プライバシー規制によるクッキーレス時代の到来と、自律的に業務を遂行する「エージェント型AI」の台頭により、デジタルマーケティング市場は歴史的な転換点にあります。「AIマーケティングSaaS」で優位性を築くエイピアグループを中心に、激変する市場で成長が見込まれる関連銘柄の動向を解説します。


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2026年のデジタルマーケティング市場を巡る投資環境

 2026年の国内株式市場における情報・通信セクター、とりわけデジタルマーケティング領域は、歴史的な転換点を迎えています。その最大の決定要因は、プライバシー保護の観点から長らく議論されてきたサードパーティCookieの利用制限という問題が本格化し、従来型の追跡型(リターゲティング)広告が機能不全に陥ったことです。


 改正個人情報保護法などの規制強化に伴い、企業は外部のデータに依存する手法から、自社で取得するファーストパーティデータやゼロパーティデータを活用する手法への転換を余儀なくされています。


 そもそもCookie(クッキー)とは何でしょうか。インターネットでホームページを見ていると「Cookieを許可しますか?」というポップアップが表示され、「これは何だろう」と感じたことはないでしょうか。


 Cookieとは、簡単に言うとWebサイトがユーザーを見分ける名札です。


<Cookieとは>
「クッキーレス時代」を勝ち抜くAI銘柄の選び方-エイピアグループの「AI×SaaS」に注目(茂木春輝)
出所:筆者作成

<Cookieの活用と規制による影響> 影響領域 規制前の状況
サードパーティCookie依存 規制後の課題・変化 広告の配信 サイトを離れたユーザーを
追跡して広告を表示 ターゲットの特定が難しくなり
広告効果が低下 成果の計測 どの広告経由で商品が
売れたかを正確に把握 経路が途切れ、
正しい費用対効果の算出が困難になる データ分析 複数サイトをまたいだ
ユーザーの興味関心を分析 断片的なデータしか取得できず
顧客理解が浅くなる 出所:筆者作成

 この「クッキーレス時代」の到来により、企業のマーケティング予算は従来型のアドテクノロジーから、顧客行動をAIで解析し体験価値(CX)を最適化する「AIマーケティングSaaS」へと急速にシフトしています。


 さらに、生成AIの技術的ブレイクスルーに伴い、単なるデータの可視化や予測を超えて、システム自身が自律的に業務を遂行する「エージェント型AI」が台頭してきました。


 また、東京証券取引所(東証)が主導する市場区分の見直しや、資本コストを意識した経営の要請により、グロース市場の上場企業に対しても、単なる売り上げ成長だけでなく、確かな収益性と持続的な企業価値の向上が強く求められています。


 こうしたマクロ環境の追い風を受けるエイピアグループ(4180)を中心に、関連銘柄の投資ポイントを確認していきます。


エイピアグループの圧倒的優位性と収益性

 台湾発で日本に上場し、グローバル展開を加速させているエイピアグループは、AIを用いた消費者行動予測とマーケティングの自動化をSaaS形式で提供する企業です。同社は2026年のマーケティングAI市場において、注目すべきグロース銘柄の一つと考えられます。


 同社の最大の強みは、SaaSビジネスの最重要指標である年間経常収益(ARR)の力強い成長と、ストック型ビジネス特有の営業レバレッジによる劇的な収益性の改善にあります。2025年12月のARRは前年同月比33.1%増の482億円へと大きく伸長し、売り上げ収益の95%以上を継続売り上げが占める極めて安定した収益基盤を構築しています。


 2026年12月期の業績見通しにおいても、既存事業の成長をベースに売り上げ収益は前期比23.5%増の540億円、営業利益は同44.9%増の43億円と、高成長と利益拡大の両立を見込んでいます。


<エイピアグループの業績> 指標 2025年12月期
(実績) 2026年12月期
(予想) 売り上げ収益 437億円 540億円 営業利益 29億円 43億円 総資産利益率(ROA) 4.23% ー 出所:会社決算資料より楽天証券経済研究所作成

 この成長を実務面でけん引しているのが、自律型AIプラットフォーム「Agentic AI as a Service(AaaS)」の展開です。従来のソフトウエアが人間の手作業による設定を必要としていたのに対し、同社のエージェント型AIは24時間体制でデジタル広告の運用やパーソナライズされた提案を自律的に行います。


 これにより、顧客企業のオペレーション時間が削減され、持続的な投資利益率(ROI)改善をもたらすため、プラットフォームの利用量が継続的に拡大する強力なエコシステムが成立しています。


 特筆すべきは、同社の資本効率の高さと株主価値向上へのコミットメントです。自己資本利益率(ROE)は2023年12月期の3.62%から、2024年12月期には9.23%、2025年12月期では7.16%へと着実に向上させてきました。また、日経500種平均株価の構成銘柄にも選定されており、日本およびグローバル市場におけるAIリーダーとしての認知を高めています。


 国内の伝統的なインターネット広告企業であるアドウェイズ(2489)が、株価純資産倍率(PBR)0.86倍(2026年7月8日終値時点)と割安に放置されながらも売り上げが縮小傾向(前年比マイナス3.7%)にあるのとは対照的に、エイピアグループは最先端のAIマーケティングSaaSという成長市場でプレミアムを享受しています。


関連銘柄群の動向とビジネスモデルの比較

 マーケティングSaaS領域には、エイピアグループの他にも独自の強みを持つ有力企業が存在します。投資家としては、市場環境に加え、各社のビジネスフェーズや直面している課題を把握することが不可欠です。


<マーケティングSaaS関連銘柄一覧> 銘柄名
(証券コード) 時価総額目安
(2026年7月9日時点目安) 主力事業・特徴 業績動向と注目ポイント エイピアグループ
(4180) 約900億円 AIマーケティングSaaS
エージェント型AI 2026年12月期:売り上げ540億円、営利43億円見通し。
ARRの高成長と営業レバレッジによる高収益化がけん引。 プレイド (4165) 約220億円 CXプラットフォーム「KARTE」
1stパーティデータ 2026年12月期(15カ月決算):売り上げ205億円見通し。

KARTE拡販への先行投資により足元は減益傾向。 ジーニー
(6562) 約180億円 広告プラットフォーム
デジタルPR 2027年3月期:売り上げ164億円、営利25億円見通し。
非連結のAI子会社「JAPAN AI」が売り上げ約500%増と爆発的成長。 マクビープラネット
(7095) 約160億円 LTVマーケティング
(データ解析による継続率向上) 2027年4月期:売り上げ510億円、営利30億円見通し。
M&A関連費用などで減益予想だが、配当55円は維持。 出所:各社決算資料より楽天証券経済研究所作成

 プレイド(4165)は、自社サイト内の顧客行動をリアルタイムに解析する「KARTE」を展開しており、クッキーレス時代においてファーストパーティデータを活用するソリューションとして極めて高い需要を誇ります。


 2026年12月期は決算期変更に伴う15カ月決算となりますが、販売強化に向けた積極的な投資により足元の利益は圧迫されています。しかし、売上高は前年同期比18.6%増と着実に成長しており、シェア拡大を優先するフェーズにあります。


 マクビープラネット(7095)は、単なる新規顧客の獲得ではなく、顧客の生涯顧客価値を最大化するデータ解析に強みを持ちます。上位顧客の長期継続率が88%に達するなど、極めて強固な顧客基盤を有している点が特徴です。


 2027年4月期は買収や合併(M&A)の関連費用や施策推進費用により前期比で17.8%の営業減益を見込んでいますが、配当は55円を維持する方針であり、将来のトップライン成長に向けた戦略的な足場固めの時期と言えます。


 国内アドテクノロジーの老舗であるジーニー(6562)は、主力のデジタルPR事業が好調に推移する中、グループ会社のJAPAN AIが前年比約500%の成長を遂げており、強力な成長エンジンへと変貌しつつあります。

現在は連結対象外となっているものの、将来的な連結化や事業シナジーの実現が進めば、企業価値を大きく押し上げる要因となります。


マーケティングAI市場における構造的インサイト

 データと各社の動向から、表面的な決算数値だけでは見えない三つの構造的なトレンドが浮かび上がります。これらの潮流を理解することが、中長期的な銘柄選択の鍵となります。


【1】「量から質へ」の不可逆的な転換とデータ自給自足の強制

 Cookie規制の強化は、ばらまき型の広告配信モデルを終焉(しゅうえん)させました。情報が溢れる2026年現在、消費者の最大のストレスは「自分に合うものを探す手間」であり、AIがリアルタイムでその瞬間の悩みを推測し、最適な体験を創り出すパーソナライゼーションが不可欠となっています。


 これは、サードパーティの外部データに依存せず、自社で質の高いファーストパーティデータを収集・解析できるプラットフォーム(エイピアグループやプレイドなど)への予算集中を意味し、企業間の二極化をさらに加速させています。


【2】AIの「エージェント化」によるデジタル労働力の提供

 初期のAIマーケティングツールは「分析結果を人間に提示する」ものでしたが、現在のトレンドはAI自身が意思決定し、実行までを担う「エージェント型(Agentic AI)」への進化です。日本の深刻な人手不足を背景に、24時間稼働するエージェント型AIは単なるITツールではなく「デジタル労働力」として認識され始めています。


 従業員一人当たりの売上総利益が前年比23%増と劇的に向上しているエイピアグループの実績は、AIが自社の生産性を高めるだけでなく、顧客企業に対しても強力な業務効率化の価値を提供できている証明と言えます。


【3】東証改革が促す「グローバル水準の資本効率」への選別

 東証は、自社株買いなどの一過性の対応ではなく、資本コストを上回る収益性と持続的成長を果たす企業を評価する方針を打ち出しています。SaaS企業においては、トップライン(売り上げ)の成長に加え、EBITDAマージンや営業利益率を持続的に拡大させることが求められます。


 エイピアグループのように、高収益成長のモメンタムを維持しながら財務規律を保っていける企業は、海外機関投資家からの資金流入を受けやすく、時価総額のさらなる拡大が期待できる土壌が整っています。


まとめ

 2026年のマーケティングAI領域における企業の動向は、確実な収益化フェーズに入った企業と、先行投資によって利益が圧迫されている企業とに分かれています。


 グローバル展開が進み、ARRと営業利益率の双方が力強く拡大しているエイピアグループは、売り上げ成長が続く中、営業レバレッジが効き始めるフェーズに入っていると考えられます。

市場環境の追い風を享受でき、グロース市場をけん引する銘柄の一つであると考えられます。


 その他の関連銘柄として、プレイドマクビープラネットは、シェア拡大に向けた販促投資やM&A費用によって足元の利益が圧迫されている銘柄となっています。SaaSビジネスにおいては、顧客の継続率が維持されている限り、先行投資による短期的な利益の悪化は将来のトップライン成長に向けた動きです。


 こうした一時的な要因による株価の下落は、中長期的には魅力的な買いタイミングになる可能性があると考えています。


 また、ジーニーのように、主力の安定事業の裏で、未連結のAI子会社が売り上げ約500%増という爆発的な成長を遂げているケースは、市場がその価値を完全には織り込めていないとみています。


 サードパーティCookie規制の進展とエージェント型AIの進化は、高度な技術を実装したSaaS企業にとって大きな成長機会となっています。


(茂木 春輝)

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