売上などの業績だけで個人を測るのではなく、理念やビジョンの体現をいかに評価へ落とし込むか。賞与を設けないという選択に込められた経営の覚悟とともに、成長企業ならではの組織づくりの裏側について語り合いました。
【座談会メンバー】
写真左から3番目:大堀 順子(オオホリ ジュンコ) 氏
株式会社フォーカス 執行役員
写真左から4番目:澤中 翔乃介(サワナカ ショウノスケ) 氏
株式会社フォーカス 採用・広報担当
(以下、フォーカス様)
写真左から2番目:片田 雄大(カタダ ユウタ)
株式会社CAQNAL(カクナル) プロジェクトマネジャー(以下、片田)
写真左:中島 篤(ナカシマ アツシ)
株式会社CAQNAL(カクナル) 代表取締役(以下、中島)
「できてしまう」組織の限界。想いにシンクロするカクナルと挑んだ役割の再定義
カクナル広報:まずは、人事制度の見直しに踏み出された背景からお聞かせください。社員の約3割が新卒社員という構成になる中で、どのような課題を感じていらっしゃいましたか。
フォーカス様:
組織が急拡大していく中で、それぞれのポジションの人が具体的にどんな役割を担うべきなのかが、非常に不明確になっていました。個人レベルでは理解している部分もありましたが、会社全体として「この役職の人は何ができなければならず、どこまでの役割を担うのか」が言語化されていなかったんです。
その結果、本人も周囲も十分に理解しないまま、気づけばそのポジションに就いているというギャップや歪みが生じていました。求められる能力や役職の定義、果たすべき役割が可視化されていない状態は、当時の組織にとって、そろそろ限界だと感じていました。
3年前に始めた新卒採用のメンバーが戦力になり、ここから事業規模を拡大させていく、というタイミングでもありました。そのことを考えると、やはり今のままでは立ち行かないと感じていました。
カクナル広報:
プロジェクトが始まる前のフォーカス様の印象について教えてください。
中島:
最初にお会いした時の印象を率直に申し上げると、「勢いのあるカオス」でした。ただ、それは勢いがあるからこそ起きる正しいカオスなんですよね。成長期の会社は人の出入りも激しく、ビジネスモデルも変わっていく。社長は社長の目線で先を見ているので、当然、方向性は日々変わっていきます。それに現場が必死に対処しており、フォーカス様の対応力・調整力が非常に高い組織だと感じていました。
しかしながら、都度処置できてしまうからこその成長もありつつ、本来は別のところに充てるべきエネルギーまで使ってしまっているというような、少し燃費が悪い状態とも言えました。だからこそ、制度をきちんと整えるタイミングだと感じていました。
片田:
私が強く感じたのは、個々の戦闘力の高さです。そして、それを束ねる常松社長のパワーとビジョナリーなところがとても強く、それに社員の皆様が引っ張られてどんどん前に進んでいる会社という印象でした。
カクナル広報:
人事制度や組織開発を支援する会社は数多くありますが、なぜCAQNALにご依頼いただいたのでしょうか。
フォーカス様:
きっかけは、当社の顧問を務めてくださっている方からのご紹介でした。
常松社長や、私を含めた実務担当者が「どうしたい」と抱いている想いや、理想とする組織像を、徹底的に理解しようと寄り添ってくださいました。よくあるパッケージ化された定型的な提案や、決まった時間内での対応ではなく、「昨日まではこう考えていたけれど、やっぱりこうしたい」という変化にも完全にシンクロして、常にレスポンスよく動いてくださった。それが最大の決め手だったと思っています。
中島:
「泥臭い伴走。」を心掛ける私たちとしては、そう言っていただけるのは嬉しいです。
売上数字だけで人は測れない。「マネジメント」と「プロフェッショナル」を等しく評価する人事評価制度設計
カクナル広報:人事評価制度を設計していく上で、特に大切にしたいと思われた点はどこでしょうか。
フォーカス様:
人事制度として最初に一番入れたかったのは、フォーカスの理念やビジョンを、日々の行動や言動にしっかり落とし込めているかを評価するという観点です。そこを最優先に等級定義を設定していきました。
単に売上などの業績だけで個人を評価する制度にはしたくなかったんです。フォーカスの社員はどうあるべきなのか、会社の理念や社長の思いを深く理解し、それを現場で体現している人こそ大切にし評価したいというこだわりを強く持っていました。
もう一つ、社長の考えとして根底にあるのが、「経営の道を目指すこと」と「業務のプロフェッショナルを目指すこと」は別の競技である、という認識です。
当社に賞与がないのも、同じ考え方からきています。会社の業績は、あくまで経営陣の責任であり、業績の波によって、現場で実務を支えている社員の給与が不当に影響を受けないようにしたいと考えています。これは、経営としての覚悟のようなものがあるのだと思います。そうした思想が、人事制度の中の一人ひとりの評価方法にきちんと反映される設計にしたい、というのが今回のメインで考えていたところでした。
片田:
いわゆる一般的な人事制度とは違う部分もあり、設計には工夫が必要でした。今回は評価の反映部分も、通常の給与に加算されていく形をとっています。伸びている会社としてあるべき姿はどこなのか?そして社長のポリシーや信念にどう寄り添うか?その上で、現場との乖離はなるべくなくすというバランスを取るために、何度もチューニングを重ねました。途中まで作ったものを一度白紙にして作り直す、ということもありました。それでも、最後はきちんと具体的な形にできたのは本当に良かったと思っています。
抽象的な思いが、形になる。自分たちで進化させられる土台を手に入れた
カクナル広報:支援を経て、印象に残っている出来事はありますか。
フォーカス様:
そもそも、人事制度と呼べる明確なものがなく、社内のリソースも限られていたため、制度の“作り方”そのものが試行錯誤の状態でした。
そんな中で、私たちが抽象的にしか伝えられなかった思いを、片田さんや中島さんが具体的な形にして見せてくださりました。だからこそ、ベストな形にたどり着けたと感じています。何より、「これならもう少しブラッシュアップできるな」「次はこういう施策を打てるな」と、自分たち主導で考えられる状態になったという手応えを得られた瞬間が、強く印象に残っています。
形として、フォーカスの人事がスタートを切れたということが一番の安心でした。そして、できあがったものに込められている思いは、やはり会社のビジョンです。それをもっとみんなに広げていくにはどうすればいいかと考えられる大元ができたからこそ、これをもっともっと良くしていかなければと感じています。
片田:
毎回のように社長から「経営学とは」というお話を聞かせていただいたことが私自身、とても勉強になり印象に残っております。スピード感があり、伸びている会社なので、課題やテーマが会うたびに変わっていくため現場で起きていることをリモートでどうキャッチアップするかという点は少し大変でした。ただ、それ以上に、どういう組織にしたいかという思いが強かったので、設計はとてもやりやすかったですし、ありがたかったです。世の中では「なんとなく作れば大丈夫」というケースもある中で、明確な思いを持って臨んでくださったのは大きかったですね。
個人の成長と、会社の成長を重ねる。理念を翻訳し、現場へ浸透させる次のフェーズへ
カクナル広報:今後、フォーカス様がどのような組織になっていくのか。どんな人材が活躍する姿を思い描かれていますか。
フォーカス様:
社員一人ひとりの成長や成果と、会社の成長や成果が、しっかりイコールで結ばれている状態を目指していきたいです。一人ひとりが、自分の手がけている仕事とフォーカスという会社に強い自信と誇りを持って、日々の業務に向き合っているような組織が理想だと思っています。
片田:
プロジェクトを通じて改めて感じたのは、皆さん個々の戦闘力の高さに加えて、人柄や人間力がとてもあるということです。常松社長の思いやフォーカス様の方針が、まだ完全に言語化されているわけではないにもかかわらず、社員の皆さんにはかなり浸透している感覚がありました。これをどう言語化し、より浸透させていくかというのが次のフェーズで大事になってくるところだと思います。今後施策にどうつなげていかれるのかとても楽しみにしています。
カクナル広報:
今後の取り組みとして、すでに動き始めていることはありますか。
フォーカス様:
優先すべきは、何を目標に日々の仕事に向き合えば自分にとっても会社にとってもプラスになるのかを社員一人ひとりが正しく理解し、実行できる状態をつくることだと考えています。
そのために、導入したばかりの新しい人事制度を、現場の目線に合わせてより分かりやすく、噛み砕いた表現にしていきたいと思っています。
会社が達成したい目標に対して期待する行動や考え方、売上や利益と、社員が目指す人物像や評価される行動が、同じ方向を向いていることの重要性を、今回とても実感しました。ベクトルが揃えば、社内は自然と活気づき、自分の仕事への意味の理解も深まり、周囲との連携から新たなものが生まれていきます。これからも、そうした良い循環が生まれる制度と運用で、お互いに高め合える関係を築いていきたいです。
カクナル広報:
最後に、同じような課題を持つ成長企業の皆様へメッセージをお願いします。
フォーカス様:
当社にとって人事制度の構築は、過去数年間ずっと先送りにしてきた大きな課題でした。社内のリソース不足を理由に、なかなか手を出せずにいたんです。
しかし今回は、私たちの思いややりたいことを伝えるだけで、それに沿った制度を提案していただき、社内だけでは対応できない実務まで巻き取って並走していただきました。おかげで、新しい人事制度とともに無事に新年度を迎えることができました。
人事制度は、社員に会社の考え方や方向性を示す、非常に重要なメッセージだと思っています。もし社内のリソースが足りずに停滞しているのであれば、外部のプロに頼ることで、プロジェクトは一気に進むはずです。悩まれているなら、ぜひ一歩踏み出して検討してみてもいいのではないかと思います。
【編集後記】
「業績の波で、現場の給与は変えない」賞与を設けないという選択の背景に、「業績は経営陣の責任である」という社長の覚悟があった。この言葉に、フォーカス社の組織づくりの哲学が凝縮されていました。
売上という分かりやすい数字だけで人を測るのではなく、理念やビジョンの体現を評価の中心に据える。そして、マネジメントを極める人も、現場で専門性を極める人も、等しく正しく評価する。急拡大の渦中にある企業が、あえて測りにくいものと向き合った今回の取り組みは、同じく成長の只中にある多くの企業にとって、一つの指針となるのではないでしょうか。CAQNALは今後も、企業の「らしさ」を引き出し、理念と事業成長が重なり合う組織づくりを支援してまいります。