日銀は18日まで開いた金融政策決定会合で、政策金利を0.25%引き上げて1.25%にすると決めた。決定会合の結果や同日の植田日銀総裁の会見から今後の日銀の金融政策の行方を楽天証券経済研究所の愛宕伸康チーフエコノミストと探った。
想定通りの利上げ、市場はハト派との受け止めだが想定通り
トウシル:日本銀行は18日まで開いた金融政策決定会合で、政策金利を0.25%引き上げて1.25%にすると決めました。まずはこの受け止めをお願いします。
愛宕伸康チーフエコノミスト(以下、愛宕):日銀の決定会合に関しては市場の予想通りという結果です。0.25%の利上げという報道も相次いでいましたし、私自身もずいぶん前から日米での同時利上げと予想していました。
後ほど触れますが、欧州中央銀行(ECB)も今回利上げに踏み切り、三つの中央銀行が同時に利上げをするという過去を振り返っても珍しいことが起きており、2007年以来となります。
トウシル:金融政策決定会合後のマーケットの動きを確認すると、日本では株高と外国為替市場では円安・ドル高という動きとなっていました。今回、2人の審議委員が反対票を投じ、市場ではハト派という受け止めが広がったようです。愛宕さんはハト派との受け止めなのでしょうか。
愛宕:反対票2票というのも実は予想通りです。金融政策決定会合の声明文に反対2のところに注記があります。誰が反対したのかはきちんと明記されています。反対票を投じたのは浅田統一郎審議委員と佐藤綾野審議委員になります。
2人の審議委員は2026年になってから審議委員になった方々で、いわゆるリフレ派といわれている方々です。
ベッセント米財務長官が繰り返し日銀の利上げを求めてきたため、市場としては強く織り込みが進んだという側面がありそうです。そのため2人の審議委員が利上げに反対票を投じたと判明すると、行き過ぎた織り込みの修正が起きたと考えるのが自然かと思います。
反対票2票をどう捉えれば良いかですが、今後の決定会合でのヒントになります。金融政策決定会合は9人の投票で決まります。リフレ派の2人が利上げに反対票を投じたということを考慮すると、今後の決定会合で利上げを決める際には必ず2票の反対票があると考えることができます。今後の票読みへの影響が分かるわけです。
次の利上げ12月または1月 声明文のリスクの文言、米金融政策見通しから予想
トウシル:今回の利上げは想定通りではありますが、多くの方が気になるのは今後の利上げです。今後の予想はいかがでしょうか。
愛宕:今後の利上げを占うポイントは二つあります。一つは決定会合の声明文の「リスク」に関する文言です。上振れリスクに対するその書き方が6月の前々回、7月の前回とどう変化しているかがポイントになります。
今回の声明文では「基調的な物価上昇率については、企業の賃金・価格設定行動の積極化や中長期的な予想物価上昇率の上昇などを踏まえると、2%の『物価安定の目標』を超えて上振れていくリスクがある」とあります。
「2%の『物価安定の目標』を超えて上振れていくリスクがある」という表現は6月の決定会合の声明文に初めて明記され、7月にも同様の記載があります。物価上振れリスクに対する意識が、以前と変わっていません。その上で前回利上げした6月から3カ月での利上げをしました。リスクに対する見解が変わっていないため、次の利上げは3カ月後の12月がベースの予想になります。
12月は政府の予算決めという重要な月でもあるので、1カ月後ろ倒しして2027年1月の利上げの可能性もあるとみています。
もう一つ先行きのポイントとなるのは米国の金融政策の見通しです。今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)では参加理事が今後の政策金利の見通しを示した「ドットチャート」が公開されています。このドットを集計した中央値から読み取ると2026年中にもう一回の利上げをする見通しと読める形になります。
仮に12月に米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げし、同じ月に日銀が利上げをしないとなると為替は円安方向に傾きやすくなってしまいます。そのため米国の金融政策を見据えて考えると日銀も12月の利上げ、つまり日米同時利上げの可能性がありそうです。
トウシル:なるほど。そして午後3時30分から始まった日銀の植田総裁の会見では注目のキーワードがあり、記者からの質問が相次いでいました。
愛宕:この言葉には驚きました。以前から私は同様のことを話しているのです。私自身の言い方では日銀の金融政策のフェーズが「2%を目標」というものから「2%に安定させなければならない」というフェーズに変わっているとお伝えしていました。植田日銀総裁も同じような表現を使われました。かなりタカ派的な表現といえます。
トウシル:もう一つ記者から質問が相次いだのは「連続利上げ」や「0.50%の利上げ」についてでした。
愛宕:植田総裁はそのような状況になる事例を紹介されていました。「2022年から2023年にかけてのFRBがそうでした」と発言しています。当時を振り返ると米国はエネルギー価格の上昇を一時的としていたのですが、結果的に5%を超える利上げにつながっていました。
植田総裁の発言から、当時の米国のような状況にならなければ連続利上げや0.50%の利上げはないということが分かったのではないでしょうか。そのため通常であれば3カ月後の12月に0.25%という予想になります。
2027年の利上げは慎重か、7月の決定会合スケジュールも注目点
トウシル:では来年の見通しまで含めて考えるとどのような利上げの予想となりますか?
愛宕:利上げのペースから考えると次の利上げはその3カ月後という予想もできるのですが、私自身は少し慎重にみています。日銀は「中立金利(経済に引き締め的でも緩和的でもない名目金利水準)」を「1.1%から2.5%」の範囲内と推計しています。幅のある推計でピンポイントで何%とはなっていません。
今回の利上げで下限をすでに上回り、次に利上げするとなると1.5%となり、日銀が推計している中立金利のレンジの中央値は1.8%に接近します。景気に悪影響が出る可能性も考慮すると1.5%の先の利上げは慎重な考えになるとみています。
もう一つ2027年は注目点があります。すでに決定会合の日程が公表されているのですが、7月は21日から22日の開催を予定しています。直近の開催実績を振り返ると2026年も2025年も7月は月末の開催でした。
この日程に「おや?」と思いました。というのはこの決定会合の翌日の23日はタカ派の田村直樹審議委員と高田創審議委員の退任日になります。今回の利上げではリフレ派の2人が反対票を投じていたのですが、タカ派の2人が退任し、反対票が4にまで増えてしまう可能性もあるわけです。その場合は利上げがしにくくなります。
タカ派の2人の退任までを考慮した決定会合のスケジュールだと、うがった見方ができてしまいます。利上げが続くとしても1.75%までの利上げの可能性があるという形で見ておけば良いと思います。今回の利上げサイクルはこの水準でいったん終了するとみています。
トウシル:今後の日銀の金融政策を占う上でのリスクはありますか。
愛宕:一言でいうと物価です。もっと踏み込むと原油相場です。足元では世界中で、あの、原油の在庫が減ってしまっています。需給の引き締まりを示していますので、原油相場が上がってもおかしくないという環境でもあります。
エネルギー価格はさまざまな品目の価格に波及します。原油価格の上昇が続き物価にまで波及すると日銀もさらに利上げをしなければならなくなってしまう可能性があり、一つのリスクと捉えています。
(中山 桂一)

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