アネカ・タムバングは、金、ニッケル、ボーキサイトの探鉱から製錬・販売まで一貫して行うインドネシアの国営鉱山・金属製錬会社です。金価格の上昇と投資需要の増加、電気自動車向けニッケル需要の拡大などを背景に、過去6年間で時価総額が16倍になりました。

しかし、同業他社と比較するとまだ割安です。


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インドネシアの鉱山会社アネカ・タムバングに割安感:ニッケル需要も追い風(西 勇太郎)
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インドネシアの鉱山会社アネカ・タムバングに割安感:ニッケル需要も追い風(西 勇太郎)
アネカ・タムバング 要約漫画


国営鉱山会社を統合して設立、製錬・販売まで含めた垂直統合型事業体制

 インドネシアの国営資源大手アネカ・タムバング(PT Aneka Tambang Tbk、短縮名称PT ANTAM (Persero) Tbk)(ANTM インドネシア)は、金、銀、ニッケル、ボーキサイトを中心とする多角的鉱山・金属企業です。


 インドネシアの政府系持株会社が65%の株を保有しています。同社の株価(6月26日終値)は、2,710ルピア(24円)、時価総額は65兆ルピア(5,900億円)です。


 1968年に時のスハルト政権が、資源開発を国家主導で効率化して外資に依存しない鉱業体制をつくるために、複数の国営鉱山会社を統合して設立しました。正式名称の「Aneka Tambang」は「多様な鉱物」を意味します。


 長らく鉱石輸出が中心でしたが、国内での製錬・加工産業育成を目的とした「下流化政策」のもと2014年にニッケル鉱石輸出が、2023年にボーキサイト輸出が禁止されるという流れの中、アネカ・タムバングは製錬・販売部門を強化し、ジャカルタを本拠に国内各地で探鉱・採掘・製錬・販売まで一貫して行う垂直統合型事業体制を確立しました。


 主要セグメントは、貴金属・製錬、ニッケル、ボーキサイト・アルミナの三つです。


<アネカ・タムバングの事業拠点分布>
インドネシアの鉱山会社アネカ・タムバングに割安感:ニッケル需要も追い風(西 勇太郎)
出所:アネカ・タムバング資料

 貴金属事業は、主に金の精製・販売を担う同社の高収益部門であり、インドネシア国内で圧倒的な存在感を持ちます。ジャカルタのLogam Mulia精錬所は国内唯一のLBMA認証(ロンドン地金市場協会が定める国際基準を満たした金・銀の精錬所に与えられる品質保証制度の認証)を取得しており、国際基準の高品質な金地金を生産しています。


 主力ブランド「Emas ANTAM」は投資用金として広く流通し、インドネシア国内の投資家から高い信頼を得ています。アネカ・タムバングは金鉱山を保有する一方、外部からの金鉱石購入やリサイクル金の精製も行っており、供給源を多角化しています。


 ニッケル事業は同社の中核で、スラウェシ島Kolaka鉱山を中心としたニッケル鉱石の採掘と、フェロニッケル(ニッケルと鉄の合金でステンレスの原料となる)の製錬を行っています。


 近年はEVバッテリー向けのニッケル部材など高付加価値素材への展開を強化し、外資との合弁による電池材料プロジェクトも推進中です。国家のEV戦略の中心企業として位置づけられ、成長余地が最も大きい事業といえます。


 ボーキサイト・アルミナ事業の主力は西カリマンタン州のTayanとMempawahのボーキサイト鉱山で、国内向けに高品位鉱石を供給します。Tayanではボーキサイトからアルミナを生産し、紙、化学、耐火材などの産業用途に販売しています。


利益急増で株価も上昇

 アネカ・タムバングの過去6年間の純利益は金価格の上昇とニッケル事業の拡大を背景に急増してきました。


<アネカ・タムバングの当期純利益推移(2019年12月期以降)>
インドネシアの鉱山会社アネカ・タムバングに割安感:ニッケル需要も追い風(西 勇太郎)
※2026年は予想値出所:アネカ・タムバング資料などより作成

 同社の株価も、おおむね当期純利益の増加と連動して上昇してきました。


<アネカ・タムバングの株価推移(2019年12月期以降)>
インドネシアの鉱山会社アネカ・タムバングに割安感:ニッケル需要も追い風(西 勇太郎)
※2026年は直近値出所:アネカ・タムバング資料などより作成

過去6年で時価総額は16倍となり、PBRは0.2倍から1.8倍に上昇

 過去6年間の変化で見ると、売上高が2.6倍、当期純利益は37.2倍と拡大しました。この期間、株主資本蓄積は順調に進んで1.9倍となりましたが、時価総額は16.1倍と非常に大きく増加しました。結果的に株価純資産倍率(PBR)は0.2倍から1.8倍へと上昇しており、この点においては、割安感はありません。


<アネカ・タムバングの業績推移(2019年12月期と2025年12月期)> (十億ルピア) 2019年12月期 2025年12月期 変化(倍) 売上高 32,719 84,642 2.6 売上総利益 4,447 13,681 3.1 営業利益 1,016 6,975 6.9 当期純利益 194 7,209 37.2 株主資本等合計 18,133 35,298 1.9 時価総額 4,038 65,123 16.1 PBR(倍) 0.2 1.8 - PER(倍) 21 9 - ※時価総額は、2019年12月期は期末時点値、2025年12月期は直近値
出所:アネカ・タムバングの資料などより作成

 アネカ・タムバングの過去6年の業績をセグメント別で見ると、貴金属・製錬セグメントが売上高、利益ともに最も増加しました。金価格の上昇と、それに伴う投資需要の拡大が販売量の増加につながり、大きく業績が拡大しました。


 またニッケルセグメントも、下流化政策を追い風にフェロニッケルやEV関連部材など高付加価値製品の生産を拡大する中、EV向け需要増と価格上昇が収益を押し上げました。


 さらにボーキサイト・アルミナセグメントも、国内精錬を促す下流化政策を追い風に、Tayanでの化学品用途向けアルミナ生産が安定拡大し、収益拡大につながりました。


<アネカ・タムバングのセグメント別業績推移(2019年12月期と2025年12月期)> (十億ルピア) 2019年12月期 2025年12月期 変化(倍) セグメント別売上高 32,719 84,642 2.6   貴金属・製錬 22,744 66,840 2.9 ニッケル 8,577 14,851 1.7 ボーキサイト・アルミナ 1,305 2,916 2.2 セグメント別利益 956 8,395 8.8   貴金属・製錬 487 6,280 12.9 ニッケル 2,101 4,314 2.1 ボーキサイト・アルミナ -367 609 - 出所:アネカ・タムバングの資料などより作成

 今後については、ニッケル、金、アルミナの各事業で下流化投資が進み、高付加価値製品の比率が上昇することで利益率が継続的に改善すると期待されています。

特にニッケルではEV電池向け素材への転換が進み、金では国内投資需要の拡大が続くことが見込まれます。


 さらにアルミナ事業では一貫体制の強化が進み、将来的な生産能力増強が収益成長を後押しする見通しとなっています。株価水準がこのまま変わらなければ、PBRは2027年度に1.4倍まで低下することが見込まれます。


<アネカ・タムバングの業績予想> (十億ルピア) 2025年12月期 2026年12月期 2027年12月期 実績 予想 予想 売上高 84,642 127,090 136,817 当期純利益 7,209 11,090 12,050 株主資本等合計 35,298 41,263 45,326 時価総額 65,123 65,123 65,123 PBR(倍) 1.8 1.6 1.4 PER(倍) 9 6 5 ※時価総額は直近値
出所:アネカ・タムバング、FactSetの資料などより作成

貴金属・ニッケル同業他社比でPBRに割安感があり、解消されれば株価は4,300ルピア

 一般に株式の評価と収益性はおおむね、図のような比例関係にあります。


<株価評価と収益性はおおむね比例関係>
インドネシアの鉱山会社アネカ・タムバングに割安感:ニッケル需要も追い風(西 勇太郎)
出所:各社資料より作成

 この関係を活用し、アネカ・タムバングと上場同業他社について、収益性については自己資本利益率(ROE)を、株価評価についてはPBRを適用した散布図を作成します。


 なお、アネカ・タムバングの上場同業他社である主な貴金属・ニッケル企業には、ズージン・マイニング・グループ(601899 上海)、ニューモント・コーポレーション(NEM NYSE)、バリック・マイニング(B NYSE)、シャンドン・ゴールド・マイニング(600547 上海)、アグニコ・イーグル・マインズ(AEM NYSE)、住友金属鉱山(5713 東京)、アングロゴールド・アシャンティ(AU NYSE)、ゴールドフィールズ(GFI NYSE)、キンロス・ゴールド(KGC NYSE)などがあります。


 これらの企業についての散布図を作成すると、ROEとPBRの間におおむね比例関係があることが確認できます。その中で、アネカ・タムバングについては割安方向にずれており、この点から、株価に割安感があるといえます。この割安感が解消された場合のアネカ・タムバングのPBR(次の図の青破線に乗る水準)は2.9であり、相当する株価は4,300ルピアです。


<主な貴金属・ニッケル企業のROEとPBRの関係>
インドネシアの鉱山会社アネカ・タムバングに割安感:ニッケル需要も追い風(西 勇太郎)
出所:各社資料より作成

<主な貴金属・ニッケル企業10社のROEとPBR> 社名 証券
コード 取引所 売上高 ROE PBR 百万ドル % 倍 Zijin Mining Group 601899 上海 48,553 32 4.2 Newmont NEM NYSE 22,669 22 3.2 Barrick Mining B NYSE 16,956 20 2.5 Shandong Gold Mining 600547 上海 14,505 11 2.9 Agnico Eagle Mines AEM NYSE 11,908 20 3.3 住友金属鉱山 5713 東京 11,573 9 1.1 Anglogold Ashanti AU NYSE 9,893 36 5.4 Gold Fields GFI NYSE 8,751 52 3.8 Kinross Gold KGC NYSE 7,051 31 3.6 Aneka Tambang ANTM インドネシア 5,130 22 1.9 出所:各社資料より作成

 アネカ・タムバングは今後も収益拡大が見込まれる中で、現在の株価2,710ルピアには同業他社比で割安感があります。割安感が解消された水準は59%上昇した4,300ルピアです。


(西 勇太郎)

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