投資で大切なことは何か。『Your Money 101日後に人生が豊かになりすぎるシンプルなお金の法則』(訳・橘玲/アスコム)の著者でFPのカール・リチャーズ氏は「投資をするときに、お金のことだけを考えると失敗する。
人間にはお金以上に重要な資産があるからだ」という――。
■お金以上に重要な資本
投資を考えるとき、まずお金を思い浮かべる。ぼくたちはお金をもち、なにかに投資して、リターンを得たいと考える。
お金は、ぼくたちが見返りを期待して投資する「資本」のひとつにすぎない。ほかにも、エネルギー、時間、注意力という3つの資本がある。そして時には、それらをどう使うかのほうが、お金の投資以上に重要なことがある。
エネルギーは貴重で有限だ。無駄にするなと、ぼくたちはお互いにいい合う。本当に意味のあるリターンが得られるものに注ぐべきだと知っている。
ぼくはそれを痛感したことがある。ある土曜日の朝、何時間もロードバイクに乗ったあと、自宅に戻ってくると、息子が自分の自転車と一緒に待っていた。ぼくと乗りたかったのだ。

でもぼくはいった。「勘弁してよ。もうエネルギーがない」。そのときの息子のがっかりした表情と戸惑いは、いまでも忘れられない。どこにエネルギーを使うかを慎重に選ぶべきだと教えてくれる記憶だ。
時間もエネルギーと同様に有限だ。一度使えば二度と戻らない。あとで使うために貯めておくこともできない。時間への投資の仕方こそが、人生のあり方を形づくるのだ。
注意力(アテンション)は、現代の生活における通貨のようなものだ。ぼくたちはそれを支払っている――ならば、その投資方法についてもっと考えるべきではないだろうか?
■「調べすぎ」は損失
もっと衝動的に使うべきだ。
いまなら簡単にいえるが、何年も前は決して信じていなかった。

2ドルの買い物をするのに何時間も悩んでいた。レビューを読み、クーポンや割引を探し、わずかな節約に奔走していた。
ガソリン代は典型的な弱点だ。1セント未満まで表示された大きな看板が、脳になにかを呼び起こす。1ガロンあたり2セント節約するために20分も遠回りしたことがある。
あとで計算してみた。わざわざ20分も遠回りして節約した金額は……待って……たったの30セントだった!
これが罠だ。
もう一回だけ価格を確認しよう、もう一枚だけクーポンを探そう、もうひとつだけお得な情報を見つけよう……そうすればもっと安く買えるかもしれないと、ぼくたちは自分を納得させてしまう。でも、そのリサーチに費やすエネルギーや時間、注意力は、節約額をはるかに上回る。
■衝動的な支出の副産物
だから、日常の決断――5ドルのグラノーラを買うか7ドルのグラノーラを買うか、お気に入りの靴下を買うか安いほうを選ぶか、コンビニのコーヒーかこだわりの豆か――そんなときは脳の処理能力を無駄にせず、どちらか選んで次に進め。
そして、こうした支出をつづけると面白いことが起こる。自分にとって本当に大切なものがわかってくるのだ。

コーヒー代を節約するのが好きだと気づくかもしれない。あるいは高級靴下が一日の気分を良くすると気づくかもしれない。
こうした発見が、将来の選択をさらに容易にする。
まずは、悩むのをやめて、使いはじめることだ。
■安物を買う余裕はない
支出を減らしたいなら、まず支出を増やしてみよう。
直感に反するように聞こえるかもしれないが、安物を買う余裕はぼくたちにはない。
2000年代のはじめ、ぼくはあまりお金をもっていなかった。
スキーが大好きで、新しいスキーパンツが必要だった。選択肢は明確だった。1シーズンしかもたないかもしれない安物を買うか、6倍の値段だが高品質で長持ちするパンツに投資するか。
痛手ではあったが、ぼくは品質を選んだ。
20年経ったいまもそのスキーパンツは現役で、子どもたちが使っている。

当時は苦痛だったけど、これは圧倒的に安上がりな買い物だったと証明された。もし安物を選んでいたら、毎年買い替えることになり、結果的にずっと多くのお金を使っていただろう。さらに、スキーをするたびにそのことを後悔する精神的負担もあったはずだ。
これは強烈な教訓となった。ぼくはいまでも「安物を買う余裕」があるほど稼げていない。
■貯金より大事なこと
経験はお金よりも価値がある。
人生の終わりに、ぼくたちは愛するひとたちと過ごす時間よりも、仕事やお金を選んだことを後悔することになるだろう。
経験にお金を使うことは、贅沢に感じるかもしれない。
貯金しろといわれるのは承知しているが、愛するひとたちとの経験にお金を使うことを強く勧めたい。
いつか、君が貯めたお金は、忘れられない思い出の価値には到底及ばなくなるだろう。
■お金の使い方を「自分の価値観」と一致させよう
ある話をしよう。
ぼくの友人で、『It Starts with Food(すべては食からはじまる)』の著者でもあるダラス・ハートウィグは、重要な経済的な決断を下す必要に迫られていた。
ぼくは彼に明確な判断材料を提供するため、次に会うまでの30日間、支出を記録するよう提案した。
再会したとき、ダラスは自分が食費にいくら使っているかを知って、その金額に「恐怖を覚えた」と語った。
でもそれは皮肉なことだ。
彼は高価で良質な食材を使った美味しい食べ物について考え、その重要性をひとびとに伝えることにキャリアの大半を費やしてきたのだから。
一見過剰に見える支出が、実は彼の核心的価値観と一致していた。
この気づきは、彼の幸福感に大きな影響を与えた。ぼくもアウトドア用品や冒険体験に費やすお金の多さに、かなりイライラしたことを覚えている。でも皮肉なことに、ぼくにとってもっとも大切なのは、家族との時間、とくに屋外での時間だった。
お金の使い方は、ぼくたちの価値観を直接反映している。子どもたちとの冒険体験への支出は、ぼくの幸福感を高めていたのだ。
価値観とお金の使い方を一致させることは、時に不快感を伴う。それは経済的には不都合な選択と向き合うことを強いるからだ。
でもこの不快感から逃げるのではなく、必要な変化を起こす糧としよう。
道筋はこうだ――自分の価値観を明確にし、お金の使い方がそれに合致しているかを確認する。
一致度が高まるほど、幸福感もついてくる。

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カール・リチャーズ
認定ファイナンシャル・プランナー(CFP)

ニューヨーク・タイムズやモーニングスターに寄稿。著書に『The Behavior Gap』『The One-Page Financial Plan』がある。妻コーリーと4人の子どもとともにユタ州パークシティ在住。

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橘 玲(たちばな・あきら)

作家

1959年生まれ。早稲田大学卒業。2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年、「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部を超えるベストセラーに。05年の『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補に。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。著書に『「読まなくてもいい本」の読書案内』(ちくま文庫)、『テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想』(文春新書)、『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』(幻冬舎文庫)、『DD(どっちもどっち)論 「解決できない問題」には理由がある』(集英社)など多数。

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(認定ファイナンシャル・プランナー(CFP) カール・リチャーズ、作家 橘 玲)
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