金(ゴールド)価格は、今年3月に歴史的な高値をつけたあと、6月にかけて下落しました。しかしその後は底堅く推移しています。

当時の下落を見て純金積立を中断した投資家の方もおられると耳にしました。筆者はそれではもったいないと感じています。本レポートでは積立の基礎を示しつつ、純金積立を継続することの有効性をまとめます。


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純金積立、下落は好機、資産は長期上昇で増やす
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積み立て:「保有数量の増加」も正義

 図1は、積立投資の収益が「保有数量」と「価格」の掛け算で決まることを示しています。一見すると当たり前の式ですが、積立投資を長く続ける上では、この二つを分けて考えることが極めて重要です。価格ばかりに注目すると、積立投資が本来持つ強みを十分に生かすことができません。


図1:積立投資の収益イメージと効率化させるための二つの条件
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出所:筆者作成

 積立投資では、毎月同じ金額を投資するため、価格が下落している局面ではより多くの数量を購入できます。逆に価格が高い局面では、購入できる数量は少なくなります。


 つまり、価格が下落している時期は「資産価値が減っている残念な期間」ではなく、「将来に向けて保有数量を効率よく増やせる期間」なのです。価格が安い時には多く、高い時には少なく買う仕組みによって、購入単価を平準化する効果が期待できます。


 一方で、価格が急騰している局面では、一見すると資産評価額は大きく増えているため安心感があります。しかし、積立投資という視点では、同じ金額で購入できる数量が少なくなるため、保有数量を増やす効率は低下します。


 価格上昇そのものは歓迎すべきことですが、積立期間中に急騰が続けば、それだけ数量を積み増すペースは鈍くなります。

積立投資は、価格が高いほど有利になる投資手法ではなく、価格変動を利用して数量を積み上げる投資手法であることを理解する必要があります。


 もっとも、数量を増やすだけでは収益は生まれません。図1が示す二つ目の条件は、「最終的に価格が一定程度反発すること」です。どれほど多くの数量を保有していても、価格が長期にわたり低迷し続ければ十分な成果は得られません。


 積立投資は、「安い時に数量を増やし、その後の価格回復によって収益を得る」という二段構えの仕組みなのです。このため、積立投資の成果を最大化させるためには、次の二つの条件を満たす必要があります。


 一つ目は、価格下落・低迷を利用して効率よく保有数量を増やすこと、二つ目は、その後、対象資産の価格が中長期的に回復・上昇することです。この二つがそろうことで、「保有数量×価格」という収益の式が最大限に機能します。


 3月から6月にかけて下落し、足元、底堅く推移している金(ゴールド)相場はまさに、この二つの条件を満たし得ると筆者はみています。金(ゴールド)相場の長期見通しにつきましては、以前のレポートにてご確認いただくことができます。長期視点の株高・金(ゴールド)高が続く可能性がある旨を述べています。


積み立て:のこぎり型上昇は積み立てと好相性

 図2から図4は、積立投資において価格の値動き方が運用成果にどのような違いをもたらすかをシミュレーションしたものです。比較しているのは、「上昇一辺倒型」と「のこぎり上昇型」の二つの価格推移です。


図2:積み立てシミュレーション(1)(価格推移) 単位:円/口あるいはグラム
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出所:筆者作成

 どちらもスタート時点は1万円、最終的な価格は1万5,000円です。長期的な値上がり率に違いはありません。しかし、途中の値動きが異なるだけで、最終的な資産額や保有数量には明確な差が生じます。


 上昇一辺倒型は、価格が一直線に上昇していくケースです。一方、のこぎり上昇型は、短期視点の下落・上昇を繰り返しながら、長期視点では同じように上昇していくケースです。短期的に見れば、のこぎり上昇型の値動きの荒さは、投資家に不安を与えかねませんが、積立投資であれば、この下落・上昇が大きな意味をもたらします。


 図3は、上昇一辺倒型とのこぎり上昇型、それぞれの資産額(保有数量×価格)の推移を示しています。毎月1万円を積み立てた場合、投資元本は約120万円です。最終的な資産額は、上昇一辺倒型が約143万円であるのに対し、のこぎり上昇型は約165万円となりました。


 始値と終値が同じであるにもかかわらず、およそ20万円以上の差が生じました。この差こそ、短期視点の下落・上昇の繰り返しによって発生した安値局面で、より多くの数量を購入できたことによるものです。


図3:積み立てシミュレーション(2)(資産額) 単位:円
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出所:筆者作成

 図4は保有数量の推移を示しています。

最終的な保有数量は、上昇一辺倒型が約95口(グラム)、のこぎり上昇型は約110口(グラム)となりました(上昇一辺倒型に比べて約15%多い)。


図4:積み立てシミュレーション(3)(保有数量) 単位:口あるいはグラム
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出所:筆者作成

 先述の通り、積立投資の資産額は「保有数量×価格」で計算します。このシミュレーションを通じ、いかに、積立投資で保有数量を増やすことが、そしていかに、それに必要な短期視点の価格下落を受け入れることが重要かを、認識できたのではないでしょうか。


 積立投資において、短期視点の価格下落は敵どころか、大歓迎されるべき存在なのです(もちろん、最終的な価格上昇があってのことです)。


積み立て:長期下落時も短期下落が支えに

 先ほどは、長期視点の上昇トレンドにおいて、上昇一辺倒型よりも、短期視点の下落・上昇を繰り返す、のこぎり上昇型の方が、積立投資と相性が良いことを確認しました。ここからは、その逆である長期的な下落トレンドを想定します。


 図5は、「下落一辺倒型」と「のこぎり下落型」の二つの価格推移を示しています。どちらも始点は1万円、終点は5,000円です。下落一辺倒型は価格が一直線に下落していく一方、のこぎり下落型は下落トレンドの中でも短期視点の上昇と下落を繰り返しながら徐々に価格水準を下げています。


図5:積み立てシミュレーション(4)(価格推移) 単位:円/口あるいはグラム
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出所:筆者作成

 一見、短期視点で生じる下落時の水準が低い、のこぎり下落型の方が不利に見えます。しかし、積立投資の結果(資産額)は、その印象と必ずしも同一ではありません。


 図6が示すように、毎月1万円を積み立てた場合、最終的な資産額は下落一辺倒型が約81万円であるのに対し、のこぎり下落型は約109万円でした。どちらも投資元本である120万円を下回るものの、のこぎり下落型の損失額は、下落一辺倒型の同額よりも、約28万円も少額となりました。


図6:積み立てシミュレーション(5)(資産額) 単位:円
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出所:筆者作成

 その理由は、図7の保有数量を見ると理解しやすくなります。最終的な保有数量は、下落一辺倒型が約163口(グラム)であるのに対し、のこぎり下落型は約219口(グラム)となりました。


 短期視点の下落時により多くの数量を購入できました。つまり、短期視点の上昇・下落があったからこそ、保有数量が増え、最終的な資産額の減少幅を一定程度抑えることができたのです。


図7:積み立てシミュレーション(6)(保有数量) 単位:口あるいはグラム
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出所:筆者作成

 このことは、積立投資における価格変動の意味を改めて教えてくれています。特に短期視点の価格下落は必ずしも悪いことではなく、むしろ保有数量を増やす機会になり得ます。


 そして、この効果が最も大きく表れるのは、長期的な価格上昇トレンドへ移行したときです。短期視点の下落局面で積み上げた数量が、その後の長期的な価格上昇時に大きな利益を生む可能性があるためです。


 このため、積立投資では短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、保有数量を着実に積み上げながら、中長期的な価格動向を見据える姿勢が重要であるといえます。このことは、金(ゴールド)だけではなく、株価指数に連動することを目指す投資信託の積み立てでも、同じです。「価格上昇こそ正義」ではないのです。


積み立て:短期下落・長期上昇で真価発揮

 図8と図9は、これまでのシミュレーションをまとめたものです。図8では、長期視点の上昇トレンドと下落トレンド、それぞれにおける、価格が同じ方向に一直線に推移する「一辺倒型」と、短期視点の上昇・下落を繰り返す「のこぎり型」の保有数量の推移を示しています。


 最終的に、上昇一辺倒型の保有数量は約95口(グラム)、のこぎり上昇型は約110口(グラム)、下落一辺倒型が約163口(グラム)、のこぎり下落型は約219口(グラム)となりました。長期視点の下落トレンド時の方が、同上昇トレンド時よりも、保有数量が増えやすいことが分かります。


図8:積み立てシミュレーション(8)(保有数量) 単位:口あるいはグラム
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出所:筆者作成

 また、長期視点の上昇トレンドと下落トレンド、いずれの場合も、価格が短期視点の上昇・下落を繰り返した方が、価格が安い局面でより多くの数量を購入できるため、保有数量を効率よく積み上げられることが分かります。


 図9では、長期視点の上昇トレンドと下落トレンド、それぞれにおける、価格が同じ方向に一直線に推移する「一辺倒型」と、短期視点の上昇・下落を繰り返す「のこぎり型」の価格推移、そして、積立期間が終了した後に、価格が一律で1,000円上昇した場合の資産額の変化分を示しています。


 1,000円反発すると、上昇一辺倒型の資産額は約9万円、のこぎり上昇型は約11万円、下落一辺倒型は約16万円、のこぎり下落型は約21万円、増加しました。同じ1,000円の価格上昇であっても、保有数量が多いほど資産額の増加幅は大きくなることが分かります。


図9:積み立てシミュレーション(7)(価格) 単位:円/口あるいはグラム
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出所:筆者作成

 このことは、冒頭で述べた「積立投資の収益=保有数量×価格」という式を体現しています。「数量を増やすための短期視点の下落」と「最終的な資産の額を増やす長期視点の上昇」が組み合わさることで、運用成果が最大化されるといえます。


 だからといって、積立投資は価格下落を期待する投資ではありません。短期視点の下落局面では効率良く数量を増やすことができますが、それだけで利益を大きくすることはできません。


 さらには、長期の価格上昇だけでは、資産の額が一定程度増えたとしても、十分な数量を積み増すことができず、積立投資の運用効率を上げることはできません。積立投資にとって望ましいのは、積立期間中に適度な短期視点の価格下落があり、その後、長期視点の価格上昇が起きることです。


 短期的な下落を恐れて積み立てを中断するのではなく、価格が下落した局面では、今が保有数量を増やす機会と捉え、その後の価格上昇を長期的な視点で待つことが重要です。積立投資の成果は、価格変動を受け入れながら保有数量を積み上げ、その数量が価格反発によって評価されることで生まれます。この二段階の仕組みこそが、積立投資の本質だといえます。


積み立て:疲れた時には「プラチナ」で

 図10は、2000年以降の金(ゴールド)とプラチナの価格推移を示しています。両者は同じ貴金属でありながら、値動きには大きな違いがあります。


 特に2015年のフォルクスワーゲン問題以降、その差は一段と鮮明になりました。金(ゴールド)は世界的な金融緩和や地政学的リスクの高まり、各国中央銀行による積極的な買いなどを背景に長期的な上昇トレンドを形成してきました。


 一方、プラチナは同問題発覚以降、ディーゼル車向けの排ガス浄化装置向け需要への懸念などが意識され、長期間にわたって低迷しました。


図10:金(ゴールド)とプラチナ価格の推移 単位:ドル/トロイオンス
純金積立、下落は好機、資産は長期上昇で増やす
出所:世界銀行のデータより筆者作成

 こうした価格推移だけを見ると、「投資をするなら金(ゴールド)の方が良いのではないか」と考える人も少なくないでしょう。実際、これまでの実績だけを見れば、金(ゴールド)の方が大きな運用成果を残しています。


 しかし、本レポートで確認してきたように、「積立投資」で重要なことは、長期視点の価格のトレンドだけではありません。「保有数量を効率よく増やせるか」、そして「最終的な価格反発が期待できるか」という二つの条件を満たすことです。


 この視点で考えると、長期間低迷してきたプラチナには積立投資との相性の良さが見えてきます。今後も低迷が続けば、毎月同じ金額でより多くの数量を購入できます。


 そして、将来的に長期視点の価格反発が起きれば、低迷時に保有した多くの数量をもとに、資産額が大きく押し上がる可能性があります。これは、シミュレーションで示した「短期視点の価格下落による保有数量の増加」と「長期視点の価格反発による資産額の拡大」という積立投資の仕組みに重なります。


 積立投資では、将来的な価格反発が期待でき、なおかつ保有数量を効率よく増やせる資産を選ぶことが重要です。長期間上昇を続けてきた金(ゴールド)ももちろん、今後も有望な対象ですが、長く低迷してきたプラチナは、積立投資ならではの数量効果を生かしやすい場面にあるといえます。


 積立投資を続けていると、価格が思うように上がらず、不安や焦りを感じることがあると思います。しかし、そのような「積み立てに疲れた」と感じる時こそ、積み立ての真骨頂ともいえる「保有数量」に目を向けるべきです。


 価格だけではなく保有数量にも目を向けることで、積立投資を通じた長期投資の見方は大きく変わります。そして、その考え方を実践する対象として、現在のプラチナは一つの有力な選択肢になり得ると、筆者は考えています。


[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

純金積立

純金積立・スポット購入


投資信託

三菱UFJ 純金ファンド
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
楽天・ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし/あり)
楽天・プラチナ・ファンド(為替ヘッジなし)


中期:関連ETF

SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
GXゴールド(425A)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)


短期:商品先物

国内商品先物
海外商品先物


短期:CFD

金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウム


(吉田 哲)

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