放送作家の鈴木おさむ氏は、「スネハラ」論争の本質は年齢や服装そのものではなく、「おじさん」と見なされた人だけが不快の対象にされることにあるとみる(以下、鈴木氏による寄稿)。
同じハーフパンツでも木村拓哉なら「格好いい」
今年も「職場で男性のハーフパンツはアリかナシか」という論争が起きている。連日35℃を超える猛暑なのに、男性、とりわけおじさんが膝やスネを出すと「見苦しい」、さらには「スネハラ」とまで言われる始末だ。僕は20代の頃から、ずっとハーフパンツをはいてきたが、30代までは何も考えなかった。暑ければはく。ただそれだけだった。ところが40歳を超えたあたりから、仕事場にハーフパンツで行っていいのかを考えるようになった。45歳を過ぎると、今度は会う相手や場所によって、今日ははいていい日か、長ズボンにすべき日かを判断するようになった。そして54歳になった今、家を出る前に自分の膝を見ながら考える。
不思議なのは、70代、80代のおじいさんがハーフパンツをはいていても、多くの人は文句を言わないだろうということだ。むしろ「暑いですからね」で終わる。では僕とほぼ同世代の木村拓哉さんがハーフパンツをはいていたら、どうだろう。
蝶は愛され、蛾は嫌われる…それでもおじさんは今日も飛ぶ
この話を考えていて、蝶と蛾を思い出した。蝶が飛んでいれば人は足を止め、きれいだといって写真を撮る。蛾が飛んでくれば、顔をしかめ、手で追い払う。けれど、蛾は人を刺すわけでも血を吸うわけでもない。ただそこにいて、蝶と同じように羽を広げているだけだ。「ファッション」と評価される木村さんが蝶だとしたら、「ハラスメント」と批判される普通のおじさんは蛾なのかもしれない。今、おじさんは何をしても叩かれやすい。
だが今年の暑さは、そんな遠慮を軽々と超えてくる。蛾だって好きで蛾に生まれたわけではない。普通のおじさんも、誰かを不快にするためにおじさんになったわけではない。ただ普通に生きて、年を取り、気づけば蝶ではなく蛾の側に分類されていただけだ。
それでも蛾は、今日も飛ぶ。僕も今日、ハーフパンツをはいて外に出る。
だって蛾も、暑いのだから。
【鈴木おさむ】
すずきおさむ●スタートアップファクトリー代表 1972年、千葉県生まれ。
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