日本発のコスメブランドが“J-Beauty”として世界市場で存在感を高めるなか、伊勢半グループの「ヒロインメイク」も着実にその歩みを進めています。日本国内ではマスカラブランド 4年連続売上No.1※として高い認知を得ているほか、SNSを起点にした口コミの広がりや、訪日客による購買体験を通じて海外にも波及。
その裏では、各国の規制や流通、カルチャーギャップと向き合いながら挑戦を重ねる社員たちの姿があります。今回は「ヒロインメイク ロングUPマスカラ スーパーWP N」の海外展開を軸に、海外営業戦略部の向畑優・明上佳乃子の話から、現場の奮闘と未来への展望を紐解きます――。
株式会社伊勢半 海外事業本部 海外営業戦略部 向畑 優
株式会社伊勢半 海外事業本部 海外営業戦略部 明上 佳乃子
※出典:インテージ SRI+ マスカラ市場/期間:2022年3月~2026年2月/販売金額・販売個数
日本発コスメ“J-Beauty”の存在感と伊勢半の挑戦
近年、日本の化粧品ブランドはグローバル市場において存在感を示し始めています。以前は、韓国コスメがトレンドを牽引する場面も多かったものの、品質の高さや繊細な設計思想が評価され、“J-Beauty”への注目が高まっています。SNS上の反応だけでなく、実際に海外の小売業者から日本のメーカーへ取り扱いを求める問い合わせが寄せられるなど、日本ブランドへの関心が広がっていることが伺えます。
伊勢半もこうした流れの中で海外展開を加速させています。主力ブランドである「ヒロインメイク」は、これまでアジアを中心に支持を集めてきましたが、近年はアメリカ市場での成長が顕著です。以前は、すでにブランド認知が高い現地在住の日本人やアジア系のユーザーが中心だったものの、近年ではSNSによる情報拡散が加速。人種や国籍を問わずオススメ商品として紹介され、オーガニックな口コミの広がりとともにEC売上も増加傾向になっています。日本国内でもインバウンド注力店の展開強化により、訪日客が日本で購入した商品を帰国後に発信する流れも、認知拡大を後押ししています。
海外市場ではヒロインメイクを含む全ブランドを
コーポレートブランドである「KISSME」として展開
「ヒロインメイク」世界へ広がるブランド力
ヒロインメイクの海外展開は、オンラインとオフラインの両面を組み合わせた戦略が特徴です。特にアメリカでは、ECチャネルの拡大と同時に日系・アジア系流通をはじめ、よりローカルに根差した小売先へと展開を拡大することで、現地消費者にとってより身近な存在になることを目指しています。
ブランドの象徴的キャラクターである「エリザベート・姫子」の存在も大きな武器になっています。
海外ではエリザベート・姫子のビジュアルをメインにした販促物で日本らしさを演出
ヒロインメイクならではの世界観をより明確に打ち出し、他の日系ブランドとも差別化を図ることで、店頭におけるブランド表現の強化にもつながります。その中核を担うのが「エリザベート・姫子」というキャラクターであり、世界中の消費者に統一的なブランドイメージを浸透させていくためのカギになります。
グローバライズとローカライズの狭間で――現場が模索し続けた最適解
今年リニューアルした新商品「ヒロインメイク ロングUPマスカラ スーパーWP N」の海外展開において、現場が直面した最大のテーマは、世界共通の統一感と現地市場への適応、すなわちグローバライズとローカライズの両立でした。ブランドとして世界共通の価値や世界観を維持しながらも、言語や文化、購買行動の違いに応じた最適化を図る必要があり、そのバランスの見極め・調整はかなりの労力を割いたといいます。
「ヒロインメイク ロングUPマスカラ スーパーWP N」
英語パッケージ(左)、日本語パッケージ(右)
同じ訴求点・コピーでも言語に応じて見せ方を変えている
例えば、日本で訴求力を持つ言葉がそのまま海外で通用するとは限りません。店頭や販促物で使用するコピーを日本語から英語に翻訳して提案したところ、「日本語のままの方が魅力的だった」という反応や、「想定した訴求が別の価値として受け取られた」といったこともありました。
一方で、過度にローカライズを進めてしまうと、ブランドとしての統一性が失われ、グローバルブランディングが機能しなくなる懸念もありました。そのため、どこまで共通化し、どこから現地に委ねるか、という線引きを関係者間で何度も議論しながら進められました。
パッケージや販促物の見せ方でも同様の課題がありました。ブランドを象徴するキャラクター「エリザベート・姫子」を軸に訴求する方針は共有しつつも、現地の消費者にとって魅力的に映る見せ方は国によって異なります。
裏表が英語と日本語で差し替えられる販促ディスプレイ
さらに、店頭展開においても各国の事情は大きく異なります。スペースや素材に関する制約があり日本仕様のディスプレイがそのまま使用できないことも多くあります。
例えば、日本では紙製のプロモーションディスプレイがよく用いられるところ、海外では紙製がNGという場所もあります。とはいえ、ひとつずつオーダーメイドではコスト面からも現実的ではありません。そこで現地パートナーと対話を重ね、意図を丁寧に共有しながら、徐々に最適解へと近づいていきました。結果的には、最大公約数となるサイズや構造を導き出し再設計することに。
こうした物理的な制約への対応も含め、現地にあわせ最適化しながらブランドの世界観をどう表現するか試行錯誤の連続でした。しかし、このプロセスそのものが、ヒロインメイクがグローバルブランドとして成熟していくために、必要な足掛かりなのだと思います。
世界No.1の“J-Beauty”ブランドを目指して
伊勢半のグローバル展開は、今後さらに加速していく見込みです。すでに参入している市場での販路拡大や新規展開国の開拓にあたっては、成分やパッケージなど、国内市場のような画一的な対応ではいけない場合がほとんどです。
現在、一部地域では現地ニーズを取り入れた専用商品も展開していますが、将来的な展望としては、ローカライズや限定商品の開発にもさらにチャレンジしてみたいといいます。そして、プロモーションを担うオンライン施策の強化も欠かせません。SNSやECを活用した情報発信と購買導線の最適化により、ブランド価値の向上と売上拡大の両立を戦略的に進めていく考えです。
日本No.1から世界No.1へ。その道のりは決して平坦ではありません。しかし、現場で挑戦を続ける社員たちの努力と創意工夫こそが、KISSMEを次のステージへと押し上げる原動力となっていくことでしょう。