箱根駅伝、有力校のトラックシーズン総括(前編)

【大学駅伝】箱根優勝を狙う早大がホクレンでも充実、創価大は期...の画像はこちら >>

 春の関東インカレ、各記録会を経て、迎えた7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ(ホクレン/千歳、網走、北見、深川、士別)と関東学生網走夏季記録挑戦競技会(網走記録会)。箱根駅伝の優勝を争う各チームの選手たちはどんな走りを見せたのか。

以前に取り上げた青山学院大に続き、今回はその他の有力6大学を前編・中編・後編の全3回に分けてピックアップ。この前編では早稲田大と創価大の走りを振り返る。

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【復活を遂げた山口竣平が圧巻の走り】

 ホクレンでも、今季の充実ぶりを証明したのは早稲田大だった。

 7月4日の千歳大会では、5000mB組で本田桜二郎(1年)が13分32秒61、吉倉ナヤブ直希(3年)が13分37秒61でそれぞれ自己ベスト(PB)をマーク。さらに圧巻だったのが、5000mA組に出場した山口竣平(3年)だ。序盤こそ後方でレースの流れを見ていたが、2000mを超えたあたりでスルスルと順位を上げていった。ラスト2周を切ってからは外国人選手たちのスパートについていけなかったが、日本人トップの5位、13分17秒19のPBをマークした。

 イメージ通りのレース運びで「93点」と自己評価した山口だが、昨年の同大会で先輩の山口智規(SGホールディングス)がマークした早大記録(13分16秒56)にわずかに及ばず、悔しさをのぞかせた。

「昨年の10月、出雲駅伝の前に疲労骨折したことが、僕の競技人生の分岐点になりました。ケガをして、冷静に競技面、生活面を見直し、多くの人のおかげで今の自分がいることに気づけたからこそ、結果が出始めたんじゃないかと思っています。去年は出雲、全日本(大学駅伝)を走れず、チームに迷惑をかけてしまったので、今年はケガをしないようにして全部を走る覚悟でいます。

 箱根駅伝は総合優勝を目指していますが、そのために自分をはじめ、(工藤)慎作さん(4年)、(鈴木)琉胤(2年)、強い1年生3人は、確実に区間賞または区間3位以内で走らないといけないと思っています」

 山口が言う「強い1年生3人」とは、増子陽太、新妻遼己、本田のこと。入学早々からスーパールーキーぶりを発揮している彼らの存在は頼もしい。

また、キャプテンの小平敦之(4年)や佐々木哲(2年)、前回箱根を走った山﨑一吹(4年)、瀬間元輔(3年)、堀野正太(2年)など、ほかにも箱根の区間上位を狙えそうな選手はいる。

 毎年、選手層の薄さを指摘される早大だが、今季は抜かりがなさそう。千歳大会で3選手のPBを見届けた花田勝彦監督も満足そうな表情を浮かべていた。

【すでに箱根を視野に入れる1年生たち】

 創価大は1年生が元気だった。

 ホクレン千歳大会で田村幸太(1年)が5000mE組で3位、13分55秒56のPBをマークした。田村は、関東インカレ2部1500mに出場して4位入賞を果たすなど、すでに大学でも結果を出していたものの、5000mに関しては高校時代に出したPB(13分59秒74)を更新できていなかった。

「大学に入って1500mでしか結果を出せていなかったので、みんなと比べられる5000mで大学初の13分台が出て、安心しました。これから出雲、全日本、箱根ではしっかりとメンバー入りして、チームに勢いをつけられる走りをしたいと思います」

 田村は7月12日の網走記録会では10000mに初挑戦し、ここでも29分06秒47と堂々の走りを見せた。

 関東インカレの2部1500mで6位入賞を果たした内田涼太(1年)は、ホクレン千歳大会の5000mD組でPBに10秒ほど及ばない14分03秒72に終わったが、内容は悪くなかった。

「13分台を狙って4000m通過まではよかったのですが、ラストの1kmの絞り出しが課題です。田村がPBを出したのを見て、頑張ろうって思ったのですが、思うような結果が出ずに悔しいです。1年生はみんなライバル意識が強いので、自分もふだんの練習からみんなに勝てるように頑張ります」

 箱根駅伝もすでに視野に入れている。

「(箱根の区間距離に近い)ハーフマラソンの距離はあまりイメージできていないんですが、夏合宿でしっかり走り込んで、ロードも走れるようになりたいです。

箱根は5区が希望です。昨年の夏、(創価大の)妙高高原の合宿に参加した時、上りで上位に食い込める走りができたんです。その時、上りはほかの人よりは走れるなと思ったので、挑戦したいです」

 ルーキーが特殊区間の5区にハマれば、チームとしても4年間、安定した戦いができる。果たして、内田は"山の争い"に加わっていけるだろうか。

 そして、1年生で最も驚きの走りを見せたのが、村上遵世だった。

 千歳大会5000mC組のラスト1周、昨夏の世界陸上東京大会マラソン代表の近藤亮太(三菱重工)が前を行くなか、ホームストレートでかわして組1位、13分39秒46のPBをマークした。

「終始、冷静にレースを進められましたし、ラストは自分の力を出して勝ちきることができました。創価大はトラックよりもロードやハーフに強いイメージがあるんですけど、トラックでも早大や中央大と勝負して、勝ちきることを榎木(和貴)監督が大事にしようとおっしゃっているので、今回、勝てたのはよかったです」

 同組を走った中大の1年生、簡子傑(組4位、13分42秒38)には負けられないと意識し、また、直前のE組で田村が好走したことで、最後は自分がいい流れをつくろうと思って走ったという。内外から刺激を受け、村上は着々と主力の座をつかみつつある。

「自分は、ジワジワというよりもグーンと成長していきたいタイプ。駅伝もすべて走りたいです。箱根は、1年目は強い先輩方がいるので往路は難しいですが、単独走もスピード勝負もできるので、与えられた区間で結果を出したいですね。

2年目からは、得意な上りがある区間であれば、区間賞を獲る気持ちで走りたいです。そうして自分たちが3年になった時ぐらいには優勝争いができたらと思っています」

 村上の言葉には自信と意志の強さを感じる。ハーフの距離にも自信があるようなので、駅伝シーズンも活躍してくれるだろう。

 また、この学年で高校時代の持ちタイムが1番手だった菅野元太(1年)は、この春、故障で戦列を離れていたが、7月11日のホクレン北見大会5000mA組に出場し、13分58秒60とまずまずのタイムで復帰を果たした。

【創価大の榎木監督は「収穫が多かった」】

 創価大は、上級生に目を向けても、織橋巧(4年)がホクレン千歳大会5000mC組で組5位、13分42秒98でPBを更新すると、その1週間後の北見大会でも5000mB組に出場して組3位、13分42秒97と、2レース続けてのPB更新。個人練習でホクレンに向けて調整した成果が出て、秋の駅伝に向けていい流れでつなげている。

 エースの小池莉希(4年)も、7月15日のホクレン深川大会で10000mに出場し、気温30度近い蒸し暑さのなか、28分19秒95で日本人トップとなり、力のあるところを見せた。

 榎木和貴監督は「収穫が多かったです」と笑顔を見せた。

「田村は5000mも10000mも攻めた走りでよかったですし、菅野も13分台で復帰してくれた。村上は、5000mはできすぎのところがあるんですけど、しっかりと出しきれていたのでよかったです。10000m(網走記録会で28分59秒56)はまだそのための練習をしていないので、スタミナが足りなかったですね。でも、経験を積むために出場させたので、最終組でよくやったと思います。

この3人は1年生のなかでは力が抜けています」

 今季、創価大は5000mPB13分台の選手が6名入学したが、村上を軸に着実に成長している。また、1年生たちに刺激を受けたのか、織橋や小池も調子を上げている。

 榎木監督は、シーズン前半をどう評価しているのだろうか。

「小池がトラックで10000m27分台、5000m13分30秒切りを達成し、ハーフでは山口(翔輝・3年)が結果を出してくれました。あとは、衣川(勇太・2年)や石丸(修那・3年)あたりが上がってきてくれると、チームとしてもう少し厚みが出てくるのかなと思います。上位層と中間層の間に差がありますが、この差を夏でどのくらい埋めていけるか、ですね」

 創価大としては小池、スティーブン・ムチーニ(4年)、山口に続く層の踏ん張りが課題になる。1年生はともかく、中堅の齊藤大空(4年)、石丸、齋藤一筋(3年)、衣川、内山椋太(2年)らが上がってこなければ、「箱根3位以内」という目標の達成は難しい。

「他校を見ると、たとえば國學院大は10000m28分台が10人以上いますし、そのレベルを目標にしていかないと箱根は戦えないですね。また、中大、早大は、27分台が7、8人揃いそうなので、この2校は抜けています。現状、かなりの差をつけられている感がありますが、3位以内を目指していかないと、将来的に優勝につながっていかない。主力や1年生の勢いを加速させて、ケガをさせないように鍛えていきたいですね」

 創価大もまた、勝負の夏を迎える。

中編を読む>>>「スピード軍団」中大が2年生コンビで加速、復調気配の駒大は「夏に仕切り直し」

佐藤俊●取材・文 text by Shun Sato

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