「RECOG」は、従業員同士が感謝や称賛を贈り合うことで、組織のカルチャーを育てるツールです。2018年の正式リリース以降、前身サービスを含めて累計2,000を超える組織に利用され、RECOGでやり取りされたコミュニケーションは延べ1億回にのぼります。


ただ、もともとは対外的に売り出すためのプロダクトとして作ったものではありませんでした。出発点は、自分たちの会社のために用意した社内ツールです。それが何度も名前とかたちを変え、今のRECOGになっています。

社内ツールが多くの組織に広がるまでの道のりを、代表の新子がお届けします。

「全員が同じ方向を見ていない」打開のために現場の行動を変える

当社は2007年、今とはまったく違う事業である消費者向けのWebサービス開発・運営からスタートしました。従業員が100人近くになったころ、全員が同じ方向を見ていないと感じる場面が増えてきました。一人ひとりは一生懸命なのに、向いている先が揃っていないのです。

私には、「良いサービスは、良いチームからしか生まれない」という考えがあります。人数が少ないうちは、価値観は言葉にしなくても自然と共有されていましたが、ある程度の規模を超えるとそうはいきません。良いチームを保つためにも、自分たちが何を大事にする会社なのかを言葉にしようと、ミッションとビジョン、そしてそこから導いた10個のバリューをつくりました。

問題は、どのようにして現場に実践してもらうかでした。クレドカードを配る、朝礼で唱和するなどの定番の手法は、どうも自分たちらしくない。「仕事とは本来、楽しいものだ」と考えている私は、それならいっそゲームにしてしまおう、と思い立ちました。


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そこで、10個のバリューを10個のバッジにして、従業員同士がWeb上で贈り合うツールを開発しました。たとえば「スピード」を体現した人には「迅速な対応ありがとうございます」というメッセージとともにスピードのバッジを贈ります。称えるのは営業成績のような結果ではなく、バリューに沿った行動そのもの。義務ではなく遊びとして、自然にバリューを意識してもらう仕掛けにしました。

困っていたのは自分たちだけではなかったことを知り商品化へ

2011年に運用を始め、100人弱の従業員で1年間続けてみたところ、バッジのやりとりは3万回にのぼりました。驚いたのは、そのバッジに添えられたメッセージが、ほとんど「ありがとう」だったことです。「迅速に対応してくれてありがとう」「手伝ってくれてありがとう」などがあふれていることに気づきました。バリューの浸透を狙ったゲームから、3万回もの感謝が、目に見えるかたちで生まれたのです。

そのツールを使っているうちに、社内の雰囲気も変わっていきました。感謝が日常的に行き交うと、一人ひとりが気持ちよく働けるようになり、その姿勢がお客様への対応にも表れてクレームは目に見えて減っていきました。やりとりはコーポレートサイトで社外にも公開していたので、それを見た人から「この会社で働きたい」という声も届くようになりました。

そうしたなかで、2012年に転機が訪れました。この取り組みが、テレビ番組で特集されたのです。
放送の翌日から問い合わせが次々と寄せられ、社内コミュニケーションに困っているのは自分たちだけではなかったことに気づきました。

同じような悩みを抱える企業の役に立ちたいと、すぐに商品化を決めて開発チームとともにプロダクト化を進めました。ただ、ここからが苦労の連続です。私は「この機能をつけてほしい」「もっと使いやすくできないか」などと次々に注文を出す。けれど現場からは「そのとおりのものは作れない」と返されることもありました。理想を押し付けてはぶつかり、作り直してはまた議論する、この繰り返しでした。

一社ごとに個別開発する「CIMOS」から始まり、2015年にはSaaS型のサービスへと舵を切ります。その後も「Hooop」「ホメログ」と名前を変えながら改良を重ね、今の「RECOG」にたどり着きました。

コロナ禍を越えて、2,000組織へ導入されるツールへと成長を遂げる

RECOGの導入は、着実に広がっていきました。しかし、その途中で、いちばん厳しい時期が訪れます。コロナ禍です。

社会全体が一気に冷え込み、社内の空気も重くなるなかで、RECOG自体も解約や失注が増えていきます。とくに打撃が大きかったのは、営業自粛を迫られた飲食業界のお客様でした。
受注の数字より、解約の数字が気になって仕方がない状況になり、とにかく解約を止めるための策を講じる必要がありました。

止めるには、お客様と正面から向き合うしかありません。私たちはカスタマーサクセスを強化し、RECOGを導入していただいたお客様に徹底的に伴走する体制へとシフトチェンジしました。一社ごとに、運用定着や利用促進を二人三脚でサポートし、RECOGをどう使えばお客様の課題を解決できるのか一緒に考え抜く。こうした地道な伴走を続けた結果、解約率はやがて1%を切るまでになりました。

この苦境を乗り越えられたのは、自分たちが作ったRECOGに支えられたからでもあります。空気が重い時期でも、社内では毎日、感謝のやりとりが行き交っていました。そこに並ぶ言葉を見ていると、前を向いて頑張る仲間たちの姿が浮かんできて「仲間がいるのだから、自分も頑張ろう」と思えました。「良いサービスは、良いチームからしか生まれない」という創業期からの想いを、いちばん苦しいときに確かめられた気がします。

苦しい時期はしばらく続きましたが、コロナ禍を契機にリモートワークが当たり前になっていくにつれて、流れは少しずつ変わっていきました。顔を合わせる機会が減るなかで、離れていても仲間の頑張りが見えるというRECOGの価値が、あらためて見直されたのです。サンクスカードに動画を添えられるようにしたり、社外からの応援や感謝を受け取れる「ソーシャルエール機能」を加えたりと、働き方の変化に合わせた改良が実を結びました。


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その後もRECOGは成長を続けていき、AIの登場がさらなる後押しとなりました。2023年には、蓄積されたコミュニケーションデータをもとに、レターの文章作成を助けるAI機能を搭載しました。

さらに「エンゲージメント」や「人的資本経営」が経営の重要テーマになるにつれて、RECOGの位置づけも変わっていきました。誰が、どのような行動に、どれだけ感謝を贈り合っているのか、というデータは組織の状態をそのまま反映します。称賛を贈り合うツールは、組織の状態を可視化し、成長を支えるプラットフォームへと進化していきました。

こうした積み重ねの先に、今があります。社内ツールから始まったRECOGは、前身サービスを含めて累計2,000を超える組織で利用され、RECOGでやり取りされたコミュニケーションは延べ1億回に達しています。それは、誰かが誰かの良い行動に気づき、応えてきた瞬間が、それだけ多くの組織で生まれてきたということの現れでもあります。

4度作り変えても、変えなかったこと

RECOGはこれまでに何度も名前とかたちを変えてきましたが、最初から変えなかったことが一つあります。感謝や称賛を「クローズドにしない」ということです。感謝の気持ちを個人の中に閉じず、まわりにも見えるかたちで社内に循環させる点だけは、ずっと貫いてきました。

感謝を1対1で伝えるのも、もちろん良いことです。ただ、たとえばある部署のAさんが良い働きをしたとき、本人に直接伝えるだけでは、周りにはその良さが伝わりません。
みんなに共有してAさんの良さがチーム全体に広がっていくと、コミュニケーションが1対1ではなく、1対1対nになります。

そのためRECOGのレター作成画面には、あえて「感謝を伝えましょう」ではなく、「贈る相手の素晴らしい行動や活躍を、みんなに伝えてください」と薄く表示しています。ただ感謝を伝えるだけでなく、その人のどのような行動が良かったのかを言葉にし、それをまわりにも共有してほしいという意味を込めています。

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「叱るのは1対1で、褒めるのはみんなの前で」。これは経営のなかでずっと意識してきたことで、RECOGはその考え方をそのまま落とし込んでいます。風通しを良くして人が育つ土壌をつくる、畑を耕すようなツールだと思っています。

可視化の先へ。組織の「らしさ」を育てるツールへと

これから先も、私たちのやることは変わりません。称賛と感謝が自然に循環する文化を、もっと多くの組織に広げていくことです。人材の確保が年々難しくなるなかで、互いに認め合える職場の価値は、ますます大きくなっていくはずです。

RECOGを使い続けるほど、どのようなバリューが大切にされ、どのような行動に感謝が集まるのかという、その企業ならではの「個性」や「らしさ」がデータとして積み上がっていきます。今準備を進めているのが、この「らしさ」を活かす、RECOGと連携できる新しいAIプロダクトです。
蓄積されたデータと組み合わせ、称賛から始まる組織づくりを、さらに一歩前へ進めていきます。
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