「元女性の男性戸籍。訳あって女に戻った現役セクシー女優」。

今年3月、衝撃的なキャッチコピーの作品で大きな話題を呼んだセクシー女優・雄乃ゆめさん。しかしその言葉の裏には、既存の「男女」の枠組みには収まらない、壮絶な葛藤と自己受容の人生があった。

「元女性で男性戸籍」話題のセクシー女優が語った半生。「女性に...の画像はこちら >>
高校時代に学ランを選び、男性ホルモン治療を経て戸籍を変更。地獄のような期間を乗り越え、彼女がたどり着いた天職は「セクシー女優」だった。自らを「最強のモンスター」と笑う雄乃さんが語る、性と生、そして「私」という唯一無二の生き方に迫るディープインタビューを2回に分けてお届けする。(記事は全2回の1回目)

元女性で男性戸籍。訳あって女性に戻った現役セクシー女優

――今年3月、「元女性で男性戸籍。訳あって女性に戻った現役セクシー女優」という成人向け作品が発売され、話題になりました。雄乃ゆめさんは「元女性で男性戸籍」とのことですが、現在どのような状況ですか?

雄乃:生物学的な性は女性です。

――性転換手術はしていないということですか?

雄乃:はい、性転換手術はしていないんです。でも、過去には外見が男性とわかりやすいようにホルモン治療をして、戸籍変更(戸籍名は男性名に変更済で、戸籍の性別は変更なし)もしました。

――「女性に戻った」とは、どういう状態ですか?

雄乃:わかりやすい説明として「女性に戻った」という言い方をしているのですが、私としては「私は私になった」というだけです。
でも、戸籍上は女性の名前をなくして、男性の名前として生きてます。

――名前を女性から男性に変えるときはどうしたんですか?

雄乃:家庭裁判所で性同一性障害の診断書を提出したらスムーズにいきました。

――そう考えると、男性・女性という概念がどういうものなのか、ちょっと難しくなっちゃいますよね。

雄乃:私の定義としては性器の違いですよね。男性器か女性器で生まれたか、という生物学的性が一番わかりやすい基準だと思います。

自然と集まった似た境遇の友人たち

――なるほど。それは非常にわかりやすいです。ご自身が性別に対する違和感を覚えたのは何歳くらいですか?

雄乃:母が女性器の洗い方もきちんと教えてくれていたので、自分の体に対して「何か変だな」と違和感を抱くことはありませんでした。小学校は制服でしたが、スカートではなく、私と似たような今で言うボーイッシュな友人と短パンで登校していました。中学校では「全員スカート」という決まりがありましたが、小学校からの友人と一緒だったので我慢できたんです。そして高校は、小学校からの友人とも離れていました。そこで、ふと「学ランを着よう」と決めたんです。私には、性同一性障害の診断書をもらえるという確信があったので、実際に診断書を取得し、高校には学ラン姿で通っていました。
あとになって気付くのですが、小中学校のときに、一番近くで過ごした友人も性別に違和感を持っていたようです。似たような友人が近くにいたので、小中学校は性別の違いをあまり意識することなく生活できていたのかなと思います。

――性同一性障害の診断書をもらえるという確信は、どこから生まれたんですか?

雄乃:それがわからないんですよ。でも、私の生活歴から、性同一性障害と言えば言えてしまうような要因はあったんです。例えば七五三のときに男子の袴を着たり、スカートが大嫌いだったり、ずっとショートカットにしていたり、その要因は拾ってこようと思えばいくらでも拾ってこられるんです。それで確信があったんです。

――友人にトランスジェンダーと思われる子がいたのは、意識せずに友達になっていったのですか?

雄乃:そうですね、やっぱり周りになんとなく集まるんです。類は友を呼ぶんですかね(笑)。4人のグループ中、1人は普通の女の子、もう1人は私に性同一性障害の診断書のことを聞きに来るような子、残りの1人はボーイッシュな子でした。

――すごい確率ですね。

雄乃:すごいですよね、この引きは(笑)。

――意識せずとも、子どもって似たような人と仲良くなりますからね。


雄乃:短パンやズボンを穿いていた子たちが集まったみたいな感じです。

――周りの同年代の女の子たちを見ていたときに、「私はどうして男子の方の思考なんだろう」と、思わなかったですか?

雄乃:う~ん、どうなんだろう。そもそも周りの友達がそういう友達だから、おかしいとか特別だとか思っていなかったんですよ。

――でも子どもながらに男性器ぐらいはわかりますよね。「自分にはないぞ」と思いませんでしたか?

雄乃:兄がいたので、性差ははっきりわかっていたんです。男性は男性器、女性は女性器という、生物学的な女性としての自覚はあったんですよ。でも、気になってくるのは世間でいう「心の性」という部分じゃないですか。そこが問題なんです。

「可愛い」が苦しかった。女性として見られることへの違和感

「元女性で男性戸籍」話題のセクシー女優が語った半生。「女性に戻った」のではなく「私になった」
雄乃ゆめ
――難しい話ですね。ということは社会的にも、医学的にも、性別の違いは何を基準にしているんですかね。

雄乃:女性社会の中で、そもそも生きづらさを抱えている女性ってたくさんいると思うんですけど、私はその中の1人の可能性もあるな、と今となっては思っているんです。
その生きづらさが私の場合は顕著に出ていたのかな、という見方もできるんですよ。だから、女性として生きることがとりあえず無理で、私の選択肢に男性と女性しかなかったので、「じゃあ男性に行くか」という感じで進んでいったのかなと、まあ可能性の話ですが。

――一概には言えないんですがトランスジェンダー男性の中には、容姿も男性に近づけたり、ホルモン注射で声も男性風にしたりする方がいますが、そういうことはしなかったんですか?

雄乃:高校生、大学生のときは男性として生活をしていたので、そっちの方向にいっていた時期もあります。私が男性として生活する前から、「可愛い」と言われるのがすごく苦手で、とても嫌悪感を持っていた言葉だったんです。でも、人から「可愛い」と言われて、悲しくて苦しくなるよりは、もう自分からその苦手なものに近づけていこう、という思考が生まれたんです。だから、自分を可愛くすることによって「可愛いって言われるのは当たり前だな」と思えるように、男性として学ランを着ていたときも、「可愛い男子であろう」と思っていました。

――女性的な扱われ方での「可愛い」は嫌でしたか?

雄乃:女性性に対する「可愛い」は嫌でしたし、すごく苦しかったです。私が学ランを着て男性性を示そうとしている中で、「女」と言われたり、「可愛い」と言われたりするのが嫌だから、可愛い男子に寄せていったという感じです。

――そのときは、可愛い男子として「可愛い」と言われるのはよかったのですか?

雄乃:私があえてそのポーズをとっているので納得していました。だから私は自分に「可愛い、可愛い」とずっと暗示をかけていたんです。

――また昔の話になりますが、小学校・中学校では容姿が女性だったじゃないですか。恋愛対象というのは?

雄乃:性的にムラムラした相手は男性でした。
保育園の頃、お昼寝の時間にちょっかいを出していた相手は男子なんです。でも、小学3年生のときに、お風呂に一緒に入って性器を擦り合わせて遊んでいたのは女子なんですよ。だから、子どもの頃は性的にムラムラして、気持ちよければなんでもよかったんだと思います(笑)。

今は男女とかではなく「私」

――男性性、女性性が行ったり来たりする感覚はあるのですか?

雄乃:今も当時も、それはないですね。自分の肉体を男性に近づけようとしたとき、自分の胸や女性器に対してすごい嫌悪感を持ったんですけど、可愛いを受け入れてからは美を追求したり、気持ちよくなるためやお金を稼ぐためにも女装をしました。これを他者から見たら、行ったり来たりしているように見えるかもしれませんが、私としては性表現(社会的性)は変えても心の性と言われるものは、あまり変わってないんです。今は男女とかではなく「私」として自認しているんです。

――性行為のときは女性の身体として、女性器が感じるんですか?

雄乃:女性器は感じます。元々女性器なので、女性器が男性器を求めるのは生理現象としてしょうがないっていう発想になったんです。それに、性自認と性的指向は別件の話なので、私がゲイであろうとレズであろうと、私の性自認の前提には関係がない話ですね。

――混乱しますね。

雄乃:前提として、性自認と性的指向は別。別というのが、もうこの界隈の前提となっています。


――混乱してきたので、再び整理すると性自認は男性ですよね?

雄乃:はい、高校生と大学生の男性として生活してたときはそうでした。

――でも、性的思考は男性でも女性でもなくて、女性器を使うんですか?

雄乃:女性器が自分の体にあることは、もちろん重々承知しています。でも、そのことに嫌悪感を抱き続けていても、自分が苦しいだけですし、生きづらさも変わりません。だったら、どうすれば自分が少しでも楽に生きられるのか、そう考えるようになったんです。だから、女性器があることを積極的に受け入れたいわけではないけど、ずっと苦しみ続けるよりは、その現実を自覚したうえで、変えられるものは変えて、変えられないものはそのまま受け止める。そういう考え方になっていったんですね。

女子トイレ、男子トイレ。当事者として経験した日常

――なるほど。私は男だから、男の視点だと女性が好きなんです。雄乃さんも心が男だから、女性を好きにならないわけではないということですか?

雄乃:女性のことも好きになりますよ、私は性的対象のゾーンがすごく広いので、私のことを好きになってくれて、フィーリングや相性が合えばいいんじゃないかと思っているタイプなんです。

――恋愛に関して性差はそんなに重要な括りではないのですね。こういう話をすると、どうしても性行為や恋愛の話にいっちゃいますよね。岡崎京子さんの『リバーズ・エッジ』って読んだことありますか?

雄乃:読んだことがある気がします。

――『リバーズ・エッジ』にゲイの男子高校生が出てくるのですが、同級生の女の子が彼に興味を持って、下半身のことばかり質問するシーンがあるんです。そのゲイの男の子が性的な質問ばかりされるので、その女の子にして「失礼だよ、ゲイだからといって、すぐに性の話を持ち出すのは」って言い返すんです。なので、私もその方向にいきがちだから、すごく反省しています。

雄乃:いえいえ、全然大丈夫ですよ。私の生き方は性的欲求とすごく結びついているところがあるので。それと性自認は別物だな、と思いながら割り切って生きてきたという話なんです。

――子どもの頃に、トランスジェンダー的なところで苦しんだことはありますか?

雄乃:それよりも、家庭環境の問題が大きかったです。

――逆に、得したことなどはありますか?

雄乃:別にないですね。親戚の結婚式などに呼ばれて行ったとき、ショートカットの男子みたいな格好だったので「トイレが違うよ」と注意されたりしましたし、別に得はしていないです。

――そのトイレはどうしていますか?

雄乃:現在は普通に女子トイレを使っています。学ランを着ていた頃は男子トイレだったかな。それか、当時から男女どちらも入れるトイレがあった気がします。

――共用のトイレですか。

雄乃:あった気がします。看護大学に進学したときは、カミングアウトせずに入学したので、男子更衣室と男子トイレを使わせていただいていました。

事実を積み重ねたほうが周囲の理解を得られやすい

――高校の頃に、急に女子制服から学ランに変えたときは、明確なきっかけがあったのですか?

雄乃:きっかけは何なんでしょうね、わからないんです。

――最初は女子制服だったのが、急に学ランになって、周りの反応はどうでしたか?

雄乃:周りは、私が元々ぶっ飛んでいることがわかっていたので、「雄乃ならやりかねない」という反応でした。ありがたいことに3年間同じクラスで生活できたので、みんな理解してくれていました。

――そのときは「私は男性性です」と主張していたのですか?

雄乃:自分が男子生徒だと主張するよりも、男性ホルモンを打って学ランを着て、周りにわかりやすい事実を重ねていく方がいいと思っていたタイプだったので、徹底的に事実だけを変えてきました。

――男性ホルモンはいつ頃から打ち始めたのですか?

雄乃:男性であろうとしてからの行動スピードは早かったので、半年くらいカウンセリングを受けて高3の頃から打ち始めました。胸オペ(胸の切除手術)もする予定だったんですけど、貯めていたお金がなくなったので、できなかったんです。

――現在はセクシー女優として活躍しているから胸オペをしなくてよかったですね。

雄乃:そうなんです。手術回数増えなくてよかったです(笑)。

――男性ホルモンを打ってから、周囲の反応はどうでしたか?

雄乃:高校の先生が特別授業をしてくれたりして、周りはすごく優しかったです。

――よかったですね。男性ホルモン注射を打つと、まず何が変わりましたか?

雄乃:声が変わりましたね。今はセクシー女優の仕事をしているので、できるだけ高い声で話すように意識しています。ただ、気を抜くとすぐに低い声に戻ってしまうので、普段から気をつけて高い声を出すようにしています。あとは、陰核の肥大化、体毛が濃くなること、肌が汚くなってニキビがすごくできることですね。

――思春期にそれは大変ですね。

雄乃:それに性欲が本当に跳ね上がりますね。

※ ※ ※ ※ ※

「男性」「女性」という二元論だけでは語りきれない、自身のアイデンティティを雄乃ゆめさんは率直な言葉で語ってくれた。「男女とかではなく『私』」という一言には、長年の葛藤と、自分自身を受け入れるまでの歩みが凝縮されていたのだった。

「元女性で男性戸籍」話題のセクシー女優が語った半生。「女性に戻った」のではなく「私になった」
雄乃ゆめ
雄乃ゆめ
X:@onoyume_

<取材・文・撮影/神楽坂文人(X:@kagurazakabunji)>

※性の在り方は多様です。
・性的指向:どのような性別の人に恋愛感情や性的な関心を抱くか
・性自認:自分自身の性別をどのように認識しているか
・身体的な性の特徴:身体的・生物学的な特徴による性
・性表現:服装、髪形、仕草、言葉遣いなどを通じた性の表し方
これらは必ずしも一致するとは限りません。

―[雄乃ゆめ]―

【神楽坂文人】
世界一セクシー女優を取材しているカメラマン、ライター、インタビュアー。元成人誌編集者のため、最後の砦として活躍中。年間イベント取材数300本超え! 年間インタビュー数200本超え! バイクで都内を駆け巡り1日で複数の仕事を受けている。X(旧Twitter):@kagurazakabunji
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