先月、最大震度7を観測した熊本地震。被災地では今も避難生活が続いていますが、避難所によっては「着替える場所がない」という声や、雑魚寝の状態が続いている場所もあるそうです。

専門家からは、避難所の環境が標準化されておらず、避難する場所によって格差が生まれているという指摘もあります。

「固いテント」 1棟わずか2時間

そんな中、地震発生の翌日から現地に入り、支援を続けている人がいます。名古屋工業大学の北川啓介教授に、発災直後の状況を聞きました。

名古屋工業大学 北川啓介教授

発災した翌朝には熊本に入りました。そのまま氷川町の方に向かいつつ、あと八代市の方にも向かって。そうしたところ氷川町の方で、お家の前のすごく暑いところ、テントで生活されてる、軒下生活されてる方がすごくたくさんおられて。そういった中で、ご高齢の方とか、持病をお持ちの方とか、障害をお持ちの方とかが、すごく辛そうなお顔をされてたんですね。役場の方にみんなで行って、そしたら役場の方も「すぐに建ててほしい」ということでしたので、もう迅速にインスタントハウスを、まずは10棟を建てました。

インスタントハウスは、生クリームを絞ったような形に布を膨らませて、内側に断熱材を吹き付けて作る「固いテント」です。広さはおよそ12畳。1棟で10人ほどが足を伸ばして休むことができます。

今回は、北川教授が行っている「インスタントハウス基金」を活用し、エアコンも無償で設置。北川教授によると、外の気温が40度ほどでも、室内を20度ほどに保つことができるそうです。

そして、建設にかかる時間は、1棟あたりわずか2時間です。

24時間で造れても、すぐには届かない 3Dプリンター住宅

こうした「短時間で建てられる住まい」は、ほかにもあります。それが、3Dプリンターで造る住宅です。手がける「セレンディクス」では、災害で自宅を失った人たちの「復興住宅」として活用することを目指しています。セレンディクスによると、3Dプリンターで壁など家の外側を造るのにかかる時間は、およそ24時間。設備などを整え、実際に人が住めるようになるまでは、2週間から1か月ほど。

これだけ早く住宅を造ることができれば、災害が起きた時にも、すぐに被災地へ届けられそうですが、そう簡単ではないといいます。セレンディクスの飯田國大さんのお話です。

セレンディクス株式会社 飯田國大さん

実は、災害が起きる前に事前に準備をしておくことが非常に大事なんですね。実際に災害が起きて、「現地に行きますよ」って言っても、やはり事前に地元の施工会社さんと技術的な協力とか、そういったものをしっかり準備しておかないと、その後の流れはうまくいかないですね。実は我々の工場が熊本の水俣にあるんですね。やはり今回の熊本もそうなんですけど、「震災が起きました、我々行きます」というふうにはならないんですね。3Dプリンター住宅はローコストで建てるチャンスがあるんですけど、被災した場所で現地の宿泊所とか、現地の部材の提供とか、そういった体制がないので、やっぱり事前に準備する必要があります。

セレンディクスは、2024年の能登半島地震の被災地で復興住宅を建てた経験から、災害が起きてから供給体制を作るのでは間に合わないと実感したそうです。そこで先月、福島県須賀川市と、災害時に3Dプリンター住宅などを供給する協定を締結。平時から住宅の仕様や供給できる棟数などの情報を共有し、災害時にすぐ動ける体制づくりを進めています。ただ、災害はいつどこで起こるか分かりません。この連携をどう広げていくかも課題です。

家だけでなく、仕事も 「なりわい再建」

被災地で地元の人たちと連携することには、別の意味もあります。再び、名古屋工業大学の北川教授のお話です。

名古屋工業大学 北川啓介教授

実は、なりわい再建というものも今回仕組みの中に入れておりまして。被災された職人さんが結構おられるんですね。仕事が止まってしまって、経済的に生活が少し止まってしまっている方がいらっしゃる。そういった方と連絡を取ったところ、「一緒にやらせてください」ということでしたので、「やっていきましょう」ということですね。地元の断熱屋さんとか、地元のエアコン取り付け業者さんとか。

そういった方々と連携しながら、なりわい再建も今実施しておるところでございます。

「なりわい」は、暮らしを支える仕事のこと。地元の職人に設置作業を担ってもらうことで、被災者の住まいを確保すると同時に、止まっていた仕事を再開する機会にもしています。北川教授は、再び熊本に入り、被災地での支援を続けるということです。

家を早く建てる技術は進んでいます。ただ、それを被災地で生かすには、地元の会社や職人との連携が欠かせません。そのつながりを、災害が起きる前からどう作っておくか。今回の熊本で見えてきた課題です。

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)

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