とか「大きい」などの形容詞は解釈の違いが生じます。
だからこそ、教えるときは「天井に触るくらいジャンプして」とか、「2日以上間隔をあけないで」と、具体的な目標物や数値を明確に示すことで、解釈の不一致を排除することが大切です。
「曖昧な指示」の例にトイレ掃除の逸話があります。
ある日、上司が部下に「トイレ掃除をしておくように」と指示したものの、後から上司がトイレをチェックしていたら全然綺麗になっていなかったというのです。「どうしてトイレ掃除をしなかったんだ」と叱ったところ、部下は「しました」と言い、同僚も「確かにあいつ、トイレ掃除をしていましたよ」と言います。
確かによく見ると便器はピカピカに磨いてありました。
■大事な内容はスピードを落として伝える
【④自分の声の大きさ、テンポ、速さ、聞き取りやすさに気をつける】
教える状況では、何よりもまず言葉が届くことが最優先です。自分の言葉が届いているかどうかを確認するには、対面なら相手の様子を見ましょう。耳を近づける仕草をすれば声が小さすぎますし、後退(あとずさ)りすれば大きすぎます。自分が心地よい音量ではなく、相手が心地よい音量を感じ取るのです。
また、お笑い芸人さんは早口ですが、以下のテクニックで記憶に残る話をしています。
1.話の「核」でない部分はサラッと早口で話して、展開を重視している
2.話の「核」に近づくとスピードを遅くして、相手に話の変化を気づかせている
3.話の「核」では音量を変えてしっかりと言葉を聞かせようとしている
4.相手が「核」の余韻を頭で整理、理解できる「間」を作ってから次の話に入る
5.話が次に展開したらまた早口に戻ることで、次の話になったと認識させている
これでご理解いただきたいのは、早口がダメということではなく、相手に伝わるにはスピードのコントロールが必要だということです。なんでもかんでも早口になってしまう人は、話の重要な部分になったら「相手がメモを取れるくらいの速さ」を意識するだけで、格段に聞き取りやすいスピードになります。
■言い間違いを防ぐには「2度繰り返す」
逆になんでもかんでもゆっくりになってしまう人は、相手を退屈させないよう「端的」に話すことが重要です。
読まされている学生に「わかってほしい」「伝えたい」という思いがないため、棒読みとなり、抑揚がなく、聞いていても頭に入ってこないからです。大切なのは「伝わる」ことなのです。
【⑤自分の言い間違いの確認と言い換え】
人は必ず言い間違えます。口頭で図形を描かせるワークでも、「正三角形」を「正方形」と言い間違えて混乱する場面をよく見かけます。改善法は簡単、「2回言う」ことです。
「まず、1辺が5㎝の正三角形を描いてください。1辺5cmの正三角形です」
「次に、その正三角形の右下の角です、右下の角に接している正方形を描きます」
さらに、最後の一文で「正方形の左上です、左上に正三角形が触っていますか?」と、同じことを「逆方向」から説明し直してみてください。逆から話すことで自分の言い間違いに気づけるだけでなく、相手も自分の理解が正しいかを確認できます。
この「逆方向からの確認」を節々に取り入れると、理解がより深まるようになります。
----------
清水 忍(しみず・しのぶ)
フィジカルトレーナー
1967年、群馬県出身。
----------
(フィジカルトレーナー 清水 忍)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
