実戦配備前なのに、もう“第5世代型”?

 まだ韓国空軍への実戦配備も始まっていない新型戦闘機KF-21が、早くも「次の姿」を披露しました。第5世代戦闘機相当を目指す発展型に、敵のレーダーを妨害する電子戦型です。

しかもプロモーション映像の最後には、サウジアラビアの国旗と「Saudi Vision 2030」の文字が登場。そこには機体だけでなく、技術や産業基盤まで売り込む輸出戦略がありました。

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  2026年7月、イギリスで開催されたファーンボロー国際航空ショーで、韓国航空宇宙産業(KAI)は新型戦闘機KF-21「ボラメ」の将来構想を公開しました。

 KF-21は韓国が開発した双発戦闘機です。2022年7月に初飛行し、2026年3月には最初の量産機が公開されました。韓国空軍への実戦配備開始は同年9月の予定で、ファーンボロー開催時点では、まだ部隊運用が始まっていない“できたて”の戦闘機でした。

 ところがKAIブース中央の大型モニターで流されたプロモーション映像には、その先にある発展型が登場していました。そのひとつが「KF-21EX(Extended)」です。

現在のKF-21はミサイルや爆弾を機体の外側に搭載しますが、KF-21EXでは兵器を機体内部に収めるウェポンベイを設け、レーダーに発見されにくいステルス戦闘機に発展させる構想が示されました。センサーや電子戦能力なども強化し、現在の4.5世代戦闘機から、第5世代戦闘機に相当する能力への発展を目指しています。

 もうひとつが「エスコート・ジャマー」と呼ばれる電子戦型です。複座型KF-21をベースに電子妨害装置を搭載し、味方の戦闘機とともに飛行して、敵のレーダーや防空システムを妨害します。

任務はアメリカ海軍の電子戦機EA-18G「グラウラー」に近く、実用化されれば通常型KF-21の攻撃を支援する存在となります。

 ただし、どちらも正式に開発が決まった機体ではありません。韓国政府が量産契約を結んでいるのは、空対空戦闘を中心とするBlock 1の計40機までです。空対地能力を追加するBlock 2も開発されていますが、ファーンボロー開催時点で、追加80機の量産契約は公表されていませんでした。つまり、映像で披露されたKF-21EXやエスコート・ジャマーは、数年後に必ず登場する機体ではなく、KAIが将来の輸出も見据えて描いた“未来の商品構想”なのです。

 では、存在しないそんな未来の商品をなんのために展示したのでしょうか。

狙いはサウジアラビアの国家改革

 その答えはプロモーション映像の最後にありました。動画の最後に示されたのはなんとサウジアラビアの国旗でした。サウジアラビアと韓国の国旗を左右に配し、中央に「Saudi Vision 2030 with KF-21 Team Korea」の文字。意訳すれば、「KF-21韓国チームとともに進めるSaudi Vision 2030」という意味になります。

 Saudi Vision 2030は、石油に依存してきたサウジアラビアの経済を多角化し、新たな産業や雇用を国内に育てる長期計画です。防衛産業も対象となっており、2030年までに軍事装備品や関連サービスに対する政府支出の50%超を国内化する目標を掲げています。

簡単にいえば、海外から購入してきた兵器や整備サービスの半分以上を、将来は同国内の企業や工場で担うという目標です。

 同国の軍事産業総局(GAMI)によると、その国内化率は2018年の4%から、2024年末には約25%まで上昇しました。しかし、2030年の目標達成には、海外企業による現地生産や技術協力をさらに増やす必要があります。つまり、サウジアラビアは完成した戦闘機が欲しいだけではなく、部品製造や機体整備、要員教育などを国内で行い、自国の航空・防衛産業を育てることも重視しているのです。

 現時点でKF-21がSaudi Vision 2030の公式事業に採用されたわけではありません。しかし、韓国の国産戦闘機であるKF-21は、単純な輸出だけでなく、現地生産や技術協力のオプションも提案することが可能であり、サウジアラビアの国家改革計画に貢献できる輸出品にもなり得る存在だといえるでしょう。実際、2026年1月にはサウジ空軍司令官がKAI本社を訪れ、KF-21の生産施設や整備能力を視察しました。

でも自由に売れない!? “米国製エンジン”の壁

 もっとも、現在のKF-21をKAIの判断だけで自由に輸出できるわけではありません。

なぜ? 韓国最新鋭戦闘機「KF-21」が「配備前」に“次”を見せる異例の事態…「ステルス仕様&電子戦仕様」構想公開の理由
「Saudi Vision 2030 with KF-21 Team Korea」の画像(布留川 司撮影)。

搭載するF414エンジンは、アメリカのGEエアロスペースが開発したものです。韓国のハンファ・エアロスペースがライセンスに基づいて生産、組み立てていますが、サウジアラビアなど韓国以外の国へ輸出する際には、米国側の承認が関わります。

 エンジン以外にも海外企業の技術や部品が使われており、輸出先や搭載装備によっては、関係国やメーカーとの調整が必要です。韓国製戦闘機ではあるものの、現状では輸出先や仕様を韓国だけで完全に決められる機体ではありません。

 現在、韓国はF414の主要部品をはじめ、機体を構成する各種装備品の国産化を進めています。ただし、部品を韓国で製造しても、米国企業が開発したエンジンであること自体は変わりません。より高い輸出の自由度を得るには、将来的にエンジンなど機体の中核部分を独自開発する必要があります。

 将来的に国産部品の比率を高め、KF-21EXなどの能力向上型も実現すれば、韓国側が提案できる装備や産業協力の幅は広がります。さらにサウジアラビアの企業が部品製造や整備に参加できれば、KF-21は完成機を輸出するだけでなく、両国が航空産業を育てる共同事業にもなり得ます。

 KAIがファーンボローで示したのは、KF-21が韓国空軍向けの国産戦闘機にとどまらず、開発を重ねることで第5世代型や電子戦型へ発展し、購入国の要求にも対応できる輸出商品になり得るという将来像です。未契約の未来型まで披露したのは、現在の機体だけでなく、その先にある発展性と国際協力の余地まで売り込むためだったのです。

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