これまではインストゥルメンタルを中心に発表し、歌ものでは基本ゲストボーカルを迎える形で楽曲を制作してきた和久井だが、今年2月に発表したEP『utas』で、初めて自身のボーカルを全面にフィーチャー。
Photo by Rintaro Kanemoto
歌との距離感「できないから、やりたかった」
―『Nothing But Living』は和久井さん自身の歌が全面にフィーチャーされた初めてのアルバムになりましたね。
和久井:『utas』を作った時点で、まだ出せなかった歌ものの曲が結構残っちゃってたので、その曲たちをアルバムという形で出そうっていうビジョンはその頃からなんとなくあって。あとは今年の1月から3月にかけて現場が少なくて、制作をする時間がすごく取れたので、そこで新しい曲をいっぱい作った感じでしたね。
―2ndアルバム(2024年発表の『Into My System』)の頃からちょっとずつ自分が歌う曲を作り始めて、当時はまだ表に出すのは躊躇してたけど、いろんな経験を経て、それを出してみようと思えたのが『utas』で、今回のアルバムもその延長線上にあるわけですよね。
和久井:そうですね。でも2ndを作ってた頃はまさかこんなにいっぱい歌うことになるとは正直思ってなかったというか、歌はあくまでサブみたいなイメージではあったんです。自分一人だと自信が持てなかったんですけど、周りが「歌いいかもね」みたいに言ってくれたのが大きくて、だんだんライブでも歌えるようになってきて、自分の中で結構変わってきたからできたアルバムなのかなと思います。
―もともと歌に対して憧れがあったのか、「できないのが悔しいからやりたい」みたいな感じなのか、それとも日常的なものとして身近にあったから、歌うことも割と自然だったのか。
和久井:歌に憧れていたわけではなくて、最初はできれば歌いたくなかったというか(笑)。でもやっぱり歌の表現をできるようになったら、作れる音楽の幅も広がるんじゃないかなって。ピアノは3歳からずっとやってきてるから、自分の中でできて当然になってるけど、大人になってからコーラスをしたり、人前でちょっとだけ歌う機会があると、やっぱり歌がダントツに苦手なんですよね。そもそもずっと音楽の勉強をしてきたから、音程が合ってるか外れてるかの分析はできるけど、自分の体から出すものをコントロールできないっていう、ジレンマみたいなものを感じて。そこからちょっとずつ歌と向き合うようになってきたので、どっちかっていうと、やっぱり悔しさというか、「できることを増やしたい」みたいな気持ちが強かったですね。「できない楽器をできるようにしたい」みたいな感覚から始まった気がします。
―やっぱり和久井さんの軸にあるのは「作曲家」という部分で、でもそこからの派生で、打ち込みのトラックメイクも自分でやるようになったり、いろんな方向に枝分かれしていった。作曲という幹があって、歌もその中の枝の一つみたいな感覚なのかなと。
和久井:それは本当にその通りですね。でもこうやって曲を並べて聴いてみると、「意外といいかも」って思えるアルバムになった気がします(笑)。
―シンガーソングライターとしての理想像というと、どんな名前が挙がりますか?
和久井:イヴェット・ヤングとか結構好きで。彼女はめっちゃギターが上手で、「ポップス」っていう感じに縛られないギターを弾くんだけど、でも歌はすごくキャッチーで、いいなと思います。
イヴェット・ヤング(Yvette Young):マスロック・バンドCovetの中心人物として活動している米カリフォルニア出身のギタリスト/作曲家
―ここでイヴェットの名前が出るのは和久井さんらしいなと思うし、小田さんが所属してるCRCK/LCKSとか、モノンクルとか、やはりその世代の影響はありますよね。
和久井:あると思います。やっぱり高校とか大学の頃はCRCK/LCKSとかモノンクルをかなり聴き込んでて、そういうサウンドに対する憧れがあったので、自然と滲み出てるところはアルバムの中にもしかしたらあるかもしれないなって思いますね。
―『utas』からミックスがモノンクルやodolなどを手掛けている染野拓さんに変わっていますよね。
和久井:やっぱりサウンドが好みというか、THE 歌ものっていうミックスよりは、トラックをちゃんと聴いてくれて、楽器の位置感をちゃんと大事にしてくれるのがすごくいいなって。あとは大学が一緒(東京藝術大学)なので、そのシンパシーもありますね。odolもめっちゃ聴いてたし、あと冨田ラボはめちゃくちゃ影響されてます。
―歌ものとインストでのメロディーの作り方の違いはいかがですか?
和久井:インストの曲を作るときはコード感からだったり、ピアノで曲を作ることが多いんですけど、歌の場合は自分が歌いたいフックになるフレーズがまず最初に頭の中にポンって浮かんで、それを元に自分なりにコードを付けたり、リズム付けをしていく感じなので、結構違いはありますね。歌の場合はサビのフレーズがポンって浮かんで、鼻歌から広げていくことがほとんどで、 やっぱり自分の声で出せる音域には限界があるから、そこはインストの場合とは全然違います。
「ポップスを作る」新たな意識
―歌ものであるという前提以外で、アルバムとしての方向性についてはどんな意識がありましたか?
和久井:「ポップスを作る」っていうことは結構意識していて、ジャズのアプローチだったり、フィジカルで見せるっていうのをほぼ全くしてない気がして。2曲ぐらいはそういうことも意識してるかもしれないですけど、それ以外は「いかに心地よく聴かせるか」を意識して作ったので、それは今までとは全然違う気持ちで作ってるなと思いました。
―竹内アンナさんをフィーチャリングで迎えた「Destiny」はディスコティックなエレクトロポップで、「ポップス」という方向性を象徴しているなと。
和久井:この曲はもともとDTMを触りながらベースのフレーズで遊んでて、そこからテンションが上がっちゃって、曲を作ってみようっていう気持ちになったんですよね。それでベースのリフにシンセを足して、よくわかんないフェイクを入れて(笑)、ワンコーラスできたぐらいで、ちょうどアンナちゃんから連絡が来たんです。プライベートの他愛もない連絡だったんですけど、そのときに「この曲アンナちゃんと歌ったら面白いかも」と思って、ラフのデモを送ったら、アンナちゃんも「これやりたい!」みたいに言ってくれて。だから、最初は軽い気持ちで作った曲なんですけど、アンナちゃんとやるってなってから、本腰を入れ始めてできたっていう経緯はありますね。アンナちゃんとは普通に友達としてよく遊んでる仲だったので、遊びの一環みたいな感じの始まりではありました。
―ループが基調ではあるんだけど、展開や構成がしっかりあって、そこはやはり「作曲家」らしい部分だなと思いました。
和久井:確かに、この曲の構成は面白いんですよね。アンナちゃんがラップしてる部分があるんですけど、そこは私がワンコーラス送った後に、アンナちゃんがぶっこんできたんですよ。
―2~3年前の和久井さんだったら、アンナさんと一緒に歌うことに躊躇してたかもしれないけど、今だったら自然と一緒に歌いたいって、素直に思えた?
和久井:本当に不思議ですよね。アンナちゃんに初めて会ったのがそれこそ2~3年前とかなんですけど、まさかこんな曲で一緒に歌うとは思ってもなかったです。でも自然の流れでこうなったというか。アンナちゃんのライブでも一緒にコーラスとかして、2人の声には親和性があるというか、一緒に歌うのがすごく楽しかったので、いつかやりそうな予感はあったんですよね。
―アンナさんからは歌に対して何か言われましたか?
和久井:いや、特には言われたことなくて、「沙良ちゃんの声めっちゃ好き」って言ってくれます。あ、でもレコーディングで一緒にスタジオに入ったんですけど、私の歌録りがあまりにも速くて、すぐ終わっちゃうから、それにめっちゃびっくりされました。私はいっぱいトライしても歌えないものは歌えないから、とりあえずいい感じのが録れたらそれでOKを出しちゃうタイプなんですよね。自分が気になってても、他人からすると全然気になってない場合が多かったりもするし。なので、歌に対しての2人の向き合い方の違いはすごく面白かったですね。
―アンナさんは逆に結構歌い直したりする?
和久井:ニュアンスとかめちゃくちゃこだわってるタイプで、それは私にはないところだから、すごいなと思ったし、逆にアンナちゃんからしたら私が全然気にしないのもすごい、みたいな。お互いそういう感じでしたね。
―和久井さんは鍵盤だとめっちゃ録り直すんですか?
和久井:鍵盤も録り直さないです(笑)。基本的にレコーディングは今自分ができるものが全てだから、「もっとできるかもしれない」と思うことがあんまりないんですよね。相当コンディションが悪かったり、明らかなミスはやり直すけど、そうじゃない限り基本的にやり直さないことが多いですね。
―これまでもバンド録音は一発でやったりもしてきたし、レコーディングはその瞬間を記録するもの、という意識が強い?
和久井:そうですね。できなかったら練習しなかった自分が悪いと思うようにして、そうすると「次は練習しよう」ってなるし、ここ数年ずっとそういう感じでやってます。
―バンド録音の楽曲でいうと、「HiFi Vague」はプログレッシブな演奏と歌ものとしてのキャッチーさが同居していて、素晴らしい仕上がりだなと思いました。
和久井:「HiFi Vague」を作ったのは2年半前とかで、「ちょっと歌ってみたい」と思うようになって、最初の頃に作った曲で。当時の自分はまだ手数が多いものだったり、派手な方に持っていきたい思いがあったから、結構激しめの曲になったんですけど、いざこれを歌ってみようとなったら、全然歌えなかったんですよ。なので一旦お蔵入りにして、寝かせておいて、アルバムを作るとなったときに、「そういえば、あの曲あったな」と思い出して、掘り出して歌ってみたら歌えるようになってて。今でも歌うのは難しいですけど、歌えるようになったのは不思議ですね。
―シンガーとしての成長を感じられたと。もともとインストだったものを歌ものにしたのかなと思ったりもしたんですけど、最初から歌を意識はしてたんですね。
和久井:意識してましたね。いつかのライブでやるための歌ものを作ろうと思ったんですよ、きっと。なので、ピアノの細かいフレーズが多かったり、拍子も5/8、5/8、7/4みたいな感じで、かなり攻めてたなって。でもそれはそれで、そのときにしか作れないグルーヴだから、そこはそのまま生かそうと思って、頑張って歌を乗せました。
「生きること」は人生のテーマ
―4曲目の「言わせばない」は一瞬「誤植?」と思いました(笑)。
和久井:「言わせないで」みたいなことを書きたかったんだと思うんですけど、タイトルをつけるのはかなり適当なタイプで(笑)。「言わせばない」も結構前に作った曲なんですけど、仮タイトルをこれにして、後で考え直そうかなと思ってたけど、結局みんなミーティングとかで「言わせばない」って言ってて、それがハマってきちゃったから、もう「言わせばない」でいいか、みたいな感じで、これになりました(笑)。
―メランコリックなミドルチューンで、これもポップスとしてすごくいいなって。
和久井:これも昔に書いた曲のうちの一つで、それこそ3年前とか、LioLanをやってたときに書いてた曲なので、キャサリンに歌ってもらう前提で作った曲なんです。なので、もうちょいキーも高かったんですけど、改めて歌ものアルバムを作るってなったときに、昔のデータを漁ってたらこの曲を見つけて。で、1番までできてたので、そこから先は今年になってから作ったんです。だからその当時思ってたことが1番には入ってて、2番は今みたいな感じで、時の流れを感じる歌詞になりました。
―最初と最後が同じ歌詞なんだけど、和声が違ってて、同じ言葉なんだけど違う感情が表されている。これも作曲家らしいアプローチだなと。
和久井:確かに、最後のコードに関しては、1番を作ってたときの自分では出なかったコードかもしれないなと思うし、あの終わり方を思いついたときは嬉しかったですね。最初のデモを作った段階で、頭サビを最後に持っていくデモにはなってたんですけど、当初は同じコードだったんです。でも歌のメロディーもちょっと変えたくなって、低くしたりして。時を経て作ったので、「同じ言葉だけど、人って変化してるんだな」みたいな気持ちになりましたね。
―これまでインストをメインに作ってきた和久井さんにとって、作詞は歌うこと以上に大変だったのでは?
和久井:大変でしたね。紙に言葉を書いてはぐしゃーってやって、っていうのを何回も繰り返して。でも不思議とできてるんですよ。なんでできたんだろうって、自分でもわからないんですけど、気づいたら歌詞ができてたっていう感じ。
―普段から言葉を書き溜めてるのか、それとも曲ができてきたときに、それに向けて書くのか、どちらが多いですか?
和久井:完全に後者ですね。書き溜めたりは全くしてないです。普段から本を読むのは好きなので、歌詞が書けなくなったら、そのとき自分が読んでる本とか、読んで感動した本をパラパラってめくると、そこに書いてある言葉がその曲とリンクしたりして、そこから膨らませたりすることも多いので、本は結構大事な材料になってますね。
―全体的には、普段なかなか口に出せないことが歌詞になっている印象を受けました。なので、ちょっと内省的だったり、ディスコミュニケーションや孤独感が歌詞に反映されてるなとは思って。この制作期間が和久井さんにとってそういう時期だったのか、それとも普段の人間性として、感情を口に出せないで溜めちゃうことが多いのか、どちらが近いですか?
和久井:子供の頃から人に何かを伝えるのはめちゃくちゃ苦手で、それは今も変わらないので、そういう背景はあると思うんですけど、このアルバムには結構他者が登場してる気がして。自分の思ってることも大事だけど、でも結局他人がいないと何も進まないというか、自分は他者に動かされてる気がして。だからやっぱり「他者」は自分にとってめちゃくちゃ大事な要素で、アルバムの制作期間のテーマになってた感じですね。
―1月から3月は現場の数が少なくて、制作期間になったという話でしたが、つまりは「他者」と会うことも減った時期だったと思うから、そういうことも関係してる?
和久井:制作期間は基本的にダウナーだった気がします(笑)。すっごい孤独というか、ずっと寂しくて、そういう時期に作った歌詞が何個もある。「Chord」もそうだと思うし、「FAR」もそうですね。今は自分の生活も変わってきて、人ともよく会ってるので、1月から3月ほどは暗くないけど、その時期は特に暗かったと思います。だから今聴くと恥ずかしいです。自分の作品ってなんでこんな恥ずかしいんだろう……もう見たくない(笑)。あとはみなさんにお任せしますって感じなんですけど。
―言葉ってほんと難しいですよね。言葉にしないと伝わらないこともあるけど、でもやっぱり言葉にならないからこそ音にしてるし、曲にしてる。和久井さんの歌詞を読むと、もちろん言葉は言葉で大事なんだけど、でもやっぱり言葉にならないものがあるんだっていう想いが伝わってきます。
和久井:言葉は当てにならないってずっと思ってるし、自分が思ってることなんてちゃんと伝わらない、そもそもそこを諦めてる部分が自分の中にあって。でも言葉を使わなきゃいけない、伝えなきゃいけない、その矛盾っていうか、そういうことは常にずっと考えてます。でも言葉にならないけど、衝動的に何か行動したり、「気づいたらこうなってた」みたいなことも結構ある気がして、そっちの方が生きる上で自分にはしっくりくるから、そういうものを大事にはしていて。だから歌詞は難しいなと思うんですけど、でもその作業をするのはすごく大事な時間だったなと思うし、後から見返して、「こんなこと考えてたんだ」って思える日が来るかもしれないなって。
―『Nothing But Living』というタイトルにはどんな意味を込めていますか?
和久井:アルバムのジャケットを依頼するにあたって、コンセプトをまとめたときに考えたタイトルで。自分が生きる上で、「何かを目的にしなきゃ」とか「こうなりたい」とか、そういうのを一旦置いておいて、「ただ生きてるだけ」っていうのを大事にしたいなと思って、それでこのタイトルにしました。今回収録されてる曲たちも生活に基づいているというか、未来じゃなくて今に向かってる感じがしたので、このタイトルがしっくりきたし、「生きること」は自分の人生のテーマでもあるから、このタイトルは結構気に入ってますね。
―ジャケットに描かれているのは洗濯物ですよね?
和久井:そうです。洗濯もやっぱり生活の一部だし、日常の行為だし、汚れを洗い流すから、「浄化する」みたいな意味も込められてて、すごくいいなと思って。あとさっき話した「言葉で言い表せないもの」というか、「物質的じゃなくて、もっと広い視点で物事を見たい」みたいな、そういう抽象的なオーダーもしていて、それで月だったり、ちょっと宇宙っぽい要素も入れてくれて、すごくいいジャケになりましたね。
―「生きる」というテーマを象徴しているのがラストナンバーの「shoes」だと思います。
和久井:この曲は確か『utas』のときに作ったんですけど、自分の中でポップすぎて、まだ出す勇気が出なかったんです。なので、できたのは去年の夏とかだと思うんですけど、この曲は特に思い煩うこともなく、歌詞もスッとできて、「誰かと一緒に歩いていく」みたいなことをただストレートに歌ってる、爽やかな曲になっていて。
―ラストの〈忙しくなくすぎる日々の中で 今 今 今 古くなる体その対極に 新しくなる精神があってさ それが嬉しくて君が好き〉という歌詞は、途中の録音の話だったり、「言葉よりも衝動」という話にも通じるというか、今その瞬間の積み重ねが「生きる」ということなんだという、和久井さんの哲学が明確に反映されているように思います。
和久井:そうかもしれないですね。年を取ったりすることに対して、古くなる体だけど、考え方はずっと変化してる、そういう人間のシステムみたいなことが面白いなって、そのとき思ったんだと思います。今を生きることによって、未来が勝手にできるじゃないですけど、そういう答えに最後の最後で行き着けたのはよかったですね。
新しい作り方、新しいサウンド
―ここまで「歌」を軸にお伺いしてきましたが、サウンドメイクの部分でもこれまでにない挑戦が散りばめられていますよね。
和久井:3曲目の「膜」に関しては、rei harakamiがめちゃ好きで、彼のトラックにすごい影響を受けてる気がして。「キックがあって、スネアがあって、ハットがあって」ではなくて、何かの物音でリズムを構築してる、みたいなアプローチがすごく面白いなと思って、自分もそういうものを使ったり。あとは「HiFi Vague」の途中のセクションでちょっとフューチャーコアっぽい部分があるんですけど、そこは半日ぐらいかけてトラックを作りました。
―かなりいろんな音がレイヤーされていますよね。
和久井:そうですね。ベースだけでもかなりいろんなシンセを使って、サブのローを出したり、16分音符一個だけちょっと違う音にしたり、Virtual Riotとかスクリレックスとかをすごく聴いてた時期があって、そういう要素をちょっと入れてみたくて、そこは時間をかけた気がします。あとはLAのプロデューサーの方と作った「よせてはかえす」と「氷」は、初めてのコライト。「LAからプロデューサーが来てるから、一緒に曲を作ってください」って、フジパシフィックの方がつなげてくれて、スタジオで初めてお会いして。もともと私が録り溜めていたデモを彼に送ってて、その中から曲を選んで、一緒に曲を作っていく作業をしたんです。
―LAのプロデューサーってどなたですか?
和久井:Franco Reidさんっていう方で、K-POPとか、アジア圏のアーティストのプロデューサーをやったり、アメリカの若手の音楽家に曲を書いたりしていて。私も最初は存じ上げなかったんですけど、海外でやってる人と曲を作るってどういうことなのかは気になってたので、それでやってみたっていうのはあって。
―実際にコライトしてみてどうでしたか?
和久井:今までにない曲の作り方ができてすごく嬉しかったのと、意外と人と作ることによって、自分が受け入れられるものとそうじゃないものがあるんだと思って。だから最初のアレンジはちょっとしっくりこなくて、「ここは変えてください」って言ったりもして、そこに気づけたのはすごくいい経験だったなと思うし、逆にとってもいいアイデアもたくさんいただけて、自分にはない新しい要素が楽曲に彩りを与えてくれた、素晴らしいプロデューサーと出会えて制作できて嬉しかったです。また誰かと作ってみたいなと思いますね。
―いろんなトライもありつつ、歌もののアルバムを作り終えて、作曲家=和久井沙良にとってどんな経験になったと感じていますか?
和久井:一旦自分が1枚のアルバムを歌で作れるようになったっていう、そこは認めたいなと思うんですけど、ここからまた歌をやるのか、インストに立ち返るのかは正直今はわからなくて。まず一回ポップな歌ものを作ったから、そうじゃないアプローチの歌ものにも挑戦してみたいなと思ったり、トラックバチバチじゃなくて、人間の演奏に立ち返った表現をしてみたいなとも思ったり。一旦これはこれとして、「よく頑張りました」っていう感じで、いろんな人に聴かれてほしいなと思うんですけど、また次は違うものを作りたいと思い始めてる、飽き性の自分がいることも事実ではありますね。
―やっぱり先々まで計画を立てるというよりは、その時々の他者との出会いを通じて、今を積み重ねていく。そこは変わらないのかもしれないですね。
和久井:そうですね。本当に自分の人生は全部が予想してない方向に行ってるんですけど、でもそれがすごく面白くて。最初はそれがあんまり良くないなと思って、ちょっとへこんだりもしてたんですけど、最近ようやく、それを積み重ねてきたことによって、面白くなってきた気がする。それは多分20歳とかのときではわからなかったことだと思うから、20代後半になって、そういう気づきを得られたのはすごく嬉しいですね。まだまだやりたいことはたくさんあって、今は普通にピアノを弾きたいとも思っていて、ピアノソロのアルバムとかも作りたい。やっぱりブラッド・メルドーとかティグラン・ハマシアンも大好きだから、もっとそういう脳みそを使ってみたいとも思ってますね。
和久井沙良
『Nothing But Living』
発売中
再生・購入:https://ultravybe.lnk.to/nothingbutliving
01. FAR
02. Destiny(feat.竹内アンナ)
03. 膜
04. 言わせばない
05. 春なんて
06. HiFi Vague
07. よせてはかえす
08. 氷
09. Chord
10. repeat
11. こそばゆい
12. でてきて
13. shoes
Sara Wakui -Four Elements- Release Live Tour 2026 ”Nothing But Living”
2026年9月23日(水・祝)大阪・心斎橋 LIVE SPACE CONPASS
2026年9月24日(木)愛知・名古屋 新栄 club (O)Utopos
2026年9月26日(土)東京・表参道 WALL&WALL
出演:和久井沙良(Vo, Key)、高橋佳輝(Ba)、上原俊亮(Dr)、イシイトモキ(Gt)
チケット購入:https://eplus.jp/sarawakui/


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