AIブームが生成AIからAIエージェントに移行するに従ってAIデータセンターの内部に大きな変化が起きている。足元の計算需要増加でAI半導体の需要は増加中。

CPU、DRAM、SSD(NAND)、光・レーザー関連半導体、各種電子部品、電源、重電関連も需要が増加。関連企業多数。最先端半導体の上場企業と主力工場を持つ日本の再評価が進もう。


AIエージェント相場の現状と展望-米国、日本とも注目銘柄多数...の画像はこちら >>
AIエージェント相場の現状と展望-米国、日本とも注目銘柄多数。最先端半導体企業と主力工場を持つ日本の再評価へ-
この記事をYouTubeで視聴する

毎週月曜日午後掲載


本レポートに掲載した銘柄:エヌビディア(NVDA、NASDAQ)、インテル(INTC、NASDAQ)、AMD(AMD、NASDAQ)、マイクロン・テクノロジー(MU、NASDAQ)、キオクシアホールディングス(285A、東証プライム)、コヒレント(COHR、NYSE)、ルメンタム・ホールディングス(LITE、NASDAQ)、マーベル・テクノロジー(MRVL、NASDAQ)、JX金属(5016、東証プライム)、住友電気工業(5802、東証プライム)


1.AIエージェントブームが米国経済を動かす。

 今回は、今のAIエージェント相場の中身を探り、今後を展望したいと思います。


 2026年1-3月期、2-4月期の半導体関連各社、インテル、AMD、キオクシアホールディングス、コヒレント、ルメンタム・ホールディングス、マーベル・テクノロジー、エヌビディア、ブロードコムなどの決算説明会において、AIブームの中身が生成AIブームからAIエージェントブームへ移行するにつれて、AIを動かすAIデータセンターの中に大きな変化が起きていることが報告されました。私は4月以降の決算レポートや、メモリ株に関するレポートの中で、この巨大な変化を解説してきましたが、今回はこれをまとめてみたいと思います。


 さらに株式市場におけるAIエージェント相場の行方も考えてみたいと思います。


 まず、生成AIへの設備投資→AIエージェント関連設備投資が米国経済に大きなインパクトを与えていることを見たいと思います。グラフ1、表1はハイパースケーラー4社(大規模データセンター事業者、大手クラウドサービス会社のアマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、アルファベット、大手SNS会社のメタ・プラットフォームズ)の設備投資の推移です。2025年に続き2026年、2027年も巨額の設備投資が続くと予想されます。


 この結果、各社の営業キャッシュフローに対する設備投資の比率が上昇しており、4社合計で見ると、フリーキャッシュフローは縮小する方向にあります。

ただし、この設備投資が実って大手クラウドサービス会社の業績が上向き、メタの広告収入が増加すれば、フリーキャッシュフローはまた増え始めると思われますが、この場合、2029年も設備投資の伸びが続く可能性があります。


 一方で、この巨額投資は米国経済に大きなプラスの影響を与えています。表2は米国の2026年1-3月期の米国実質国内総生産(GDP)伸び率(年率換算)(第2次改定値)に対する各分野の寄与度をみたものです。実質1.60%増のうち民間設備投資の寄与が1.19%で、このうち情報機器等の「装置・機器」(ハードウェア)が0.88%、ソフトウェアなどの知的財産製品が0.63%となります。これだけ影響力が大きい設備投資となると、思い当たるのは生成AI向け設備投資です。


 しかも、2026年1-3月期の民間設備投資には大きな特徴があります。ハードウェア投資の寄与度がソフトウェア投資よりも大きくなっているのです。


 実は、ハードウェア投資は、大きな規模での伸びが始まったときには、経済に対する寄与度がソフトウェア投資よりも大きくなる傾向があります。AIサーバーの中のAI半導体は台湾で生産されていますが、CPU、DRAM、光半導体、各種電子部品などは米国国内で生産されているものがあります。AIサーバーやその周辺の通信機器は主に米国国外の工場で組み立てますが、データセンターで使う発電機、重電機器のように機器によっては米国内で生産しているものもあります。それらの機器は米国国内のデータセンターに運ばなければなりません。また、データセンターを建設するには多くの現場作業員が必要になります。

今米国で問題になっているのはデータセンターを新規建設するときの電源不足の問題ですが、発電所の建設や変圧器などの重電機器の設置、メンテナンスには専門の資格をもった技術者が必要になります。


 このようにハードウェア投資は、工場での半導体、電子部品、各種機器の生産、組立、輸送、設置、メンテナンスの全てに、ソフトウェア投資に比べて多くの技術者、労働者が必要になるのです。大勢の人が動けば経済は成長します。


 今後の注目点は、この設備投資主導の米国経済の成長が長続きするのかどうかです。この問題には長期金利と政策金利の問題が絡みますが、もし金融政策が適切でこの景気が長続きする場合、多くの米国企業の業績が今よりもさらに上向くことになると思われます。


 通常、企業業績が上向いたときに多くの企業が考えるのが情報システムの更新、増強です。今まさにAIエージェントを企業や役所の情報システムに組み込むAIエージェントブームが始まったところですが、経済成長が続くことでこのブームが長続きする可能性があるのです。


 このブームのリスクは、AIエージェントを情報システムに組み込んだ時に本当に使えるのかということです。今のところ、AIエージェントを止める企業が大量に出てきたという話は出ていませんが、この点には今後も注目する必要があります。


 ちなみに、AIエージェントブームによってAIデータセンターの中身が大きく変わっていますが、この変化がおぼろげながらわかってきたのは、2025年10-12月期の例えばAMDのIR DAYからであり、明確になってきたのは、2026年1-3月期、2-4月期のインテル、AMD、キオクシアホールディングス、エヌビディア、マーベル・テクノロジーなどの決算説明会とIR DAYからです。この結果、2026年4月初旬から米国のSOX指数が急騰していますが、これはファンダメンタルの変化があまりにも強烈だったためであり、投機やバブルではないというのが私の見解です。


グラフ1 米国のハイパースケーラー4社設備投資合計
AIエージェント相場の現状と展望-米国、日本とも注目銘柄多数。最先端半導体企業と主力工場を持つ日本の再評価へ-
単位:100万ドル、出所:各社資料より楽天証券作成、ハイパースケーラー4社は、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、アルファベット、メタ・プラットフォームズ

表1 米国のハイパースケーラー設備投資額(暦年)
AIエージェント相場の現状と展望-米国、日本とも注目銘柄多数。最先端半導体企業と主力工場を持つ日本の再評価へ-
単位:100万ドル出所:各社資料より楽天証券作成注:マイクロソフトは各年1-3月期~10-12月期の合計。会社予想はレンジ平均値。

グラフ2 米国のハイパースケーラー4社の営業キャッシュフロー合計と設備投資合計
AIエージェント相場の現状と展望-米国、日本とも注目銘柄多数。最先端半導体企業と主力工場を持つ日本の再評価へ-
単位:100万ドル、出所:各社資料より楽天証券作成、注:ハイパースケーラー4社は、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、アルファベット、メタ・プラットフォームズ

グラフ3 米国のハイパースケーラー4社の設備投資合計/営業キャッシュフロー合計
AIエージェント相場の現状と展望-米国、日本とも注目銘柄多数。最先端半導体企業と主力工場を持つ日本の再評価へ-
単位:%、出所:各社資料より楽天証券作成、注:ハイパースケーラー4社は、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、アルファベット、メタ・プラットフォームズ

表2 米国のGDP統計(寄与度)(季節調整済み、年率、2026年1-3月期第2次改定値)
AIエージェント相場の現状と展望-米国、日本とも注目銘柄多数。最先端半導体企業と主力工場を持つ日本の再評価へ-
出所:Bureau of Economic Analysisより楽天証券作成

グラフ4 米国雇用統計:非農業部門雇用者数前月比
AIエージェント相場の現状と展望-米国、日本とも注目銘柄多数。最先端半導体企業と主力工場を持つ日本の再評価へ-
単位:1,000人、季節調整済み、出所:U.S. Bureau of Labor Statisticsより楽天証券作成

グラフ5 SOX指数
AIエージェント相場の現状と展望-米国、日本とも注目銘柄多数。最先端半導体企業と主力工場を持つ日本の再評価へ-
日足終値、単位:ポイント、出所:ブルームバーグより楽天証券作成

2.生成AIからAIエージェントへ、激変するAIデータセンターの中身。

 現在、AIブームが生成AIからAIエージェントへ移行しているところですが、ChatGPTやGeminiがブームだった時とは異なる変化がAIデータセンターの内部で起きています。


1)AIエージェントとは何か。

 AIエージェントは、目標(ゴール)を与えられると自ら計画を立て、情報システムを自律的に運用するAIです。生成AIの高度版です。企業の日常の情報処理や取引先との購買活動、調達活動などがほぼ自動化できます。


 また、アンソロピックのClaude(クロード)やオープンAIのCodex(コーデックス)などのプログラミングや情報システム開発専用の生成AIを使うことで、従来の情報システムよりも安価に構築することができます。運用も自動化することができるため、情報システム全体のコストを大幅に低減することができます。


 ただし、AIエージェントを導入した企業では目論見違いも起きています。アンソロピックのクロードを使ってAIエージェントを構築するときに「トークン」(単語を数個まとめたもの。これをAI半導体で計算処理すると、目的の文章、プログラム、画像、映像などができる)が大量発生しており、この計算処理費用がその企業の情報システム予算に大きく喰い込んでしまうケースがでています。このためマイクロソフトはアンソロピックとの会社としての契約を止め、自社のプログラミング用生成AIツールに切り替えたと言われています。


 また、ネット上ではAIエージェントに由来するシステム障害の事例も報告されています。

例えば、システム障害が起きたときにその障害を止めるためにAIエージェントが勝手にプログラムを書き換えたところ、さらに障害が拡大し、ついにはその会社のデータが消失してしまったという事例です。私はこの事例をネット上で2件見ました。


 ただし、このような目論見違いが起きているにも関わらず、AIエージェントを止めようという動きは、私が知る限りまだないようです。これは情報システムコストが大幅に削減できて、運用がほぼ自動化できるAIエージェントは企業にとって非常に魅力的だということです。情報システム予算が削減できる場合、企業にとっては情報システム部門をリストラする、あるいはこれまで人手不足や予算が足りないために構築できなかった新しいシステムを作るなど、新しい選択肢が生じます。


 AIエージェントが、巨大企業から中堅・中小企業、そして一人企業にまで適用可能である柔軟性の高さも魅力的です。


 また、AIエージェントはSaaS(ソフトウェアをインターネット経由で配信する会社)、システムインテグレータ、サーバーメーカーやネットワークインテグレータにとって大きなビジネスチャンスになります。前述のようにAIエージェントを組み込んだ情報システムは、目論見通りであればこれまでよりも安く構築できます。クラウドサービスからAI半導体の計算能力を借りると高くなりますが、オンプレミス(AIインフラを企業が自家所有すること)であれば、初期費用はかかりますが、計算処理費用は安くなります。これはSaaS、システムインテグレータ、ネットワークインテグレータにとって大きなビジネスチャンスです。


 ただし、大手クラウドサービスは巨額投資を続けることでトークンの計算費用を大幅に引き下げようとしているため、これはオンプレミスを推す側とクラウドサービスの競争になると思われます。


 この競争によって、AIエージェントの計算処理費用が大幅に低下するならば、AIエージェントは巨大市場になる可能性があります。


2)AIデータセンターの計算処理需要が増大。汎用型、特注型問わず、AI半導体需要は増加中。

 足元で起きている現象ですが、AIエージェントを構築する会社が増えているため、生成AI開発会社やクラウドサービスの計算需要が大きく増えています。その結果、短期と中長期でエヌビディア製などの汎用AI半導体の需要が増加しています。中長期では特注型AI半導体の需要も引き続き増加しています。


図1 データセンター用半導体の階層構造
AIエージェント相場の現状と展望-米国、日本とも注目銘柄多数。最先端半導体企業と主力工場を持つ日本の再評価へ-
出所:各種資料より楽天証券作成

3)AIエージェントブームの中でAIデータセンターの中身が大きく変わっている。AI半導体は「学習」「推論」に特化、CPUが重要になってきた。

 生成AIからAIエージェントにAIの中心が移行する過程で、「学習」よりも「推論」が重要になっています。単純に生成AIを使う場合は、一つの質問、指示に一つの「推論」が発生します。ところが、AIエージェントが動くと複数の推論が発生し、その各々にRAG(検索拡張生成)が発生する場合があります。RAGとは、社内のデータベースの中に回答のために参考になる情報がない場合に、AIが外部のデータベースやWEBを大量に検索して自ら学習することです。


 このように、AIの活動がかつてなく活発になり、複雑になるにつれて、AI半導体は「学習」「推論」に特化することになりました(「学習」「推論」ごとに各々AI半導体が割り当てられる)。

また、「推論」そのものではないが「推論」に関連した計算処理はCPUが行うようになりました。CPUとAI半導体の比率は、昨年まではCPU1個に対してAI半導体8個でしたが、現在は1対4または1対1となり、今後は複数のCPU対1つのAI半導体となると言われています。CPUにはサーバー用CPUの高性能品やAIデータセンター向けに設計されたエヌビディアの「Grace」(Blackwellに付随して使う場合と独立して使う場合がある。今年後半に「Rubin」が出荷開始されると「Vera」に移行)が使われています。AMDも今年後半にAIデータセンター用のCPUを出荷する予定です。


4)DRAM、SSDはこれまで以上の大容量高速化が必要。

 図2はキオクシアホールディングスのIR Day資料等を参考にデータセンターの内部を模式図にしたものです。GPU、CPU、DRAM、SSD(NAND型フラッシュメモリで作った記録媒体)がどう配置されているかを大まかに示したものです。


 AI用GPU(AI半導体)を搭載しそれらを管理する推論GPUサーバー、RAGを管理するRAGサーバー(AI用GPUを搭載)、ストレージを管理するストレージサーバーの各々にCPU、DRAM、SSDが搭載されます。従来にない大容量のデータ処理が必要になるため、GPU→DRAM→ストレージ(SSD)、あるいはCPU→DRAM→ストレージ(SSD)の間で、従来にない速度と回数で大量の情報の書き込み、読み出しが行われます。従ってストレージにHDDは使えません。AIデータセンター専用に設計された大容量高速のSSDが大量に必要になります。DRAMもAIデータセンターでの使用を前提した大容量高速DRAMが大量に必要になります。


 また、今のデータセンターは広大で配線も長大なので、配線を高速化しても情報の遅延が発生します。また、データセンターで計算能力が逼迫してくると、遠隔地にあるデータセンターとAIが勝手に連携して計算処理を行う場合があります。このようなデータセンター間の広域連携でも情報の遅延が発生します。遅延が発生すると推論ができないので、情報が揃うまでストレージに蓄積する必要があります。ここでも大量のSSDが必要になります。


 金額ベースで見たときに、AIデータセンターの中のDRAMとSSDの市場規模は、最も変化率の大きいものになっていると思われます。


図2 AIデータセンターのサーバー構造(一例)
AIエージェント相場の現状と展望-米国、日本とも注目銘柄多数。最先端半導体企業と主力工場を持つ日本の再評価へ-
出所:キオクシアホールディングスIR DAY等を参考に楽天証券作成。

5)配線は銅配線から光ファイバー配線、そしてレーザー配線へ。

 図3は、データセンターの計算能力拡張の3段階を表したものです。サーバー(AIサーバー)内のAI半導体やCPUをより高性能なものにグレードアップする「スケールアップ」、同じ性能のサーバーを並列に接続する「スケールアウト」、そして、AIデータセンターが出現してから現れた新しいタイプですが、複数のAIデータセンターを広域連携する「スケールアクロス」です。「スケールアップ」「スケールアウト」ではAIサーバーや通信機器の内部配線とデータセンター内部の配線高速化、「スケールアクロス」ではこれに加えてデータセンター間の回線高速化が重要になります。


 AIエージェントの計算処理を大量に集めて処理するAIデータセンターの中は、広大な内部に大量のAIサーバーと各種の通信機器、各種電子機器が大量に設置されています。それら機器の内部と機器間の配線の高速化が重要になっています。


 この配線は、銅配線→光ファイバー配線→レーザー配線へ進歩しています。今は光トランシーバー、光回路スイッチなどの光・レーザー関連半導体を個々の機器やボードに接続して配線を高速化していますが、今後は光電融合(CPO、Co-Packaged Optics)へ向かうと思われます。CPOは、シリコンフォトニクス(シリコンウェハ上に光送受信機能を構築すること)によって作った光半導体を、GPUやネットワークスイッチのASICと同じ基板上に統合し、高速伝送を実現するものです。光源には強力なレーザー光を使います。


 ここではエヌビディアの動きが重要です。エヌビディアは2025年後半に投入された「Blackwell Ultra」に対応したネットワークスイッチ「Spectrum-X」(ネットワークスイッチは複数のコンピュータ等をつなぎ中継、管理する通信機器)にCPOを搭載しました。


 また、エヌビディアが2027年1月期第3四半期に投入する予定の次世代機「Rubin」では、最上位機種の「Vera Rubin NVL72」(72基のRubin GPUと36基のVera CPUを搭載する)のGPU間通信に使う「NVIDIA NVLink 6」スイッチ(第6世代NVLink)にCPOが搭載される予定です。さらに、2028年投入予定の「Feynman(ファインマン)」では、より広い範囲にCPOが使われると予想されます。


 このように、AI半導体、AIサーバーの内部配線を高速化する「スケールアップ」向けはCPOにとって当面の大きな成長分野とされています。


 エヌビディアはCPOを実現するために、相次いで重要企業と提携しました。2026年3月2日、エヌビディアは光・レーザー関連半導体の大手であるコヒレント、ルメンタム・ホールディングスとの戦略的提携を発表しました。中身は、エヌビディアによる各々数十億ドル規模の購入契約、将来の先進レーザーおよび光ネットワーク製品へのアクセス権と生産能力の確保が含まれています。各々非独占的契約です。また、エヌビディアは、コヒレント、ルメンタムに各々20億ドルを出資し、コヒレント、ルメンタムの米国における生産能力拡大、研究開発、事業運営を支援します。


 次いで2026年3月31日、エヌビディアはマーベル・テクノロジーとの20億ドルの出資を含む提携を発表しました。シリコンフォトニクスで協業するほか、マーベルの特注型半導体(カスタム半導体。AI半導体、AI半導体の周辺半導体(ネットワーク半導体など)など)がエヌビディアのネットワークの中で共存できるようになります。


 光・レーザー半導体による高速配線は今のデータセンターの最重要問題と思われますが、ここには中国リスクがあります。光・レーザー関連半導体の基板にはインジウムリン(リン化インジウム)が使われています。インジウムの世界最大の産出国である中国は2025年2月にインジウムの輸出規制を発動しました(他の産出国は韓国、カナダ、日本)。これによって輸出認可取得に時間がかかるようになりました。


 一方で、このインジウムとリンから作るインジウムリン・ウェハは、日本の住友電気工業、JX金属、米国のAXTが世界3大メーカーです(AXTは中国子会社がインジウムリン・ウェハを生産)。JX金属はインジウムの調達がほぼ日本国内からになっている模様です。住友電気工業は中国依存度を低くするためインジウム調達の多様化を進めている模様です。ルメンタムはインジウムリン・ウェハの主な調達先がJX金属、住友電気工業と言われており、買収した会社の工場を使って米国での自社生産にも注力しています。コヒレントは主な調達先はAXTである模様ですが、米国国内で大型の自社生産投資を進めています。このように中国リスクを回避する動きがあります。


図3 AIデータセンターの計算能力拡張の各段階
AIエージェント相場の現状と展望-米国、日本とも注目銘柄多数。最先端半導体企業と主力工場を持つ日本の再評価へ-
出所:各種資料より楽天証券作成

6)データセンターの800V直流化が進む。

 今のデータセンターの中の電圧は、AIサーバーを格納しているラックレベルで54V直流、施設レベルで480V交流です。エヌビディアは、データセンターの施設内電圧とラックレベル電圧を800V直流にすることを提唱しており、2027年から実現に向かう見込みです。


 データセンターの800V直流化によって電流、銅の使用、ケーブル量を大幅に削減するとともに、安全性と拡張性を維持することができるというのがエヌビディアの考えです。これにより、データセンターでは計算効率を向上させながら、同じ設置スペースにより多くの計算能力を構築することができます。


 データセンターの800V化へ向けて、重電機器、パワー半導体等の主要企業である、日立製作所三菱電機、GEベルノバ、ルネサス エレクトロニクス、ローム、オン・セミコンダクター、テキサス・インスツルメンツ、インフィニオンなどがエヌビディアのパートナーになっています。


 また、800V直流化するときには、データセンター内のAIサーバー、通信機器などの電子機器の中のボードに装着されている電子部品を高電圧版に替える必要がある場合があります。例えば、チップ積層セラミックコンデンサ(電圧制御等を行う)です(大電力版は村田製作所、太陽誘電が大手)。パワー半導体にも恩恵があると思われます。


7)AIサーバー、通信機器、電源関連機器等の中のボードにある各種電子部品の需要が増加。発電機、変圧器などの電力関連機器の需要も増加。

 これまで見てきたように、AIデータセンター内にある全ての電子機器、重電機器などの需要が増加しています。そして、そのボードの上に載っている成熟半導体(各種の制御用マイコン、パワー半導体など)、各種電子部品(チップ積層セラミックコンデンサ、光コネクタなど)の需要が増加しています。今後も、例えばデータセンターやAIサーバー等の800V直流化が実現すれば、大電力用チップ積層セラミックコンデンサの需要が増え、光・レーザー半導体が増えれば、光コネクタ、高性能光ファイバーの需要がさらに増加すると思われます。


 また、データセンターの建設があまりにも多くなったため、電力が足りず、自家発電に頼るデータセンターも多くなっています。このため発電機、変圧器などの電力関連機器の需要が増加しています。


 AI半導体の高性能化が進むにつれて発熱も大きくなっており、空冷から水冷へ冷却方式が変化しています。そのため、冷却器の需要が増えています。


3.エヌビディア、キオクシアだけではない。米国、日本とも関連企業多数。

 これまで見てきたように、生成AIブームがAIエージェントブームになってAIデータセンターの中身が大きく変化しています。この変化はこれからも続くと思われます。ここでは関連銘柄を挙げます。多くの会社がAIエージェントブームの恩恵をすでに受けており、今後も受け続けると思われます。


AIデータセンターに使う各種の半導体、電子部品、機器、設備と関連企業

AI用GPU:エヌビディア、AMD
特注型AI半導体:ブロードコム、マーベル・テクノロジー、メディアテック
CPU:インテル、AMD、アーム
AI半導体、CPUのファウンドリ(半導体受託生産事業者):TSMC、サムスン電子、インテル
HBM:SKハイニックス、サムスン電子、マイクロン・テクノロジー
DRAM: SKハイニックス、サムスン電子、マイクロン・テクノロジー
NAND、SSD: SKハイニックス、サムスン電子、マイクロン・テクノロジー、キオクシアホールディングス
光・レーザー関連半導体:コヒレント、ルメンタム・ホールディングス、マーベル・テクノロジー
インジウムリン・ウェハ:住友電気工業、JX金属、AXT
パワー半導体:インフィニオン・テクノロジーズ、STマイクロエレクトロニクス、ウルフスピード、ローム、オン・セミコンダクター、三菱電機、ルネサス エレクトロニクスなど
成熟半導体(パワー半導体以外の各種産業向け半導体など):グローバルファウンドリーズ、インフィニオン・テクノロジーズ、STマイクロエレクトロニクス、NXPセミコンダクター、アナログ・デバイセズ、ルネサス エレクトロニクス、オン・セミコンダクターなど
光ファイバー:コーニング、フジクラ、古河電気工業、住友電気工業など
光ファイバーコネクタ:コーニング、TEコネクティビティ、アンフェノールなど
チップ積層セラミックコンデンサ:村田製作所、太陽誘電、TDKなど
データセンター用冷却器:バーティブ・ホールディングス、シュナイダーエレクトリックなど
発電所、発電機:GEベルノバ、三菱重工業、日立製作所など
重電機器:日立製作所、三菱電機、GEベルノバなど
半導体製造装置:ASMLホールディング、アプライドマテリアルズ、ラムリサーチ、KLA、東京エレクトロン、KOKUSAI ELECTRIC、SCREENホールディングス、レーザーテック、テラダイン、ディスコ、東京精密など


4.最先端半導体の上場企業と主力工場を有している国は、その国そのものが投資対象になる。

 キオクシアホールディングスの前身である東芝メモリは以前からある会社であり、NAND型フラッシュメモリは最先端半導体デバイスの一つです。しかし、NANDを組み合わせたSSDはHDDよりも高速に動きますが、これまではHDDを単純に代替するだけのものとされ、DRAMに比べるとNANDは格下扱いされてきたと思われます。


 ところが、AIブームの中心が生成AIからAIエージェントに移るにしたがって、AIデータセンターがより大規模化し、中身がより複雑に高度になってきました。そして、SSDの重要性が増してきました。DRAMと同等か、場所によってはDRAMよりも重要になってきました。そして、キオクシアは急成長し企業規模が巨大化しました。日本の株式市場の中で最も目立つ存在になりました。


 最先端半導体を自社で生産している上場企業がある国は、実は世界で4カ国だけです。台湾(TSMC)、韓国(サムスン電子、SKハイニックス)、米国(インテル、マイクロン・テクノロジー)、そして日本(キオクシアホールディングス)です。日本はキオクシアが巨大化したため新たに加わったと言ってよいと思われます。


 これら最先端半導体デバイスの上場企業と主力工場がある国は、その国そのものが投資対象になります。最先端半導体デバイスの大量生産は本当に難しい。世界のハイテク産業の中心である米国でさえ最先端半導体デバイスの主力工場を米国国内に持つ上場企業は、インテルとマイクロンだけです。キオクシアが日本にあるということは、単にキオクシアが重要な投資対象であるということを超えて大きな意味を持つと思われるのです。


 最先端半導体デバイスを生産するには、様々な条件が必要です。多様化され高度に組織化された加工型、素材型製造業とソフトウェア産業の産業集積、最先端半導体デバイスとこれら産業を支える人材育成のための高度な教育体制、労働者、技術者を選別しつつ調達するための一定の人口などです。


 これらの条件に合致したのが、台湾、韓国、米国、そして日本なのです。


 これまでも日本株は世界の株式市場の中で重要なポジションにありました。これからはより一層重要になると思われます。キオクシアだけでなく、半導体製造装置、各種電子部品、光ファイバー、化合物半導体、エネルギー関連(重工、重電など)などが重要な投資対象になると思われます。日本株をより幅広く、より深掘りする動きがすでに始まっていると思われます。


 このことを考えると、米国のAIデータセンター関連株だけでなく、日本のハイテク株と日本の株式市場に対して、強気のスタンスで良いというのが私の考えです。


本レポートに掲載した銘柄:エヌビディア(NVDA、NASDAQ)、インテル(INTC、NASDAQ)、AMD(AMD、NASDAQ)、マイクロン・テクノロジー(MU、NASDAQ)、キオクシアホールディングス(285A、東証プライム)、コヒレント(COHR、NYSE)、ルメンタム・ホールディングス(LITE、NASDAQ)、マーベル・テクノロジー(MRVL、NASDAQ)、JX金属(5016、東証プライム)、住友電気工業(5802、東証プライム)


(今中 能夫)

編集部おすすめ