そんな中、2026年4月、新ブランド「アンカード・バイ・リーガ 大阪なんば」が誕生し、総支配人には営業職としてキャリアを積み重ねてきた宮脇 健輔氏が就任した。今回、自らこの新たな挑戦に臨んだ同氏の思い、新ホテルの立ち上げ・運営に込められた情熱に焦点を当て、挑戦を後押しする企業としての姿を紐解く。
写真:アンカード・バイ・リーガ 大阪なんば 総支配人 宮脇 健輔(みやわき けんすけ)氏
多くの支えを力に、新しいホテルの開業へ
──宮脇さんは入社13年目となる2024年に、ロイヤルホテルの「チャレンジキャリア制度」(※)での公募により、大阪なんば新ホテルの開業準備業務を経て、アンカード・バイ・リーガ 大阪なんばの総支配人に就任されましたこの挑戦を決意されたきっかけを教えてください。
私は入社以来、一般企業に向けてホテル宴会場を使用した懇親会などをセールスする法人営業としてキャリアを積んできました。「総支配人になりたい」という考えが出発点ではなく、それ以上に、新しいホテルをゼロから立ち上げる開業準備に携わりたいという気持ちを強く持っていました。
ロイヤルホテルに入社以降、ホテルの建て替え計画や新規開発の話を耳にするたびに、「いつか自分もチャレンジしてみたい」と思っていました。もともと新しいことに挑戦することが好きな性格でもあります。今回の公募は、長年抱いてきた思いを実現できる貴重な機会だと感じました。
※チャレンジキャリア制度・・・特定のプロジェクトやポジションにおいて、社内公募により希望者を募集する制度。
──開業するまでの約2年間、特に苦労されたのはどのようなことでしたか。
宿泊業務の経験がなかったこともあり、着任当初はまさに右も左も分からない状態でした。設備設計、商品開発、オペレーション構築、人材育成など、考えなければいけないことが山ほどあって、毎日が勉強の連続でした。
なかでも印象に残っているのは、着任して間もない頃、建設会社や設計会社との打ち合わせでホテルの設計図面を渡されたことです。「この動線で問題はないか」「設備の配置はどうするか」といった議論から始まるのですが、それまでの担当業務ではまったく触れたことのない専門領域ばかり。「こうした段階からスタートするのか」と大きな衝撃を受けましたが、同時に、やりがいと高揚感を覚えた瞬間でもありました。
──未経験の分野に挑戦するなかで、支えとなったものは何だったのでしょうか。
何より心強かったのは、社内にいる「各分野のプロフェッショナルたちの存在」です。ロイヤルホテルには、フロントやレストラン、施設管理、ITシステム、マーケティングなど、それぞれの現場で長年経験を積んできたスタッフがたくさんいます。分からないことがあって相談すると、皆さん本当に惜しみなく知識やノウハウを教えてくれました。そうしたプロフェッショナルの知見を借りながら、一つ一つ課題を乗り越えることができたと思っています。
街の魅力を映し出す新しいホテルのかたち
──「アンカード・バイ・リーガ 大阪なんば」は、大阪ならではのエネルギーと洗練された雰囲気が融合したホテルです。ホテルづくりでこだわった点をお聞かせください。
「アンカード・バイ・リーガ」は、「錨をおろす」という意味の「アンカード」を由来として名付けられました。その地域のエッセンスを取り入れたコンセプト、いらっしゃるお客様の旅の疲れを癒す機能性、そして長年培ってきたおもてなしの力を掛け合わせた、リーガロイヤルホテルズが展開する新しいブランドです。
私たちがすべての判断の軸にしたのが、ホテルのコンセプトである「PLAYFUL OSAKA」というキーワードでした。お客様に楽しんでいただけるか、そして、自分たちも心から楽しいと思えるか。地域とのつながりを感じていただけるか。こうした視点を常に大切にしてきました。
──「PLAYFUL OSAKA」というコンセプトはどのように生まれたのでしょう。
ホテルが位置する難波・日本橋・新世界エリアの魅力をあらためて考えたとき、真っ先に浮かんだのが「楽しい街」という印象でした。私自身、東大阪で生まれ育ちましたが、子どもの頃、新世界周辺といえば「大人が行くディープな街」というイメージを持っていました。でも、開業準備のために何度も足を運ぶうちに、その見方は大きく変わりました。
エネルギッシュで色彩豊かな街並みは、まるで巨大なテーマパークのよう。その一方で、少し歩けば四天王寺さんのような歴史ある寺院があり、そこに国内外から多くの人が集って活気に満ちている。だからこそ、ホテルだけが独立した存在ではなく、この街の延長線上にある場所にしたいと考えました。
──そのほか、館内やサービスの随所に「遊び心」が取り入れられているそうですね。
はい。フロントにはホテルオリジナルのステッカーが出てくるガチャガチャを設置したり、リラックススペースにゲーム機を置いたり、館内のあちこちにわくわくする仕掛けを散りばめています。
なかでも力を入れたのが、「謎解き街歩き」という体験型コンテンツです。企画段階では、社内から慎重な意見もありました。それでも、地域の魅力を知っていただくことがお客様の満足につながり、ひいては街の活性化にも貢献できると考え、実現に向けて粘り強く取り組みました。
企画を進めるにあたっては、地域の皆さんのもとへ何度も足を運び、趣旨をご説明してご協力をお願いしました。その積み重ねによって地域との信頼関係も深まり、開業後3カ月で300名以上のお客様に楽しんでいただく人気コンテンツとなりました。
──開業に先立ち、試泊会で初めてお客様をお迎えされたときの心境はいかがでしたか。
これまでにない新しいチャレンジをたくさん詰め込んだホテルでしたので、「どのように評価されるのか」「本当に喜んでいただけるのか」という不安もありました。でも、実際に宿泊された方々から「いいホテルですね」とお声がけいただいたときは、それまでの苦労が報われた思いがしました。なかでも「世界観がしっかりつくられていますね」と評価していただけたことがうれしく、あのときの達成感は忘れられません。
写真左:「アンカード・バイ・リーガ 大阪なんば」の遊び心あふれるアイテムたち
写真右:館内レストラン「Dining & Lounge KOTE KOTE」を彩るネオンアート
チャレンジする文化を次の世代へつなぐ
──総支配人として、チームづくりで大切にしていることを教えてください。
ホテルのコンセプトである「PLAYFUL OSAKA」は、お客様だけでなく、働くスタッフ自身に向けた言葉でもあると考えています。私自身を含め、スタッフ一人ひとりが前向きに仕事を楽しめる職場にしたい。そのためには、日々の仕事を単なる作業ではなく、「誰のために」「どんな価値を生み出すのか」を理解しながら取り組める環境をつくることが大切だと思っています。
──営業職として培った経験は、現在の仕事にどのように生かされていますか。
法人営業はアポイントなしで企業訪問することも多く、新しい場所や人の輪に飛び込むことに抵抗がありませんでした。その経験は、総支配人になった今も大いに活きています。地域との連携では自治会の方々のもとへ足を運び、商品やアートを選ぶ時も、自らメーカーやアーティストに直接交渉するなど、営業時代に培った行動力が生かされていると実感しています。
また、営業は一人で完結する仕事ではありません。
──「チャレンジキャリア制度」には、どのような価値があると感じていますか。
この制度があったからこそ、今の私があると思います。これまで経験したことのない領域に挑戦する機会を得られることは、非常に意義深いことだと思います。自ら手を挙げるからこそ強い責任感が生まれ、高いモチベーションを保ちながら業務に臨めるのではないでしょうか。
私は、この制度の第1回の公募で選んでいただいたので、「自分が失敗したら、制度の存続に影響が出るかもしれない」というプレッシャーを感じていたのも事実です。それでも、その重圧を上回るほどのやりがいがあり、毎日楽しみながら仕事に向き合うことができました。
また、公募で選ばれたことで社内の認知が高まり、多くの社員から「頑張っているね」「応援しているよ」と声をかけていただいたことが、本当に励みになりました。
──最後に、これからのアンカード・バイ・リーガ 大阪なんばの未来像とともに、宮脇さんご自身の展望をお聞かせください。
何よりもまず、「笑顔の絶えないホテル」に育てていきたいと考えています。ロイヤルホテルが培ってきたあたたかいおもてなしを大切に、お客様には「また訪れたい」と感じていただけるホテルへ。そして、スタッフはもちろん、社外の方からも「ここで働きたい」と憧れを持っていただけるようなホテルを目指したいです。さらに、「アンカード・バイ・リーガ」が自分の街にも来てほしいと思っていただけるような、魅力あるブランドへと成長していけば素敵だと思います。
私自身は、今回の経験を生かし、今後の新しいホテルの開発や新規事業の立ち上げなど、会社の発展につながる仕事に携わっていけたらと考えています。また、多くの支えがあってここまで来られたと思っていますので、私自身も同じように、これから挑戦しようとする人を後押しできる存在になりたいと思っています。
迷ったときは、まず一歩踏み出してみることが大切です。社内には、必ず支えてくれる仲間がいます。私自身が楽しみながら挑戦する姿を見せることで、「自分も挑戦してみよう」と思う人が一人でも増えたら、それが何よりうれしいことだと思います。