荒木絵里香さんインタビュー

ネーションズリーグ女子 前編

 6月にスタートした「バレーボール ネーションズリーグ2026」(以下、VNL)で、女子日本代表は第2週を終えた時点で6勝2敗のポイント16。出場18チーム中5位で、7月8日からの日本ラウンドを迎える。

 ここまでのチームの戦いについて、長らく日本代表のミドルブロッカーとして活躍し、4度オリンピックに出場した荒木絵里香さんに聞いた。

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【キャプテン石川真佑がチームにもたらすもの】

――2025年からスタートしたフェルハト・アクバシュ監督、石川真佑キャプテン体制の女子日本代表は2年目を迎えています。昨年からの変化はどのように感じますか?

「今年のテーマとして、アクバシュ監督はブロックの強化を掲げました。トータルディフェンスのシステムとして、現在進行形で進化しています。ここから、もっともっとよくなっていくでしょう。同時にオフェンス力もアップしています。VNLでここまで勝利した試合でも、とりわけバックアタックの使い方が効果的ですね。

 また、ミドルブロッカーのBクイックは昨年以上に増えたと感じています。サーブレシーブがBパス(セッターが少し動いてオーバーハンドでトスを上げられる範囲に返ってくるパス)となったシチュエーションでも、コンビを繰り出している場面が多いですし、相手ブロッカーからすれば対応がしにくいはず。日本はスピードもありますから、それらがうまく嚙み合っている印象です」

――キャプテンの石川選手を筆頭に、対角に入る佐藤淑乃選手、オポジットの和田由紀子選手とサイドアタッカー3名の得点力が光っていますね。

「本当に"3本柱"として得点を重ねていますよね。本人たちが、これまで以上にその自覚を持ってプレーしているのが伝わってきますし、決定力はもちろん、アタックのバリエーションが増えました。それぞれ、相手ブロックを利用したり、コースを狙ったりと、とても頼もしいです。

 なかでも石川選手は、アタック時のスイングのスピードが速いのが特徴で、私も対戦経験がありますが、相手からしたらなかなか対応が難しい相手です。ブロックした腕にボールを当てて得点する能力にも長けていて、ブロッカー心理としてはとにかくストレスがかかってイライラするんです(笑)。あれは個のスキルの高さと言えるでしょう」

――荒木さんは、石川選手がシニアの日本代表入りを果たした時に一緒に戦いましたね。キャプテンを務めるまでになった成長ぶりはいかがですか?

「一緒にプレーしていた時から"すごみ"を感じていましたが、それから海外で経験を積み、成熟してきていると感じます。パフォーマンスが安定していますし、キャプテンとしてチームを引っ張る姿は頼もしいですよね。何より、貪欲にバレーに取り組む姿勢が魅力であり、素晴らしいです。その姿勢が日本代表に浸透してスタンダードになっているからこそ、チーム全体のレベルや意識が高まっているんだと思います」

【ミドルではベテランとフレッシュな力も躍動】

――アウトサイドヒッターでは、荒木さんがチームコーディネーターを務めているSVリーグ女子のアリーザ愛知(旧・クインシーズ刈谷)から鴫原ひなた選手が代表に選出され、出場機会を得ていますね。

「代表に合流する前はとても緊張していましたが、彼女はリーグでしっかりと結果を出して、実力を評価されて選出されたわけですから、『落ち着いて自分の長所を発揮してほしい』と伝えました。私が現役時代、クインシーズ刈谷で一緒にプレーしていた選手ですし、個人的にも応援しています。

 VNLでも、とてもいい表情をしていますよね! コート内での表情やしぐさからポジティブなエネルギーを発信してくれていますし、これからも求められる要素になるでしょう。

 今のチームには"ゲームチェンジャー"が必要です。鴫原選手はもちろん、北窓絢音選手や秋本美空選手らは、劣勢からでもゲームの流れを変えることができる力を持っています。

そうした選手が、今後の選考に残っていくのではないかと思います」

――荒木さんと同じミドルブロッカーでいえば、パリ五輪出場メンバーだけではなく、ベテランの島村春世選手や、SVリーグでも日本人トップクラスの成績を残している山口真季選手らも力を発揮している印象です。

「島村選手、頑張っていますね! 彼女はあのままガンガン突き進んでほしいです。パフォーマンスはもちろん、豊富な経験はチームにとっても大きな財産です。あのスピードがあるブロード攻撃があることによって、日本はコート幅全体を使うことができます。島村選手が得点するだけでなく、彼女がライト方面に走り込むだけでパイプ攻撃(バックアタック)やレフト方面の決定力を高めますから、攻撃面でも貴重な存在だと感じます。

 山口選手は2025年度に代表に初選出された選手ですが、SVリーグでもブロックで結果を出し続けていたのが評価されたんでしょう。彼女は競技歴は長いですが、代表としてはフレッシュな存在。そんな選手はチームに変化をもたらします。彼女のブロック力が、チーム全体の守備の安定につながることを期待したいところです」

――優勝チームに2028年ロサンゼルス五輪出場権が与えられるアジア選手権(8月21~30日)に向け、各ポジションでチーム内の競争も激しくなっています。チームとしては結果も残さなければいけませんが、荒木さんは現役時代、その両面とどのように向き合っていましたか?

「選手はもちろん試合に出たいし、メンバーに残りたい思いを全員が持っているでしょう。それぞれの立場で、いろんな思いを抱えながら過ごしていると思いますが、そんななかで自分の役割やチームから求められる役目がある。私が現役の時は、まずはそれに応えて、チームや周りから求められる存在になれるようにと意識していました。

 おそらく、アクバシュ監督も選手たちとの会話を大事にしていると思います。そこで伝えられたことをみんなが理解して、お互いに一致団結して取り組んでいるのではないかと。今の女子日本代表を見ていると、それをすごく感じます」

(後編:VNL日本ラウンドを前に、荒木絵里香が指摘する日本代表の課題 強化ポイントの「ブロック」で大事なこととは?>>)

【プロフィール】

荒木絵里香(あらき・えりか)

1984年8月3日生まれ、岡山県倉敷市出身。身長186cmのミドルブロッカーとして長年にわたり日本代表を支え、4度のオリンピック出場を果たした。
成徳学園高校(現・下北沢成徳)で高校三冠を達成。2003年に東レアローズに入団。2006年頃から日本代表でレギュラーを獲得し、2008年北京五輪に初出場。2012年ロンドン五輪では、主将として日本女子28年ぶりの銅メダル獲得に貢献した。出産後に現役復帰を果たし、2021年東京五輪まで第一線で活躍。引退後はトヨタ車体クインシーズ(現・アリーザ愛知)のスタッフとしてチーム運営に携わり、現在はSVリーグ、日本バレーボール協会の理事も務める。

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