日中関係が正念場を迎えています。中国は閣僚の終戦記念日の靖国参拝を批判し、レアアースの輸出規制を含む「対日制裁」を続けています。
「政治」と「経済」は切り離せるか?
日本と中国という国家間の政治、外交関係が、日本経済やマーケットにどのような影響を与えるのでしょうか。私が中国と20年以上付き合ってきた経験と感触から言えば、日本と中国との関係において「政治」と「経済」は切っても切り離せない状況にあります。
日本の対外貿易に占める割合で言うと、中国との輸出入は全体の約2割に上ります。帝国データバンクの統計によれば、中国に現地法人や生産拠点などを有する日本企業の数は約1万3,000社に上ります。また、諸説あるようですが、日本企業が中国で雇用している現地職員の数は1,000万人以上いるといわれています。
日本経済・企業と中国経済・社会との相互依存性・連動性を一定程度感じさせる数字です。
また、2025年に日本を訪問した外国人の数はのべ4,268万人で過去最多を記録しました。一時に比べれば比重は下がっていますが、中国本土からの来日客はのべ910万人で、国・地域別では韓国(946万人)に次ぐ第2位です(3位:台湾676万人、4位:米国331万人、5位:香港252万人)。
私の経験によれば、中国の人々の特に国を跨いだ行動原理(例えば、どこの国の商品を購入する、どこの国に旅行・留学に行く、など)は、自国と相手国の国家間関係の影響を相当程度受けることが多いです。
要するに、日中関係が悪く、自国政府が日本に対するネガティブキャンペーンを張っている状況下で、日本へ旅行・留学に行こうというインセンティブは下がる傾向にあります。
日中間におけるビジネスの現場においても、日中関係が悪化し、中国共産党が日本に対する警戒や反対を強めれば強めるほど、中国企業は日本との取引には慎重になるのは免れないでしょう。
中国という独特な政治体制・文化の渦の中で生きる企業や人民たちにとって、一種の「処世術」でもあると私は理解しています。
レアアース磁石の対日輸出が減少、靖国参拝にも猛反発
昨年10月に高市政権が発足して以降、高市早苗首相の国会答弁で台湾有事を巡る「存立危機事態」発言に中国側が猛反発する形で、対日制裁はエスカレーションしてきました。
今年の1月6日にデュアルユース(軍民両用)品目の対日輸出規制が開始され、2月24日にはデュアルユース品目の対日輸出における「禁輸リスト」と「監視リスト」それぞれ20社ずつを発表しました。さらに、6月29日には各20社をこの二つのリストに追加しています。
中国政府が公表する「ブラックリスト」への掲載という事実は重く、そのようなリストに掲載されている日本企業との取引には、中国企業は間違いなく慎重になるでしょう。また、場合によっては、中国政府からの「見られ方」を気にする欧米企業も、リストに入った日本企業との取引には保守的になる可能性もあるでしょう。
実際、日本の産業界にとって悩ましいのがレアアースです。スマートフォンや電気自動車(EV)、医療機器などハイテク製品に欠かせない金属の一種で、「産業のビタミン」とも呼ばれています。中国の対日制裁が止まらない中、そんなレアアースの中国からの調達が滞っている現状です。
中国税関の統計によれば、中国の6月の対日レアアース磁石輸出量は128トンで、4カ月連続で200トンを下回りました。7月はさらに低迷し、前年同月比52.2%減の111トン。下げ幅は昨年6月以来、1年1カ月ぶりの大きさとなっています(参考までに、7月の対米レアアース磁石輸出量は、前年同月比4.6%増の647トン)。
特に、ジスプロシウムなど重希土類を使う高性能磁石の輸出許可に関しては取得困難な状態が続いており、自動車工場の稼働停止リスクも高まっているのが現状です。
また、8月といえば、日本は毎年恒例の終戦記念日(8月15日)を迎えますが、この日、小泉進次郎防衛相らが靖国神社を参拝したことに対し、中国外交部は「靖国神社を巡る日本側のマイナスな動きを強く非難し、すでに日本側に厳正な申し入れと強い抗議を行った」とコメントしました。
報道官は、「日本は第2次世界大戦期に対外侵略戦争を発動し、非人道的な罪を犯した」と指摘した上で、「靖国神社は日本軍国主義の精神的な道具であり象徴であって、そこに合祀される14名の甲級戦犯は侵略戦争を発動した元凶であり、事実上の『戦犯神社』である」と強調しました。
高市首相は自民党総裁として玉串料を私費で納め、かつ靖国神社から少し離れた日本武道館の駐車場から「遥拝」するにとどめました。高市氏としても、自民党内における求心力維持と対外的な配慮との間でギリギリのアクションだったのかもしれません。
議員と経済団体の訪中は関係改善の兆しとなるか
日本各地ではまだまだ猛暑が続いていますが、夏を経て、秋や冬に向けて、日中関係はどう推移していくのか、私も非常に注目しています。
その意味で言うと、私が本稿を執筆している8月26日午前現在、自民党の橋本岳元厚生労働副大臣、中道改革連合の伊佐進一広報委員長、公明党の川村雄大参議院議員が北京を訪問しています。
中国共産党内で政党間外交を担う中央対外連絡部が主に対応しているとみられますが、政府間外交は難しかったとしても、超党派による「議員外交」という扉は閉ざさず、少なくとも、両国の統治機構同士で意思疎通は継続するという意思を中国側も一定程度有しているという証左でしょう。
また、中国側の都合で延期されていますが、関西経済連合会や関西経済同友会など関西を拠点とした経済団体が秋から冬にかけて訪中すべく調整を続けています。
訪中自体が、高市政権と習近平政権下における日中関係全体の影響を受けますし、しかも相手がいる話なので一筋縄ではいかないでしょうが、これら議員や経済団体の訪中を経て、中国側が日本側にどのようなシグナリングをしてくるか、それを日本側もしっかりと見極める必要があるでしょう。
本稿のロジックに照らし合わせれば、それらは日中経済・ビジネス関係にさまざまな形で影響してくるものです。
最後に、今年は中国がアジア太平洋経済協力会議(APEC)の主催国で、11月18~19日に広東省の深セン市で首脳会議が行われる予定です。
それだけ昨今の日中関係は厳しいということですが、裏を返せば、中国が主催するAPEC、しかも政治の中心である北京から遠く離れた(約2,000キロ)、香港に隣接する経済都市・深セン市で開催される国際会議という場があるという事実。これをどう生かし、日中関係の改善に少しでもつなげられるか。
私たちには、知恵と行動力が試されていると思います。
(加藤 嘉一)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
