歌手のピコ太郎(63)が歌う世界的大ヒットソング「PPAP」が全世界に公開されてから25日で10周年を迎える。ヒットからこれまでを「10年前なんだけど、3日前のよう」と振り返る。

節目を記念し、1年間にわたる新たな音楽プロジェクトも行う傍ら、小児がんの子どもたちへの支援活動を続けるなど、信念を持った活動で人の背中を押している。独自の道を歩む自身のモチベーションや思い描く最終地点に迫った。(古本 楓)

 一度見ると忘れないゴージャスな衣装にヒョウ柄のスカーフ、プロデューサー・古坂大魔王(53)譲りの軽快なトークは、場の空気をほんわかとさせる。それでも、語る言葉一つ一つからは信念がにじみ出ていた。

 誰もが一度は聞いたことのある「PPAP」。YouTubeに公開されたミュージックビデオの再生数は約1・8億回(1日時点)を記録している。激動の10年を「あっという間のような半世紀、1世紀前のような不思議な感覚」と振り返る。

 たった45秒の1曲。コンセプトなどは存在しないという。「単純に音に乗って思いついたことを言ってみたら、なぜか世界中の人がハマってくれた。壁にガムテープでバナナをくっつけたら芸術になるみたいなもの」と独特な表現で語る。

 人気歌手、ジャスティン・ビーバーが“お気に入り”と紹介すると世界中で大バズリ。

国連本部や米・迎賓館でも歌唱するなど、2年間ほぼ休みなく、約40の国・地域を飛び回った。「初めてマネジャーに5分間だけぼーっとさせてくれ」とお願いしたほどの過労な日々を送った。

 激動の中でも忘れられないエピソードがある。当時、戦時中だったシリアの兵士からあるコメントが届いた。「『(PPAPを見ている)1分間は銃弾が止まったよ』という話を聞いた」。自身の信念である「世界平和」を曲を通じて実感。「目の前にあったことを並べただけですけど、それが楽しめる世の中であってほしいなって思います」。切実な願いを語る姿に、この日一番の本音が垣間見えた。

 改めてピコ太郎にとって「PPAP」とはどんな曲なのだろうか。

 「ちょっとした免罪符をもらった感じ。一発当てるって、日本ではマイナスのイメージがあるけど、(新たな挑戦をした時に)『PPAP』の人が新しいことを作ったと見てもらえる。何か作ってないと誰も見向きもしない。

名刺をもらえたっていう意味ではとてもうれしいです。ただ、でかすぎましたけど(笑)」

 「PPAP」10周年を記念し、1年間で80・8曲をリリースする「Tottemo Release 80・8」(トッテモ・リリース・ハチジュッテンハチ)プロジェクトも進行中。毎月5曲以上配信する前衛的な企画だ。「頭の中のものを1回全部出したかった。この1年間、古坂さんは相当成長したはずです。僕は歌ってるだけですけど」

 これまで、LiSAや中尾ミエなど大物と続々コラボが実現。集大成の7月は、古坂が尊敬してやまない矢島美容室のマーガレット・カメリア・ヤジマ(木梨憲武)や小林幸子との共演がかなった。本人も驚きの組み合わせの連続に「このコラボだけをやろうとしても成立しなかったかもしれない」と挑戦したからこその副産物であることを強調した。

 以前「一曲の概念を壊す」と語っていた0・8曲の真相も明かされ、「0・8 Pen―Pineapple―Apple―Pen」と題し、特徴的な歌詞「ペンパイナッポーアッポーペン」を8割だけ歌った一曲となった。一見ばかげた考えの中にも、探究心が詰まっている。「『で何?』を追求したいなと思った。0・8って何って思ってもらいたかった」。

飽くなき意欲が人を笑顔にする楽曲を作る秘訣(ひけつ)なのかもしれない。

 自身の音楽を携えて、支援の輪も広げている。小児がんと闘う子どもたちを音楽で支援するチャリティープロジェクト「LIVE EMPOWER CHILDREN」には初回から参加。今年1月も愛知の病院に出向き、笑顔を届けた。「地球というのはすべて子供のためにある。子供たちが楽しく暮らさないといけないなと思うんです」

 2月に発表した「人生、盛っちゃって」は、ピコ太郎の元に集まった子どもたちからの声や言葉などを参考に制作。「人生は楽しむためにある」と力強いメッセージと共に生きるすべての人を後押しする。

 活動を続ける意義を問うと謙遜の言葉が返ってきた。「古坂さんが言うには自己満足です。偽善者でいいし、自己満足でもいい。親御さんや子供たちが一番重要で必要だと思っていることをしてあげたいなと。笑ってもらうことがすべて」。

小児がんと闘う子どもや親は下を向いてしまうことが多いという。それでも「(僕の音楽を聴いて)皆さんがちょっと笑顔になってくれてると少しうれしいです」と切実な願いを語った。

 大きなインパクトを残し続けるピコ太郎の今後の目標は「目標はずっと決まっている。ノーベル平和賞とMステの司会です」。その上で「この活動が長く続けていけるように、まず体力をつけなきゃいけない」と言い聞かせる。

 海外を飛び回ってきたからこそ、日本人アーティストへの強い願いもある。「世界中が日本のアニメのとりこになっているように、日本の音楽ももっと(上に)いける。今の大谷翔平とか久保建英のように世界的なスターがグラミー賞(の舞台)に立ってほしい」

 もちろん願うだけでなく、ピコ太郎なりの考えもある。「LiSAやAdoは本当に海外でも有名。ああいう人が(今後も)出てくるように、私(の知名度)を利用してくださいって言っている。そういうのに協力していけばいいかな。みんなで日本を、カルチャーを生み出す国にしていきませんか」

 世界を知っているからこその日本音楽界への提言。

世界を見据えるその視線はまぶしかった。

 〇…「PPAP」10周年を記念して、9月27日に「PPAP X PT~PPAP10周年プレミアムライブ~」(東京・harevutai)を開催する。自身の曲のみでのワンマンライブは初めてだといい、「みんなに感謝して『10周年ありがとうございました』と伝えたい」と意気込んだ。

 ◆ピコ太郎(ぴこたろう)1963年7月17日、千葉県出身。63歳。タレントの古坂大魔王がプロデュースする歌手。2016年8月にYouTubeに投稿した「PPAP」は世界的なヒットとなり、2か月半で関連再生回数は6億回を突破。同年10月7日に世界デビューも果たす。同年、日本レコード大賞特別話題賞も受賞。17年、外務省の要請でSDGs推進大使に就任。血液型A。

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