トレーディングカード人気を背景に、非公式のオリジナルパック(通称オリパ)に高額課金をする人が相次いでいる。ビジネスコンサルタントの新田龍さんは「この問題を『自己責任』で終わらせてはいけない。
ブラックボックスの中で行われる高額抽選ビジネスの公正性をめぐる消費者問題であり、ルールを考える先行事例にすべきだ」という――。
■数千万円、億単位の課金は自己責任?
「オンラインオリパ」を巡る問題が、ここ数日で大きな注目を集めている。2026年9月8日、弁護士法人・響が、複数のオンラインオリパ事業者について特定商取引法上の問題があるとして、消費者庁に申告したことを公表した。
「被害金額が一人当たり数百万円というのはざらで、数千万円、場合によっては億単位という巨額の被害が発生しています」という。その後、9月17日には主要5社に対する民事訴訟と刑事告訴にも動きが広がり、問題は新たな局面に入っている。
この動きを受け、SNSでは業者に対する規制強化を求める声が広がる一方、
「自分の意思で課金したんだから自己責任だろう⁉」

「ガチャで負けて返金を求めるのはおかしい!」

「それならパチンコやカジノで負けた人も救済されるのか⁉」
といった、高額課金した利用者への厳しい反応も数多く見られる。
もちろん、成人が商品の内容を理解し、自らの判断でお金を使い、その結果として損をしたのであれば、基本的にはその結果を引き受けることになるのは本人しかいない。疑問の声が出るのも当然だろう。
■スマホで手軽に引ける「カードくじ」
ただし今回の問題を考えるにあたっては、この前提に加えて、そもそもオンラインオリパというサービスがどんな仕組みで成り立っているのかを知っておく必要がある。その仕組みを知れば、利用者の判断だけに責任を帰してよいのか、ひいてはオンライン上の抽選サービスの公正性をどう保証するのか、という消費者問題へと見え方も変わってくるはずだ。
「オリパ」とは「オリジナルパック」の略称だ。「ポケモンカード」や「遊戯王カード」などに代表されるトレーディングカードゲームにおいて、カードショップや事業者が独自にカードを組み合わせて作った非公式のカスタムパックが「オリジナルパック」と称して販売されており、そのオンライン版が「オンラインオリパ」である。
いわば、オンラインで引ける「カードくじ」のようなものだ。
多くのサービスでは、利用者がサイト上でポイントやコインを購入し、それを使ってオリパを引く。抽選結果は画面上ですぐに表示され、当たったカードの現物を発送してもらうことができる。不要なカードはポイントに戻し、そのポイントを使って再びオリパを引ける仕組みを採用しているサービスも多い。
1枚当たり数万円から数十万円もする高額な人気カードを「当たり」として掲げた商品もあり、少額で遊べるものから、1回あたりの価格が高額なものまで幅広い。画面上ですぐ結果が分かるため、スマートフォンだけで手軽に利用できる。カードをポイントに戻せる仕組みも、繰り返し利用しやすい要因になっているようだ。
■売り文句通りに当たりは入っている?
オンラインオリパについて、以前から問題視されていた点がある。それは通常利用者にとって、サイト上の表示内容と実際のシステム上の設定が本当に一致しているのか、「抽選内容を利用者側から確認する手段がない」ことだ。
オンラインオリパの画面には、たとえば「還元率MAX100%超!」「1/2の確率で未開封パックが手に入る!」「総口数1万口!/残り30口!」「1等○○万円相当!」「残りわずか!」といった表示が並ぶ。利用者は、こうした情報を見ながら「まだ当たりが残っていそうだ」「この確率なら狙えるかもしれない」と判断して購入する。
ところが通常の利用者には、画面に表示された当たり商品の内容や残り口数、当選確率などが、実際のシステム上の設定と一致しているかを確認する手段がない。
見られるのはあくまで画面上に表示されたキャッチフレーズだけであり、実際の抽選処理は事業者側のシステム内部で行われる。そのため、利用者から見れば、
・表示されている当たり商品が本当に用意されているのか

・表示されている還元率や当選確率は、実際のデータと一致しているのか

・どんな仕組みで抽選結果が決まっているのか

・当たりが出た後の表示や販売はどのように管理されているのか
といった部分は、通常ほぼ確認することが不可能なのだ。これこそ、オンラインオリパ特有の問題といえる。
■行政・司法は「NO」を突き付けるのか
弁護士側は、こうした仕組みや表示について法令上の問題があるとみて、9月8日に消費者庁へ申告した。さらに9月17日には、主要なオンラインオリパ事業者5社を対象として、利用者らによる民事訴訟の提起と刑事告訴にも踏み切った。
これにより、問題は行政への申告に加え、裁判や捜査を通じて具体的な事実関係や法的責任が検証される段階に入ったことになる。もちろん、提訴や告訴が行われたこと自体で事業者側の違法性が確定するわけではなく、今後それぞれの手続の中で判断されることになる。
SNS上では、「そんな怪しいモノに高額課金するなんて‼」と、利用者に対する厳しい意見も多い。たしかに、何十万円、何百万円という金額を自ら使ったのであれば、その消費行動について本人に責任がある面もあるし、単に高額な利用額だけを根拠に「被害」と判断することは適切ではないだろう。
しかし「自己責任」との指摘が成立するためには、判断材料となる情報が正確に提供されていることが前提になる。単純な例で考えてみよう。
■もし「箱の中身」が説明と違ったら…
ここに「100本のうち1本が当たり」と説明されたクジがある。
実際に100本の中に1本の当たりがあり、説明された方法で抽選されていたのであれば、外れた人がいたとしても、それは抽選結果として受け入れざるを得ない。
ところが、実際には当たりが入っていなかった場合や、当たりは1本あっても、抽選箱の中にクジが1000本入っていた場合など、あらかじめ説明された条件と実際の設定が異なっていた場合には、問題の性質が変わることはご理解いただけるだろう。
オンラインオリパも、基本的な考え方は同じだ。「本当に、表示されていた条件に沿って抽選が行われていたのか?」「本当に、当たり商品は存在するのか?」が問われることになる。「自己責任」との言葉は、この2点が確認できて初めて成り立つのだ。
■1回777円の「脳汁クジ」も登場
スマートフォン上で課金し、抽選によって商品が決まるサービスは、オンラインオリパだけに留まらない。2026年2月にはファミリーマートが「ファミマオンラインくじ」を開始した。7月にはゲーム会社ドリコムが新しいオンラインくじサービス「くるくじ」を開始し、引いた景品を別の抽選に使えるチケットへ交換する仕組みも導入している。
6月にはマルハングループが「脳汁クジ」と銘打ったオンライン限定くじを開始した。1回777円で、10万円分のAmazonギフト券などを賞品として設定している。名称自体、抽選時の高揚感、射幸性を前面に出した商品設計であることを物語っているようだ。
このように現在ではトレカだけでなく、フィギュア、化粧品・アパレル、スニーカー、高級時計、グルメ、ペット関連商品など、対象商品はかなり広がっている。
もちろん、これらのサービスは仕組みも運営方法も異なるが、消費者がスマートフォン上で決済し、すぐ抽選結果を確認し、続けて次の購入へと進めるという消費行動が、さまざまな分野に広がっていることは注目すべきだろう。
射幸性の程度にも大きな差があるが、高額賞品、限定商品、残り口数、当選確率、連続購入特典などを組み合わせれば、従来の通販とはかなり異なる購買体験になることは間違いない。この市場がさらに広がるなら、抽選の公正性をどこまで利用者から確認できるようにするかは、もはやトレカ業界だけの課題では済まなくなる。
■SNSにいる「成功者」が最高の宣伝に
オンライン抽選型サービスのもう一つの特徴が、SNSとの相性のよさである。数十万円の商品が当たった映像、派手な抽選演出、「神引き」と呼ばれる大当たりや、「爆アド」と称される大幅な得をした結果の投稿は拡散されやすく、利用者から見れば、自分のタイムラインに成功例が繰り返し流れてくることになる。
人間の心理としても、当たりを引いた人はつい投稿したくなるものだ。一方で、何十回も外れただけの結果をわざわざ投稿することはない。この構造だけでも、SNS上で目にする「当たり」の頻度と実際の当選確率には大きな印象の差が生まれやすい。そこに「残りわずか」「本日限定」「1/2」「還元率100%超」といった表示が加われば、購入判断への影響はさらに強くなることは間違いないだろう。
近年、消費者庁もデジタル空間で消費者の意思決定に働きかける画面設計を「ダークパターン」という観点から調査している。2026年6月公表の調査では、回答者の76.2%が何らかのダークパターンを見た経験があり、37.5%が過去1年間に経験したと回答している。消費者庁長官も、デジタル取引において「意思形成を歪めるユーザーインターフェースによる誘導」が課題として指摘されていると説明している。

■パチンコ、競馬、宝くじとの決定的違い
オンライン抽選サービスの表示が直ちにダークパターンに該当するというわけではないが、消費者保護を考える際に、もはや広告文言だけを取り締まれば足りる時代ではなくなっていることは確かだ。画面の設計、繰り返し購入のしやすさ、通知、期限表示、SNS上での訴求まで含め、消費者の判断にどのような影響を与えるのかまでチェックする必要があるだろう。
今般の報道に対しては、
「オリパで負けた金を返すなら、パチンコや競馬やカジノで負けた金も返すのか?」

「高額課金で当たらなかった? それなら宝くじやロトも同じだろう?」
といった意見も出ているようだ。確かに、課金し、偶然によって結果が決まり、高額な当たりを期待するという点にはいずれも共通部分がある。
ただ、制度の作り方はかなり違う。
■「公正性を担保する制度」があるかないか
宝くじを発売できるのは、都道府県と指定都市である。地方自治体が総務大臣の許可を得て発売し、発売等の業務を銀行などに委託する仕組みになっている。さらに当選金の総額についても、法律上「発売総額の5割以下」という枠が設けられている。ロトも同じ制度だ。つまり宝くじやロトは、販売主体、発売手続、当選金、抽選方法などについて、あらかじめ公的な枠組みが置かれているのだ。
カジノについても、日本ではIR整備法に基づくカジノ管理委員会が設置され、事業免許、ゲームのルールやオッズ、機器、監視体制、内部管理、監査、依存防止対策まで細かな規制が設けられている。
パチンコやパチスロの遊技機についても、著しく射幸心をそそるおそれのある機械を排除するための技術基準があり、型式試験や公安委員会による検定の仕組みが存在する。
いずれも、それぞれの形態に応じた「公正性を担保する制度」があるということだ。
■スマホゲームの「ガチャ」にもメス
さらに近い例として、スマートフォンゲームの「ガチャ」がある。かつてオンラインゲームでは、特定のアイテムを複数そろえることで別の希少アイテムが得られる「コンプガチャ」が大きな社会問題となった。
消費者庁は2012年、これが景品表示法上禁止されている「カード合わせ」に当たり得るとの考え方を明確にした。この方式には消費者を確率について錯覚させる欺瞞性があり、射幸心をあおる効果があるとの解釈だ。
その後、ゲーム業界でも自主ルール作りが進んだ。コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は、有料ガチャについて取得できるすべてのアイテムと提供割合、つまり確率を表示することを原則とするガイドラインを設けている。未成年者の課金についても自主規制が整備されている。
このように、新たなサービスが急成長すれば、既存法だけでは対応しにくい問題が表面化することがある。そこで行政による法解釈が示され、業界側でも自主ルールが形成されていく。オンラインオリパを含む現在のオンライン抽選サービスも、同じような段階に来ているのかもしれない。
ここまで見れば、今回の問題を「オリパに大金を使った人が損をした」という話だけで捉えるのは適切ではないことが分かるだろう。
そもそも、スマートフォンから短時間で何度も購入でき、高額な当たりへの期待によって利用を繰り返しやすいオンラインサービスが急成長する中で、その仕組みに見合った消費者保護が追いついているのか、という問題がある。実際、「オンラインオリパの抽選が本当に公正なのか」を、日常的にチェックしているのは誰なのだろうか。
■この市場をチェックしているのは誰か
たとえば、広告や表示には「景品表示法」がある。通信販売には「特定商取引法」がある。中古品取引には「古物営業法」があり、刑事上の問題が生じれば警察などの捜査機関が関わる。
一方でオンラインオリパという業態そのものについて、当たりが本当に用意されているのか、表示された口数と実際の販売口数が一致しているのか、抽選条件が途中で変更されていないか、当選履歴や設定変更の記録が適切に保存されているか、といった「抽選そのものの公正性」を継続的に確認する専門の仕組みについては、十分に確立されているとは言い難いのが現状だ。
従来の法律は、虚偽表示があれば表示を問題にし、通信販売上の違反があれば販売方法を問題にするという形で機能する。ところがオンラインオリパでは、画面上の表示、ポイント購入、瞬時の抽選、高額カードの当選、ポイントへの再交換といった複数の要素が一つのサービスの中に組み込まれている。「既存の法律が想定してきた領域の境界に、新しい業態が急速に成長してきた」と見ることもできよう。
だから今回、「高額課金した人をどこまで救うのか」という話だけではなく、高い射幸性を持ち、利用者から抽選の中身を見ることができないオンラインサービスについて、どの程度の透明性を求めるべきなのか、について社会全体で考える必要があるのだ。
公正に運営している事業者にとっても、抽選の信頼性を客観的に示せる仕組みがあれば、利用者から疑われるリスクを減らすことにつながる。
■ブラックボックスのままでは許されない
今回、消費者庁への申告に加え、民事・刑事の手続も始まったことで、オンラインオリパの運営実態がどこまで明らかになるかが注目される。
同申告は、取引の公正や消費者の利益が害されるおそれがある場合に、消費者庁長官などへ情報を申し出て適切な措置を求めるための制度である。個々の返金問題を解決するためだけの制度ではなく、市場の公正を確保する目的も持っている。
事業者側にも、自社の抽選がどのように行われていたのかを説明できるだけの記録とデータを残しておくことが求められるだろう。その確認を重ねた結果、表示どおり公正に運営されていたのであれば、その事実を示せばよい。問題が見つかれば、その部分について改善や法的対応を進めることになる。
オンラインオリパ市場が今後も成長していくのであれば、今回の問題を特定の利用者と事業者との返金トラブルだけで終わらせるのは惜しい。これは、ブラックボックスの中で行われる高額抽選ビジネスの公正性を、社会としてどのように担保するのかという消費者問題であり、これから広がっていくデジタル抽選型ビジネス全体のルールを考える先行事例なのだ。
「なぜオンラインオリパの抽選だけは、利用者から中身が見えないままでよいのか」。今回のニュースをきっかけに、まずそこから議論を始めるべきだろう。

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新田 龍(にった・りょう)

働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

働き方改革総合研究所株式会社代表取締役。労働環境改善、およびレピュテーション改善による業績と従業員満足度向上支援、ビジネスと労務関連のトラブルと炎上予防・解決サポートを手がける。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。

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(働き方改革総合研究所株式会社代表取締役 新田 龍)
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