サッカー日本代表はワールドカップ決勝トーナメント初戦でブラジルと対戦し、1-2で敗れた。現地で取材していたサッカー解説者の林陵平さんが、この一戦を徹底レビューする。
【「前半は結果も内容も完璧だった」】
前半をひと言で表すなら、林さんは「完璧だった」と断言した。
日本は5-4-1や5-2-3の陣形をコンパクトに維持し、最終ラインを高く設定することで、ブラジルが使いたい最終ラインと中盤のスペースを徹底的に消した。ブラジルがボールを保持しても「持たせている」状況を作り出し、怖さは生まれなかった。
「ヴィニシウス・ジュニオールが内側に入っていたことで、(3バックの右の)冨安健洋が見やすかった。相手が5人で攻めてきても、日本も5バックでしっかり管理ができていた」
林さんが特に称えたのが佐野海舟だ。29分、ダニーロのパスをインターセプト。そのままドリブルで持ち上がり、GKアリソン・ベッカー相手にミドルシュートを叩き込んだ。「あれはカットしたんじゃなく、(あのコースに)出させて取った。マインツで年間通して積み上げた個のクオリティが出た場面」と絶賛した。
【後半はブラジルの布陣変更で苦戦】
後半、ブラジルのカルロ・アンチェロッティ監督はFWエンドリッキを投入し、前半の4-4-2がベースだったところから、4-3-3へ布陣を変更。ヴィニシウスを左サイドに張り出させたことにより、ボールに触れる回数が増えた。
「前半は(最終ラインが)5対5の状態で日本が守れていた。後半はブラジルの前線が3人と少なくなったにも関わらず、ヴィニシウスのプレーエリアを変えただけで一気に攻撃に出やすくなった。
林さんはブラジルのクロスが増えたことにも触れた。ヴィニシウスを抑えるために、日本は右シャドーの伊東純也と右ウイングバックの堂安律がダブルチームを組む対応を取った。しかしその分、日本のボランチ脇にスペースが生まれ、そこにブラジルの左センターバックガブリエウ・マガリャンイスが侵入し、クロスを連続して供給する展開に。カゼミーロのヘディングによる同点弾も、この構造から生まれた一撃だった。
さらにアンチェロッティ監督は、守備面でも日本を追い詰めた。4-3-3のまま3トップでプレッシャーをかけ、後ろは状況に応じてカゼミーロを下げた5-2-3にすることで、日本の3バックによるビルドアップを完全に封鎖。前半はフリーでボールを持てていた伊藤洋輝と冨安が、後半はまったくボールを前に運べなくなった。
「これがアンチェロッティ監督のあっぱれな采配だった。マルキーニョス、ガブリエウ、カゼミーロの個人戦術と組み合わさって、日本を自陣に閉じ込めた」
【押し込まれ続けた末の失点】
後半アディショナルタイムがまもなく終わるタイミングで、ガブリエウ・マルティネッリの一撃で試合が決まった。田中碧がエンドリッキのプレッシャーを受けながら出したパスが弱くなり、ボールを失ったところが起点となってしまった。
「SNSでは田中のミスだという声が多かった。でも、よく見るとエンドリッキが深くまでアタックしていてバランスを崩されていた。加えてラヤンも外から来ていたことを考えると、クリアしたくてもしきれなかった部分があると思います。
直接の失点シーンではブルーノ・ギマランイスの左足シュートのフェイントからパスへの切り替え、マルティネッリの左足に出したパスは「スーパーでした」と絶賛。マルティネッリも左足でパスを受けたことで鈴木彩艶と駆け引きができ、トラップから右足で鋭いシュートを放った。これも「見事」と林さんは評した。
「菅原がもっと(中央のポジションを)締めていたらという意見もありましたが、あと2、3歩締めていても、あのボールは絶対通っていた。なぜならブルーノ・ギマランイスからマルティネッリへのパスが左足ギリギリを通していたから」と守備への批判を否定した。
【林さんが示す今後の日本強化】
最後に林さんは、今後の考察として4バックとの併用の可能性を挙げた。
「5-4-1でずっと守り続けながら勝つこともできる。でも強豪相手に押し込まれ続ければ、どのタイミングで点を取られるかわからない。ボール保持の局面でミドルゾーンまで前進できないと、相手を押し下げることができない」
例として、中盤にアンカーを置いた4-5-1を採用した場合を挙げ、そうするとガブリエウが侵入してくるハーフスペースへも日本のインサイドハーフのアプローチが速くなると説明した。「3バックか4バックか、状況に応じて使い分ける戦術的な深みが、日本がもっと上に行くために必要」と述べた。
「選手たちは本当にチームのために戦っていた。感動したのは本当のこと。

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