ヒロド歩美 インタビュー 前編(全2回)
今年もまた、熱い夏がやってくる。『熱闘甲子園』(テレビ朝日系)のキャスターとして11年目を迎えるフリーアナウンサーのヒロド歩美さん。
波乱が起きている地方大会の行方から、部員不足という社会課題に対する球児たちのドラマ、女性と野球の関わりの広がり、そして「密かな野望」まで、現場を駆け回るヒロドさんに熱く語ってもらった。
【地方大会から生まれる予測不能なドラマ】
まずはやはり、沖縄尚学の夏連覇など大本命の戦いには注目しています。それに加えて、昨夏の甲子園は2年生が活躍した大会でもあったので、彼らが最上級生となってどう甲子園に戻ってくるのか、どんな成長した姿を見せてくれるのかは大きな見どころです。
たとえば、昨夏王者の沖縄尚学はコンディション不良を抱えながらもチームを鼓舞し続けた左腕・末吉良丞くんや新垣有絃くんたちの踏ん張りもあり、みごとに2年連続で夏の甲子園出場を決めました!
また地方大会では、自己最速150キロをマークして甲子園出場を決めた聖隷クリストファー(静岡)の高部陸くんや、残念ながら甲子園出場を逃しましたが、エースとして連戦を投げ抜いた県岐阜商の柴田蒼亮くん、日大三(西東京)の主将・田中諒くんなど昨年の甲子園の熱気を知る選手たちのドラマには胸が熱くなりました。
神奈川大会では2回戦で痛烈な打球を足に受けて心配されていた横浜の剛腕・織田翔希くんが、4回戦でリリーフ登板して復帰し、準決勝、決勝ではなんと最速157キロをマーク! ホッと胸を撫で下ろすとともに、甲子園での活躍が楽しみです。
今、全国各地で新風が巻き起こっていますよね。秋田大会では、今春優勝の秋田商のほか、昨秋の県大会優勝の明桜、そして"金農旋風"の金足農など、強豪校がことごとく初戦で姿を消す大混戦になっています。
さらに、春夏連覇が注目されていた選抜王者の大阪桐蔭も4回戦で敗退。また、山梨学院の左腕エース・檜垣瑠輝斗くんや、春に手首を骨折してリハビリから復帰したばかりの二刀流・菰田陽生くんの活躍も気になっていましたが、準決勝の延長タイブレークの末に惜しくも敗退が決まりました。
毎年、「必ずここが出てくる」という絶対はないのが高校野球です。「優勝候補」なんて言葉はないのだなと、地方大会を見ながらあらためて実感しています。
【DH制と単独出場への執念が生む光】
春のセンバツに続いて夏の甲子園でも「DH制」が初めて導入されます。まだ現場での恩恵や手応えを監督たちから深く聞けていない部分もあるのですが、いい面で言えば間違いなく、選手の出場機会が増えること。
ただ、ある監督さんが「守備が苦手な子でも、バッティングを極めるという割り切りをして練習に臨める」とおっしゃっていたのが印象的でした。守備ができないから試合に出られないと諦めるのではなく、ひたすらバッティング練習をして「それが僕の生きる道だ」と思える職人的なポジションができるのは、選手たちにとって大きな希望になるはずです。
DH制における戦術面の変化について、古田敦也さんも選手の出場機会増加を肯定的に捉えていて、また、「国際基準に合わせることで国際大会でも戦える」とおっしゃっていたのも印象的でした。
また、高校野球を取材し続けてきて、私自身、野球人口の減少には強い危機感を抱いています。合同・連合チームが増えるなか、なんとか単独出場を目指す球児たちの喜びや熱い思いにはいつも心打たれます。
先日、南北海道の森高校を取材しました。5年前に一度は廃部になったのですが、元プロ野球選手の吉田雄人さんが「地元に恩返しをしたい」と監督に就任し、町内の一軒家を寮に改装するなどして、2025年に部を復活させました。
昨年は部員わずか4人で合同チームでの出場でしたが、地道な活動の甲斐あって今年は15人に増え、みごと単独チームとして大会に出場したんです。初戦で敗れてしまいましたが、「単独で出場できたことは来年につながる」という1、2年生たちのキラキラした目は忘れられません。
少し形は違いますが、以前、『報道ステーション』でお伝えした青森の弘前学院聖愛のエピソードも心に残っています。部員不足の柏木農業へ、「単独廃校ルール」(他校からの選手派遣制度)を利用して聖愛から3人の選手が助っ人として派遣されました。
聖愛ではベンチに入れなかった選手が、別の学校の一員として公式戦の場数を踏む。その経験が自信となり、結果的に翌年、聖愛の主力として甲子園出場を果たす原動力になったんです。
彼らに野球を教わった柏木農業の当時の主将が「スポーツのすばらしさを教える指導者になりたい」と夢を見つけたように、出場機会を与える制度が、球児たちの人生を前向きに変えていく。本当にすばらしい取り組みだと思います。
【広がる野球と女性との関わり】
今大会は、春夏通じて初となる「女性審判員」が甲子園のグラウンドに立つことも大きなトピックです。私は女子野球選手やMLBの女性球団幹部なども取材してきましたが、「女性初」はどうしても特別視されてしまいます。でも、それがゆくゆくは"スタンダード"になっていくことが一番の理想です。
私のInstagramには、女子高生や大学生から「私も将来アナウンサーになって高校野球を伝えたいです」「高校野球に関わるにはどんな仕事があるんですか?」などといった相談のメッセージがたくさん届くんです。そういう子たちに、プレーヤーやマネージャー以外の枠が広がっていることを伝えたい。
先日、県立千葉高校の野球部を取材した際、女子マネージャーたちが、おそらくその日が初めてだったと思うのですが、ノックバットを握って練習しているのを見かけたんです。慣れないバットの扱いに苦戦しつつも、一生懸命に「自分ができること」を探して練習に取り組むひたむきな姿が、すごく胸に刺さりました。
「ボールパーソンもできるよ」「将来は審判にもなれるかもしれないよ」と発信していくことで、「じゃあ私はノック専門で頑張る」「将来は審判を目指す」と、新しい形で高校野球の門を叩いてくれる女性が増えるんじゃないかとワクワクしています。
【ノックを打てるようになりたい!】
そんな女子マネージャーたちの姿にも感化されて......じつは私、高校野球キャスター11年目にして「ノックを打てるようになりたい!」という野望を抱いてしまったんです。
先日、山梨学院へ取材に行った際、実際にグラウンドでノックを打たせてもらったんです。全然ボールに当たらなかったのですが、菰田くんが私のへっぽこノックを優しく受けてくれて、「ナイスノック!」「熱盛!」と、リップサービスまでしてくれて......。翌日は筋肉痛で全身バキバキになりました(笑)。
インタビュー以外で、グラウンドで選手たちとコミュニケーションを取れたことは、本当に幸せでした。さらに極めていって、キャッチャーフライも打てるようになりたいです。そしていつか、マイクだけでなく、ノックバットを持って全国の球児たちを回れるキャスターになるのが夢です。
今夏もさまざまなドラマが渦巻く高校野球。球児たちが全身全霊で駆け抜ける夏を、私も全力でお伝えしていきます!
後編<ヒロド歩美が心を動かされたサッカー日本代表・塩貝健人の素顔と、話題の競技「ピックルボール」を推す理由>を読む
<プロフィール>
ヒロド歩美 ひろど・あゆみ/1991年10月25日生まれ。兵庫県宝塚市出身。早稲田大学国際教養学部卒業後、2014年に朝日放送テレビ(ABCテレビ)入社。2016年に『熱闘甲子園』のキャスターに就任。
堤 美佳子●構成・文 text by Mikako Tsutsumi










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