さまざまな人が利用する公共交通機関では、毎日のようにトラブルが起きている。特に利用者が多い電車では、乗客同士のイザコザが発生しやすく、嫌な思いをしたことがある人もいるだろう。

中でも昔から議論の対象となるのが、ベビーカーで赤ちゃんを連れ電車に乗る親についてだ。子どもの泣き声などに他の乗客からクレームがつくことがあり、賛否両論が巻き起こりがちな話題である。

都内でIT企業に務める牧瀬翔子さん(仮名・29歳)は、休日出勤した時に、子連れの母親に対して激昂する男性と同じ車両に乗り合わせたそうだ。

「静かにさせろ!」電車内で泣く赤ちゃんに暴言を吐く高齢男性。...の画像はこちら >>

休日の電車内に突如響いた怒号

「先月、取引先の都合で休日出勤した際に、電車内で泣いている赤ちゃんに怒鳴り声をあげる男性に遭遇しました。電車に乗ったのは午後2時頃で、千葉方面に向かう車両だったのでそれほど混んでいなかったです。わたしは優先席に近いシートに座ってウトウトしていたのですが、いきなり赤ちゃんの鳴き声がして目が覚めたのです。優先席にはベビーカーに赤ちゃんを乗せた、わたしと同世代くらいのママが座り、必死に泣き止むようにあやしていました。すると向かいの席に座っていた男性が、『うるさい、静かにさせろ!』といきなり怒鳴り声をあげたのです」

激昂したのは、70歳くらいに見える男性だった。その男性はよほど赤ちゃんの鳴き声が気に入らなかったのか、謝罪する母親に対して罵詈雑言を浴びせ続けたという。

「お母さんは『すみません』と半泣きで謝っているのに、その男性は『謝ってすむ問題じゃない』『非常識な母親だ』『いますぐ降りろ』など、聞いているこちらが不快になるような言葉を浴びせ続けました。車内は静まり返り、赤ちゃんの鳴き声と怒鳴る男性の声だけが響き渡っていたのです」

謎の3人組は味方だった

牧瀬さんは、その男性の発言にイラつきながらも怖くて注意できなかった。緊迫した車内の中、車両の奥から3人組の女性グループが現れる。

「40代くらいの女性3人が、怒鳴り声をあげている男性に近づいていきました。その中の土屋アンナさんに似た元ヤン風の女性が、『あんたのほうがうるさいから黙れ』と一喝。
さらに、もう一人の恰幅が良い女性が『子どもは泣くのが当たり前。嫌ならあんたが降りろ』と追撃の一言を浴びせたのです。その男性は、いきなり女性たちに詰め寄られたことでモゴモゴし、恥ずかしそうに下を向いてしまいました。もう一人いた女性はお母さんの方にいってサポートして、完璧なコンビネーションだったですね」

彼女たちの正体は…

勇敢な女性たちからの奇襲にあい、さっきまで激昂して怒鳴り声をあげていた男性は逃げるように電車を降りていった。あまりにも華麗に迷惑客を撃退した女性たちは何者なのだろうか。

「すばらしい連係プレイだったので、気になってその女性たちに話しかけてみました。すると3人とも沿線の高齢者を対象とした施設で働いている介護士さんだったのです。普段から暴れる老人に接しているので慣れていると言っていました。迷惑行為をする高齢者を電車やバスなどで注意することがあり、今回も他の乗客が助けなそうだったので駆けつけたと話してくれました。やさしく注意しても引き下がらない人もいるので、今回のように厳しい対応をしたのだと教えてくれました」

公共交通機関での子連れ親子に対する風当たりは強く、親たちは肩身の狭い思いをしている。今回の女性たちのような味方がいれば、電車やバスに赤ちゃんと乗るのも怖くならなそうだ。ただ、そうもいかないのが実情だろう。


「わたしも、なるべくトラブルに遭っている親子を見たときは助けようと思いました。赤ちゃんは泣くものですし、みんなが自家用車を持っているわけではないので、電車やバスに子連れで乗車するのは仕方がないです。ネットでは、赤ちゃん連れで公共交通機関を使うなという声もありますが、わたしは子育てする親の味方でいたいと思いました」

どうやったらみなが気持ちよく過ごせる社会になるのか、一人ひとりが考える必要があるはずだ。

<TEXT/高橋マナブ>

【高橋マナブ】
1979年生まれ。雑誌編集者→IT企業でニュースサイトの立ち上げ→民放テレビ局で番組制作と様々なエンタメ業界を渡り歩く。その後、フリーとなりエンタメ関連の記事執筆、映像編集など行っている
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