ガテン系の仕事は稼げても、年齢を重ねれば体がもたなくなる――そんな“定説”を覆す可能性を秘めているのが、装着型アシストスーツだ。電力不要で重い荷物の負担を大幅に軽減するだけでなく、姿勢改善や腰痛予防、筋力維持にも効果があるというがその実態は?

何歳までガテン系仕事を続けられるのか?

30kgの荷物が「わずか3kg」の負担に。80代も働く現場で...の画像はこちら >>
ガテン系仕事は稼げるが、職種によっては身体的負担が重くなる傾向にある。高所作業を伴う肉体労働などでは死亡リスクもつきまとう。


では、我々は何歳までガテン系仕事を続けられるのか? ブルーカラー従事者の明るい未来を切り開きつつあるのが、東京理科大学の小林宏教授が25年以上前から研究・開発を続ける装着型アシストスーツ「マッスルスーツR」だ。

「現在、重いモノを運ぶ現場作業員や介護士、農家さんなどさまざまな分野の人に使っていただいています。普及しているのは4万台ですが、利用者は世界22か国にわたる。80歳を超えてもスーツを利用しながら、農業に取り組まれている方もいるようです」

電力不要のマッスルスーツを開発

マッスルスーツと聞くと、“アイアンマン”のような電動式のスーツを思い浮かべるかもしれないが、小林教授が開発したのは電力不要のタイプだ。背負って空気圧を加えるだけで、マッチョ感覚に。

「本当に社会の役に立つものを作りたかったので、当初から働く側の肉体の限界と、開発側の技術の限界を相互に補えることを意識しました。ゴムやナイロンを主な素材にして空気圧で動くチューブ状の人工筋肉にこだわったのはそのため。電動式のアシストスーツを研究されている企業もありますが、思いどおりに動かすのが難しいうえに、重量がかさみ、製品価格は高くなりがちなので、ほとんど普及していません。

一方で、空圧式の人工筋肉モデルは人の動きを妨げない構造で、なにより安く作れる。電力不要なので、屋外でも長時間使用できるんです。リュックサックのように背負い、手動式のポンプで空気圧を加える仕組みですが、身に着けるだけで最大約27㎏相当の補助が可能。30㎏のモノを3㎏程度の負担で持ち上げられるようになる」

肉体の補助にとどまらない効果も確認

30kgの荷物が「わずか3kg」の負担に。80代も働く現場で普及する“電力不要”スーツの実力とは
東京理科大学の小林教授
そのマッスルスーツは’14年に販売を開始されると、訪問入浴介護の現場から利用者を増やしていったという。その後も試行錯誤を繰り返すなかで、肉体の補助にとどまらない効果も確認できるようになったと話す。

「実は、“働きながら健康な体をつくる”効果があるんです。
使い続けることでインナーマッスルが強化されて姿勢が良くなり、体重や体脂肪率を減らせることが実証されています。実際、リハビリの現場でも、患者の弱くなった筋力を回復させる効果が見られた。疲労を含む肉体の負担軽減に加えて、病気にかかるリスクも下げられたり、腰痛が治るというデータも揃ってきています。

『整骨院に通う必要がなくなった』という利用者もいる。近年は、フィジカルAIが注目されていますが、それらは人間の活動の代替効果はあっても、人を健康にする効果はありません。マッスルスーツのほうが、人が長く、健康的に暮らせる未来の一助になるだろうと考えています」

人手不足が解消される可能性も

実際、小誌記者も試してみたが、マッスルスーツを背負って空気圧を加えるだけで、姿勢が矯正されるのを感じた。かがむのに若干の力を要するが、重いモノを持ち上げる際の負荷は驚くほど軽い。

今夏にはさらに軽量化した一台約12万円の低価格モデルをリリースするというから、将来的には“一億総マッスル化”を通じて現役で働ける寿命が延び、人手不足が解消される可能性も。マッスルスーツが、経済的な老後不安を緩和するきっかけになるかも!

※2026年7月7・14日合併号より

取材・文/週刊SPA!編集部

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