大阪駅から電車で直通わずか40分、新名神高速の宝塚北スマートICからも車で10分ほど。都市部からのアクセスが抜群でありながら、「とんでもないところに来ちゃったな……」と困惑させられる駅があります。
筆者は宝塚北スマートICから南へ山を下り、武庫川沿いの国道176号にある西宮名塩駅方面を目指していました。スマートICからしばらく進み、新名神の下の丁字路に差し掛かると、青看板には左「猪名川 宝塚市街」、右「武田尾」とありました。
「武田尾は福知山線の駅だから、武庫川沿いに下れば西宮名塩はすぐだろう」と思って右折すると、山道はみるみる細くなり、やや不安になりました。それでもスマートICから10分ほどで武田尾駅のある武庫川沿いに出ました。
駅前駐車場を越えて少し進むと、天高く貫く橋が現れ、その山肌から電車が少し顔を覗かせています。これが武田尾駅です。現在の武田尾駅は1986(昭和61)年に行われた福知山線のルート変更によって、武庫川の橋梁と山を貫くトンネルの中にホームが収まる、全国的にも珍しい「山腹の橋上駅」になっています。
そして、武庫川の渓谷に沿って進んでいた生瀬~西宮名塩~武田尾間の旧線4.7kmは、長らく立入が禁止されていたものの、ハイキングコース「JR福知山線廃線敷」として整備され、今や宝塚の人気観光スポットになっています。実際、武田尾駅までの道沿いには多くの人が歩いていましたし、クルマもたくさん停まっていました。
さて、武田尾駅の下をさらにクルマで進むと、狭いトンネルが現れます。このトンネル、明らかに“鉄道用”なのです。
「え、この道が廃線跡なの……?」と困惑しながら進むと、トンネル内は途中で閉鎖されており、その手前で別の短いトンネルが分岐していました。
そこを抜けると、武庫川の流れと、美しい赤い吊り橋、さらにY字路が現れました。右は温泉宿の入口の門、左は「武田尾温泉 足湯」とあります。左の道をしばらく進むと、足湯の駐車場で「この先行き止まり Uターンできません」の看板が現れ、無情にも足止めを食らいます。
「いやー、これ道ないでしょ…」いったん引き返します。「西宮名塩方面は武庫川を渡るはずだ」と思い、駅前駐車場のところに架かっていた橋を渡りました。対岸は西宮市です。
橋の対岸は丁字路になっていますが、ここから下流の西宮名塩方面は舗装されておらず「いやー、これ道ないでしょ……」な雰囲気。仕方なしに右折して上流側へ進むと、ものすごく風格のある温泉宿「武田尾温泉 元湯」が現れ、やはり道が終わってしまったのです。
つまり、武田尾は武庫川の両岸とも、車道としては袋小路のような場所なのです。結局、新名神のほうまで引き返す羽目になりました。
県道はいつのまにか「廃線」に変わっていた…!それにしても気になるのが、あの鉄道用のトンネルです。
地図を見ると、切畑道場線は武田尾駅前駐車場の近くの「温泉橋」で武庫川右岸に移り、その先の「武田尾橋」で再び武庫川左岸に戻る形で指定されていました。トンネル内の分岐路を出てすぐのところにあった、赤い吊り橋です。そのまま「この先行き止まり」の看板のあった足湯駐車場の先まで県道になっているものの、道場までの途中には「未開通区間」があるのだとか。
つまり、駅前駐車場から武田尾駅下を経て鉄道用トンネル内の分岐までは、かつての線路そのものです。だからこそ、県道が武庫川の対岸に迂回する形で指定されていると考えられます。
大阪からも来やすい武田尾駅は、かねて「近場にある秘境駅」のように語られます。その下を通る県道は、いつの間にか廃線跡になったり、その先は未開通区間があったりと、クルマで来るとさらに秘境感が増すかもしれません。新名神から10分ほどという抜群のアクセスのため、余計に困惑してしまいました。

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