NYダウやS&P500が最高値を更新し、復調傾向が見られます。その中で注目されたのが米著名投資家・オニール氏の底打ちサイン「フォロースルーデー」です。

機関投資家の動向を読み、安易な底値拾いを避け、買い戻しのタイミングを見極めるためのものです。近年の相場では、ダマシを防ぐ「ディストリビューションデー」を併せるとさらに有用です。


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米株V字回復で再注目のオニール式・相場底打ちサイン。機関投資家の売買とダマシ回避(土信田雅之)
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復調傾向で迎えた8月の米国株市場

 8月相場入りとなった今週の米国株市場ですが、これまでのところ、先月末から見せ始めた相場の戻り基調が継続している格好となっています。


<図1>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年8月5日時点)
米株V字回復で再注目のオニール式・相場底打ちサイン。機関投資家の売買とダマシ回避(土信田雅之)
出所:MARKETSPEEDIIおよびBloombergデータを基に作成

 図1は昨年(2025年)末を100とした米主要株価指数のパフォーマンスを比較したものですが、7月30日あたりからそろって株価が反発している様子がうかがえます。


 7月相場で株価下落を主導していたAI・半導体関連銘柄が買い戻される動きとなっているほか、中東情勢への不安後退などが買い材料となりました。


 また、株価指数を個別に見ていくと、ダウ工業株30種平均やS&P500種指数、中小型株で構成されるラッセル2000が今週に入って最高値を更新する場面を見せています。


 その一方で、半導体関連銘柄で構成される米SOX指数と、テック企業が集中している米ナスダック総合指数については、まだ最高値までに距離を残してはいるものの、復調傾向をたどっていることが確認でき、AI・半導体関連銘柄から主力株、そして中小型株に至るまで、幅広い銘柄に買いが波及していることを踏まえると、足元の米国株市場のムードは7月からかなり改善しているといえそうです。


相場の底打ちサインとして注目される「フォロースルーデー(FTD)」とは?

 こうした、相場の反発局面において注目されていたのが、相場の底打ちから反発のサインとされる「フォロースルーデー(FTD:Follow Through Day)」の出現でした。


 フォロースルーデーとは、米国の著名な投資家ウィリアム・オニール(William J. O'Neil)氏が考案し、米国株市場で知名度のあるシグナルのひとつです。


 一般的に、フォロースルーデーが認定されるまでの流れは以下の通りです。


【底打ちの試み(Day1)】
 まず、下降トレンドが発生している中で、株価がその日の安値から反発してプラスで引けるか、前日比で上昇して終わった日に注目し、この日を今後の相場が底打ちするのかどうかを見極める基準日「第1日目(Day1)」とします。


【底値の保持(Day2~Day3)】
 その後、数日間(2~3日)の株価がDay1の安値を割り込まずに持ちこたえられるかを確認していきます。もし途中でDay1の安値を下回ってしまった場合、カウントはリセットされ、再び最初からやり直しとなります。


【強力な上昇と出来高の増加(Day4以降)】
 そして、4日目以降(一般的に4~7日目の間に起きやすい)に、株価が前日比で大幅に上昇(目安は1.25~2.0%以上の上昇、市場のボラティリティなどに応じて調整)、さらに、出来高も前日を上回っている日が出現すると、この日を「フォロースルーデー」とし、トレンドの底打ちから反転サインになります。


 こうしたフォロースルーデーの考え方の背景には、「機関投資家の投資行動」があります。


 ヘッジファンドや投資信託などの機関投資家は、運用資金が巨額であるため、底値をつけた1日だけで一気に買い注文を執行し終えることができません。彼らが本格的に買いに転じたのであれば、数日間にわたって徐々に買い注文を入れることになり、確信を深めるにつれて買い注文が増え、その結果として出来高を伴った株価上昇が継続していくことになります。


 つまり、フォロースルーデーとは、こうした機関投資家による「本気」の買い転換を、出来高と株価の動きを確認しながら探っていく手法といえます。


 そのため、フォロースルーデーは「下落トレンドが明確であるほど底打ちサインとして効力を発揮しやすい」という特徴があり、7月の株価下落局面で、50日移動平均線がサポートとして機能していたNYダウよりも、株価が50日移動平均線を下抜けて、直近高値から約10%下落していたナスダック総合指数の方が効力を発揮しやすいといえます。


 過去においても、相場が急落した場面ほど、このフォロースルーデーが注目されることが多いようです。


 また、このフォロースルーデーについて大事なことは、その背景にある考え方であって、「Day4以降の株価上昇の目安」などの基準にあまりこだわり過ぎず、柔軟性を持つことです。


 実際、近年の相場では、株価指数が先物・オプション取引およびレバレッジ型上場投資信託(ETF)などの影響を受けて、値動きが荒くなる傾向があり、先ほどの基準(前日比1.25~2.0%の上昇)に当てはめて判断すると、いわゆる「ダマシ(失敗)」に遭遇してしまうことも考えられます。


 そのため、注目している株価指数が日々、どのくらいの変動率で推移しているのかを踏まえながら条件を厳しくしたりして判断することが重要になります。


 少なくとも、フォロースルーデーについて知っておくことで、「無駄な底値拾い(落ちてくるナイフをつかむ行為)」を減らし、最も期待値の高い相場反転のタイミングで打診買いができる可能性が高まります。


「ディストリビューションデー」について

 これまで見てきたように、フォロースルーデーは底打ちを判断するサインとしてかなり有用ではあるものの、同時に「ダマシ」への対策やフォローについても考えておく必要があります。


 実は、フォロースルーデーの考案者であるウィリアム・オニール氏は、「ディストリビューションデー(Distribution Day)」という考え方も提唱しています。


 ディストリビューションデーとは、「前日を上回る出来高を伴いつつ、株価が大きく下落」した取引日を指します。


 株価が下がっているのにもかかわらず出来高が増加しているという事実は、個人投資家の売りだけではなく、大口の機関投資家も保有株を「売り抜けている」可能性が高いことを意味します。


 つまり、フォロースルーデーが出現し、上昇トレンドへの意識が強まったとしても、直後(数日以内)にディストリビューションデーが相次いで発生する場合は、そのフォロースルーデーは「ダマシ」である可能性が極めて高くなります。


 本来の上昇トレンドであれば、機関投資家は継続して買いを入れ、市場の出来高を伴って株価を押し上げますが、フォロースルーデーの直後にディストリビューションデーが観測されるということは、その反発が本質的な買いではなく、単なる一時的な要因によるものであることを示唆しています。


 とりわけ、先ほども述べたように、近年の相場では機関投資家以上に、デリバティブ取引(先物・オプション)やレバレッジ取引が相場の変動を大きくしている面があります。例えば、地政学的リスクの後退やヘッジ解除などのイベントによって、機関投資家による買いが入っていなくても、デリバティブ取引によるまとまったショートカバー(空売りの買い戻し)だけで、フォロースルーデーの条件を簡単に満たしてしまうこともあり得ます。


 それだけに、「フォロースルーデーの出現後に、ディストリビューションデーが出現していないか?」をセットで意識しておく必要があります。


(おまけ)フォロースルーデーの背景にあるオニール流成長株投資「CANSLIM」の思想

 ちなみに、フォロースルーデーやディストリビューションデーの考え方は、本来、ウィリアム・オニール氏が確立した個別株(大化け成長株)投資の手法である「CANSLIM(キャンスリム)」戦略の一部分を、株価指数のトレンド分析に応用したものになります。


 そこで、最後にこの「CANSLIM」について簡単に紹介したいと思います。


 CANSLIMとは、オニール氏が過去100年以上にわたって大化けした成長株の共通項を分析し、以下の七つの頭文字に体系化したスクリーニング手法です。


【C(Current Quarterly Earnings):当期の四半期業績】
 1株当たり利益(EPS)や売り上げが前年同期比で25%以上増えているか


【A(Annual Earnings Increase):通期業績の連続性】
 過去3~5年の年間EPSが年率25%以上の成長を維持、自己資本利益率(ROE)が高水準を維持しているか


【N(New Products, Services, Highs):新製品、新経営、新高値】
 革新的な新製品やサービスを提供し、株価も新高値を突破しているか


【S(Supply and Demand):株式の需給】
 浮動株の少なさや、出来高の増加など、株価上昇につながる需給状況か


【L(Leader or Laggard):主導株か出遅れ株か】
 業界をけん引し、トップを走っている企業か


【I(Institutional Sponsorship):機関投資家の保有】
 実績あるファンドが保有、もしくは直近で保有比率を増やしているか


【M(Market Direction):相場の方向性】
 株式市場が上昇トレンドにあるか


 このように、元々CANSLIM自体は、中小型の急成長銘柄から大型成長株といった「個別株」を選別するために作られた手法です。


 しかし、CANSLIMの最後の一文字である「M」の概念(フォロースルーデーとディストリビューションデーの組み合わせ)は、現代においても、ナスダック100(QQQ)やS&P500(VOO)といった主要株価指数に連動するETFをタイミング良く売買する手法として広く応用されています。


 足元の相場環境は、中東情勢などの地政学的状況が不安定であるほか、AI相場についても、旺盛な需要が期待できる半面、需要に応えるスピードで投資を続けられるのか、収益を上げられるのかなど、慎重な見方も根強いため、今後も株式市場が急落する場面があってもおかしくはありません。


 その際には、押し目買いのタイミングを探るヒントとして、フォロースルーデーとディストリビューションデーを意識しながら日足チャートをウオッチしていくのも有効な手段になりそうです。


※NYダウやナスダック総合、ナスダック100などの米国株の指数については、MARKETSPEEDIIでチャート上に出来高を表示させることが可能です。


(土信田 雅之)

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