2024年7月、ロケバスの車内で共演者・Aさん(女性・20代)に性的暴行を加えたとして不同意性交などの罪に問われている、お笑いトリオ「ジャングルポケット」の元メンバーの斉藤慎二被告(43)の裁判が、東京地裁(伊藤ゆう子裁判長)で続いている。
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 この裁判をめぐっては、今年6月に被告人質問が行われた。
裁判がはじまって3か月。初めて斉藤被告本人から事件の詳細が語られた——。

「芸能界での影響力」を否定…斉藤被告が自身の立場を強調した理由

 起訴状によると、斉藤被告はロケバスの車内でAさんにキスなどをし、さらに口腔性交に及んだとされる。斉藤被告は起訴内容を否認しており、主に「Aさんが同意していないことの認識(故意)があったか否か」が審理の焦点となっている。

 この日、斉藤被告は法廷の中央にある証言台の椅子に腰をかけた。芸能界で鍛えられたのだろう、ハッキリと明瞭な声で一言ずつゆっくりと供述していた。

 被告人質問では、はじめに自身の経歴が確認された。弁護側は斉藤被告の経歴や出演時の立ち回りについて細かく質問をしていた。というのも、検察側はAさんが斉藤被告の「芸能界での影響力から行為を断ると自身の不利益になると考え、同意しない意思を表明することが困難な状況にあった」と指摘しているからだ。斉藤被告は、事件当時の自身の権威をこのように説明していた。

「バラエティーではひな壇で一番端の席で番組を盛り上げて、お客さんも盛り上げる立ち回りだと考えていました」(被告人質問から・以下同)

 さらに、斉藤被告は出演依頼が「第三、第四希望だったと思います」と他のタレントの代役として出演することも多く、「いつか呼ばれなくなる世界だと認識していました」と自身の権威のなさを強調していた。

初対面の会話から「好意がある」と確信…斉藤被告が語った根拠とは

 次に事件当日の状況が明らかにされた。斉藤被告は、被害者とされるAさんの存在を、ロケバスに乗ってきたあと、台本を確認して知ったという。Aさんとは事件当日が初対面。
会話を重ねると、Aさんが「インフルエンサー」だと把握したようである。

「(ロケバスの車内は)僕とAさんだけでした。これから撮影を一緒にする方ということなので、場を盛り上げるということで僕の方から積極的に会話をしました」

 斉藤被告の前の座席だったAさんは、半身で振り返るように会話をしていた。そして、犯行の動機にもつながる「Aさんから好意を抱かれていた」との認識について振り返る。

「僕の情報をすごく知っていて、『トリオの中でも斉藤さんが一番好きです』『自分の知り合いが斉藤さんを見かけてすごくおしゃれだったと言っていました』と別に言わなくてもいい情報を沢山言ってくれて、二人でいる時間が非常に長くて話も弾んでいたので好意があると思っていました」

「笑顔だったから同意があると思った」キスに至るまでの“斉藤被告の認識”

 2軒目の撮影のため、番組スタッフらがロケバスから下車。斉藤被告によると、二人はスキンケアの話になり、「お互い前のめりになって顔を見合って距離が一気に近くなった」といい、第1の犯行とされる「キス」に及んだとみられる。

 だが、斉藤被告自身が「好意があるだろう」と思い込んだといえども、なぜ性的行為にまで発展するのか。検察側は「キスを受け入れてくれると思ったのか」と問うた。

「最後、肌の話になってお互いの距離が近くなっていって、Aさんも同時に距離を近づけ肌を見つめる時間が長くなって、こんな至近距離でもニコニコしながら顔全体を見てくれたので、きっとこれは好意を持ってくれていると確信しました」

 斉藤被告がキスをすると、Aさんから「『嬉しいです。幸せです。今日一日頑張れます』と言われました。笑顔でしたし、少し照れているように思えました。やっぱり喜んでいるんだなと思いました」と振り返っている。


ディープキスを巡る証言が真っ向対立…被害女性は『抵抗した』と証言

「ズボンとパンツをおろしました」…口腔性交に至るまでの“生々しいやりとり”を証言。元ジャンポケ斉藤被告が「同意があった」と信じた理由
初公判時の東京地裁前。289人の傍聴希望者がわずか20席の傍聴席を求めて列ができていた
 一度目は「一瞬のキスだった」というが、二度目は舌と舌が触れあう「ディープキス」に及んでいる。より濃密な「ディープキス」に至った理由について、斉藤被告は直後の会話から「あっこんなに喜んでくれているんだなとわかったので、もっとAさん自身が求めているんだろうなと思いました」と回顧していた。さらに、「すごくロケもうまく行っていて、気持ちが高ぶっていたというのはありました」と当時の心情を吐露した。

 これに対して、Aさんは証人尋問で「抵抗していた」と証言している。

「唇や歯で(斉藤被告の)舌が侵入してこないようにしたんですが、それでも舌がねじ込まれてしまいました」(Aさん証言)

 この証言を斉藤被告は全面的に否定した。

「(抵抗は)一切ないです。お互いが同時に舌と舌を出したので求めてくれているんだなと思いました」

「車に戻ってきた理由」を誤認か…口腔性交に至るまでの被告の主張

「同意していた」ことを裏付けるように、斉藤被告はその後の撮影でもAさんの様子に違和感がなかったと強調する。その後、全てのロケが終了し、斉藤被告は着替えをするためにロケバスに戻った。そして、起訴罪名の中で最も法定刑の重い「不同意性交」に及んだとされている——。

 斉藤被告によると、ロケバスの車内で衣装から私服に着替えていた最中にAさんが入ってきた。

「撮影が終わったので(Aさんが)車に戻る必要がなかったので、『なんで撮影終わりに戻ってきたんだろう』と疑問に思いました」

 そう述懐する斉藤被告。Aさんの証言によると、「ピンマイクを外すために乗車した」とのことだが、斉藤被告はその理由を尋ねることなく、こう思い込んだようだ。

「短い時間の中ですごく考えて、もっと僕と一緒にいたい思いがあるんだなと思いました。(Aさんは斉藤被告が)着替えていることもわかっていましたし、その時にはすぐにもっと一緒にいたいんだろうと思いました」

 当時の心情を「(着替えに)集中できなくて気持ちがさらに高ぶってしまいました」と表現する斉藤被告。
最終的に「Aさんはそれ以上のことをしたいのだろう」と斉藤被告は思い込み、口腔性交に至った。

「Aさんの近くに行きました。Aさんから見て斜め後ろにいましたが、その位置でズボンとパンツをおろしました。半分くらいだったと思います」

 自身の陰部について「こんな風になってしまいました」と発言すると、Aさんが振り向いたという。

「『えー』と言いながら笑顔でした。笑っているようにも思えました」

 その後、斉藤被告はAさんの側頭部に手を添え、Aさんは自ら近づいて、およそ10秒にわたる口腔性交があったと供述する。Aさんは「体を使って抵抗した」と証言しており、両者で食い違っている。

斉藤被告が語る「不同意だったと知った瞬間」

「ズボンとパンツをおろしました」…口腔性交に至るまでの“生々しいやりとり”を証言。元ジャンポケ斉藤被告が「同意があった」と信じた理由
斉藤被告を乗せたと思われる車が東京地裁に入っていく様子 2026年5月13日/筆者撮影
 この食い違いについて、斉藤被告はこのように語った。

「僕自身、ここで話すことが全て真実だと思っていますし、Aさんがやめてくださいと言ったらやめるのが当たり前ですし、そういう行動をしていないということはAさんが受け入れてくれていたことが明白ですし、やめてくださいと押してきたことは一切なかったので、ドライブレコーダーなど中がわかるものがあれば信じてもらえるのかなと思います」

 Aさんが「不同意」だったと知ったのは、そのロケがあった週末にかかってきた担当マネージャーからの電話だった。

「本当にびっくりしました。なにがなんなのかわからなくて『どういうことですか』、『内容も違いますし無理やりとかそんなこと絶対にないんですけど』と言いました」

「ドラレコ映像があれば証明できた」斉藤被告が明かす“絶望の瞬間”

 その後、刑事事件として捜査されることになった。斉藤被告は無罪を示す証拠として、「ロケバスのドラレコ映像がないのか」と担当の刑事にも確認したという。

「『ドライブレコーダーを見てもらえたら無理やりということは絶対にないということがわかります』と言いました。(映像か音声の)どちらかは残っていると思っていましたが、『ない』と言われました。
絶望でした。唯一、不同意じゃないのがわかってもらえる証拠ですし、どういう風に僕の口から説明しても真実かわかってもらえないので……」


2300万円の示談は成立せず…法廷で繰り返した「同意の主張」

「ズボンとパンツをおろしました」…口腔性交に至るまでの“生々しいやりとり”を証言。元ジャンポケ斉藤被告が「同意があった」と信じた理由
事件発覚後、斉藤被告が所属していた「吉本興業」は契約解除の声明を出していた(同社HPより)
 事件後、斉藤被告はAさん側に2300万円で示談の申し入れをしているが、被告人質問の時点で成立していない。弁護側によると、『この金額はAさん側が提示した』というが、示談は破談となった。そんな斉藤被告は、「同意していると思っていた」と弁解しつつも、謝罪の言葉を何度も口にしていた。

「人に笑いを届ける仕事をしていて当たり前に劇場とラジオをしていて、相方、同期、先輩、後輩、番組に携わる方々を裏切ってしまって、吉本からも解雇され仕事を失って当たり前だった日常がなくなりました。人を笑顔にする仕事と真逆なことをしてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいですし、本当にAさんの気持ちを汲み取ることができず、申し訳ない気持ちでいっぱいです。その当時、本当に同意があると思っていましたし、無理やりなんてしませんし、嫌だと思われたら本当にしないですし、ドライブレコーダーもなく難しい部分ですが、当時本当に同意があると思っていました。それだけは信じてもらいたいなと思います」

 現在、バームクーヘンを販売するなどして収入を得ている斉藤被告。屋外での販売が多いのか、前回の公判に比べて全体的に日焼けしていた。検察側の量刑の意見は、8月5日に読み上げられる予定だ——。

取材・文/学生傍聴人

【学生傍聴人】
傍聴歴7年、傍聴総数1000件超。 都内某私立大の大学院に在籍中の現役大学院生。
趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴をはじめ、有名事件から万引き事件など幅広く傍聴している。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行なっている。
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