そんななか、7月からスタートしている夏クールドラマは各局がかなり力を入れており、話題作ぞろいと言われている。
大本命と言われる、人気作の続編『VIVANT』(TBS系、日曜午後9時~)を筆頭に、28年ぶりに反町隆史主演で復活する『GTO』(関テレ・フジ系、火曜午後10時~)、SixTONES・松村北斗が地上波ドラマ単独初主演を務める『告白-25年目の秘密-』(日本テレビ系、土曜午後9時~)、蒼井優が主演を務める恋愛ドラマ『Tシャツが乾くまで』(TBS系、金曜午後10時~)など、多彩な作品が並んでいる。
しかし、話題性があるからと言って必ずしもヒットするとは限らない――。そこで、現役テレビマンたちが注目している夏ドラマ、すでに離脱してしまったドラマをリサーチ。業界の一線で働く人々のリアルな意見を集めた。
小池栄子の演技と重厚な脚本に震える『さよならノワール』
まずは、在京キー局でドラマ制作に関わる男性プロデューサー・A氏に「今後も見たい」ドラマを聞いた。「現状、一番見応えを感じているのは小池栄子さん主演の警察ヒューマンドラマ『さよならノワール』(フジテレビ系、火曜午後9時~)ですね。
同作は、小池栄子さん演じる元マル暴刑事の黒木と北香那さん演じる心理学者の白石が、事情を抱える犯罪被害者や遺族と向き合っていく重厚なテーマの一作。
なんといっても、小池栄子さんの円熟味を感じさせる演技が素晴らしい。
笑顔を見せないクールで熱血な部分と親身に被害者に寄り添う情の厚さを合わせ持つ難役を颯爽とこなし、人間味のある新しいキャラクター像を見つけた印象。
バディを組む北香那さんも不器用で空気の読めないキャラクターを完璧に憑依させて、セリフ回しや挙動を操っている。2人の演技を見ているだけで十分価値のある作品だと思います。
ストーリーも派手さはないですが、犯罪被害者の心情を丁寧に浮き彫りにしていく構成が見事で、ジワジワと心に沁みる。数多くのヒット作を手掛けてきた井上由美子さんだから書ける脚本ですよね」
今のところは視聴率で苦戦している同作だが、一気に火が付く可能性を秘めていそうだ。
キャラビジネスの掘り下げが甘い『君の好きは無敵』
「早々に離脱してしまったのは『君の好きは無敵』(TBS系、火曜午後10時~)ですね。同作は、キャラクタービジネス業界を舞台に、松本若菜さん演じる元コンサルの杏奈と、佐野勇斗さん演じる偏屈なデザイナー・瀬尾がタッグを組み、世界的なヒットキャラを生み出すまでを描くラブコメディ。
火曜10時枠の王道ともいえる設定のラブストーリーですが、現状は主題のキャラビジネスについて深掘りがなされておらず、行き当たりばったりの解決策が目立つ。
同枠は以前まではお仕事モノとしての面白さも担保されていた。ただし、今作はそのクオリティーが低いゆえ、松本さんのチャーミングな顔芸や佐野さんとのコミカルな掛け合いが悪目立ちしている。
ロジカルな展開があるからこそコメディ要素が活きるはずなのに、その割合が逆になっているので、中盤話以降でさらに低迷しそうな気がします」
繊細かつ生々しいセリフが光る『Tシャツが乾くまで』
「蒼井優さんが18年ぶりに地上波連続ドラマで主演を務める『Tシャツが乾くまで』(TBS系、金曜午後10時~)が間違いなく一番面白いですよ。
事故に巻き込まれた2組の幸せな夫婦の日常が崩れていく様子を淡々と描くストーリーですが、随所に謎や気になるシーンを紛れ込ませることで先の読めない考察ドラマとしてもしっかりと機能している。
また、余白を感じさせるセリフやアイテムの使い方も秀逸。『silent』『海のはじまり』(ともにフジテレビ系)などで知られる生方美久さんにしか描けない世界観でありながら、これまで以上に生々しい描写もあり、彼女の新境地的な作品だと感じました。
蒼井優さんと中島歩さんのアドリブにも見えるナチュラルな演技も最高ですが、カフェ店員を演じる高橋文哉さんのミステリアスな雰囲気もいい味を出している。とにかく、次が気になってしょうがないドラマです」
1話の見逃し配信再生数が350万回を突破し、同枠の歴代最高記録を塗り替えたことでさらに話題沸騰の同作。最終回にはさらに偉大な記録を樹立するかもしれない。
ドロドロを詰め込みすぎた『おちたらおわり』
「宇垣美里さんが主演を務め、篠田麻里子さん、鈴木紗理奈さんらが共演する『おちたらおわり』(中京テレビ・日本テレビ系、水曜深夜0時24分~)は序盤で脱落しましたね。
同作は、華やかに見えるタワマン妻たちのドロドロした人間関係を描くサスペンス。不倫や家庭環境の格差、いじめといった既存作にあったマウント合戦を詰め込んだだけで新しさがない。
また、宇垣さんの演技や表情が一辺倒で主人公に感情移入できないし、篠田さんのネットリとした悪女役も既視感しかない。
昼ドラのような演出やカメラワークもチープに感じました。どうせならSNSでツッコミが集まるぐらい過剰にやるべきだったのでは?」
全く先が読めない考察ドラマ『マイ・フィクション』
「期待以上の面白さだったのは『マイ・フィクション』(ABCテレビ・テレビ朝日系、日曜午後10時15分~)ですね。
Kis-My-Ft2の玉森裕太さん演じる主人公・伊川が事故で目を覚ますと妻や同僚から存在を忘れられ、他人が自分になりすましていることが発覚するところから始まるサスペンス。
ありそうでなかった斬新なストーリー設定で、どんどん謎や伏線と思われるシーンが出てくる点が考察ドラマとして非常に秀逸。
すべての伏線回収をできるのかは疑問ですが、今のところは最終回まで見たくなる中毒性のある脚本になっています。
玉森さんの不思議な世界に巻き込まれて戸惑う演技がリアリティ抜群な点も評価ポイントです」
熱いキャラとテーマに差がある『クロスロード~救命救急の約束~』
「残念だったのは、今田美桜さん主演の『クロスロード~救命救急の約束~』(テレビ朝日系、火曜午後9時~)ですね。
各キャストの演技力は確かで安心して見ていられるのですが、今田さん演じる主人公・遥のポジティブで正義感の強いキャラクターが医療現場の緊迫感を弱めているうえに、ハードな社会問題との相性も悪く、伝えたいテーマが散漫になっている印象。
ただし、医療ドラマに青春要素を盛り込んだ意欲作だとは思うので、主人公が成長し始めたころにもう一度見ようかなとは思っています」
ここまで、テレビマンたちによる「今後も見たい」「もう見たくない」夏ドラマを紹介してきたが、あくまで個人の見解であることをお忘れなく。
彼らのコメントだけに左右されず、この夏は自宅でじっくり、各々の琴線に触れたテレビドラマを楽しんでもらいたい。
<取材・文/木田トウセイ>
【木田トウセイ】
テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。
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