「環境面はかなりタフな部分。標高も環境も湿度もいろいろと変わるし、時間も遅い。またちょっと前回とは違うアプローチになりますけど、それでも臨機応変にいい準備ができたらいいなと思います」と上田綺世も語っていたが、事前キャンプでさまざまな想定外を乗り越えた日本代表はタフな戦いができるはずだ。
そのチュニジアだが、ご存じの通り初戦のスウェーデン代表戦で1-5と大敗。サブリ・ラムシ監督が更迭され、サウジアラビア前指揮官のエルヴェ・ルナール監督が就任した。2025年3月のサウジアラビア戦では守備的戦術を前面に押し出し、敵地の埼玉スタジアムでスコアレスドローに持ち込んでいるだけに、この指揮官は日本にとって難敵だ。“解任ブースト”でパワーアップする可能性があり、決して侮れないのだ。
「直近のサウジと引き分けた試合は、ローブロックで引かれてこじ開けられなかったイメージがあるんですけど、チャンスはあった。そういうところをしっかりと決め切るのが大事かなと思います」と話すのは、約1年3カ月前のサウジアラビア戦に出場した伊東純也だ。「今回のチュニジアはたぶん引いてくると思うんですけど、サイドからのクロスが大事なってくる。世界を見てもゴールが生まれているのはそういうところかなと。スペインも崩し切れなかったですし(※初戦でカーボベルデ代表とスコアレスドロー)、やっぱりローブロックの時は1本しっかりと合わせることが大事ですね」とも言及。
南野拓実、三笘薫に続き、久保建英までもがオランダ戦での左ひざ負傷で一時離脱を余儀なくされる中、伊東が担う役割はより大きくなる。森保一監督が「頭から勝負をかける」と考えるなら、伊東は先発だろうし「後半にギアを上げる」というプランなら、オランダ戦と同様にジョーカーの一番手となるだろう。いずれにせよ、得点に直結する仕事をしなければならないのは同じ。2023年10月のチュニジア戦でゴールを奪っている背番号14には、その再現が期待されるのだ。
「直近のチュニジア戦で(ゴールを)取っているので、いいイメージはあります。ただ、2022年6月は負けていますし、警戒はしないといけない。日本としてはしっかりとやれば勝てる相手ではあると思うので、自分は出た時に結果を出すだけですね」と伊東は普段通り、飄々とした様子。自然体で自分らしく準備を進める構えだ。
攻撃陣では目下、チーム最年長ということで、これまで以上にチームを引っ張るという意識も強いだろう。33歳という年齢を感じさせないキレと鋭さは健在。巧みなチャンスメークを数多くができるのが、伊東のすごさだ。
プロキャリアをスタートさせたヴァンフォーレ甲府の佐久間悟監督(※前甲府社長)は「選手たちを20~30メートルの距離で走りを競わせたら、世界トップと日本人選手でもそれほど差がないけど、10メートルのスプリント力は別。ヨハン・クライフはその神様だったと言われていますが、純也もその『ゼロ・ジュウ』がピカイチなんです」と太鼓判を押していた。
一気に加速して敵を抜き去るスピードは、30代に半ばになっても落ちるどころか、むしろ増している印象もある。その爆発力にはチュニジアDF陣のみならず、世界トップの守備陣でも手を焼くはず。次戦では敵をキリキリ舞いさせたうえで、まだ奪っていないワールドカップ初ゴールを手にするというのが、ベストなシナリオだ。
そんな伊東のカタール大会からの約3年半を振り返ってみると、2024年のアジアカップで途中離脱、スタッド・ランスの2部降格、古巣ゲンクへの復帰など紆余曲折があった。それでも日本代表では常に高値安定のパフォーマンスを維持し、目に見える違いを示し続けてきた。目下、日本代表は主力級アタッカーが相次いで離脱する苦境に陥っているが、それでも高いレベルの攻撃力をキープできている。それは伊東純也という傑出したアタッカーがどっしりと構えていることが大きい。伊東の存在は森保一監督、そしてチームメートに大きな安心感を与えているのは間違いない。
まさに攻撃陣の大黒柱に君臨するイナズマ・純也。
取材・文=元川悦子
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