第1回・第2回では美島さんの半生を振り返ったが、第3回では今のホスト業界に抱く想いを聞いた。
色恋営業や売掛が横行する現代のホストクラブを、伝説のホストはどう見ているのか。(短期集中連載 全3回の3回目)
今のホストクラブは「ホストパブ」
美島光司さん(以下、美島さん):伝統的な「ホストクラブ」というのは、リーゼントをバチッと固めて、ネクタイを締めてダブルのスーツを着るのがスタンダードなんです。ホストは生バンドの演奏に合わせて社交ダンスを踊れないとダメで、飲むお酒もウイスキーのロックがメイン。入場は会員制で、お客様はお金持ちのマダムがほとんどなので、どれだけ店が暇でも女の子をキャッチしに行くような品のない真似は禁止でした。なので、初回来店なんて半年に1回ぐらいしか来ません。
一方で、今のホストは若い女の子をターゲットにして、シャンパンやテキーラを激しく飲む。外でキャッチするのも当たり前です。僕らの時代は、そういった店はホストクラブではなく、「ホストパブ」と呼んでいました。
──では、ホストパブは比較的新しい業態のお店ということなんでしょうか?
美島さん:いや、僕の時代にもホストパブはありましたね。それこそミナミでホストしてたときは、ひっかけ橋(難波にある戎橋の通称)でホストがよくナンパしてました。体感としては、昔のミナミでもホストクラブは5~6店舗ぐらいで、あとは若い子向けのパブでしたね。
──今はホストパブの形態が主流だと思いますが、いつごろからホストパブは増えていったんでしょうか?
美島さん:明確な時期は断言できないんですが、2000年代に城咲仁くんに代表される「ホストブーム」が来て、普通のお客さんがホストクラブに来るのも当たり前になったんです。その辺からホストクラブとホストパブの境目が曖昧になって、伝統的なホストクラブは徐々に消えていきましたね。
──昔ながらのホストクラブがなくなることは寂しい気持ちもありますが、ホストパブの増加はもはや仕方のないことなんでしょうか?
美島さん:そうですね。現代のホストクラブは売上を増やすことを追及した結果、すべてをシステム化してます。
現在、歌舞伎町のホストクラブは現在5、6つのホストグループの寡占状態で、そのグループの中にはマニュアルや講習がしっかり整備されているところがあります。女の子への接客の仕方はもちろん、いかに女の子をハマらせるか、さらにはお金のない女の子を風俗に落とす方法まで、すべてが体系化されてます。そういった店舗が売上を拡大して、店舗を増やしていくことは資本主義社会では当然の結果ですよね。
ホストクラブの“本当の客”
美島さん:ただ、それはイコール、若い女の子が大金を稼がないと成り立たないビジネスでもあるということなんです。だって、普通に生きてる若い子はお金持ってないですから。歌舞伎町を歩いている普通の子を引っ掛けて、色恋で惚れさせて売掛させて、風俗とかAVに落として稼がせる。それを複数の女の子にさせるから、ホスト側は何千万、何億という売上を出せるわけです。
そして、それを何百人、何千人と繰り返すから、ホストグループは年商何百億と巨大化するんです。
──最近だと風俗やAV以外に、立ちんぼや海外売春をする女の子も増えていますよね。
美島さん:昔のホストクラブじゃ考えられへん光景ですよ。僕の美学として、「ホストと客はつぶし合い」って考えがあるんです。実際、昔は僕も女の子に対して無茶なこともしてきましたよ。だからこそ、自分だけが逃げ切っていい思いをするのは嫌なんです。女の子が落ちるなら、ホストも落ちる。ホストになったんなら、死ぬまでその汚名はつきまとうんです。
でも、今のホストはどうですか? そこら辺の大学生や若い男の子が「稼ごう」と思ってホストを始めて、若い女の子を色恋で惚れさせて、売掛をさせて、金が払えんくなったら風俗や立ちんぼ、海外売春に放り込む。そんで自分はサッと金を稼いで、普通に昼の仕事に就職していく。そんな自分だけが逃げ切って金持ちになるなんて、昔のホストではほとんどいなかったです。
──特に売掛は悪質な気がします。若い女の子からすれば、「お金なくても遊べる」って思って、気がついたら何百万単位で売掛ができてしまっているわけで。
美島さん:そうですね。でも、これはホスト個人が悪いんじゃなくて、ホストクラブの構造が悪いと思うんです。というのも、女の子の売掛って、担当ホストが連帯保証人になってるんですよ。
──ということは、回収できなかった売掛は、法的にもホストが支払わなければいけないんですか?
美島さん:はい。基本的にホストクラブはホストを「個人事業主」として業務委託契約を結んでるので。なので、店側は女の子が売掛を飛んだとしても、ホストに払わせるから1ミリもダメージないんですよ。僕の友達のホストも、800万円の売掛を飛ばれて、2年間タダ働きさせられてましたよ。
だから、ホスト個人も追い詰められて、女の子を立ちんぼさせたり海外売春に行かせたりしてでも回収しようとするんです。なので、ホストクラブにとっての本当の客は、実は女の子じゃなくてホスト自身なんですよ。
色恋と売掛で稼げる理由
美島さん:2025年の改正風営法の施行で、色恋営業と売掛は禁止されました。売掛をさせて風俗を紹介したらアウト。風俗店側もスカウト経由でホストにハマってる女の子を入れたらアウトです。
ただ、結局は色恋と売掛がないと、今までみたいに大金は絶対に稼げないですよ。
──それはなぜですか?
美島さん:女の子って、好きじゃない男に対してはもの凄く冷たいし、せこいんですよ。「うざい、帰れ」って言って、一瞬で切り捨てます。でも、心底惚れた「大好きな男」のためなら、何でもする生き物なんです。しかも、女の子って、男に無茶をされればされるほど、理不尽な目に遭えば遭うほどその男にハマっていくんです。
例えば、モテない男が女の子を落とせないのって、 「嫌われたくない」気持ちが強すぎて、相手を怒れないからなんです。ただ楽しませたり、喜ばせたり、全肯定するだけ。それだと女の子にとって「ただの都合のいい男」で終わります。
本当にモテる男、女を惹きつける男は、相手の感情を「流したり、怒らせたり、悲しませたり」できるんです。間違っていることがあれば本気で怒る、そして悲しませた後に強烈に喜ばせる。この感情の激しい揺さぶりができる男に、女は狂うんです。
ホストもまさにそうで、ホストが女の子に恋愛をちらつかせて、何十万円、何百万円の売掛をさせたり、バースデーに数千万円のシャンパンタワーを入れさせたりするのは、そのほうが長期的に稼げるからなんです。
本物のホストは社交界で稼ぐ
──一方で、昔のホストクラブはどうやって大金を稼いでいたんでしょうか?美島さん:昔も今も女の子にお金を落としてもらうという仕組みは一緒ですが、伝統的なホストクラブには基本的にお金に余裕のある人しか来ません。なので、どれだけお金を使わせたところで、お客さんの人生が破滅するようなことは、ほとんどありませんでした。
だから、僕らの時代のホストのモチベーションは、「まっとうに生きている金持ち連中から、いかに合法的に大金を毟り取るか」という一点だったんです。
──それは美島さんがホストを始めたミナミでもそうだったんでしょうか?
美島さん:はい。昔の大阪のホストクラブには、在日韓国・朝鮮人の方や、被差別部落出身の方が50人近く働いていました。彼らはどれだけ優秀でも、差別があって昼の大企業には雇ってもらえなかったんです。だから夜の街に流れてきた。彼らは僕にいつも言っていました。「光司、俺らは中卒や。家も貧乏で、親はヤクザかアル中や。だから、綺麗な顔して生きてる金持ちから、どんな手段を使ってでも金を毟り取って成り上がるんや!」と。僕はね、そのホストの精神には一理あるし、筋が通っていると思っていました。
美島さん:そうなんです。
当時の伝統的なホストクラブは、実におだやかでした。チークタイム(ダンス)で静かに踊って、二人でゆっくりお酒を飲んで、優雅にもてなして帰す。今みたいにシャンパンコールで騒ぐホストパブとはまったく違います。
──ですが、さすがに70歳、80歳を越えてお酒を飲んだり接客をしたりするのは、体力的に大変ではないでしょうか?
美島さん:ええ。なので、体力的にお店に立てなくなったホストは、みんな社交ダンスの先生に転職してたんです。
美島さん:ホスト時代にダンスを徹底的に仕込まれていますからね。ダンスホールに行けば、どれだけ年を取っても「先生」と呼ばれる立場になって、マダムたちからもの凄く尊敬されるんです。お金と時間に余裕のあるマダムたちが、昼間にダンスを学びにやってくる。そこで先生として手を握り、華麗に踊る。実際、ダンスホールのシステムも、入場料やお酒、指名代で売上を上げる構造ですから、ホストクラブとまったく同じなんですよ。
で、ダンスの技術を極めた凄腕のホストは、最終的には何になると思いますか?
──もっとお金持ちがたくさんいるダンスホールの先生でしょうか?
美島さん:いえ、超豪華客船の世界クルージングツアーの専属ダンスパートナーになるんです。
何百日もかけて世界を一周する豪華客船には、未亡人や超大富豪のマダムたちがたくさん乗っています。そこでマダムたちのダンスの相手をして、パトロンになってもらうんです。それだけで、数百万、数千万円をあっという間に稼ぐんです。
今の歌舞伎町のホストなんて、ガキがガキを騙して小金を巻き上げているだけで、あんなのはホストでも何でもないです。本物のホストは、誰も見えない上流階級の社交界で、マダムたちを合法的にパトロンにして稼いでるんです。
女の子を沈めるのはホストとして「成り下がり」
──ホストとして、そんな稼ぎ方があるんですね。美島さん:20~30年前の細木数子さんが全盛期の時代も、テレビに出ているような芸能人たちは、みんな金持ちのマダムと一緒に愛本店に遊びに来ていました。なぜか。芸能人も究極のホストだからです。スポンサーであるマダムたちを喜ばせるために、夜の街をエスコートするわけです。
例えば、今のキャバクラでも「一晩で何億稼いだ」とかSNSで大騒ぎしてますが、あのキャバクラで大金を使っている客って、昼間の由緒正しい一流企業の経営者ではないですよね。たまたまビジネスで一発当てたような、ノリの軽い成金ばかり。本物の超一流企業のVIPたちは、今でも銀座の格式高い高級クラブに行って、絶対に表に情報が出ないようにしてます。ホストもキャバクラも、SNSのブームによって完全に「大衆化」して、品格が底に落ちてしまったんです。
その結果として何が起きてるのか。豪華客船に乗っている大富豪のマダムたちは優雅に「世界一周」を楽しんでいる。一方で、歌舞伎町のホストに狂った若い女の子たちは、売掛を返すために海外へ「世界売春出稼ぎ」に行かされている。同じ世界一周でも、意味が真逆なんですよ。こんな悲惨な構造、絶対におかしいです。
美島さん:そうです。もし本当にホストとして成り上がりたいんやったら、一生懸命勉強して良い大学に行って、そこの社交ダンス部に入ってダンスを学んで、さらに英語もマスターする。社交ダンスと英語は、世界の上流階級では共通のコミュニケーションツールです。お金を貯めて留学に行けば、世界中の大富豪や貴族の令嬢たちと会うチャンスに出会えるかもしれない。そこで堂々とダンスパーティーで彼女たちをエスコートして、上流社会のネットワークに入り込んでいけばいいんです。これこそが本物の「成り上がり」ですよ。女の子を風俗に沈めて稼ぐのは「成り下がり」です。
世界には、旦那さんが亡くなって、使い切れないほどの莫大な遺産を持ったマダムたちが山ほどいるんです。そういう人たちに自分の夢やビジネスのスポンサーになってもらうほうが、圧倒的に健全で、スケールの大きな人生を送れます。
──実際に美島さんの周りに、そういったマダムを相手にしている方はいらっしゃったんですか?
美島さん:それこそ、愛本店の社長もそうでしたね。社長は、大銀行の役員の嫁だった高貴なマダムを前の夫から奪い取って結婚して、その資金で愛本店を立ち上げた本物のマダムキラーでした。
なので僕の現役時代は、社長は僕が若い女の子の席に座ろうとすると、後ろからトントンと肩を叩いて、「光司、お前が座るべきは若い子の席じゃない。あっちのマダムの席やろ」とよく言われてました。言葉の重みが違いますよね。
先ほどの風営法改正の話とも関わってくるんですが、若い子を色恋でハメるのが禁止された今、ビジネスモデルを根底から変えなければホストは生き残れないと思います。要は、応援してくれる大富豪のマダムをお客さんにするかつてのスタイルに戻るしかないんです。それができない店は、これから一気に淘汰されていくんじゃないでしょうか。
元ホストとしての罪滅ぼし
──同じホストでも、女性への接客方法は今と昔でここまで違いがあるんですね。美島さん:全然違いますね。マダムを相手にする時は、絶対に相手を破滅に追い込むようなことはしません。彼女たちが「自分の経済的な余裕の範囲内」で遊べるようにコントロールするプロです。だから別れ際も綺麗ですし、トラブルも起きない。
逆に、若い女の子に身の丈に合わない数百万、数千万の無理をさせると、感情の依存度は跳ね上がりますが、最終的には精神が崩壊して、ホストを刃物で刺すか、ビルから飛び降りるかの大トラブルになります。今起きているホストの刃傷事件や女の子の自殺は、ほとんどこれが原因です。
──今回の法改正は、そういった事件を防ぐ目的もあったのでしょうか?
美島さん:間違いなくあると思います。結局、僕がこの話をするのも法律が変わったからなんです。
これまでも僕は、色恋や売掛の闇の部分をもちろん把握していました。でも、あえて何も言わなかった。それは僕が元ホストで、そうしなければ大金を稼ぐことができないと理解してたからです。限りなく黒寄りのグレーだと理解はしながらも、「自分も同じ穴のムジナだから」と。
ですが、法改正で色恋と売掛は完全に黒になりました。だったら、そこに対しては従わなければいけないですし、今のホストには売掛と色恋は絶対に止めさせたい。
僕も若い頃は散々やんちゃをしました。神戸の福原で働いてたときなんか、7人の風俗嬢のヒモをやって、貢いでもらった金で贅沢三昧してたんです。到底若いホストに説教できるような人間じゃないんですが、そんな僕だからこそ、若いホストたちに言いたいんです。「女の子から金を巻き上げるような生き方をしてたら、絶対に最後は悲惨な人生になるぞ」と。
なので、この記事を読んだ若い子たちには「ああ、ホストでいくら稼いでも最後はこうなるんやな。普通に地道に生きよう」と、僕を反面教師にしてほしい。それが僕の社会へのせめてもの罪滅ぼしです。
だが今は、若い女の子を色恋で惚れさせ、売掛を背負わせる、巨大なビジネスへと膨れ上がっている。法律が変わっても、その構造そのものが変わらない限り、犠牲になる女の子は後を絶たないだろう。
だからこそ美島さんは、この歪んだ現実を語り続ける。例えそれが、ホストから疎まれることになったとしてもだ。
「僕みたいになってほしくないですから(笑)」
<取材・文・撮影/ワダハルキ>
―[美島光司]―
【ワダハルキ】
大阪のフリーライター・カメラマン。卓球好きが高じて大阪府立大学在学中に卓球メディア「Rallys」でライター活動をスタート。現在は卓球以外にも大学ミス・ミスターコンの取材を中心に、幅広い分野で執筆活動を行う。X:@takkyu6789、Instagram:@guid_dsij
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