9月17~18日に開催される日銀の決定会合では0.25%の利上げが決定される公算です。気になるのは、その後の利上げがいつなのか、日銀はどこまで利上げするのかという点。

筆者の見方は9月の次は今年12月か来年1月、その次は来年の6月か7月、その時点の政策金利1.75%で利上げ終了というものです。なぜそうみるのか詳しく解説します。


日銀はどこまで利上げするのか、想定される9月利上げ後のシナリ...の画像はこちら >>
日銀はどこまで利上げするのか、想定される9月利上げ後のシナリオ(愛宕伸康)
この記事をYouTubeで視聴する

日銀の利上げ幅「0.25%→0.5%」の思惑

 先週のレポートでも述べたとおり、日本銀行は9月17~18日に開催する金融政策決定会合(MPM)で0.25%の利上げを行い、政策金利を1.25%まで引き上げる公算です。


▼あわせて読みたい

2026年9月2日: 日米とも9月利上げへ、日銀を焦らす物価・賃金の上昇ペース、12月に追加利上げも(愛宕伸康)


 高田創審議委員が9月2日に札幌で行った講演の中で0.25%以外の選択肢も示唆したことから(図表1)、市場では(特に海外市場で)0.5%利上げの思惑も出ているようです。しかし筆者は、日銀はその選択肢はとらないとみています。


<図表1 高田創審議委員の金融経済懇談会(札幌、2026年9月2日)>
日銀はどこまで利上げするのか、想定される9月利上げ後のシナリオ(愛宕伸康)
出所:日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 0.5%利上げがないと予想する最大の理由は、市場が0.25%の利上げしか織り込んでいない状況の中で日銀がサプライズで0.5%の利上げを行えば、日銀の物価上振れに対する危機意識が市場の考えている以上に強いと受け取られ、長期金利が不必要に上振れるリスクがあるからです。ここ1カ月の間でそうした物価データが出ているわけではありません。


 ベッセント米財務長官の頻繁な発言も、日銀にとっては利上げをやりづらくしている側面があります。


 高市政権に対して日銀の利上げを邪魔しないよう圧力をかけている点では、日銀を後押ししているように見えますが、「(G20で植田和男総裁と)日本の金融政策正常化方針について協議した」とまで言われてしまうと(8月31日、公式X)、米側の要請を受けて利上げしたようにも受け取られかねません。それが異例の0.5%利上げとなればなおさらです。


 日銀は6月MPMの声明文や7月の「展望レポート」で、基調的な物価上昇率について、「2%の物価安定の目標を超えて上振れていくリスクがある」「基調的な物価上昇率を2%程度の水準で安定させていくという観点が重要になる」と、利上げが近いことを示唆する情報発信をしており(図表2)、ベッセント財務長官の発言がなくとも自然に9月利上げができる状況にあります。


<図表2 7月「展望レポート」の記述>
日銀はどこまで利上げするのか、想定される9月利上げ後のシナリオ(愛宕伸康)
出所:日本銀行「経済・物価情勢の展望(2026年7月)」、楽天証券経済研究所作成

9月の後の利上げはいつか?

 利上げの幅やタイミングを左右する本質的な問題は、物価上振れリスクがどれだけ高まっているかどうかです。その意味で言うと、9月11日に日銀が発表する8月の企業物価指数や、18日に総務省が発表する8月の全国消費者物価指数が重要です。


 特に日銀は、「原油高を起点に企業間取引における価格転嫁がやや速いスピードで進んでおり」(7月「展望レポート」)と、企業物価の動きを注視しています。


 7月の企業物価指数は前年比7.2%でしたが(図表3)、8月が引き続き強めの結果となった場合、図表2で紹介したリスク文言、すなわち、基調的な物価上昇率について「2%の物価安定の目標を超えて上振れていくリスクがある」「基調的な物価上昇率を2%程度の水準で安定させていくという観点が重要になる」といった文章が、9月MPMの声明文でも残る可能性が高いと考えられます。


<図表3 国内企業物価指数と消費者物価指数>
日銀はどこまで利上げするのか、想定される9月利上げ後のシナリオ(愛宕伸康)
注:消費者物価は2021年から日本銀行試算の特殊要因除くベース。出所:日本銀行、楽天証券経済研究所作成

注目は植田総裁の大阪講演

 そうなれば、物価上振れリスクに対する日銀の見方が変わっていないことを意味しますので、利上げペースも今と変わらない3カ月に1度を想定しておけば良いということになります。ただ、政府の次年度予算の策定(閣議決定)時期と重なる12月は利上げに踏み切り難いとされており、「早ければ今年12月、遅くても来年1月」と幅をもって見ておけば良いのではないでしょうか。


 こうした見方をベースに、例年、9月下旬か10月上旬に開催される植田総裁の「大阪経済4団体共催懇談会」(今年の日程はまだ未公表)での発言に注目したいと思います。


政策金利1.5%に達した後は慎重スタンスに

 今年12月か来年1月に利上げを行うとすれば、政策金利は1.5%になりますが、その先を考える上でポイントになるのが中立金利です。中立金利とは景気に引き締め的でも緩和的でもない金利のことですが、現在、日銀は市場とのコミュニケーション上、緩いコンセンサスとして「1.1%~2.5%のどこか」(自然利子率がマイナス0.9%~0.5%)という見方を共有しています。


 政策金利が1.5%になれば、その推計範囲の下限を明確に上回り、次の利上げで推計範囲の中間(1.8%)にほぼ到達する水準となります。ただ、そもそも中立金利は数値を特定するのが難しい概念上の金利であり、近づいたと判断された段階で、実際の経済・物価・金融市場の反応を見ながら慎重に見極めていくというのが金融政策運営のセオリーです。


 つまり、政策金利を1.5%まで引き上げた後は利上げペース緩め、というより、これまでのようにペースを決めず、状況を見定めながら必要に応じて利上げするという慎重なスタンスに移行する可能性が高いと見込まれます。


 したがって、今年12月か来年1月に1.5%に利上げした後は、データ次第でいつでも利上げできるようなコミュニケーションをとっておく必要があります。


 すでに公表されている2027年のMPMの日程は図表4に示したとおりですが、3月17~18日、4月27~28日、6月10~11日に加え、高田審議委員と田村直樹審議委員の退任日である7月23日の直前にセットされた7月21~22日のMPMまで、都合4回のMPMはいずれも1.75%への利上げタイミングの候補になり得るとみておくべきでしょう。


<図表4 2027年の金融政策決定会合の日程>
日銀はどこまで利上げするのか、想定される9月利上げ後のシナリオ(愛宕伸康)
出所:日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 いずれにせよ、政策金利を中立金利に着地させようとするタイミングでは、「物価安定の目標」が実現した可能性が高いことを、日銀として公式に認めることが必要です。


 加えて、少なくとも利上げペースを早めるために使ってきた図表2のリスク文言、すなわち「2%の物価安定の目標を超えて上振れていくリスクがある」「基調的な物価上昇率を2%程度の水準で安定させていくという観点が重要になる」は、事前に削除しておく必要があります。


ターミナルレートは1.75%

 以上のことを踏まえると、政策金利を1.5%に引き上げる今年12月の声明文、あるいは来年1月の「展望レポート」で、図表2のリスク文言が削除されていれば、そろそろターミナルレート(利上げの最終到達点)が近いことを示唆しているとみることが可能です。

その場合、6月か7月のMPMで1.75%への利上げが実施され、それがターミナルレートになる可能性が高いとみています。


 逆に、今年12月の声明文、あるいは来年1月の「展望レポート」で図表2のリスク文言が残っていれば、引き続き物価上振れリスクを意識した臨戦態勢が続いていることを意味し、1.75%を超える政策金利まで、複数回の利上げがあると考えておくべきでしょう。


 その場合、1.75%への利上げタイミングは3カ月後の来年3月か4月となり、その後も利上げが継続される可能性が高いでしょう。


 筆者の現時点でのメインシナリオは前者、すなわち来年6月か7月に1.75%へ利上げされ、それがターミナルレートになるというものです。もちろん、今後の物価指標の展開によっては変わり得ますので、その都度修正していくつもりです。


(愛宕 伸康)

編集部おすすめ