株式投資における高配当戦略は、積極的にインカムゲインを広げる魅力的な選択肢です。ただし、高い予想利回りだけでは必ずしも「お得さ」を意味しません。
米国の個別株に投資する魅力とリスク
ニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダック(NASDAQ)など、米国の主要取引所は2026年12月6日より取引時間を延長し、23時間取引可能となります。
こうした中、米個別銘柄への投資に興味・関心を抱く投資家が増えているのではないでしょうか。
他方、よく知る日本企業ではなく、なじみのない米国企業に投資するのは簡単ではありません。
では、「よく知らない」「聞いたことのない」米個別銘柄に投資するメリットはなんなのか……最大の魅力は、世界市場で成長する企業や、日本株だけでは十分に取り込みにくい産業・ビジネスモデルへ直接投資できることでしょう。
また、1株単位で購入できる銘柄が多く、成長株から高配当株まで幅広い選択肢があります。加えて、ドル建て資産を持つことは、円資産への集中を和らげる効果も期待できるのです。
一方、個別株は、広く分散投資する投資信託や上場投資信託(ETF)に比べ、業績悪化や競争力低下、不祥事、減配などの企業固有のリスク要因が投資成果を大きく左右します。さらに日本の投資家にとっては、株価変動に加えて為替変動や税制、情報収集の難しさ、取引時間の違いといった負担も無視できません。
成長性の高さだけでなく、財務健全性や株価評価を確認し、業種と銘柄を分散して投資する姿勢が欠かせないのです。
国内で人気の「高配当銘柄」…米国では?
個別銘柄への投資について、日本の個人投資家の間では、安定した配当収入を得やすい高配当銘柄が人気です。高配当銘柄への投資は米国でも有力な運用手法ですが、単に現在の利回りが高い銘柄を買うだけではありません。
米国市場には、長期にわたり配当を増やしてきた「連続増配銘柄」があり、現在の配当水準に加えて、将来の増配力や再投資による複利効果を重視する考え方が根付いています。
代表例が、S&P500種指数構成企業のうち25年以上連続で増配してきた「配当貴族」や、50年以上の連続増配実績を持つ「配当王」です。
ただし、連続増配の実績は将来の配当を保証するものではなく、高利回りが株価下落や業績不安の裏返しである場合もあります。
従って、米国の高配当株投資では「利回りの高さ」よりも「利益とキャッシュフローに支えられた持続可能性」を軸に選ぶことが重要です。
これらを踏まえて、NASDAQ100の予想配当利回り上位銘柄を例に、実践的な「米個別株」の見極め方を紹介します。
【表】米国NASDAQ100で予想利回り3.00%超の参考銘柄 銘柄 業種 予想利回り 予想PER 注目点 1 クラフト・ハインツ(KHC) 非耐久消費財 6.24% 12.51倍 売上減、減損、配当余力 2 コムキャスト(CMCSA) 消費者サービス 4.89% 7.72倍 利益減少、成熟事業 3 ペプシコ(PEP) 非耐久消費財 4.14% 16.49倍 増益・増配の持続性 4 ペイチェックス(PAYX) 技術サービス 3.93% 21.31倍 増配率と株価評価 5 エクセロン(EXC) 公益事業 3.82% 15.38倍 金利・設備投資負担 6 モンデリーズ(MDLZ) 非耐久消費財 3.30% 20.45倍 利益回復と原材料高 7 アメリカン・エレクトリック・
パワー(AEP) 公益事業 3.15% 19.11倍 金利・規制・投資計画 8 エクセル・エナジー(XEL) 公益事業 3.10% 18.55倍 成長投資と負債 出所:QUICKと各社資料より楽天証券経済研究所が作成(2026年9月1日時点)
米国高配当株の特徴
表は、日本時間9月1日時点でNASDAQ100に上場する企業のうち、予想利回り3.00%超の銘柄を、利回りが高い順に並べたものです。
まず、1位のクラフト・ハインツ(KHC)は、ケチャップやチーズなどで知られる食品企業です。
予想利回りは表中で最も高い一方、減収予想や目標株価の下振れが示す事業リスクを精査する必要があります。減損は非資金項目ですが、ブランド力の回復に追加投資が必要となれば、配当原資と競合するため注意が必要でしょう。
続いて2位のコムキャスト(CMCSA)は、ケーブルテレビや通信、メディア事業を展開する企業です。予想株価収益率(PER)は低く利回りは高いものの、売上高と利益の減少が見込まれています。低評価が一時的な割安なのか、成熟事業の構造変化を見守る必要があるでしょう。
3位のペプシコ(PEP)は、飲料とスナックを展開する企業です。予想増益と増配が両立しており、配当の持続性は相対的に高いとみられます。
ただし、実績の株価純資産倍率(PBR)が高いことから、優良性を織り込んだ価格で買わない姿勢が必要です。
4位のペイチェックス(PAYX)は、中小企業向けの人事労務管理サービスを展開しています。利益と配当の伸びが強い一方、株価は軟調であり、仮に長期での保有を前提とする場合も、事業の成長性と株価評価の両面について、定期的に確認したい銘柄です。
5位のエクセロン、7位のアメリカン・エレクトリック・パワー、8位のエクセル・エナジーの公益3社は、電力セクターとして比較的安定した需要を持ちます。
ただし、設備投資や規制当局の認可、長期金利、負債コストが利益を左右します。特にアメリカン・エレクトリック・パワーは予想1株当たり利益(EPS)が減少しており、増配余力を慎重に確認する必要があるでしょう。
なお、6位のモンデリーズは利益成長率が高い一方、原材料価格、値上げ後の販売数量、買収・統合効果を分けて今後注視する必要があります。
米国高配当株への投資に欠かせない三つの注意点
ナスダックに上場していながら予想配当利回り6.24%と、一見非常に魅力的な米国高配当株。ただし、米国高配当株に投資するのであれば、利回りの数字だけでなく、その背景と持続性まで確認する必要があります。具体的には、以下の三つです。
例えば前述のクラフト・ハインツやコムキャストは、利回りが高い半面、業績悪化への警戒が必要です。一方、ペプシコなどは配当の持続性が相対的に高いとみられています。
「高い配当」のみを見て買うのではなく、「持続可能な配当を出す銘柄を、妥当な株価で買う」ことが、米国高配当株投資の基本戦略です。
ではここからは、それぞれの点について解説していきます。
1.高利回りの理由を「二つの要素」に分解する
配当利回りは「1株当たりの配当額÷株価」で計算します。従って、配当額が変わらなくても株価が下がれば利回りは上昇します。
これは米国株に限った話ではありませんが、高利回り銘柄を見つけたら、最初に確認すべきは増配ではなく、株価が下落した理由です。
事業の成熟や売上減少、利益率悪化、巨額の減損、競争力低下などが背景なら、一見高利回りに見えても将来の減配を織り込み株価が下落しているのかもしれません。
例えば、クラフト・ハインツの予想配当利回りは6.24%と突出していますが、2026年4-6月期には非資金性の減損損失が計上され、営業損益は赤字となりました。
もっとも、フリーキャッシュフローは増加していることから、会計上の損失だけを理由に直ちに配当不能と判断するのも適切ではありません。
確認すべきは、営業キャッシュフローから設備投資と配当総額を差し引いた後にも余力が残るか、純有利子負債が増えていないかという点です。
利益が一時要因で大きく振れる企業ほど、純利益ベースの配当性向だけでなく、キャッシュフロー基準で配当の持続性を判断する必要があります。
2.金利と業種特性のチェックが欠かせない理由
高配当株は債券の代替として買われやすいため、市場金利が上昇すると相対的な魅力が低下し、株価が下押しされやすくなります。また同じ高配当株でも、金利への感応度は業種によって異なります。
よって、購入時期を分散するだけでなく、公益、生活必需品、通信、サービスなど、収益構造の異なる業種に分けて保有することが重要といえるでしょう。
特に公益株は、設備投資額と負債が大きく、資金調達コスト上昇の影響を受けやすいです。
NASDAQ100の予想配当利回り上位銘柄を見ていくと、8銘柄中「金利敏感株(公益)」が3銘柄、「生活必需品(食品・飲料)」が3銘柄と、偏りが生じやすい点には注意しましょう。
3.円ベースの手取り利回りと為替変動を考える
日本の投資家が実際に得る収益は、ドル建ての表面利回りだけでは決まりません。米国での源泉徴収、日本での課税、売買・為替手数料を差し引き、受け取り時の為替レートで円換算した金額が実質的な手取りです。
また米国株の場合、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座であっても原則米国源泉税は差し引かれます。加えて、外国税額控除も利用できない点に注意が必要です。
なお、株価と配当がドルベースで横ばいでも、円高が進めば円換算の配当と評価額は減少します。反対に円安は収益を押し上げますが、その追い風効果を、企業の配当成長と混同しないよう注意しましょう。
まとめ…米高配当株の選び方
米国高配当株投資で注意すべき三つのポイントは、第一に高利回りの理由と配当余力、第二に金利・業種偏重、第三に為替・税引き後の手取りです。
利回りランキングは、投資候補を探す入口としては有効でしょう。しかし、ランキングの順位をそのまま投資順位に置き換えてはいけません。
銘柄を比較する際は、財務健全性を確認した上で複数業種に分散し、少額ずつ投資することをおすすめします。
また、米国企業の成長の果実は受け取りたいものの、個別企業を継続的に分析する負担が大きい場合は、高配当ETFを組み合わせることも選択肢でしょう。
最終的に重視したいのは、現在の配当額ではなく、利益とキャッシュフローの成長によって「数年後の配当が増えるかどうか」の確度です。
「高い利回りを買う」のではなく、「持続可能な配当を出す銘柄を、妥当な株価で買う」という視点が、長期の資産形成では重要になります。
米高配当株への投資を検討している方は、ぜひこの「三つの注意点」を意識して、銘柄を探してみてはいかがでしょうか。
(茂木 春輝)

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