その名も「おむっちゃん」。
Gakkenから発売になった絵本のキャラクターです。
△表紙から元気いっぱい!おむっちゃんです。
まっしろなおむつから、にょきっと生える手と足。きりっとした眉につぶらな瞳。
このたまらないむちむち感に、つい愛着がわいてしまうという方も多いのではないでしょうか。
この愛すべきキャラクターは、いったい何者なのか? どのようにして生まれたのか―?
本作の著者である、こどもの視点ラボのみなさんに「おむっちゃん」が生まれるまでの話を聞いてみると、「子育て」に対する優しい祈りが見えてきました。
こどもの視点ラボの願い
絵本『おむっちゃん』の制作を手掛けたのは、「こどもの視点ラボ」のクリエイターチーム。
株式会社電通のクリエイティブ・ディレクターである石田文子さんと沓掛光宏さんが立ち上げたこのラボでは、こどもの当事者視点がどんなものなのかを、真面目かつ楽しく研究しています。
「大人がこどもになってみる」をコンセプトに、2021年の「電通報」での連載を開始して以来、体験型展示や研究レポート、書籍制作など、幅広く活動の場を広げており、今回の絵本製作には、石田文子さん、沓掛光宏さん、尾崎賢司さん、太田久美子さんの4名が携わりました。
こどもに対する「わからなさ」を減らすにはどうしたらいいか
こどもとの暮らしの中で、「どうしていつもそうなの!?」と怒ってしまったこと、ありますよね。どんなに言っても飲み物をこぼす、いそいでいるのにゆっくり歩く…。
ただでさえ忙しい日々の中で、「どうしてこうなんだろう」とイライラしてしまった記憶は、親なら誰にでもあることと思います。
実は、こどもの視点ラボの活動も、そんなシンプルな疑問からスタートしたのだそうです。
石田さん
「こどもへのイライラって、だいたいの場合「わからない」から来ていると思うんです。こどもの行動の意味がわからないから、ちょっとしたことでイラッとしたり叱ったりしてしまう。こども側の気持ちがわかれば、もっと良い関係が築けるし大人も楽になるんじゃないかと考えて、ラボの活動を始めました」
△ラボの始まりについて語る石田さん。
石田さん
「どうやったら体験者に楽しんでもらえるか、それを知ることで、こどもへの気持ちや行動が少しでも変わるかどうか。ただ面白いだけのもの、ためになるけど面白くないものは作らない、というスタンスで取り組んでいます」
身をもってわかるということの意味
「ためになるし、面白い」という方向に向かって研究を進め、最初に製作したのが「ベイビーヘッド」でした。
「ベイビーヘッド」は、新生児の頭部と体のバランスを大人に置き換えて、その重さを体験することのできる装置。赤ちゃんや幼児が重い頭で立ち上がったり歩いたりする大変さを体験できます。
△これがベイビーヘッド。当時赤ちゃんだった沓掛さんの息子さんをモデルにして制作した
石田さん
「赤ちゃんって体に対して頭が大きいということはなんとなく知られているけれど、じゃあ赤ちゃんの頭って大人が実際にかぶったらどのくらい重いんだろう? と、実際に作ってみたんです。そうしたら、本当に大きくて、重くて」
△ベイビーヘッドについて語る沓掛さん。
沓掛さん
「小さいこどもが早くは歩けないことも、すぐに転んでしまうことも、実際に体験してみればよ
くわかるんですよね。
う。大人自身の身体で体験することで、こどもへの眼差しは自然と変わっていくんじゃないか
と思うんです」
「おむつ」という、赤ちゃんとその親がいつもお世話になっているアイテム
ラボの研究テーマの中から、絵本化する企画を選ぶことになったとき、「おむつ」で何かできる
といいよね、という話になりました。
(テーマになった、こどもの視点ラボ・レポート 14 →https://dentsu-ho.com/articles/9164 )
△新刊『おむっちゃん』の表紙。むちむちした手足がたまらない。
石田さん
「研究を絵本にしようとすると、どうしても教育的になってしまって。こどもが楽しめる絵本にしたいけれど、どうしたらおむつに興味をもってもらえるか。何回かみんなでいろんなお話を書いて、でもどうもどれもしっくりこないな、となった時に、もうちょっと自由に、おむつをはいてる子とその親が楽しめるということを一番に考えたほうがいいねって、仕切り直したんですよね」
藤田
「おむつ替えって、実は育児の中でもかなり億劫な仕事なんですよね。素直に替えさせてくれなかったり、おむつを取った瞬間におしっこされちゃったり。でも、研究をもとにして、そのおむつを愛おしく思えるような見せ方ができたら、おむつ替えも、こどもと向き合う時間も、きっとちょっと楽になるだろうなあと」
編集部藤田。子どもと向き合う時間を絵本を通して、楽にたのしくでできたらと語る。
チームから生まれたアイディアが、キャラクターになるまで
仕切り直したあとで、おむつをキャラクターにするというアイディアが出てきました。キャラクター化のアイディアは、沓掛さんの実際の子育ての中から浮かんだものだったといいます。
沓掛さん
「この絵本を作っているころ、ぼくの娘は2歳で、毎日保育園に持って行く4~5枚のおむつに、名前を書くついでにお絵かきをしてたんです。それが日課みたいな感じになっていて。ちょうど絵本の企画をしている時だったので、おむつに顔を描いたらどうかなと思って、そこからおむっちゃんの形につながっていきました」
△超初期おむっちゃん。最初はオムツくんという名前でした。研究結果を見える形を想定して作っていました。
尾崎さん
「そのあとみんなでお話を持ち寄って話し合う中で、『カサカサ』、『しとしと』のような音の面白さは、ちょうどおむつを履いている子たちにも楽しんでもらえそうだからこの方向がいいかもしれない、ということになったんですよね」
△現在1歳と5歳のお子さんを育児中の尾崎さん。ラボでは研究の他に展示の企画の中心人物です!
△絵本のクライマックスでは「おもももも~。」とせまってくる迫力満点のおむっちゃん。でもどこかかわいく、目じりがさがる。
太田さんの絵の力で、堂々誕生したおむっちゃん
絵本『おむっちゃん』のイラストを手掛けた太田久美子さんは、ラボへの加入早々に即戦力として次々と制作を担当した実力派。石田さんは、太田さんのイラストの力を当初から絶賛していたといいます。
石田さん
「「こどもの視点ラボ」の別の書籍の企画で2コマ漫画をとにかくたくさん書いてくれとか、ほかにもいろいろ依頼して、たぶんすごく大変だったと思うんですけれど、できてきたものを見ると何も手を入れるところがないんですよ、どれも本当に面白くて」
太田さん
「すっと仲間に入っていた感覚で、是非やってみたいと思っていたので、すごく楽しく取り組めました!」
△作画を担当した太田さん。私生活では3姉妹の母でもある。
研究と絵本のいいバランス
編集を担当した田中さんは、こどもの視点ラボの皆さんのバランス感覚の良さに感銘を受けたといいます。
田中
「ラボでの研究としては、おむつを長時間変えずにタプタプになると、どれくらい重いか、どのくらいの湿度になるかというのを可視化するものだったんですよね」
△こどもの視点ラボレポート14より
田中
「でもそれをまっすぐ伝えてしまうと、おむつは早く替えてあげましょうみたいなことになってしまう。だから、おむっちゃんというキャラクターが、おしっこがたまっていく過程で、おもももも~となっていく感じが可愛くて笑える、でもああそうか、すごく重いんだって伝わるというくらいが、絵本としてはいいバランスなんじゃないかなと思いました」
△編集部田中。話し合いながらおむっちゃんを作っていくのがとても楽しかったのだそう。
おむつを扱うけれど、「おむつはずしの本」にはしなかった理由
絵本の領域では、トイレトレーニングの本は数多く出版されていますが、当初からその方向にはしないという話をしていたそうです。
石田さん
「おむつとさよならすることがいいことだ、という本もたくさんありますよね。でも、おむつはずしがうまくいかなくて心配や不安を抱えている親御さんは多いはず。私たちの活動は、そういう不安とかわからなさを少しでも減らしたいという気持ちでやってきたので、おむつに関しても、絵本の中ではただ楽しく、愛おしい存在としてのキャラクターを育てることを大事にしました」
太田さん
私は企画と作画を担当したのですが、あかちゃんのむっちりした手足の表情や、おむつの変化の様子を、自分の子どもを観察したり、思い出したりしながら描きました。あの愛おしい質感や温度が伝わったら良いなと思っていました。
△きりっと、むっちり、頼りになるね、おむっちゃん。限られたおむつ期の信頼できる相棒なのだ。
△見返しにはおむつ印刷風のあしらいが施されていて、おむつへの愛情がにじみ出る。
孤独になりがちな育児の中に、「楽しい」「面白い」をもっと
絵本『おむっちゃん』の製作に携わった「こどもの視点ラボ」のメンバーをはじめ、編集担当の田中と藤田も同じく子育て中の母親。絵本の製作にあたって、子育ての悩みについては持ち寄るものがたくさんありました。
田中
「子どもはかわいいし、楽しいこともあるけれど、子育ては不安と心配にも満ちていて、いつもドキドキしながら日々を過ごしていました。そんな想いを織り交ぜながら、ラボの皆さんと話し合う中でうまれたおむっちゃんには格別の想いがあります。」
藤田
「親になって、本当にいろんなことに迷いました。わからないこと、苛立ってしまうこと、どうしようもなくて泣けてしまうこと。いまの育児は本当に孤独で、ちょっとでも気が休まる場所や、何も考えずに笑える時間がほしいなと、こどもを育てながら思っていました。ただただ可愛い赤ちゃんのようなおむっちゃんの存在が、子育てをする親御さんたちにとってちょっとでも安らぎになったらいいなと思っています」
このたび誕生した『おむっちゃん』は、頑張る親子に必ず寄り添ってくれる愛すべきキャラクター。赤ちゃんの誕生のお祝いにも、成長のしるしにもおすすめの絵本です。日々の育児のそばに、おむっちゃんを置いてみてはいかがでしょうか。
△ラボメンバーと編集部でパチリ!
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◎イベント情報◎
★「こどもの視点ラボ」による12の研究が楽しめる体験型展示が名古屋巡回中★
日時:2026年5月22日(金)~7月5日(日)
場所:名古屋PARCO 南館9F PARCO HALL(愛知県名古屋市中区栄3-29-1)
この後全国を巡回予定
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<こどもの視点ラボについて>
こどもの当事者視点とはどのようなものかを真面目かつ楽しく研究している国内電通グループ横断ラボ。
「大人がこどもになってみる」ことで子どもへの理解を深め、親と子、社会と子どもの関係をより良くしていくことを目指して活動中。https://kodomonoshiten.com/
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