秋は受験に向けて模試が続く時期。子どもの成績や判定が悪かったとき、親はどう声がけすればいいのか。
志學舎副塾長として受験生の親子に寄り添ってきた松澤保成さんは「高校受験でお母さんが心配のあまり強い言葉をかけ、子が勉強しなくなった家庭があったが、後日の声がけで子どもは再スタートを切れた」という――。
※本稿は、松澤保成『「自ら勉強する子」の親がしているたった1つのこと』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
■テストの結果が悪かった場合の声がけ
テストや模試の点数がふるわなかった日、親御さんは胸がざわつきませんか?
「なんで、できなかったの?」

「もっとやっておけばよかったのに……」

「このままで大丈夫なの?」
言いたくないのに、言ってしまう。
将来が心配だからこそ、つい言葉が強くなってしまうかもしれませんが、点数が悪かった日のひと言こそ、子どもと親の信頼関係を深めるチャンスなんです。
■模試で成績が下がった中学2年男子
ある中学2年生の男の子の話です。
模試の英語の点数が大きく下がり、塾に来たときにはうつむいたまま。
お母さんに結果を見せると、こう言われたそうです。
「最近ちゃんとやってた?」

「これじゃ受験、危ないよ」
悪気なんていっさいありません。心配だから言ってしまう。
多くの親御さんが同じ気持ちだと思います。
その夜、男の子は机に向かわずゲームをはじめました。
叱られたからではなく、失敗した自分にもう価値はないと感じてしまったからです。

■点数が悪い日こそ「ここからだよ」
後日、お母さんは塾の勉強会に来たとき、「どう声をかければいいかわからない」と涙をこぼしました。
私はこう伝えました。
「点数が悪い日こそ、『ここからだよ』が響きます」
その後、お母さんは、こんな言葉をかけたそうです。
「悔しかったよね。でも、大丈夫。ここからだよ」
その瞬間、男の子はふっと笑いました。
「俺、もうちょいやってみるわ」
この言葉が、その子の「再スタートボタン」になりました。
点数が悪い日、子どもの心のなかでは、すでに自分を責めています。
「なんでできなかったんだろう……」

「もう無理かも..……」

「また怒られる……」
そんなときに親から追い討ちの言葉がくると、子どもの心は閉じてしまいます。
逆に、寄り添う言葉が届くと、子どもは安心して立ち上がれるようになります。
■「失敗してもあなたの価値は変わらない」
失敗の直後は自分の価値の揺らぎが最大になるタイミングと言われています。
だからこそ、次のマインドが重要なのです。

・評価より安心

・指摘より寄り添い

・正論より温かさ
「これからだよ」という言葉は、「失敗してもあなたの価値は変わらない」「私は未来を見ているよ」という2つのメッセージを同時に運びます。
子どもは、その未来を信じてくれる人の存在で、また一歩進めるのです。
点数がふるわない日こそ、親御さんの言葉は強い力を持ちます。
「どうしてできなかったの?」ではなく、「ここからだよ」。
このひと言が、どれほど子どもの、心を救うか、私は何度も見てきました。
結果がよいときより、うまくいかないときこそ、親の言葉は子どもの未来の力になります。
■子どもは点数を自分と結びつけてしまう
テストの結果が悪かった日、いちばん傷ついているのは子ども自身です。
「どうしてできなかったんだろう……」

「自分ってダメなのかな……」

「また怒られる……」
子どもは点数を、自分の価値と結びつけがちです。
だからこそ、親がどんな言葉をかけるかが子どもの成長を左右します。
親御さんのひと言で、子どもの自己肯定感は上がりもすれば、崩れもするのです。
■「これでは志望校は厳しい」はNG
ある中学2年生の男の子の話です。
その子は模試の数学の点数が大きく下がり、帰宅後、プリントをぐしゃぐしゃに丸めて投げました。

お母さんは驚き、思わず言いました。
「どうしたの? ちゃんと勉強してたよね? この点数じゃ志望校、厳しいよ」
決して責めているつもりはなく、心配でたまらないからこその言葉。
でも、息子さんはこう言い返しました。
「どうせ俺なんか無理だよ! 期待しないで!」
その夜、部屋に入ったきり出てこなかったようです。
■親は心配だからこそ言ってしまう
後日、お母さんは塾の面談でポロポロ涙をこぼしました。
「私、そんなつもりで言ったんじゃなかったのに……」
私はこう伝えました。
「成績が下がって傷ついている日に最初伝えることは『価値は変わらないよ』ということです」
次の模試の日。
息子さんはまた成績が下がったプリントをお母さんに見せながら、落ち込んだ目をしていました。
お母さんは深呼吸をして、そっと彼の肩に手を置いて言いました。
「悔しいね。でもね、どんな点数でもあなたの価値は変わらないよ」
その瞬間、彼は静かに泣き出しました。
その夜、彼はひさしぶりに自分から机に向かいました。

自分は見放されていないとわかったからです。
■「成功したら認められる」と思う子は失敗に弱い
成績は「結果」。
価値は「存在」。
この2つは、本来まったく別のものなのに、子どもは簡単に結びつけてしまいます。
心理学に「条件づけの価値」という言葉があります。
「できたら価値がある」

「成功したら認められる」
この思考が強い子は、失敗に弱くなります。
逆に、価値と成績を切り離せる子は、失敗に立ち向かえます。
だからこそ、親の言葉が重要なのです。
■子のレジリエンスを引き出す
「勉強の結果」にかかわらず、「あなたの存在の価値」は変わらない。
このメッセージを受け取っている子は、成績が下がっても折れません。
むしろ伸びます。
心が折れにくい子どもは、努力に挑戦を重ねられるからです。

親御さんが伝えるべきメッセージは「できた、できない」ではありません。
本当に届けたいのは、「あなたは何があっても大切な存在だよ」
その言葉が、どんな教材よりも、どんな塾よりも、子どもの心を強くします。
成績が下がった日こそ、「価値は変わらないよ」と伝えられる親でいてください。
子どもはその言葉を、これからの人生のなかで何度も思い出します。
そして、また立ち上がります。
■中学受験はネット情報に振り回されがち
SNSやネットの掲示板では、「○○中に合格するには小4から塾は必須」「この参考書をやらなきや落ちる」など、情報があふれています。
掲示板の親御さんの声には、「うちの子、遅れてるかも」「もっとやらせなきゃ」とあせりも少なくありません。
そのあせりは、知らず知らずのうちに子どもに伝染します。
子どもの心をひらくためには、まず親が「どの声を聞くか」を選ぶことが大切です。
■受験直前期の間違った声がけ
小学校6年生のある男の子のお母さんは、受験直前期にSNSの受験情報のグループを毎晩チェックしていました。
「過去問7年分やってる子もいる」

「理科、社会を先に仕上げてる家庭が多い」
そんな投稿を見るたびに、不安がふくらみ、夜も眠れなくなったそうです。
不安なまま、つい子どもに言ってしまいます。

「ねえ、ほかの子、もっとやってるらしいよ」

「あなたもそろそろ本気出さないと」
その言葉に息子さんは反発しました。
「そうやって比べるの、もうやめてよ!」
保護者面談で、お母さんは泣きながら私に話してくれました。
「私が悪気なくあせっていたのが、子どもをいちばん追い詰めてたんですね」
■子ども本人の声をじっくり聞く
その後、お母さんはSNSの受験グループを抜け、代わりに子ども本人に聞く時間を

増やしました。
「今日の勉強、どうだった?」

「○○がんばったんだ、すごいね!」
そう話し、聞くようにしただけで息子さんの表情がやわらぎ、会話が戻ってきました。
不安に耳を傾けるのをやめ、目の前の子どもに耳を傾けた瞬間、家庭の空気が変わったのです。
■親が不安を手放すと、子どもは集中を取り戻す
SNSの情報は、「誰かの家庭の正解」であって、あなたの子の正解ではありません。
受験は比較の世界に見えて、じつは「個人戦」です。
あせりや不安をもたらす情報は、聞く力を奪ってしまいます。
SNSにおいて「受験あせり感染」が起きています。
親が落ち着きを失うと、子どもは安心を失います。
親が不安を手放すと、子どもは集中を取り戻します。
つまり、子どものやる気を育てる第一歩は、「どの情報を信じるか」ではなく「何に耳を傾けるか」を決めること。
情報より、表情を。
データより対話を。
その姿勢が、子どもの心を守る最良のフィルターです。
親御さんが情報を集めること自体は悪いことではありません。
けれども、情報を「聞く力」が、子どもへの「聞く姿勢」を弱めることがあるのです。
スマホを置いて、子どもの声に耳を傾けてみてください。

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松澤 保成(まつざわ・やすなり)

志學舎副塾長

東京都日野市生まれ。志學舎副塾長、志學舎グループ東進衛星予備校統括。また、学習指導と家庭支援の両面から親子の教育に携わる。指導歴は15年を超え、これまでに1000名以上の生徒を指導。開成、筑駒、早慶などの難関高校合格者を多数輩出。大学受験ではMARCH早慶国立以上1000件合格、東大現役合格20名以上。「親が変わることで、子どもが変わる」の信念のもとに、毎日100人の保護者や生徒に寄り添う。

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(志學舎副塾長 松澤 保成)
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