■海外4地域のうちアジアと欧州が牽引する収益構造から、1Qと上方修正の中身を読み解く
決算の翌日に株価が大きく動く。よくある光景だが、中身をのぞくと、増益と減益が同じ決算に同居していることは意外と少なくない。
売上高と営業利益は伸びる一方、経常利益と純利益は前年を下回る。翌7日の株価は急伸した。この一見ちぐはぐな決算を、順に読み解いていきたい。
※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
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■8月7日に急伸した株価と、直近1カ月の姿
出所:各種資料をもとに筆者作成
まず株価の動きから確認したい。ロート製薬の株価は、7月上旬は2,400円台から2,500円近辺で推移していた。その後は7月末にかけて2,300円台まで軟化し、方向感の乏しい展開が続いた。
流れが変わったのは8月に入ってからだ。決算を開示した翌営業日の8月7日、株価は2,863円で引けた。
直近時点のバリュエーションは、PERが18.38倍、PBRが2.09倍となっている。急伸を織り込んだ後の水準であり、市場が今回の決算をポジティブに受け止めたことがうかがえる。
もっとも、株価がなぜここまで反応したかは相場の地合いや需給も絡むため、単一の要因で断定はできない。1Qの内容と、同時に開示された通期予想の上方修正が意識された可能性は高いとみている。
■増収・営業増益の一方で、経常・純利益は減益となった1Q
肝心の1Qを見ていく。売上高は916億円で前年同期比+11.8%、営業利益は136億円で同+16.8%と、増収・営業増益で着地した。営業利益率はおよそ15%と、本業の稼ぐ力はしっかり伸びている。
ところが経常利益は144億円で前年同期比▲10.1%、親会社株主に帰属する四半期純利益は106億円で同▲9.5%と、いずれも減益だった。本業が伸びているのに、その下の利益が縮む。ここが今回の決算の読みどころだ。
なぜこうなったのか。会社の説明によると、前年同期に一過性の受取配当金があり、その反動で営業外収益が大きく減ったことが主因だという。つまり営業利益より下の段階で、前年に嵩上げされていた分がはげ落ちた形だ。
本業そのものの失速ではない、という整理ができる。増収・営業増益と、経常・純利益の減益は、矛盾ではなく別々の要因で同時に起きていると読み取れる。
■通期予想の上方修正が映す、今期の見通し
ロート製薬は1Qと同時に、通期予想も引き上げた。修正後の2027年3月期通期予想は、売上高3723億円(前期比+8.3%)、営業利益450億円(同+9.4%)、純利益352億円(同+2.8%)である。売上高・営業利益・経常利益・純利益のすべてで前回予想を上回る内容だ。
会社は上方修正の理由として、想定為替レートの見直しに加え、アジア・日本・ヨーロッパの各地域が想定を上回って好調に推移したことを挙げている。
1Qの経常・純利益の減益は前年の反動という一過性の色彩が濃く、通期では増収増益を見込む姿だ。目薬やスキンケアを主力とする生活消費財の会社として、足元の商品の売れ行きは堅調と言ってよいだろう。
1Qの数字の凸凹よりも、通期の増益見通しと上方修正のほうを、市場は素直に評価したのではないだろうか。
■海外4地域が映す、ロートの収益構造
ここからは、通期の増益見通しを支える収益構造に踏み込みたい。ロート製薬は業種区分こそ医薬品だが、その中身は目薬・スキンケア・OTC商品を軸とする生活消費財型の会社だ。
医薬品という区分には赤字の創薬ベンチャーも多く含まれ、業種中央値のROEは3%程度と低く出やすい。ロートの直近通期のROEは12.1%で、この区分の一般的なイメージとはかなり離れた場所にいる。
同じ「医薬品」でも、新薬開発型の会社と消費財型の会社では収益の姿が異なるということだ。
1Qのセグメント別業績を見ると、その特徴がよく表れている。会社は事業を日本・アメリカ・ヨーロッパ・アジアの4地域で開示している。日本の外部売上高は428億円(前年同期比+5.2%)と底堅い。一方で伸びをけん引したのは海外で、アジアは356億円(同+19.7%)、ヨーロッパは66億円(同+19.9%)と、いずれも大幅な増収となった。
利益面ではさらに海外の存在感が際立つ。アジアのセグメント利益は56億円(同+18.8%)と、日本の68億円に迫る規模まで育っている。会社によれば、ベトナムやマレーシアなど東南アジアが好調で、目薬や「肌ラボ」が増収に寄与したという。
ヨーロッパも、英国での消炎鎮痛剤の生産正常化による原価率改善などで利益が大きく伸びた。国内市場が成熟するなか、海外がもう一つの利益の柱として機能している構造が読み取れる。
このように地域分散が効いていると、どこか一地域が振るわなくても、他地域が補う形になりやすい。今回のように為替の追い風も乗れば、通期の上振れにつながる。
ロートの成長を追ううえでは、連結の一本値だけでなく、地域別の増減にも目を向けて観察していくことが有効だ。
■筆者コメント
印象的なのは、1Qの「増益と減益の同居」が、そのまま株価の反応と逆を向いていた点だ。純利益は前年を下回ったのに、株価は急伸した。目先の最終利益の増減より、本業の伸びと通期の増益見通しを重く見る。
市場のこうした値付けの癖が、今回はきれいに表れたと言える。
私が着目したいのは、減益の中身が前年の一過性要因のはげ落ちだったという点だ。営業外の配当金という、本業の実力とは切り離せる部分での前年比マイナスであれば、通期を通せば均されていく。数字の見出しだけを追うと減益に見えるが、稼ぐ力そのものはむしろ厚みを増している。
「医薬品」という看板と、目薬やスキンケアで海外を伸ばす消費財としての実像。この二つのイメージのズレを意識しながら、地域別の売れ行きと為替の効き方をあわせて見ていくと、この会社の姿はより立体的に見えてくるはずだ。
■参考資料
- ロート製薬株式会社2027年3月期 第1四半期決算短信( https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS09061/21db17cb/cd29/45cf/9952/ac0ed8e8c9b9/140120260806511719.pdf )
■免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
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